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<コラム>SixTONES『Good Luck!/ふたり』弾ける応援歌と極上のラブソング、2曲のドラマ主題歌で表現する“個性の交差”
Text:田中久勝
泥臭いメッセージを乗せた応援歌
SixTONESの通算8枚目のシングル『Good Luck!/ふたり』が11月2日にリリースされた。SixTONESにとって初の両A面シングルであるとともに、2曲とも、メンバーが初主演を飾るドラマの主題歌という“記念すべき”作品でもある。「Good Luck!」はジェシーが主演を務めるドラマ『最初はパー』(テレビ朝日系)の主題歌、「ふたり」は京本大我主演のドラマ『束の間の一花』(日本テレビ系)の主題歌だ。
「Good luck!」はSixTONES史上最もポップで爽やかな応援ソング。これまでのシングルやアルバムの中で表現している、カッコよさやクールさとはひと味もふた味も違う、6人が全力で聴く人すべてを応援している“ど”ストレートな元気ソングだ。素直で人懐っこいメロディに乗せ、ひと言ひと言をしっかり届けようと歌う6人それぞれの歌がきちんと立っていて、個性の強さがユニゾンの強さになっている。そして、ホーンとストリングスがポジティブなメッセージに推進力を、太いベースとドラムのリズム隊が生み出すグルーヴが説得力を纏わせ、聴き手にしっかり届ける。6人の自然な笑顔が印象的なジャケット、MVでもこんなSixTONES見たことがないというくらい、6人の笑顔が弾けまくり、爽快さを感じさせてくれる仕上がりになっている。
ジェシー主演のドラマ『最初はパー』は、秋元康が企画・原作・脚本を担当する、何をやっても中途半端な政治家の息子・利根川豪太(ジェシー)が、市川猿之介演じる“裏社会で生きてきた男”とコンビを組んで、お笑い養成所に入り、プロの芸人を目指すという物語が描かれている。「叶えたい夢がある人へ、たとえ失敗しても、カッコ悪くてもいいから、ありのままの自分で笑ってがんばろう!」という、ドラマとリンクした普遍的である意味泥臭いメッセージを、SixTONES流の純粋なポップスに仕上げて、軽やかに届けてくれる。聴き手に元気を届けながら、6人が自分たちに向けて歌っているという捉え方もできる。
SixTONES - Good Luck! [YouTube ver.]
それは、この王道ポップスの中でも、尖ったクールさ感じさせてくれる田中樹のラップが炸裂する<まだまだそんなもんじゃねぇだろ?/辛い過去がなんだ、越えてきただろ?/ヘラヘラしてる裏の努力 everybody knows/ほら、Don't look back 今を生きろ>という部分に感じる。この曲の歌い出しのジェシーが、ドラマの中で演じる主役のことを歌っていると同時に、誰かに伝えたいという思いの中に、どんなタイプの曲でも田中のラップ・パートがSixTONESというグループが目指すべき道、高い志を感じさせてくれるライムスで、自分たちを鼓舞しているように感じる。今作もSixTONESというグループのアイデンティティがしっかり刻まれている。
温もりで包み込むラブ・バラード
一方、「ふたり」は切ないバラードで、6人の表現力が際立つ一曲。京本大我が主演を務めるドラマ『束の間の一花』の主題歌だ。ともに余命宣告を受けている哲学講師・萬木(京本)と生徒・一花(藤原さくら)、いつ終わりを迎えるか分からない日々を過ごす二人の、儚くも温かい“束の間”の恋の物語を描いていて、30分ドラマなのに1時間ドラマのような充実感と満足度を感じさせる。それは、二人の心情を丁寧に描き、単純なラブストーリーで終わるのではなく、「人生って? 幸せって?」という哲学的なところまで問いかけてくるから。SNS上では「深夜に放送するのはもったいないほどのクオリティ」というファンの声も多く見られたが、ゆっくりと自分と向き合える時間、深夜帯のドラマということで、心のより深いところまで入ってくる、という考え方もできるのではないだろうか。そして、その主題歌「ふたり」も、当て書きのようにドラマに、萬木と一花に寄り添っている。だから、この曲が流れてきた瞬間、心が動かされる。
この曲について京本は「このドラマの根底にある、健気な前向きさと、切ない程の明るさを忠実に表現したようなラブソングです。ドラマと楽曲、それぞれの作品同士が相乗効果をもたらし、皆様を優しい温もりで包み込むことが出来たら幸いです」と語っているように、6人の歌声が温かく包み込んでくれる。ジェシーのブレスとともに繰り出される優しい歌声の歌い出しから、切なさがあふれ出す。そして、京本の透き通った声がさらに切なさを深いものにし、6人の歌声が重なり合っていく。ハーモニーはもちろん、サビのユニゾンはやはり強く、引き込まれる。そして、サビのメロディをなぞる間奏のギターとピアノの音色に京本のフェイクが絡み、クライマックスへと向かう。前作「わたし」も極上の切なさを感じさせてくれたが、また違う切なさに胸が締めつけられる。
SixTONES - ふたり [YouTube ver.] / Futari [YouTube ver.]
歌を聴いているだけで、それぞれの表現力の豊かさを十分感じることができるが、それはMVを見るとさらに伝わってくる。ありふれた日常の幸せや思いが強いほど増していく切なさを、6人の表情と歌が鮮やかに映し出している。英詞を含まない歌詞と、その行間に流れる感情も、ドラマ同様丁寧に掬い、そして紡ぎ、表現している。大きく柔らかな空気感で包み込んでくれそうなジェシーの佇まい、京本が醸し出す美しさと儚さ、田中の大人の男を感じさせてくれるクールさ、森本が放つ優しい空気、高地の落ち着いた雰囲気、そして松村の触れると壊れそうな繊細さ、すべてが重なり、SixTONESが持つ“憂い“が薫り立ってくるようだ。そして、6人の仲の良さも伝わってくるMVだ。
今回のシングルも、やはり“6人の音色”というものを強く感じさせてくれる。その際立つ個性は“重なる”というより“交差”し、それぞれが放っている光の軌跡が色をハッキリさせたまま紡がれ、聴く人、観る人の心にいつまでも残る。いつまでも消えない、消えて欲しくない残り香のよう――そんなイメージだ。
Good Luck!/ふたり
2022/11/02 RELEASE
SECJ-54 ¥ 1,100(税込)
Disc01
- 01.Good Luck!
- 02.ふたり
- 03.Sing Along
- 04.わたし -Lo-Fi ChillHop Remix-
- 05.Good Luck! -Instrumental-
- 06.ふたり -Instrumental-
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