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<インタビュー>magodai studioの初レコーディングに潜入、「また戻ってきたくなるような空間を作りたい」

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 バークリー音楽大学を卒業後、ジャニーズ・エンタテイメントにプロデューサーとして所属し数多くのヒット曲を生み出したソングライター / プロデューサーの伊藤涼。退社後は「マゴノダイマデ・プロダクション」を設立し、今のポップミュージックの基盤でもあるコーライティング(共作)システムを日本でいち早く取り入れてきた彼が、自身の活動の拠点となるプライベートスタジオを設立した。現在そこでレコーディングを行なっているのが、女性3人組のダンスボーカルグループnooote。彼女たちのデビュー曲「SPOTLIGHT」は、MAKIADACHIとCOMiNUMによる音楽プロジェクト0amが、伊藤とのコーライティングで生み出した楽曲であり、noooteのボーカルディレクションも彼女たちが行なっている。そこで今回Billboard Japanは、新スタジオ「magodai studio」を突撃。前半は伊藤と、マゴノダイマデ・プロダクションのスタッフでありCo-Writing Farmで活躍するクリエイターでもある永野小織によるインタビューを、後半はnoooteの3人と0amの2人によるインタビューをお届けする。 (Interview:黒田隆憲 l Photo:Masanori Naruse)

マゴノダイマデ・プロダクション 伊藤涼&永野小織インタビュー


伊藤涼

――「マゴノダイマデ・プロダクション」の設立者である伊藤さんが、このたびプライベートスタジオをオープンさせようと思った経緯からお聞かせいただけますか?

伊藤涼:もともと僕はジャニーズに音楽プロデューサーとして所属していて、そこを退社したあとに会社を立ち上げました。基本的には個人事務所であり、自分の仕事のために必要な業務をやるのが目的でした。

 ジャニーズ時代に付き合いのあったクリエイターさんで、ジャニーズ退社後も一緒に仕事をしたいという要望もあったので何人かショット契約という形でお付き合いもありました。何か縛りがあるわけでもなく、コーライトを通じてフラットな作家同士の付き合いに近かったです。今言ったように決して大所帯ではなかったのですが、それでも立ち上げから数年なんとかやってこられました。その後も規模を大きくすることなど特に考えず、比較的に好きなことを楽しくやってこられたのですが、少しずつ周りに人が増えていく中でそろそろ次のフェーズに移るタイミングなのかなと思うようになってきて。それで永野に入ってもらって営業面を手伝ってもらうようになってからは、新規の仕事を受けるたびに毎回スタジオを借りるなど、何をやるにも外出しになってしまうから、それならすべて自分たちでできるようになった方がいいかなと思うようになりました。


――その一環としてスタジオを設立したわけですね。永野さんはどんなふうに関わっているのですか?

永野小織:マゴノダイマデ・プロダクションのスタッフとして、正式には去年の初めから諸々の楽曲管理や、業務提携している作家チームとクライアントの間のマネジメント、レコ―ディング等の現場作業、それから、普段は長野在住の伊藤に代わり、営業活動などをメインで行っています。


伊藤:今まで僕は新規開拓のような営業活動をほとんどしてこなかったので、とても助かっています。各レコード会社から「楽曲募集」みたいなものはたくさん舞い込んでくるし、楽曲が採用になったり、制作依頼があればその都度ニーズに合った制作チームをオーガナイズして永野が中心になって制作してもらっています。


――そういう制作活動の拠点として、こういうスタジオを持つことにメリットを感じたと。

伊藤:そうです。これまではレコ―ディングスタジオを借りてクリエイターたちが集まってライティングセッションをしていたのですが、それなりに高くつきます。またレンタルスペースなどでもセッションを行っていたのですが、それだとあまりにも殺風景すぎて「音楽」を作る場所としてどうなんだろう?と思っていたんです。例えば海外でライティングセッションをやると、現地プロデュサーが所有しているスタジオの居住性が良かったりデザイン性が高いからテンションも上がるし、その空気感が作品にも少なからず影響を与えるんですよ。やっぱりカッコイイ音楽はカッコイイ環境で作りたい、みたいな。なので、スタジオ自体は最低限レコーディングができればそれで良いと思っていて。それよりも居心地が良くてテンションの上がる、長居もしたくなるし、また戻ってきたくなるような空間ということを最優先で考えました。今までもご一緒しているアーティストや制作ディレクター、A&Rが気軽に来れるスタジオ、また、これからお声掛けしてくれる人たちと一緒に音楽を作っていく場所にしたいです。


永野:今後も少しずつアップデートしていきたいと思っています。機材も今、発注をかけたばかりで。今までの経験から使い勝手の良いものを選んでいるので、クリエイターの皆さんが気に入ってくれたら良いなと思っています。


同世代の女性たちのコラボレーションで作っている空気感が必要


永野小織

――このたびマゴノダイマデ・プロダクションが手掛けることになったnoooteについてもお聞かせください。彼女たちのどんなところに魅力を感じたのでしょうか。




伊藤:彼女たちが所属する事務所のディレクターが知り合いで、オーディション映像を見せてもらった時にダンスのカッコよさに驚きました。しかも、こちらで制作したデモ音源(「SPOTLIGHT」)をお渡ししたところ、その2日後には「ちょっと自分たちでダンスを考えて踊ってみました」と言ってダンス動画を送ってくれたんですよ。たった2日でここまでクオリティの高いダンスを付けてくるのはすごいなと素直に思いましたし、ダンスだけでなく、歌も含めて「これは良い感じになりそうだな」と確信しました。

 現在、手掛けている楽曲「SPOTLIGHT」は、彼女たちのボーカルディレクションしている音楽プロジェクト0amと僕の3人で作った曲です。noooteのコンセプトや楽曲の方向性、それから女性同士という意味でもnoooteと0amは相性が良い気がしていて。単に楽曲提供をするだけでなくプロデューサーチームとして関わったほうが面白い作品ができるんじゃないかと、それで0amにも声をかけました。



――どのあたりを見て相性がいいと思ったのでしょう。

伊藤:男性受けするよりは、女性から見てもカッコイイと思えるようなアーティストに育ってほしいと思ったからです。K-POPを筆頭に「ガールクラッシュ」的なアーティストが増えてきていますが、日本ではまだまだ少ないし上手くいっていないのが実状。男性がそういうグループをプロデュースすると、どうしても男性目線になってしまうし、女性のリスナーに刺さっていない印象です。それよりも、同世代の女性たちのコラボレーションで作っている空気感こそが、これからの時代には必要で、彼女たちがカッコイイと思えるものだけが女性リスナーにも刺さるんだと思います。

――今後、こちらのスタジオではどのようなプロジェクトを進めていく予定ですか?

伊藤:今までもクリエイター仲間はたくさんいたのですが、先月、韓国で色んなアーティストに出逢う機会がありました。彼らが口をそろえて僕のチームと一緒に曲を書いてみたい、と言ってくれたので、「だったらぜひ一緒にやろう」と約束を交わしてきました。去年6月には【Canadian Music Week】にゲストスピーカーとして登壇したのですが、それがきっかけでカナダのプロデューサーやアーティストともやりとりをしています。

 そういうグローバルな動きがどんどん可能になってきていますし、このスタジオを最大限に利用しながら仲間を増やしていけたらいいなと思っています。コロナ禍で海外に渡るのが難しくなった結果、逆にオンラインで世界が近くなって。以前よりもアーティストやクリエイターの自由度が増し、繋がりやすくなりました。これまでのような大手レコード会社やマネジメントありきではなく、もっとフットワークの軽い人たちが増えているので、そういう仲間たちとの絆を大切にしていきたいと思っています。早速12月に、このmagodai studioでカナダ人アーティスト、韓国人アーティスト・クリエイター、そしてLAをベースに活躍しているプロデューサーのher0ismを招いて5日間のコーライティングセッションをすることにしました。スタジオ完成後、初のセッションになるので、どんな化学反応が起こるか楽しみです!


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写真提供:マゴノダイマデプロダクション

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nooote&0am インタビュー


nooote

――noooteのみなさんは、それぞれどのようなきっかけでダンスに目覚めたのですか?

MINAMI:子供の頃からスイミングスクールに通っていたのですが、習い事を変えたいなと思っていたときに同じマンションに住んでいたお友だちからダンススクールに誘われたのがきっかけです。確か小学校二年生だったと思うんですけど、まさかそれを職業にすることになるとは、思っていませんでした(笑)。


YUUKA:私はクラシックバレエを1年半くらいやっていました。高校生の頃はK-POPが好きで、カバーダンスとかを独学でやっていたんですけど、ダンスにハマったのは「本気でやってみよう」と思ってMINAMIと同じ専門学校に行ったのがきっかけです。


ASUKA:私は母と姉がダンスをやっていて、幼稚園の時からそのスタジオで寝ているのが習慣でした(笑)。音楽にはずっと触れていたのですが、幼稚園の年長になった頃に私も「やりたい」と言ったのが、ダンスに目覚めたきっかけでした。



MINAMI(nooote)

――今回、noooteのボーカルディレクションを手がけることになった0amのお2人ですが、彼女たちのどんなところに魅力を感じますか?

COMiNUM:実は今日、初めてお会いしたのですが、3人のキャラクターが全然違っていて、それぞれ素晴らしい声の持ち主で。まだ制作の途中ですが、「想像以上の楽曲になるな」と、確信しています。


MAKIADACHI:歌いながらレコーディングブースでも踊っていて。リズムもダンスを極めている方たちの取り方だなと思って感動して見ています。かっこ良すぎて惚れました。



ASUKA(nooote)

――noooteの皆さんが、憧れている人や目指している人はいますか?

MINAMI:ダンス&ボーカルといえば、これまでは「やっぱりK-POPが一番強いなと」と、思っていたのですが、今、BE:FIRSTにとても注目しています。自分たちも積極的に制作やプロデュースに関わりながら、日本人ならではの表現力を用いて世界に挑戦する姿に憧れます。私たちも「女性版BE:FIRST」のような存在になりたいですね。


YUUKA:私はツアーでご一緒させていただいているLiSAさんにずっと憧れ続けています。ステージ狭しと暴れまくるライブパフォーマンス……とにかく圧倒的な存在感で、私もLiSAさんのようにどこから撮られても魅力的な女性でありたいですし、歌だけでなく踊りも含めて魅力を感じるようなグループを目指したいと思っています。


ASUKA:私はK-POPアイドル……具体的にはTWICEさんが、とにかく好きです。みんな違ってみんないいというか、全員「ここがいい!」と思わせるポイントが違っていて。女の子としての「可愛らしさ」だけでなく、かっこいい一面もセクシーな一面も見せられる。それって最強じゃないですか(笑)。私もTWICEさんのように、様々な一面を見せられるアーティストになりたいです。



YUUKA(nooote)

――そんな彼女たちの新曲「SPOTLIGHT」はどのように制作しましたか?

COMiNUM:私たちは約1年前に0amを結成して、作詞、作曲、編曲、映像制作、アートワーク等、全てセルフプロデュースで手掛けています。ずっと楽曲提供もしていきたいという気持ちがあったので、昔から知り合いだった伊藤さんに相談したところ「じゃあ一緒に何か作ってみよう」と言われ、実際にコーライトをしていく中でこの曲が生まれました。


MAKIADACHI:まず伊藤さんが、「次のフェーズの曲」というお題を出してくださり、私がそれを受けてトラックを作り、2人でメロを乗せて歌詞を書くという流れで作りました。


COMiNUM:伊藤さんとはかなり早い段階で、「ちょっと新しい感じの尖った曲にしたい」という話をしていて。「音圧で聞かせる迫力のあるトラック」というよりは、少ない音数だからこそ一つひとつのフレーズが尖っているトラックにマキアダチが落とし込みました。メロディー、歌詞共に、聴いた時に「新しいね」と言ってもらえるような、「しかもかっこよくて踊れるね」と思ってもらえるような曲にしようと話し合い作りました。


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ジャンルは意識せず、心からかっこいいと思えるものを作りたい

――今、制作中の「SPOTLIGHT」を初めて聞いたとき、3人はどのように感じましたか?

MINAMI:曲を聴いたのが、オーディションの最終審査でメンバーが発表された日だったんです。この3人でやることが決まってその直後に聴かされて「これで自分たちはやっていくんだ」ってすごく思いましたし、ダンスを強みにしている3人なので、踊りやすくてキャッチーで、聴いてすぐ覚えられるシンガロングのフレーズにグッときました。


YUUKA:私は、すごく爽やかな曲だと思いました。しかも歌詞の内容は今の私たちにすごく刺さるし、同時に今の同年代の方にも共感してもらえるところがあると思うので、これからこの曲をひっさげて頑張っていくのが楽しみです。


ASUKA:私も決まってすぐに聞いた時は本当に嬉しくて……(感極まって涙ぐむ)すみません、思い出したらこみ上げてきちゃいました(笑)。聴いているだけで、ダンスをやっていない人も思わず体を動かしたくなるし、今はライブでお客さんが一緒になって振り付けしてくれている光景を想像しながらワクワクしているところです。



COMiNUM(0am)

――0amさんとの制作はどうですか?

MINAMI:実は、0amさんが作っている音源がめっちゃTikTokでバズっていたので一方的にお2人のことを知っていて。最初に音源をもらった時は本当にびっくりしました。さっきボーカル録音が終わったんですけど、私にとって初めてのレコーディングだったので、ものすごく緊張しちゃって。でも、0amのお2人が、歌いやすいようにディレクションしてくださって、本当にありがたいなと思いました。


YUUKA:私もボーカル録りは初めてで、皆さんにも緊張が伝染してしまうくらい緊張しました(笑)。0amさんは「一回声を出してみてー」とか「ここはもうちょっと、こう歌った方がいいよ?」って、すごく優しく言ってくださって。歌った後は「今のすごくよかったよ!」「その勢いでもう一回歌ってみようか」みたいに、励ましてくださったのが本当に心強かったです。あんなに緊張していたのに、最後の方には「楽しい!」「まだ終わりたくない!」と思っていました。


ASUKA:私はこれからレコーディングなんですけど、2人の話を聞いていて本当に楽しみです。緊張はしていますが、落ち着いて楽しみながらレコーディングできたらいいなと思っています。


――0amのお2人は、noooteのディレクションでどんなことに気を使い、どんなことを心がけていますか?

COMiNUM:伸び伸びと自分らしく、納得できる歌が歌えるのが一番なので、そうなってもらうための環境作りにはこだわりました。でも、レコーディング当日までにものすごく練習してくださっていたみたいで、そんなに細かい注文をこちらから特にすることもなく、各々が世界観を持って歌ってくださっていたのがとても印象深いですね。


MAKIADACHI:3人とも、自分の歌声を持っているので、とにかくご本人が納得できる歌が録れるように心がけました。


――先ほど伊藤さんが、「ガールクラッシュ」的な雰囲気をnoooteに求めていたとおっしゃっていましたが、そのあたりはディレクションの際に意識しましたか?

COMiNUM:確かに私たち女性から見ても可愛いしかっこいいし、本当にテンション上げながら録っていますけど(笑)、ガールクラッシュ的な雰囲気など特に意識していたわけではありません。


MAKIADACHI:ジャンルは意識せず、心からかっこいいと思えるものを作りたいと思っています。今日、実際に生で歌っている姿を見て「絶対かっこいい曲になるに違いない」と思えてすごく嬉しかったです。



MAKIADACHI(0am)

――では最後に、noooteとしての今後の目標をお聞かせください。

YUUKA:とにかく色んな方にnoooteを知っていただき、いろんな方に愛されるグループでありたいです。特に同世代の方に支持してもらうために、良い刺激や印象を与えられるようなパフォーマンスをお届けできるように頑張ります。


ASUKA:私は真っ白なノートですが、音符(ノート)のように歌い、踊り、たくさんの人にエールを届けられるようなアーティストになりたいと思っています。


MINAMI:ダンスをもともと武器にしてやってきた、個性もバラバラな3人が一つになりました。目で見ても楽しいし、耳で聴いても「いいな!」と思われるグループになりたいです。


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