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<インタビュー>チャーチズが10年前の自分にかける言葉は



CHVRCHESインタビュー

 グラスゴー出身の人気バンド、チャーチズが2023年1月に約4年ぶりに日本のファンの前に登場し、来日公演を行った。2013年のデビュー以降、1~2年おきにアルバム・ツアーやフェスで来日していただけに、彼らとの再会にこれほど間が空くのは初めてだ。彼らも久しぶりに日本でファンに会えることを楽しみにしていたという。

 2月24日に新曲「Over」をリリースしたばかりの3人が「The Mother We Share」で全国各地のラジオヒットを記録したのも、今から約9年も前のこと。東京公演の前日に、ライブや最新アルバム『スクリーン・ヴァイオレンス』で表現する世界観、そしてデビュー初期の頃を振り返ってもらった。(Photos: Yuma Totsuka)

左から:イアン・クック(Key, B, Vo)、ローレン・メイベリー(Vo)、マーティン・ドハーティ(Key, Vo)

――日本でのライブは4年ぶりですね。

ローレン:そうですね、確か2019年の【SUMMER SONIC】以来だと思います。日本でツアーができるかどうか長い間わからなかったので、こうやって戻ってくることができて本当に嬉しいですし、ライブが楽しみでしかたないです。

――最新アルバム『スクリーン・ヴァイオレンス』を引っさげたソロ公演もそろそろ見納めでしょうか?

ローレン:日本の後は、しばらくソロ公演の予定はなく、3月にコールドプレイの南米ツアーで何公演かオープニング・アクトとして出演する予定です。その後は、いくつか単発のライブをやるくらいで、アルバムを引っさげたヘッドライン・ショーはこれがおそらく最後になると思います。

――終わってしまうのは少し寂しいですか?

ローレン:先日、ツアーの衣装をまとめていた時にとても悲しくなったんですけど、2021年9月からツアーを続けてきたので、そろそろ終わりの時期なんだとも思うんです。私たちは、このアルバムをとても気に入っていますし、誇りに思っている。またツアーができるようになって、とても嬉しかったですし、ツアーに対して少し違った見解や考え方を持って挑めた部分もあります。そんなふうに感じさせてくれたものが終わると思うと寂しいですね。でも、何かが終わるということは、次の章が始まるということでもあるので、できる限り過去は振り返らないようにして、前進することを心がけています。

――コールドプレイのサポートアクトとして南米をまわった後の予定は決まっていますか?

ローレン:実現するということだけでもすごいことで、それだけが当面の間に入っている予定で、次に何をするかはまだ考える必要があるんです。

――今回のツアーのビジュアルや演出について教えてください。アルバム同様にホラー映画のような視覚的な要素を持っていますよね。

ローレン:ホラー映画にインスパイアされたアルバムを作るのはおそらく一度きりなので、やるならとことんやったほうがいいと考えました。長い間、ツアーに出られるかすら不透明だったこともあって、今回のツアーのビジュアルを計画するのは本当に楽しかったんです。他のアルバムに比べて、作品を掘り下げる時間が多くありました。歌詞や描写の面から今回のコンセプトがどのような意味を成すのか、それをライブでどう表現するのか、どのようにプロダクションをライブで機能させるかなど。個人的に、今までで最も誇りに思えるツアーになりました。パフォーマンス面でも最高のものを提供できましたし、最も相互的なショーになったと思います。もし私がいちファンとして今回のライブを見ていたら、私たちのライブにおける最高の形だと感じると思います。こう言わなきゃいけないから言っているわけではないんですけど(笑)、今までで一番いいツアーでした。

イアン:今回、クリエイティブ・ディレクターのスコット・キーナンにプロジェクト全体を任せたのは、間違いなく良かったです。彼がミュージック・ビデオやビジュアルを手がけ、今作の世界観をアルバム・ジャケットとして完成させました。プロジェクトのビジョンに共鳴してくれる人を見つけることが、どれだけ重要かは言い尽くせません。そうすることで、一貫性が生まれるんです。外から見ていると当たり前のように感じるかもしれないですが、実はとても難しいことなんですよ。

――アルバム全体を通じて、ビジュアル面におけるディレクターを起用したのは、今回が初めてですか?

ローレン:これまでも、そういった人と一緒に仕事をしたことはあったけれど、すべての面においてというわけではなかったです。今回は、私たちが、しばらく中に閉じこもっていなければならなかったこともあって、時間があった上に、アルバムには特定のテーマもありました。アイデアを提示して、「このアイデアを実行してください」と依頼することにより深く関与できたんです。

 これまでは、誰かが出したアイデアの中から私たちがふさわしいと思うものを選ぶことが多かったんです。でも、自分が何を求めているかを知り、それを自分たちでは表現できないような方法で具現化できる優れた人を見つけることが、私たちに合っているんだとわかりました。というのも、自分の作品をどんな音にしたいのか、どんなふうに見せて、感じてもらいたいのか、自分以上に知っている人はいないですよね。その部分にどれだけ関わるべきか、あるいはどれだけ関わることができるかを見極めるのは、私たちにとっても学びのプロセスでした。それが実を結んで、これまでのアルバムではあまり感じられなかったような、一貫性のある作品になったのは、すごく良かったと思います。

――その世界観を演出するため、会場で流れているプレイリストもキュレーションしたそうですね。

ローレン:はい、オタクっぽいけれど、とても楽しい試みでした! 会場に入ると、ホラー映画に出てくる曲やホラー映画にインスパイアされた曲がプレイリストとして流れていて、それに気づいてくれる人がいるのは嬉しいことですね。チャーチズのファンの多くは映画オタクだと思うので、私たち自身もその面を見せることできて良かったです。

 毎晩ライブの冒頭では『エルム街の悪夢』のテーマを流していて、ライブが終わると(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの)「バッド・ムーン・ライジング」が流れる。ステージの横やステージ・カメラがあれば、ライブが終わった後に、それで観客を観察していまして、みんなが会場を出る時に「バッド・ムーン・ライジング」で小躍りしているのを見たら、いいライブをして、人々を幸せにできたというサインです。あんなにも悲しい曲ですら、踊りながら会場を去っていくんですから。

イアン:ホラー音楽やそれに近いホラー映画のテーマ曲は全体的にかなり陰鬱で怖いから、バンドがステージに登場すると太陽が昇るような感じで、その対比がちょっとクールな感じもするよね。

――アルバムのテーマにも関係している気がしますね。内容はダークですが、その中には希望もあるので。

ローレン:はい、アルバムには小さな光が感じられる部分がいくつかありますから。人生とはそういうもので、人間もそういうものですよね。いいこともあれば悪いこともあって、それらが織り混ざっていくことで成立していく。


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1月11日東京・Zepp Haneda公演
Photo by Sotaro Goto

――では、今回のツアーのハイライトを教えてください。

マーティン:ロンドンのブリクストン・アカデミーで、バンドの“友人”である、そう呼ぶのも気が引けるけど(笑)、ザ・キュアーのロバート・スミスが一緒に演奏してくれたこと。今回のアルバム・ツアーのみならず、おそらく自分が今後関わる全ての音楽的プロジェクトに勝るハイライトだろうね。

 あの時の音が今でも忘れられなくて。自分はギターのチューニングをしていたところで、彼は呼び込みされることを望んでいないから、そのままふとステージに登場したんだ。観客があんなにざわついたのは初めてのことだったから、何かトラブルでも起きたのかと思ったら、照明に照らされた彼のシルエットが浮かび上がっていて。首の毛が逆立つほど凄まじい光景だった。ザ・キュアーの「ジャスト・ライク・ヘヴン」を一緒に演奏することを許可してくれて、一夜限り、一曲限りだったけど、ザ・キュアーの一員になることができた。一生忘れられない思い出。


イアン:彼は、チャーチズの曲にも参加してくれたんです。「アンコールで出てきたんだから、最後まで残っていようかな」という感じで、「The Mother We Share」と 「Clearest Blue」を一緒に演奏してくれました。あれは本当に最高だったよね。

ローレン:あと、【ボナルー・フェスティバル】もすごく楽しかったです。もちろん日本に戻ってこられたことも、とてもエキサイティングで、夏のフェス・シーズンに日本に呼ばれるたびに、私たちって本当にラッキーだと感じますね。

@laurenevemayberry Snippets of @chvrches tour stops in #Tokyo and #Osaka, with a little visit to see #hideokojima#kojima #japan #chvrches #deathstranding ♬ Death Stranding - CHVRCHES

――一方で、再びツアー生活に慣れなければならないという部分もあったと思いますが、今回のツアーを経て、感覚は戻ってきましたか?

ローレン:そう思います。最初はとにかく違和感だらけでしたが。長らく人と接していなかったので、慣れ親しんでいるようだけど、不自然な感じ。でも現時点では、新しい様式のツアー生活に適応する方法を見つけ、それに順応できている気がします。

マーティン:2020年から2021年にかけて、人生を揺るがすような大きな試練があった。ただ生きるということがどんなに難しいことか、この経験は誰もが共有できるものだと思う。自分たちの周りが安定しない中、そして、これは僕自身のことだけどメンタルが安定しない中、再びツアー生活に戻るのはとても大変だった。誰もが苦悩していた時期だったよね。

イアン:本当にそう。

マーティン:自分の仕事をするために、ある種の正常さを取り戻そうとするのは、誰にとっても困難なことだったと思う。それに加えて、ツアーをしなければならなかったのはタフだった。今、その質問をされて初めて、普通に近いというか、昔に近い感じに戻れたと思えるようになったと正直に答えられる。

イアン:でも、しばらく時間がかかったよね。

マーティン:何年かね。

――なるほど。デビュー・アルバム『ザ・ボーンズ・オブ・ワット・ユー・ビリーヴ』の10周年を記念して、何か特別なことをする予定は?

ローレン:今ちょうど考えているところです。何度も話し合っているけれど、まだ計画が固まっていなくて。でも、作品のリリースから10年経ったということはクレイジーなので、絶対に何かやると思いますよ。当時のハードディスクの中身をみて、その頃の思い出や、ファンのために何か面白いものを掘り起こせないかと話をしてるんです。

――アルバム再現ライブはやらないのでしょうか?

マーティン:自分はやりたいと思ってるけど、タイミングかな。これまでもゆる~く話してきたことで、もしかしたらやるかもという状況だね。今年はまだ始まったばかりだし、それなりに発展していくから、もうすぐわかると思うよ。

――デビュー作を振り返ってみていかがですか?

マーティン:人生を変えた!

イアン:自分は、あまり聴くことがないんだけど……。

ローレン:家でまったりしてる時に聴かないの(笑)?

イアン:いや(笑)。でも何かのきっかけで聴くと、不思議とまだ新鮮に聞こえることがあって。手をかけた作品で、10年以上演奏してきたものが、未だに新鮮に聴こえるというのは興味深いよね。>

マーティン:自分も同じ。これはデビュー作に限らず、『スクリーン・ヴァイオレンス』やこれまで発表したすべての音楽に関して言えることだけど、たまたまどこかで流れているか、通りがかりに聴くことしかないんだ。けれど、いつもいい意味で驚かされる。


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――ちなみに、今まで自分たちの曲を聴いた一番意外な場所は?

マーティン:BBCで『Homes Under The Hammer(原題)』という家のオークション番組が放送されていて、どちらかというと年配の人が好んで見る番組。僕も好きでよく観てて、朝の時間帯に放送されているんだけど、チャーチズの音楽はなぜかこういった番組によく登場するんだ(笑)。

ローレン:『イーストエンダーズ』(BBCの長寿連ドラ)でも2回ぐらい使われたことがあるよね。あと、スポーツジムのプレイリストによく入っているみたい。さすがに私はチャーチズの曲を聴きながらワークアウトはしないけれど、どこかの誰かがやってるみたいで(笑)。

イアン:誰と一緒にいるかにかかわらず、そういうことがあったときに、チャーチズの曲だって気づくのが一番遅いのが僕なんだよね。たぶん、意外なシチュエーションで聴くことを想定していないからだと思うんだけど。

――書いてみたいけれど、まだ書けていない曲はありますか?

イアン:本当に良いバラードを書いたことはないかもしれない。クラシックなパワーバラードみたいなもの。

ローレン:バラードは何曲か作ってるけど、必ずビートが下敷きになっているから、確かにこれまであまりなかったのかも。長い間、ちゃんとしたデュエットを書いたことがなかったけれど、今回「How Not To Drown」で実現しました。あれは古典的なデュエット曲で……

マーティン:もう一生デュエットはやらなくていいね!

ローレン:実はデュエットは、何年もトライしていたんですけど、実現してこなかったんです。「How Not To Drown」がうまくいったので、“達成できた!”って、やっとチェックを入れることができます。

マーティン:僕は、ザ・ポスタル・サーヴィスの「Such Great Heights」を再構築するという、終わりのない旅を続けてる。おそらく一生かかっても成功しない気がするんだけど(笑)。

――(笑)。デビュー作から10年という節目の年を迎えているわけですが、キャリア初期の頃の自分に贈りたいアドバイスは?

イアン:とにかく楽しむこと。

マーティン:自分が感じているエネルギーを40%ほどセーブすれば、うまくいくということ。そうじゃない場合もあるけれど、そんなに心配しなくていいということかな。

ローレン::ここ最近、アルバムの10周年についてどう感じるのか、よく聞かれるんですけど、当時の写真や動画を見た時にそこに映っている人々が誰だかわからないんです。ある意味では、その時のことを完全に覚えていて、その場にいるような感覚もあるけれど、別の意味では、全然状況を把握できていなくて。自分についての映画を見ているようで、とても奇妙で不思議な感じなんです。

マーティン:今、この話をしていても、その時代から完全に切り離されているように感じるね。

ローレン::なので、すべてアーカイブされているのはいいことだと思います。これから数か月の間に、それを掘り下げていく作業は楽しいと思いますね。当時はとても恵まれていたと思うけれど、同時にすごく忙しくて、常に走り回っていました。「今に感謝しなさい」ってよく言いますが、感謝していないわけではないけれど、いつも次のことやどうやって活動を継続させるかについて心配をしていて。どのお母さんも、どのおばさんも、「今を大切に」と口うるさく言いますが、正しいですね。その瞬間をただ味わうこと。当時の写真や映像を見ると、私たちはまるでヘッドライトに照らされたウサギのよう。何が起こっているのか、まったくわかっていない。それもそれで、なんだか愛おしいですけどね。

マーティン:ほぼ理解できていないもののありがたみを感じることは難しい。自分たちは外部からの視点を持っていなかったから。今なら、「ああ、自分たちは普通では考えられないような道を進んできたんだ」と振り返り、それが特別なキャリア、長いキャリアになりつつあることを実感できるけれど、当時はその自覚がまったくなかった。でも、それはそれでいいと思うんだ。今振り返ってみると、他人事のような気がするのは確かだし、同時にこの場にいられることにも感謝している。

――最後に2023年の音楽シーンに関する大胆な予想をお願いします。

マーティン:最近よく言われるけれど、“Indie Sleaze”(2000年代後半~2010年代前半のヒップスター・カルチャーや当時のインディー・ロック)がリバイバルしてるらしい。

イアン:ギター・ミュージック?

マーティン:“Indie Sleaze”は、色々な顔を持っていた気がする。エレクトロやギター・ミュージック、ファッションでは革ジャン、そしてロンドンでパーティーするスキニーな人たちみたいな。

ローレン:もしかしたら“Indie Sleaze”が復活して、白人のストレートの男の子だけのシーンじゃなくなるかもしれないね。

マーティン:それはいいね。

イアン:今この瞬間まで、“Indie Sleaze”というフレーズを聞いたことなかったけれど、そういった音楽を聴いていたのは確かだね。

ローレン:あのシーンを生き抜いてきた女性たちも何人かいますが、もしまた復活するならば、もっと多くの人々の声を代表するようなものになるといいなと思います。

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