Billboard JAPAN


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<インタビュー>bonobosが解散を目前に語る7年の軌跡と、ラストALリリースツアーについて

インタビューバナー

Interview&Text:森朋之
Photo:Takashi Noguchi (San Drago)
Illustration: Genya Takahashi

  2023年春に解散することを発表している bonobos が11月にビルボードライブ東京・大阪に登場。レゲエ、ダブ、エレクトロニカ、ネオソウル、R&Bなど多彩なジャンルを肉体的に取り入れた音楽性、そして、豊かな詩情と凛とした意志を共存させた歌によって、まさに唯一無二の存在感を示してきたbonobos。秋にリリース予定のラストアルバムを携えたビルボードライブ公演は、このバンドのキャリア・ハイを提示するものになるはずだ。

解散までの1年間

――“2023の春に解散”を発表したのが2022年4月。6月~7月にかけて、最後のワンマン・ツアー【bonobos TOUR 2022 迷わずにSAY!YES】を開催し、その後もフェスやイベントに精力的に参加しています。解散発表後のライブ、これまでとは違う感覚はありますか?

蔡忠浩:どうでしょうね? 特に地方のお客さんは「直接ライブを観られる機会は最後かもな」という感じで来てる方もいるので、しんみりモードになることもあって。それは予測できていたので、僕らとしては音楽をきっちりやりつつ、いつも以上にフザけてました(笑)。

――しんみりモードが押し寄せてくることはない?

蔡忠浩:僕はなかったですね。

小池龍平:蔡くんはホントになさそう(笑)。なっちゃん(森本夏子)や俺はときどきグッとくる瞬間がありましたけどね。

蔡忠浩:その空気を僕がMCでぶっ壊してたんですよ(笑)。

森本夏子:そうだった(笑)。

蔡忠浩:アンコールのMCで誰かが言葉に詰まったりすると、もっとフザけるようにしていたので(笑)。メンバーは楽器を演奏するだけだからいいけど、自分は歌わなきゃいけないし、気持ちを上げる必要があるじゃないですか。なので出来るだけフラットな状態でいたくて。

小池龍平:解散を発表して1~2か月くらいは(ライブ中に)グッときちゃうことがけっこうあったんですよ。でも、最近はライブがある生活が当たり前になって、目の前の公演に集中してます。ただ、自分が加入する遥か前の古い曲を演奏すると、歴史を感じるというか「いい曲だな。すごいバンドだな」と改めて思ったり。

森本夏子:私は蔡くんとは真逆のスタンスなんですよ。全国ツアーの前に解散を発表したいと言ったのも私だし、「今までありがとう」という感謝の気持ちをしっかり伝えるツアーにしたくて。蔡くんのMCにジャマされながら(笑)。

蔡忠浩:お礼の言葉まではジャマしてないでしょ(笑)。

森本夏子:1年かけて20数年間の思いを伝えたいと思っているし、“ちゃんと、しっかり終わる”というのがテーマだし、目標ですね。

――あらかじめ解散を発表することで、かけがえのない1年になるだろうし。

森本夏子:そうなんですよね。1年かけてしっかり終わるバンドって、あまり聞いたことがない気がします(笑)。

田中佑司:解散を発表してからの加速がすごいんですよ。1年あるし、「上手くパワーを加減しながら最後までがんばろう」という考え方もあるだろうけど、そうではなくて、全力、フルパワーで駆け抜けようと。そもそも演奏が難しい楽曲が多いし、気を緩めると痛い目に遭うというか、すぐお客さんに伝わってしまうので。あと、僕らのほうで(バンド解散に向けた)ドラマを作ってもしょうがないと思ってるんです。それはお客さんに託して、僕らはしっかりライブをやることが大事なのかなと。

梅本浩亘:僕はこれまでと変わらず、ライブ前は同じようにナーバスになり、「うわーっ!」ってなってます(笑)。僕の場合、感情的になっても何もいいことがないし、いつもの感じでやるしかないのかなと。

蔡忠浩:(笑)。でも、ライブは楽しいですよ。コロナになってからは会場を抑えてもキャンセルになることが続いたし、なかなか先が見えなかったので。今年はフェスにも呼んでもらえていて、いろんな気持ちを乗せてライブをやっているというか。ステージに立てなかったときのフラストレーションも発散できているし、フェスでバンドの友達に会えるのも楽しいです。

――ライブだけではなく、新作の制作も続いているんですよね?

蔡忠浩:はい。9月中には作業が終了する予定です。(※インタビュー当時)

森本夏子:本当はもっと前に出ているはずだったんですけどね。

蔡忠浩:1年半くらい遅れてますね(笑)。歌詞が書けなかったり、作業が滞ってしまって。

森本夏子:11月のビルボードライブ公演では、アルバムの新曲もやろうと思ってます。

田中佑司:レコ発ライブだね。やっぱり全力で突っ走らないと(笑)。

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bonobosにとってのビルボードライブ

――bonobosがビルボードライブに初めて出演したのは2017年。現在の5人体制になって、アルバム「23区」を発表した時期でした。

蔡忠浩:最初のビルボードライブのときは「ライブにおけるバンドの音をどう作るか?」を考えていて。ロックバンドみたいにドラムをバチバチ鳴らして、アンプでデカい音を鳴らすのか、それとも「Tiny Desk Concert(※アメリカの非営利公共ラジオ・NPRが運営しているコンテンツ。NPRのオフィスに設置した小さいステージで行われるライブを配信)」ではないけど、その場の温度感を伝えるようなライブを目指すのか。ビルボードでライブをやったことで、バンドとしてもミュージシャンとしても意識をさらに高められたし、周りの評価も上がって。すごくいい機会になりました。

小池龍平:その前から「bonobosは着席形式のライブが似合うはず」と思ってたんですよ。解像度が高い音を座って楽しめるライブをやりたかったし、ビルボードはまさにドンピシャだったのかなと。

森本夏子:ビルボードライブのステージに立てたのは、すごく大きかったです。いわゆるJ-ROCKのバンドは武道館やアリーナを目標にしている人が多いと思いますけど、私はそうじゃなくて、「ビルボードでやりたい」と思っていたんです。好きなミュージシャンのライブを何度も見に行ったし、いちばん好きな会場だったので。なのでお話をいただいたときは、「いいんですか?」という感じでした(笑)。当日はすごく緊張しちゃいましたね。その時点で15年くらいキャリアがったんだけど、人生でいちばん緊張してました。

田中佑司:震えてたよね。生まれたての小鹿のように(笑)。

梅本浩亘:特に東京の初日、1stステージはガチガチでした。……思い出すだけで緊張してきた(笑)。

蔡忠浩:1stステージが終わって、みんなで「緊張したね」って笑ったんですよ。そのおかげで2ndステージはいい感じでやれて。

森本夏子:うん。いつもライブに来てくれる人たちがおめかししてくれてたのも嬉しかったです。

――先ほども話が出てましたが、11月のビルボードライブ公演は新作の楽曲も聴けると。

蔡忠浩:はい。アルバムのリリースツアーですね。

森本夏子:アルバムの新曲はホーンがないと成立しない曲が多くて。ビルボードライブではサックスの小西遼くん、トランペットの三上貴大くんも入って、かなり音源に近い形で聴いてもらえると思います。

――解散発表後も新しいサウンドにトライする姿勢、素晴らしいですね。

蔡忠浩:もう1曲、録音したいと思ってる曲があるんですよ。

森本夏子:え、そうなんですか? 私も蔡くんに作ってほしい曲があるんだけど……それは後で話します(笑)。

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“bonobos”というバンドの存在

――bonobosの結成は2001年。レゲエ、ダブ、ジャズ、R&Bなど様々な要素を取り入れた音楽性は完全にオリジナルだし、シーンに属することなく、独自のポジションを得てきた印象があります。

蔡忠浩:どのシーンからもちょっとずつズレてるんですよ(笑)。

森本夏子:結成した当初は、横揺れ系のバンドがあまりいなかったので。

蔡忠浩:The Miceteethもそうですけど、スカバンドのイベントに呼んでもらったり。あとはジャック・ジョンソンやトミー・ゲレロが流行っていて。オーガニックな音だったり、ヒップホップの要素が入ったバンドともわりと親和性があったんじゃないかな。

森本夏子:サーフ系のフェスにも呼んでもらってました。最近は、若いミュージシャンから「聴いてました」と言ってもらうことが増えて。「GOLD」(アルバム『オリハルコン日和』収録)を好きで聴いてくれてた子たちが、今のシティポップのシーンで活動していたり。

蔡忠浩:最初の頃は右も左もわからないままやってたんだけど、今のメンバーになってからは、自分がやりたいことを具現化できるようになってきて。『23区』を作れたことも大きいですね。




bonobos / 23区【LIVE 2016】


――小池さん、田中さん、梅田さんは2016年に加入。bonobosの活動のなかで特に思い出に残っていることは?

小池龍平:僕はもともとロックシーンにいなかったので、bonobosに入って初めて「でかい音をライブハウスで鳴らす」ということを経験して。すごい快感だったし、全く違う世界を教えてもらったことに感謝してます。蔡くんは「最初は右も左もわからなかった」と言ってたけど、bonobosは最初から特別なサウンドを鳴らしていたバンドだったと思うんですよ。

蔡忠浩:(笑)。

森本夏子:うれしそう(笑)。

小池龍平:僕が初めてbonobosを知ったのは、「今夜はGroove me」なんです。夜中のテレビでたまたま流れてきたんですけど、カリプソのテイストをポップスに昇華していて「こんなすごいバンドが日本にいるのか」と思って。すごいムーブメントを起こすだろうなと思ったし、まさか自分がバンドに入るなんて想像もしてなかったです。

田中佑司:僕自身のことでは、鍵盤奏者としての田中佑司を世に広めてくれたのがbonobosなんですよ。それまではパーカッション、ドラムが中心だったんですけど、『23区』や『FOLK CITY FOLK.ep』の制作を通して、「『鍵盤奏者として力になってほしい』と言ってくれる人たちが目の前にいるんだから、全力でやろう」と思うようになって。

――制作自体も刺激だったのでは?

田中佑司:蔡さんから「こういう曲を作りたいんだけど」とデータ音源が送られてくるたびに「こんな音楽、聴いたことがない。これをフィジカルに落とし込んで表現するのか」という恐怖感と驚きがありました。それが成功したときの達成感も、今まで味わったことがなくて。あと、もともとドラマーだったから、ドラムテックもやらせてもらったんですよ。梅ちゃん、エンジニアの方と一緒に、みんなが満足できる音を作れたのもよかったなと。

蔡忠浩:いい仕事したよ。

――梅本さんはどうですか? bonobosの楽しい思い出と言えば……?

梅本浩亘:楽しい思い出か……。。

森本夏子:なかった?(笑)

梅本浩亘:いや、いっぱいあるよ。2017年の野音(日比谷野外音楽堂ワンマンライブ)かな……。でも、今がいちばん面白いかもしれないです。僕は蔡くんとなっちゃんに拾ってもらったと思っていて。(バンドの解散が決まったときは)1年間、どういうモチベーションでやればいいのかなと思ったけど、今めっちゃ楽しいですね。思い出じゃなくてすいません。

――いえいえ(笑)。森本さんは結成当初からのメンバーなので、思い出はたくさんありますよね。

森本夏子:そうですね。22年間bonobosをやってきましたけど、蔡くんが言うように、このメンバーが揃った最後の7年間はすごく充実していて。

蔡忠浩:もう7年になるのか。

森本夏子:うん。それまではいろいろ悩みながら、それでも「これがイケてるだろう」という音楽をやってきて。この5人になってからは、蔡くんがやりたいことを表現できるようになって、音楽的な悩みがなくなってきたんですよ。『23区』を作って、ビルボードライブ公演があって、『ニャンちゅう』(Eテレ『ニャンちゅうワールド放送局』)のレギュラーになったり。いろんなことが同時に起きたし、バンド自体もグッと上がれたので。

――蔡さんもこの7年は、ストレスなく活動できてました?

蔡忠浩:まあ、この7年もいろいろありましたけどね。

梅本浩亘:ハハハ(笑)。

蔡忠浩:ただ、このメンバーでステージに立つのは本当に楽しくて。しかも「こうしたい」という目標だったり、新たにやりたいことを実現できる状況ですからね。細々としたことはあったにせよ(笑)、クリエイティブに関してはいいことしかなくて。「これがやれるんだったら、あれもできるな」と上に積み重ねられたのも楽しかったです。

――いい状態でエンディングに向かっていけるのは素晴らしいですね。

森本夏子:そうですね。物理的に続けられなくなるよりは、ピークの状態でーーこのまま続ければ、もっといけるかもしれないけどーー惜しまれながら自分たちで辞めるというはいいのかなって思ってます。

bonobos「.jp」

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2022/11/02 RELEASE
RDCA-1073 ¥ 2,800(税込)

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Disc01
  1. 01.永久彗星短歌水
  2. 02.Not LOVE
  3. 03.YES (Album Mix)
  4. 04.電波塔
  5. 05.Ghostin’
  6. 06.おかえり矮星ちゃん
  7. 07.KEDAMONO
  8. 08.Super Adieu
  9. 09.アルペジオ
  10. 10.LEMONADE

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