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<インタビュー>望月琉叶、ボカロPとのプロジェクトが始動 マルチに活躍する想いとは

インタビューバナー

 アイドルグループ「民族ハッピー組」として、演歌歌手として、さらにグラビアアイドルとして活躍する望月琉叶が、5人の有名ボカロPとタッグを組んで5か月連続で新曲を配信リリースするプロジェクトを発表。その第1弾として、シングル「MONSTER」が2022年10月15日に配信リリースされた。楽曲を提供したのは、バイラルヒットした「シカバネーゼ (feat.Ado)」で有名なボカロP 「jon-YAKITORY(ジョンヤキトリー)」だ。日本の文化である演歌、ボカロをもっともっと世界中の人に広めたいという目標を持って活動しているという望月に、現在の活動に至るまでの歩みから、「MONSTER」の歌詞に込めた想い、今回のプロジェクトへの意気込みを訊いた。(Interview & Text: 岡本貴之 / Photo: Yuma Totsuka)

「歌手になろうかな」と思った

――アイドル、演歌、グラビアアイドルの3刀流として活躍している望月さんですが、現在の活動に至るまでの経歴を教えてください。もともと、歌うことは好きだったんですか?

望月琉叶:小さい頃は、歌を歌うのが好きじゃなくて、小学校低学年ぐらいのときに家族でカラオケに行ったときも、私は全然歌わなくて「マイクを持つのも嫌だ」ぐらいの感じだったんです。そうしたら父親に、「歌わないとダメだよ。歌が上手い女性はモテるよ」って言われたんです。それでちょっと歌ってみようかなと思って(笑)。


――小学生ながらモテたかったんですね(笑)。

望月:その頃、『きらりん☆レボリューション』という漫画・アニメが流行っていて大好きだったので、その主題歌を練習して、カラオケで歌うようになったら、家族も喜んでくれて。「うわ~、歌うとこんなに人が喜んでくれるんだ!?」って、歌う楽しさを知るようになったんです。それと、もともと母が演歌歌手になりたかったという影響もあります。実家が自営業なので、有線で演歌が流れていて聴いたりしていて、興味を持つようになったんです。あるとき演歌の動画をYouTubeで検索していて、美川憲一さんの「柳ヶ瀬ブルース」を知ったんです。美川さんの艶やかな色気とか、上手な歌声、ミュージックビデオにもバーが出てきてお酒が出てきたりして、すごくお洒落だったので子どもながらに引き込まれて、歌も覚えました。それをカラオケで歌ったら、家族も親戚も「すごいじゃない!」って喜んでくれて。そこから「歌手になりたい!」って思い始めたんです。


――一方でボカロも聴くようになっていったんですか?

望月:ボカロに出会ったのは、中1ぐらいです。YouTubeとかニコニコ動画で流行っていて、学校でお昼の時間にも曲が流れたりしているのを聴いて、すごくいいなと思って歌えるように練習して。友だちとカラオケに行って歌ったら、「ボカロ歌えるのすごいね!」「輝いてる!」って誉められて。「えっ!?モテてる!?」と思って(笑)。



――ははははは(笑)。

望月:「絶対歌手になった方がいいよ!」って言われて、ますます「歌手になろうかな」と思ったんです。


――自分が歌うことで、みんなが喜んでくれるのが嬉しかったんですね。

望月:そうですね。高校生になってからはモデルとか女優とかアイドルとか色んなオーディションを受けるようになったんですけど、あんまり上手く行かなくて。それで大学生になってからは、アルバイトをしながらボーカルレッスンに通うようになって、同時にオーディションも受けていたんです。でもそれからズルズルと就職活動まで行っちゃったんですけど。


――夢を見ながらも、現実的に就活もしていたと。

望月:それで大手の企業に就職が決まったんですけど、ちょうどそのタイミングで街で今の事務所の社長にスカウトされたんです。今まではそういう話があってもピンと来なかったんですけど、「演歌女子ルピナス組(演歌女子ルピナス組は2019年8月に民族ハッピー組に改名)っていうグループをやってる」って言われて、「ああ、演歌かあ。やってみようかな」って思ったんです。


――ボカロと演歌両方とも、ずっと好きだったわけですか。

望月:ずっと好きでした。アイドルグループだけど演歌に携わってるのがいいなと思って、2018年にグループに加入したんです。それで、2019年に幕張メッセで行われた「ニコニコ超会議」の「超歌ってみたブース」で、メンバーの子と2人でアシスタントをさせていただいたんです。そこで「「超歌ってみたブース」だから歌ってもいいよ」って言われて「天城越え」を歌わせていただいたら、コメントでも会場でも「すご~い!」ってみんなが喜んでくれて。そのときに「ああ、やっぱり演歌歌手になりたいな」と思って、2020年に日本コロムビアさんからめでたくソロでデビューすることができたんです。長くなってすいません(笑)。


――いえいえ、ここまでの歩みがよくわかりました。歌手を志してからあきらめずにやってきたことで、レコード大賞の新人賞を獲得するまでになったわけですね。演歌のレパートリーを増やしながら、ボカロも歌っていたんですよね。

望月:中学生の頃から、学校で嫌なことがあったとしても、放課後にカラオケのフリータイムに行って、ボカロを歌ってスッキリしていたので、ボカロには大変お世話になってきました(笑)。レコード大賞新人賞も獲れたことですし、ちょっとわがままを言わせてもらって、今回「ボカロを歌いたい!」ってお願いして、運よく実現しました。


――YouTubeチャンネル、ニコニコ動画で「千本桜」や「ワールドイズマイン」といった曲を演歌風に歌っていますよね。演歌とボカロはなかなかむすびつかないと思いがちですが、望月さんの中ではそんなに分けて考えていない?

望月:一緒かなって思います。ボカロにもヴィブラートがあったり色んな歌い方があるし、演歌とそんなに変わらない気がします。私にとっては、ボカロがあったからこそ演歌があるし、演歌があったからボカロがあるし。2つの結びつきはすごく強いですね。





「千本桜」【演歌風に歌ってみた】


――ボカロの魅力ってどんなところに感じていますか?

望月:最初に聴いたとき、すごく新しい音楽だと思いました。人間に出来ないことを軽々としてしまうので、「なんだ!?」って思いながらいつも聴いていました。すごく速い曲も歌えるし、すごく高い音も低い音も出るし、そこが魅力だと思います。


――それを歌うっていうのは結構なチャレンジじゃないですか?

望月:そうですね。好きになっちゃったら、それになりたいと思っちゃうので。例えば、ミクちゃん(初音ミク)だったら「ミクちゃんになりたい!」と思って声真似をしたりすると友だちとカラオケに行ったときにすごく喜んでくれるので。むずかしくてもみんなが「いいね」って言ってくれるから頑張ろうって思います。


――人間技じゃないところに挑むところが面白い?

望月:そうですね、はい。


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jon-YAKITORYが望月琉叶の気持ちを汲み取った「MONSTER」

――今回、5人のボカロPが提供する楽曲を5か月連続で配信リリースするとのことですが、これはどんなコンセプトの企画か教えてもらえますか。

望月琉叶:昔からやってみたいことだったのと、素の自分を見せたいと思ったんです。


――演歌とはそこが違うということですか。

望月琉叶:ちょっと違いますね。割と歌詞が素の自分に近いというか。第一弾楽曲の「MONSTER」は、スイッチオンの自分とオフの自分の葛藤みたいなものを表してくださいっていう要望を出して書いてもらったんです。私自身はもともと、静かに絵を描いたり、窓辺で本を読んだり物を作ったり、「なるべく布団から出たくない、家から出たくない」みたいな感じなんです(笑)。そんな自分と、「琉叶ちゃんが歌ってるの好きだよ」「もっと色んな所に出て欲しい」って言われて「じゃあ出るぜ!」みたいな感じの自分との差がすごくて(笑)。だから、「キャ~!」って愛想を振りまいている自分を家に帰ってテレビで観たときに、「これは誰?」って思うんです。


――そんなに客観的に自分を見るんですね。

望月琉叶:なんか見ちゃうんですよね。だから、歌詞にある<バケモノになる様に 仮面をサッと手に取って 舞台袖で自分を喰い殺して スポットライトの中で 狂ったようにお道化てる>っていうところなんかは、まさにそうなんです。



――今回楽曲を提供しているボカロP、jon-YAKITORYさんが望月さんの気持ちを汲み取って書いてくれたんですか?

望月琉叶:そうなんですよ。本当に全部汲み取ってくれて。その通りだなって思いました。歌は、聴いている人が飽きずに楽しんでもらえるように、歌詞に合わせて歌い方を変えたりしています。例えば、<笑っちゃうぜ>というところで本当に笑って歌っていたり。演歌の歌い方とは、もしかしたらちょっと違うかもしれないです。


――jon-YAKITORYさんは、望月さんにとってどんなアーティストですか。

望月琉叶:お会いしたことはないんですけど、例えば「蝸旋 feat. Ado」でも、<お前らのせいだ>とか、ストレートに感情が響いてくるような歌が多くて、スッキリしていいなと思っています。


――サブスクで演歌の曲も聴かせてもらいましたけど、結構印象がガラッと変わりました。

望月琉叶:サブスクで演歌の曲もあるし、こういうボカロの曲も入るので、演歌を好きな人もボカロを聴いてみようって思ってもらえたらいいなと思うし、ボカロが好きな人も演歌を聴いてみようかなって思ってくれたら嬉しいです。





「MONSTER」ミュージックビデオ


――歌うときって、空想の物語的な歌詞よりも自分の感情と重なっている方が歌いやすいですか?

望月琉叶:空想は空想で想像しながら歌えるんですけど、「MONSTER」みたいな曲はわりと歌いやすいですね。感情も込められますし。


――どちらかというと、自分の内面を出せる音楽はボカロの方?

望月琉叶:そうですね。演歌の歌詞って失恋とかドロドロした感じのものが多いんですけど、私自身が失恋したことがなくて、演歌をどう歌おうかなと思ったんです。でも、「君だけ応援するよ」ってずっと言ってた人が急にいなくなったりして「応援してくれるって言ってたのに」みたいな気持ちになるので、それを失恋に置き換えて歌ってる感じです(笑)。それで言うと、「MONSTER」は完全に素の自分に近いです。


――今後、5か月連続で配信リリースにはどんな思いを込めて臨みますか?

望月琉叶:ボカロも演歌も、日本の文化だと思うので両方世界に広めて行きたいと思うんです。アイドルグループの方では、8か国36公演しているので、ソロでもそういう活動ができたらいいなと思ってます。やっぱり、ボカロって海外でも人気じゃないですか?1人でも多くの人に、望月琉叶、ボカロ、演歌を知ってもらえるきっかけになればいいなと思います。


――小さい頃に歌手になろうと思ってから、オーディションを受けたりして頑張って歌手になって活躍しているわけですけど、歌うことでリスナーのみなさんに伝えたいことってありますか?どんな人にどんな気持ちで聴いて欲しいでしょうか。

望月琉叶:例えば「MONSTER」だったら、私のスイッチオン・オフという葛藤を歌っていますけど、みなさん気張っている部分があると思うし、家に帰って「はあ~」って落ち着くときってあるじゃないですか?誰しもそういうオン・オフってあると思うし、悩みもあると思うので、いろんな思いを抱えている人たちにスカッとしてもらえたら嬉しいです。もちろん、悩みがない人にとっても素敵な曲なので、楽しんで聴いて歌ってもらえたら嬉しいです。


――先ほど、家で静かに絵を描いたり本を読んでいるのが好きな望月さんが、ステージに立って大勢の前で歌を歌えるはどうしてなんですか?それこそスイッチのオンオフが自分の中にあるから?

望月琉叶:もともとは、布団の中で目を瞑ってボーっとするのが好きなんですけど、そんな感じの自分でも、「ステージで歌ってる姿が好きだよ」とか言われると、「じゃあ頑張ろう」と思えるんです。まわりの影響が大きいです。私はコロナ禍で演歌歌手としてデビューしていて、キャンペーンとか人前で歌うことがずっとできない状況だったんですよ。なのでツイキャスを通して皇居の周りを5、6周歩いてCDを広める活動をしたり、「音のヨーロー堂」さんというレコード店で、メンバーにも協力してもらって泊りがけで「望月琉叶です!CDあります!」って配信をひたすらしたり、富士山に登ったりいろんなことをしたんです(笑)。そしてやっとみなさんの前で歌うことができて、10月15日には、さいたまスーパーアリーナで開催されたニコニコ最大のライブイベント【超パーティー2022】に出演しました。サブMCと「裏表ラバーズ」を生歌も披露させて頂いたのですが、すごく楽しんでパフォーマンスすることができました。


――ライブをやりたい会場とかってありますか?

望月琉叶:ファンの人は「5大ドームツアーをしてほしい」とか言ってくれるんですけど、ソロではないですけど、さいたまスーパーアリーナのような大きなステージに立てることは喜んでくれていると思います。そういう大きいところでやりたいのはもちろんですけど、日本全国いろんなところで歌いたいですね。9月にやっと北海道に行けて、カラオケスナック・喫茶とかバーを回らせていただいて、みなさん私のことを知ってくださっていてほぼ満員ですごく楽しかったので、そういうところでもいっぱいやりたいです。


――では改めて、「MONSTER」から始まる5か月連続で配信リリースへの意気込みを訊かせてください。

望月琉叶:演歌歌手の望月琉叶がボカロ曲に挑戦ということで、今までにない風を吹き込むことができるんじゃないかと思っているので、楽しみにしていてください!



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