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<インタビュー>菅田将暉が友人たちと作り上げた“自由な表現” 最新EP『クワイエットジャーニー - EP』を語る

インタビューバナー

Interview:岡本貴之
Photo:Yuma Totsuka

 菅田将暉が、新作『クワイエットジャーニー - EP』を2022年11月9日にリリースする。

 10月28日のZEPP Osaka Baysideを皮切りに全国6か所12公演を行う、3年ぶりの有観客ライブ・ツアーのタイトルともリンクさせた今作は、ツアーを共にするバンド・メンバー“KNEEKIDS”と制作した4曲を収録している。これまでの菅田の作品集といえば、シングル・リリースされたヒット曲、タイアップ曲などに新曲を加えたものとなっていたが、今回は初めての試みとなる書き下ろし曲のみでの1枚となる。

 「まちがいさがし」「虹」といった曲をイメージする菅田のファンからすると、そのサウンド、メロディ、歌詞、歌い回しに至るまで、これまでの作品とはガラッと変わったテイストの楽曲たちに驚かされるはずだ。そこには、立ち止まることなくメジャー・フィールドで活躍を続けてきた菅田だからこそ感じる“静かな旅”への渇望があったようだ。自身が描いたイラストが使用されたジャケットも含めてトータル・コーディネートをしたという今作は、これまで以上に素顔の菅田に近い作品なのかもしれない。

 前作『COLLAGE』に続くロング・インタビューで、作品・ライブへの想い、現在の心境を存分に語ってもらった。

毎日が日々劇的なわけではない

――これまで菅田さんの作品は既発曲に新曲がプラスされたパッケージでリリースされていましたから、新曲4曲だけで1枚のEPにするというのは初めての試みですよね。ご自身でトータル・コーディネートした作品ということですが、どんな発想で生まれた1枚なのでしょうか?

菅田:今までもバンド・メンバーと曲を作っていたんですけど、(音楽活動を始めて)5年経って、そろそろバンド・メンバーと一つのコンセプトを持った1枚を作りたいと思ったのが、そもそもの発端ではあります。俳優業ってまさにそうなんですけど、いわゆるメジャー作品とインディーズ作品というか、多くの人に観てもらうことを前提に作ったものと、よりインディペンデントに表現としてやったものって、やっぱりどこか違うと思うんです。そういうものを音楽業でも作ろうと思って。ちゃんと多くの人に聴いてもらえたり、タイアップに起用していただくことももちろん大事なことだから、そういう作品はメイン・ストリートの菅田将暉の曲としてあって。それとはまた違うものというか、なんならこうやって取材を受けるほどのことでもないというか(笑)。本当に“静かな旅”(『クワイエットジャーニー』)のほうをセカンド・ラインとして作ろうという、自由な表現が今回の作品です。

――これまでになくインディーズ的なマインドで作ったということでしょうか?

菅田:そうなんです。聴いていただくと本当にインディーズ感あると思います。

――そのあたりのモードって、前作『COLLAGE』のインタビューの最後におっしゃっていた「これまでちょっと想いを込めすぎた」というところからきているんですか?

菅田:ああ、そうですね。まさにその続きという感じだと思います。

――より素の菅田将暉に近い?

菅田:そうだと思います。毎日が日々劇的なわけではないじゃないですか。でも、ライブをするとなると、今までのは1曲1曲が感情豊かで劇的だったので、自分も大変だし、聴いてるほうも大変なんじゃないかと思ったんです。。友だちとお茶してる時間とか、家で寝る前の時間、静かな時間のほうが人生は多いから。フラれたとか、誰かに不幸があったとか、そういうことばかり歌っていても逆にアン・リアルというか。

――声を張ってシャウトせずリラックスした歌い方や、メロディやサウンドも尖った感じよりはとても柔らかい聴き心地を感じました。そういう部分も菅田さんご自身がトータル・コーディネートしているそうですね。

菅田:やっぱり自分たちで作っていると、自分が歌いやすいキーにもなるので。人に作ってもらうと、みんなギリギリを攻めたがるから。

――菅田さんに挑戦させようとしてる感じはありますよね。

菅田:そうなんですよ(笑)。もちろんそれはそれでいいんですけど。ちょっとそのへんを意識して作った感じはありますね。




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――曲自体は、2022年3月20日に山中湖音楽村サウンドビレッジで行われたオンライン・ライブ【菅田将暉 LIVE STREAMING VOL.2】のときに合宿で滞在して生まれた曲たちなんですか?

菅田:そのあいだにベーシックなものを作った曲もありますけど、ほとんどは新しい曲です。

――ライブ・ツアー【菅田将暉 LIVE TOUR 2022 “クワイエットジャーニー”】にも紐づいたEPになっていますが、“クワイエットジャーニー”という言葉はEPとツアー、どっちが先に出てきたものなのでしょうか?

菅田:ツアーが先ですね。ちょうどその頃、映画の撮影をやっていて、ロケ地に「忙しいときほど、静かな時間を作りましょう」という『忙中閑あり / 佐藤一斎名言集』みたいな“閑”の字が目立ったポスターがあって、「本当にそうだよなあ」と思いながら見ていたんです。その晩に帰る途中でそれを思い出してこのタイトルをつけました(笑)。

――それこそ、これだけ忙しい菅田さんの毎日に“静かな旅”って可能なんだろうかと思うんですけど、自分自身が求めていた言葉でもある?

菅田:外に出る仕事なので、表に出るときはそういう振る舞いをするけど、僕の日々の中でその時間って24時間中で1~2時間ぐらいなものですから。基本的には地味で静かな作業ではあるんですよね。ああいう時間もあってこういう時間もあるという、両方あってこそ嘘がないなって思います。

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友人としてしっくりくる人たち

――ツアーの時間を共にするのが、レコーディングにも参加しているバンド“KNEEKIDS”(※)ですが、彼らは今の菅田さんにとってどんな存在ですか?

菅田:やっぱり面白いんですよね。音楽的にとか技術的にとかは僕にはわからないんですけど、本当に友人としてしっくりくる人たちというか。年を追うごとにだんだん新しい友だちってできなくなってくるじゃないですか。僕は20代前半までは毎日のように新しい出会いがあって、そこで仲良くなるというのがあったけど、20代後半ぐらいからそうそう増えなくなってきて。最近振り返って思うのが、結局10代後半から20代前半にかけて出会った人達と変わらずに仲良くしているなって。その彼らと表舞台でも仕事をすることが増えた感じなので、KNEEKIDSはその筆頭というか。

※メンバー:シミズコウヘイ(G/sooogood!)、川口圭太(G)、越智俊介(B/CRCK/LCKS、Shunské G & The Peas)、モチヅキヤスノリ(Key)、タイヘイ(Dr/Shunské G & The Peas)

――友だちが一緒に仕事をしている感覚?

菅田:そう言うと表現としてどうなんだという気もするけど……でもなんか、正直なところ落ち着くんでしょうね(笑)。

――その関係だからこそ出てくる言葉や音もありましたか?

菅田:あったと思います。

――では、それぞれの曲の成り立ちや制作エピソードなどを聞かせてください。1曲目はタイトル曲「クワイエットジャーニー」。アレンジはまっすぐな8ビートで序章という感じの曲ですね。

菅田:そうですね。これはずっとメンバーと言っていたんですけど、それこそライブをやるにあたってこういう曲がないと……ライブって“急”じゃないですか。

――“急”とおっしゃいますと?

菅田:映画だと、映画館に行って座ったときはまだ明るくて、予告映像が終わったらちょっと暗くなって、「映画を観るときはこういうことに気をつけよう」という案内が入って、さらに暗くなってスクリーンが広がって、映画会社のオープニング映像が流れて……って、徐々に映画に入っていくじゃないですか。でも、音楽のライブってわりと急だなと思うんです。(開演前の)BGMが流れて、それが止まったり変わったりして、アーティストが出てきた瞬間にライブが始まるから。CDもそうで、グラデーションで徐々に始まっていく曲、テーマ的にもそういう緩やかな変化みたいなものが欲しいよねということで作りました。

――この曲を含めて、すべて作詞作曲はKNEEKIDS名義になってますね。

菅田:曲ごとに誰が中心になってるかは違うので、そこは編曲のクレジットで変えているんですけど。実は3曲だけのEPにするつもりだったので、最初は「クワイエットジャーニー」はなかったんです。でも、バランス的にもう0.5ぐらい欲しいなと思ったので、なんとなく僕が鼻歌っぽく「こういうコードで」と伝えて、sooogood!ことシミちゃん(シミズコウヘイ)がギターで起こしてくれて、言葉を書いてすぐ作った感じなんです。

――4曲とも菅田さんが鼻歌で歌ったり、ギターで弾き語ったりしたものがベースになっているんですか?

菅田:そういうものがあったり、グループLINEのノートに言葉を書いておいて、それを元に「こんなのどう?」「それいけそうだから広げますか」みたいな感じだったり。はたまたベースの越智(俊介)の家に行って、みんなであれこれやっているなかで、ちょっと種が生まれたものをミックスしたり。本当にインディーズっぽい作業感でした。自主映画っぽいというか。





――2曲目の「ゆだねたギター」は、より立体的なバンドのアンサンブルが楽しめる躍動的な曲です。

菅田:今回の企画自体、成立するかわからなかったところもあったんですけど、「あ、できるな」というのが見えた瞬間がこの曲でした。特に“タイヘイというドラマーのリズム”が僕の中でテーマとしてあって。彼らのノリの部分を前面に出した曲をずっと作りたいなと思っていたんです。タイヘイたちもみんな音楽を作る人だから、僕的にはそれこそ“ゆだねた”感じなんですけど。そうしたら、かつてないほどメロも細かいものが上がってきて。「めちゃくちゃムズいじゃん!」とか言いながら、でも楽しかったですね。「僕はこういうものが作りたかったんだ」という気持ちになりました。

――想像力が膨らむ抽象的な歌詞も印象的です。どうやってできたんですか?

菅田:これは、僕がなんとなく書いてた歌詞があって、それをタイヘイがアレンジした感じです。ほとんどの言葉はもともとあったものだったんですけど、まさか曲になって出すとは思っていなかったです。歌詞は携帯のメモにバーッと書いていた乱文のひとつなんですけど、本当にただそれだけですね。そこにタイヘイが気持ちのいいリズムを入れた感じでした。

――タイトルにギターがついているのは、単純に菅田さんがギターが好きなんだろうなと思いましたけど。

菅田:でも、そこも迷ったんですよね。そんなに意味もないんですけど、たしかにギターって2回目ですね(シングル『ラストシーン』カップリング曲の「ギターウサギ」)。でも、タイトルについているからと言って、ギターの部分はそんなに意識はしていなかった(笑)。みんなで「タイトルどうしよう会議」をしていて、この曲は他にもいろんな候補があったんですけど、タイヘイに「『ゆだねたギター』っていうワードなんてこの世にないから、それでいいんじゃない?」と言われて「たしかに!」と思って。ただそれだけです。

――たしかにタイトルだけ見ると意味はわからないですね。歌詞を見るとますますどんな意味なんだろうと考えちゃうというか。

菅田:そうなんですよね。歌詞は、セックス・シンボルであるマリリン・モンローと、ギターの女性っぽいシルエットと、バンド内でのことを歌ってます。andymori の「ベースマン」という曲があって、フロントマンがベースマンに体を預ける曲なんですけど、そういうものができたらいいなって。意味がありそうで意外とない感じ。

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バンドの根源的な曲

――3曲目の「愛と右脳」は“菅田将暉 + sooogood!”名義になっていますが、これは二人だけで作っているということですか?

菅田:いや、そういうわけじゃないですけど、この曲だけシミちゃんが歌っているので(途中のラップ)、誰が歌っているのか説明しておかないとちょっと不親切かなと思って、この名義にしたんです。最初は歌詞カードだけに表記しようかと思ったんですけど、シミちゃんはシミちゃんでアーティストとしてやってるから、だったら混ざったほうがいいなということでこうなりました。歌ってなかったら変に誇張するのもよくないけど、歌ってますから。聴き手からしたら「誰なんだろう?」と思いますからね。その答えをちゃんと出しておいたほうがいいかなって。

――曲としてはLo-Fiヒップホップを狙った感じですか?

菅田:これは面白かったですね。変なものができた感じがありました。こういう曲があるとライブが楽しいんですよ。あと、僕の喉が楽っていう(笑)。歌も気持ちいいし、楽器も楽しいし。フェスとかも意識してこういう曲があればいいなと思いました。




――シミズさんはマルチ・プレーヤーだと思いますけど、菅田さんの音楽活動にどんな影響を与えていますか?

菅田:最初に出会ったのが彼らだったという、ただそれだけなんですけどね。シミちゃんが面白いのは、映画『何者』でバンドを組んでる役をしたんですけどそのときの周りの楽器隊が彼らで(シミズは当時“カラスは真っ白”のメンバー)。バンドに僕がいて、シミちゃんがいて、タイヘイがいて、越智がいてっていうシーンになる予定だったんですけど、当日現場に行ったら、アンプが足りなくて急きょ3ピースになったんです。

――アンプがないせいで?(笑)

菅田:アンプのせいで(笑)。でも、めっちゃ面白かったです。当日になって「ギター弾けないんだ」という絶望の瞬間が。「(シミちゃんは)今日、何のために来たんだ!?」っていう(笑)。それで結局、シミちゃんはステージに立てないことになって、僕がよりギターを弾かなきゃいけないことになったんです。シミちゃんは僕にギターを教えるっていうスタートだったんです。そのときにちょうど誕生日も近かったから、ギターをもらったり。そういう原風景があるから、否応なくそこから始まっているというところはありますね。

――菅田さんがメイン・パートを歌って、シミズさんがラップするというのは、二人の中での新しい挑戦という感じだったんですか?

菅田:僕はずっとこういうことをやりたかったんです。なぜなら、過去に二人で歌っている曲とかもあったから、それを自分のライブでやろうとすると、一人で全部歌わなきゃいけなかったり、もしくはその曲はできないということになっていたから。うちはシミちゃんだけじゃなくて、タイヘイも越智も歌えるんですけど、今年の山中湖の配信ライブのときにシミちゃんに歌ってもらって「サンキュー神様」をやったら、できたし楽しかったんです。シミちゃんが自分で作ったものだったら、よりできるんじゃないと思って、やっと実現した感じです。ライブでもこの曲は楽しみだし、アレンジが一番自由なので、ぜひお客さんは楽しみにしていてほしいです。超カッコイイと思います。

――最後の「八月のエイリアン」は、アッパーな8ビートのロックンロールですね。これはどんなイメージで作った曲ですか?

菅田:これは、リファレンスで海外のとあるバンドがいて。そのバンドはアメリカのバンドなんですけど、UKのインディー・ロックっぽい感じがあって。そこがいいなと思ったのと、ファッションも自分が好きなところってそこなんです。アメカジのアイテムを使ってたりするんだけど、ちょっとUKっぽいほうが好きで、そのノリというか。これは言葉やイメージを含めて、ほぼタイヘイと二人で作った感じです。一番やりやすかったというか、「さあなに作ろうか」と言ってすんなりできたのがこの曲でしたね。

――そのリファレンスにしたバンドって教えてもらっていいですか?

菅田:Wallows(ワロウズ)です。面白かったのが、Wallowsのメンバーってお芝居もやってるんです。「Netflixとか出てるんだ!?」って(フロントマンのディラン・ミネットがNetflixオリジナルドラマ『13 Reason's Why』に出演)。そこもちょっとときめいたんですよね。Netflixにもコーチェラにも出てる人なんてそういないじゃないですか。自由に表現をしているんだなぁって。

――なるほど。そういうテイストをKNEEKIDSで素直に音として出すとこういう曲になる?

菅田:「KNEEKIDS的なものってなんだろう?」みたいな曲を作った感じではあるのかなぁ。それとやっぱり、(川口)圭太くんですね。なんていうか根がパンク……でもないんだよなあ、サイケ感というか。そこが笑っちゃうポイントというか。そのサイケ感が曲に出た感じですね。ライブとかどうなるのかなって。“ダサい反抗感”みたいなものがこの曲には詰まっていて、バンドの根源的な曲というか。

――アマチュア・バンド的な感じ?

菅田:そう、アマチュア・バンド感みたいなものを楽しんでもらえたらなと思いますね。




菅田将暉 New EP『クワイエットジャーニー - EP』ダイジェスト トレーラー (2022年11月9日リリース)


――バンドのメンバーと音楽トークを繰り広げたりもします?

菅田:します。みんな僕よりも詳しいし、そこが単純に面白いんですよね。勉強にもなるし。それと、最近やっと洋楽を聴けるようになってきたんです。今までは言葉がわからないから「聴いた気になっていいのかな」みたいな変な気持ちがあって。もちろん、まったく聴いてなかったわけじゃないけど、好きと言えるほどでもなかったから。でも、最近はようやくどうでもよくなってきて。今まで聴いていたオアシスやビートルズとかも聴き方が変わってきましたね。最近、海外の人と仕事で会話することがちょっと増えてきたりして、耳が変わってきたというか、なんとなく単語がわかるようになってきたというのもあって。やっぱり日本って島国だから、他の文化をわかったような気がしてる自分が恥ずかしいみたいな、変なこだわりがずっとあったんです。お芝居をしていると、言葉を大事にしすぎるんでしょうね。最近、そういうのがやっと取れてきた感じはあります。

――今作のようなアマチュア・バンドみたいに気軽に音楽を楽しむスタンスと、今までのような強いポップ・ソングを歌う菅田将暉がお互いに影響しあってるようなことってあるんですか?

菅田:あると思います。やっぱりモノを作るからにはお客さんがいること、たくさんの人に聴いてもらう、観てもらうことってすごく大事だと思うんです。一人でただ作って誰にも見せずに終わりというものも、それはそれで別に意味がないとは言わないけど、生活もできないし、作品もかわいそうというか。特にメジャー・シーンにずっといるからこそ、人に観てもらえる良さってあると思うので。だから、今回のこういう作品を作るときでも、その視点は完全には捨てちゃダメだなとは思いますね。でも逆に言うと、メジャー・シーンを意識し過ぎたらし過ぎたらで自由がなくなっちゃうし、そこらへんの相互作用は絶対あると思います。お芝居ではそういうことをずっとやってきたので。

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武器が揃った感じ

――ところで、KNEEKIDSというバンド名は菅田さんが命名したんですか?

菅田:え~……なんでだっけ? 呼ぶときの名称があったほうが楽だなということで「膝小僧を英語にするとKNEEKIDSだよね」って。ただそれだけなんですよね(笑)。でも、バンド名ってだいたい最後Sで終わるじゃないですか。で、一番体の近くにあった普遍的なものが膝だったので。

――“体の近くにあった普遍的なものが膝”ってどういう意味ですか?

菅田:ぜんっぜん覚えてないです(笑)。さっき言った映画の中のバンド名が“OVER MUSIC”だったんです。それが僕、タイヘイ、シミちゃん、越智で、そこに圭太くんとかモッチー(モチヅキヤスノリ)とかが加わったので、何かつけなきゃということでこうなったんですよね。語感が良いだけですね、KNEEKIDS。




――ジャケットは菅田さんご自身が描いたイラストを使っているそうですが、どんなきっかけでこうなったのでしょう?

菅田:EPを作りながらみんなと喋ってイメージはしていて、今回のツアーグッズもそうなんですけど、Yoxxxさんというデザイナーと打ち合わせして「こういう絵を描いて欲しいんです」って小1時間説明していたんです。そうしたら「それはもう菅田くんが自分で描いたほうがいいんじゃないの?」と言われて(笑)。ちょうどバラエティ番組の賞品で油絵具セットをもらったところだったので、それで描いてみたんです。

――これはどんなテーマで描いた絵なんですか?

菅田:僕の中ではけっこう自分のイメージは再現できたなと思っているんですけど、惑星が歩いていて。

――惑星が歩いている?

菅田:怖い話じゃないですよ? 惑星が歩いていて、なんかわからないですけど、惑星に顔があるんです。これは実世界の話なんですけど……なんか不思議ちゃんみたいな会話になってきたな(笑)。

――ははははは(笑)。

菅田:僕のヘッドホンがあるとき片方壊れて、左側が聴こえなくなったんです。片方が壊れた状態で街中を歩いたことあります?

――ないです。壊れたら外すので。

菅田:外すじゃないですか。でも、僕は聴きたかったのでそのままに聞いてたんです。そうするとめっちゃ気持ち悪いんです。世の中の音がいっぱい入ってきて、聴きたい曲を邪魔される感じがすごく気持ち悪くて。その感じが、この絵の左からこうやって入ってきてるんです(赤と青のライン)。今、世の中にデジタルなものが増えて、ビルや人工物も増えて、街を歩いていると色んな音が流れているじゃないですか。誰かの曲、宣伝の車から流れている音やコンビニに入るときの音とか。そういうのって、地球自体がヘッドホンをして、そこで曲を聴いているような状態だなって、そのときに思ったんです。「地球自体の静かな時間ってなんだろう?」という思いが、なんとなく僕の精神世界ではイメージとしてあって。それで静かに猫を抱いているという。「だからといって何?」という感じですけど、説明するとそういうことです。映画とかお芝居もそうなんですけど、“自然物を創る”という作業で。それの逆で“人工物が自然に生えてくる”という、無理やり哲学的に言葉にするとそういうことになる気がします。

――このEPを携えてのツアー【菅田将暉 LIVE TOUR 2022 “クワイエットジャーニー”】が10月28日、大阪 Zepp Osaka Baysideからスタートします。久々の有観客ライブですが、今どんなことを考えていますか?

菅田:ライブにしかない楽しさってあると思うんです。それは自分が普通に観に行ってもそうだし。刺激的ですよね。大きい音、背中にバーンって張り手を食らうような生ドラムの感じ、お客さんの声。今回、声は出せないかもしれないけど。「小躍りしようよ」ぐらいの感じではあります。




『菅田将暉 LIVE TOUR 2022 “クワイエットジャーニー”』ツアーグッズメイキング①


――作品同様、それぐらいリラックスした状態で臨むツアーということですね。振り返ると、今までのライブは今のモードとは違いますか?

菅田:全然違いますね。やっぱり今までは“ちゃんとしなきゃ”という気持ちだったので。ちゃんと歌わないといけない曲もいっぱいあったし、ちゃんと聴かせなきゃいけない曲もあった。あとは、より自分の感情が乗っているものもいっぱいあったので、それに従ってやるしかないという感じでした。今回はもうちょっと自由かもしれないですね。シンプルな語感の気持ち良さ、リズムの気持ち良さ、そういう部分を今回はより楽しめたらいいなと思います、自分のためにも。これからリハーサルが始まるんですけど、本当に楽しみです。今までも楽しみでしたけど、よりナチュラルな気持ちで楽しみですね。

――セットリストを組むとなったら、この4曲以外に既存の楽曲が入るわけじゃないですか。それが溶け合ったときにトータルのライブがどうなるか気になります。

菅田:本当そうですよね。でも、今構成しているものはたぶん上手くいくと思います。

――菅田さんの中で『クワイエットジャーニー - EP』はどんな作品になりましたか?

菅田:やっと始まったものというか。“武器が揃った感じ”ですね。今までは剣は持っていたのに盾は持っていなかった。けど、今回は盾を手にしてやっと両方揃ったような気持ちではあります。今回のこのやり方でフルアルバムも作りたいし、そうなってくるとそういうライブもできるし、今まで通りの菅田将暉のライブもできるし。武器はいっぱいあったほうが楽しいし、選択もできるので。自分も飽きないし、そういうものがやっと生まれたなという、“延命治療”みたいな感じです。たぶん『クワイエットジャーニー - EP』のようなことをやってないと、僕は続いてない気がするんです。毎年毎年「まちがいさがし」や「虹」を期待されても、たぶん15年後に僕はやれてないから。5~6年に1曲だからいいものだって思うんです。だからもっと日常的なもの、自分が車の中で聴きたいものを作ろうと思った感じです。

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菅田将暉「クワイエットジャーニー - EP」

クワイエットジャーニー - EP

2022/11/09 RELEASE
ESCL-5727 ¥ 1,760(税込)

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Disc01
  1. 01.クワイエットジャーニー
  2. 02.ゆだねたギター
  3. 03.愛と右脳
  4. 04.八月のエイリアン

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