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<インタビュー>『機動戦士ガンダム 水星の魔女』対談――YOASOBI(オープニングテーマ)×大河内一楼(シリーズ構成・脚本)が語る、主人公と一緒に成長していく楽曲「祝福」
Interview:Takuto Ueda
Photo:Yuma Totsuka
ガンダムシリーズのTVアニメーション作品としては約7年ぶりとなる新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。主人公はTVシリーズ初の女性キャラクターで、学園生活や企業間競争といった要素も含め、新しいガンダム作品像を打ち出している点が話題となっている。
視聴者層を広げ、よりたくさんの人にガンダムを楽しんでもらいたいという制作サイドの想いに応え、オープニングテーマ「祝福」を提供したのは、小説を音楽にするユニット、YOASOBI。本作の脚本家で、これまで『プラネテス』『コードギアス 反逆のルルーシュ』『SK∞ エスケーエイト』などを手掛けた大河内一楼を対談相手に迎え、楽曲にまつわる話を訊いた。
『水星の魔女』の挑戦と伝統
――まずは大河内さん。約7年ぶりとなる新作TVアニメーション『機動戦士ガンダム 水星の魔女』ですが、制作開始時にどんなテーマやコンセプトを掲げていましたか?
大河内:僕は脚本家という職業なので、基本的にはオーダーをいただいて書くわけですが、新しいガンダムのプロジェクトとして、若い世代をはじめ、新しい視聴者の方々に見ていただけるガンダムにしてくれとオーダーされました。ただ、脚本を書く僕自身は若いわけではないので、若い人にすり寄った作り方をしたら失敗するだろうと。そこで、ターゲット層を単に下げるのではなく、全体的に上下左右に広げることで、結果的に下の層も見る作品にできればと考えたんです。
――普遍的というか。
大河内:そうですね。そういう意味でも要素を増やしていて。従来のガンダムって、悲劇やバトル、戦争がメインの要素だったと思うんですけど、今回は学園や会社、恋愛も絡めています。

――より日常的になりましたよね。YOASOBIのお二人はガンダムというコンテンツにどんなイメージを持っていましたか?
Ayase:すごく歴史のあるコンテンツなので、いろんな側面から重厚感みたいなものを感じますよね。
ikura:私はあまりガンダムシリーズに触れたことがなくて。今回は私にとってもシリーズの入り口に立てた機会なので、このお話をいただけてすごく嬉しかったです。
――大河内さんがおっしゃった通り、今作は現在の若者世代も入りやすい世界観ですよね。実際に20代のお二人から見て、そういった要素はどう感じますか?
Ayase:僕もいろいろと資料を見させてもらって、間口の広さはすごく感じましたね。ただ、ちゃんと社会的なテーマも込められている。そこはシリーズを通してぶれない部分だと思うので、これは絶対に面白くなると思っていました。実際、めちゃくちゃ面白いですし。
大河内:“ガンダムじゃないもの”を作るつもりはなかったので、今までのガンダムシリーズが作り上げてきた良い部分に、今作ならではの要素を加える。ただ、そうなると情報量のコントロールが難しくて。そのあたりのバランス感には苦心しながら作っていますね。


――新しい視聴者層を開拓したいけど、かといって従来のファンを置いてけぼりにしてもいけない。
大河内:それに加えて、作品に対するリスペクトも大切だと思っています。ここまでガンダムが有名になったのは、その面白さをずっと繋いできた人がいるから。それを無視して、まったく新しいものを作るというのは違うだろうと。
――大河内さんの感じるガンダムシリーズの軸ってどんなものだと思いますか?
大河内:一つの言葉に言語化するのが難しいんですよ。つまり、今までにもガンダム作品って何種類もあって、その軸に沿っているガンダムもあれば、あえてそこから外れたガンダムもあって。けっこう物議も醸してる。
――なるほど(笑)。
大河内:ひとつ言えるのは、ある種のハードさだと思うんですよね。最初の『機動戦士ガンダム』って、YOASOBIのお二人はまだ生まれてない頃の作品ですけど、当時は戦争を経験した世代が身近に存在していて、そこかしこに戦争の残り香みたいなものがあったんです。今よりもうちょっと戦争が近かったというか。でも、今は戦争ってとても遠いですよね。じゃあ、今の人たちにとっての争いって何だろうと考えたときに、会社なのかなと思ったんです。派閥争いがあったり、重苦しい会議に呼ばれてパワハラを受けたり、そういう戦場なら、現代でもそう遠くないものとして描けるんじゃないかと。
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