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<日本初インタビュー>香港シンガーのJason Chan(陳柏宇)は本人も認める心配性 緊張で迎えた<THE FIRST TAKE>を振り返る



Jason Chanインタビュー

 香港のシンガーソングライター、Jason Chan(陳柏宇)が、一発撮りのパフォーマンスを鮮明に切り取り、アーティストの緊張感をよりリアルに伝えるプログラム『THE FIRST TAKE』に登場。2009年に本国で多数受賞した「Lies Between Us 你瞞我瞞 / THE FIRST TAKE」を披露し、日本のリスナーにその名を広めた。

 2022年11月下旬に来日したJason Chanのインタビュー中で見えてきたのは、彼がかなりの緊張しいということ。しかも、それがコンサートなど、音楽活動のときだけで、インタビュー前に廊下ですれ違ったときは、声をかけてくれ、取材中もよく冗談も口にしていた。日本のメディアに登場するのは今回が初めてという香港の人気シンガーは、一発撮りシリーズの本番をどう迎えたのだろうか。(Interview & Text: Mariko Ikitake / Photo: Yuma Totsuka)

――<THE FIRST TAKE>の撮影はいかがでしたか?

Jason Chan:オファーがあった数か月前から本番日までの間はなんというか……ストレスに悩まされていました(笑)。僕のことをほぼ知らない日本の方々に向けてパフォーマンスをするので、完璧な状態で本番を迎えたいと思っていたんですけど、撮影の数週間前にタイに行くことが決まっていて、撮影のことを考えたら、旅行中も好きなだけ飲んだり食べたりすることもできなくて……落ち着かない日々でしたね(笑)。緊張しているときの心拍数を把握するために、数年前から毎日ではないですが、心拍数を測れる時計を身につけているんです。<THE FIRST TAKE>のコンセプトや説明を聞いている時点で、すでに心拍数があがってしまって。でも、その悩ましい日々のおかげで、撮影に向けて準備ができました。

 本番前にヘッドホンやマイクの調整をする時間があり、エンジニアが完璧なミックスを僕のヘッドホンに届けてくれたことが非常にありがたかったですし、撮影中はスタジオルームに僕だけということも役立って、非常にリラックスした状態で、しかも完璧な環境で歌うことができました。



――ちなみに通常時の心拍数は?

Jason Chan:70~78くらいで、緊張がマックスになる本番前は128くらいまであがります。高すぎですよね(笑)! IUと香港で共演したときも、心臓の鼓動がバクバク聞こえるくらい、ものすごく緊張したのを覚えています。韓国語で一緒に歌うことになっていて、3か月ほど練習したんですけど、「やっぱり無理!」と思って、(歌詞を出す)モニターを用意してもらいました(笑)。そのほうが安心しますし、実際、自信をもって歌えました。

――Travis Japanときゃりーぱみゅぱみゅが参加する【UNIK ASIA FESTIVAL 2022】に出演されますが、国外アーティストと交流する機会は今までたくさんありましたか?

Jason Chan:そんなに多くはなかったです。【UNIK ASIA】のパフォーマンスは45分間で、(香港の)フェスにしては長めのセットですし、各国のアーティストが集まる珍しいフェスでもあります。過去にジョン・レジェンドの香港公演の前座を一度務めたことがありまして、確かジェイ・チョウとも……ああ、会っただけか。


【UNIK ASIA FESTIVAL 2022】より

――(笑)。ここ最近は、88risingのようなアジアを中心に活発な動きを進めているグループがありますし、アジアのアーティストとの取り組みも今後機会が増えるかもしれませんね。

Jason Chan:機会があれば、ぜひやりたいです! 唯一の難点が言語の違いというだけで、違うジャンルのアーティストとのコラボはおもしろいですし、歌の共演は最高です。それに……同じステージで立てば、自分だけに注がれる注目が半減しますし(笑)。性格的に、ステージで気持ちが落ち着くまでに3~4曲必要で、短いセットだと、わりと緊張している自分しか見せられていないんですよ。長めのライブか自分のツアーでしか、本当の自分を出しきれていないんです。

――願望としては、ステージではパーソナルな素の自分をさらけ出したいのでしょうか? それとも雲の上の存在のような“アーティスト”でいたいのでしょうか?

Jason Chan:偽りのない自分を見せたいと思っています。常に誠実でいることをモットーにしていて、それこそが自分の一番の魅力だとも思ってます。ただ、パフォーマンス中の自分とトークの自分はキャラクターが違って、歌っている間は演技をしていることもあります。例えば、自分が体験してないことを歌う場合、それを伝えるための感情を演じる必要がありますし、それが難しいと感じるときもあります。嘘がつけない性格なので、演技が下手なんですよね。最近になって高揚感のある曲やポジティブなメッセージソングを歌うことが多くなったのですが、かつてはスローなバラードやラブソングが多かったので、その感情を伝えるスキルを学ぶ必要がありました。

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――ご友人がデモテープをレコード会社に送ったことがきっかけで、プロ歌手としての人生を歩み始めましたが、昔から歌手になりたかったのでしょうか?

Jason Chan:子供の頃から歌うのは好きでした。歌いたいから音楽を聞くタイプで、自分のボーカルキーの範囲内じゃない女性の曲はあまり聞かず、男性が歌う曲ばかり聞いていました。特別歌手になりたいわけではなかったのですが、歌手になることは運命だったんだと思います。歌手活動を始めてから、自分の気持ちを歌いたいと思うようになり、そこからギターを弾くようになりまして、これまでに10曲以上作りました。

 家族に歌手になることを相談したとき、「(芸能活動なんて)お前の性格に合わない」って言われましたし、こういう性格なので、利用されちゃうんじゃないかって心配されたんです。でも会話を重ねていくうちに、「本当にやりたいんだったら、思い切りやってこい!」と背中を押してもらいました。

――心配性なのは今も変わらないんですね。

Jason Chan:ステージ上ではそうですね。シンガーとして自信がないのかもしれないです。音楽仲間は「歌っているときはオーディエンスと目を合わせたほうがいい」って言うけれど、僕にはそれができなくて……映画のような存在でいたいんですよ。映画に登場する主人公は観客に言葉をかけないですよね? 観客と線を引くことで自分がまっさらな状態になり、人前に立つ繕った自分でない、本当の自分を見せられると信じているんです。

 普段は社交的なんですよ。アーティストとしての目標値が高すぎて、内に入ってしまうのかもしれないですね。でも、成長するために掲げたゴールに到達するまで、諦めずに頑張りたいと思う性格でもあるんです。

――いろいろ感じながらも、ここまで歌手活動を続けてこられた理由は何だと思いますか?

Jason Chan:歌うことを愛する気持ちと仕事仲間の存在でしょうね。人生はキャリアが全てじゃないと思うんです。それよりも重要なのは、一緒に仕事をする人との人間関係。自分が信用する、そして自分を信用してくれる人と一緒に仕事をすることが大事だと思ってます。今のところ、歌をやめる理由は2つしか思いつかないですね。ひとつは観客がいなくなること。自分の音楽は不必要だと社会から判断されたら、きっぱり諦めます。もうひとつは家族。もし今後、娘たちの成長のために今とは違う道に進んだほうがいい日が来たら、歌はすっぱりやめるかと。それまでは、ずっと歌い続けるつもりです。

――最新作『The Fight Goes On』と、今着ているジャケットの背中にも「I Fight For a Good Show.(よいショーを届けるために戦う)」と書かれているように、今のJasonは、fightという言葉に思い入れがあるようですね。

Jason Chan:ああ、これはコンサート(2021年【Fight For__ Live in Hong Kong Coliseum】)で着ていた衣装です。アルバム・ジャケットの“THE FIGHT GOES ON”は娘の手書きなんですよ。このアルバムの前に『Fight For』という作品をリリースしていて、そのコンサートで『The Fight Goes On』にも収録されている2曲を演奏したので、2作品をリンクさせようと考えました。前作では「Fight for yourself(自分のために戦う)」というテーマを掲げ、最新作では「Fight for the ones you love(愛する者のために戦う)」という意味を込めました。自分の戦いは、後ろに続く世代のための戦いでもあるので、その意味もあって、娘にタイトルを書いてもらったんです。


――初めてJasonの音楽を聴く日本人リスナーにとっては、Kの「Only Human」のカバー「固執/Stubborn」(2006)が一番聞き馴染みのある曲だと思います。当時の思い出を聞かせてください。

Jason Chan:スタジオで初めてレコーディングしたデビュー曲です。15~16年前のことなので、全ては覚えてないんですが、すごく緊張したことは覚えてます。オリジナルを聴いてレコーディングに臨みました。新人だったので、まだ自分の声を理解しておらず、自分の声色も見つけてなかったと思います。オリジナルを真似しようかと思ったのですが、Kのキーは僕よりも半分上でしたし、言葉も違うので、真似は諦めました。ドラマ『1リットルの涙』を観ていたので、歌詞でどういうことを伝えたいのかを理解する助けになりました。実は日本語バージョンを香港のタイムズスクエアで歌ったことがあるんですよ。


――もしリレコーディングするとしたら、あのときよりもうまく歌える自信はありますか?

Jason Chan:うまく歌うというよりも、違う曲に仕上げると思います。キーも下げて、アレンジも変えますね。あれからボイトレも受けて、今は胸から声を出せるようになりました。そのほうが頭から声を出すより安定するんですよね。昔と同じ歌い方では、今の自分にはマッチしないように思うんです。当時の歌い方も悪くはないですけど、今の自分の歌声、そして感情を込めるとしたら、違うバージョンがいいと思います。

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