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<インタビュー>GARNiDELiAが考える「古き良きアニソン」とは?
GARNiDELiAが最新デジタルシングル「幻愛遊戯(げんあいゆうぎ)」を9月30日にリリースした。この曲は、同日からスタートしたテレビアニメ『うちの師匠はしっぽがない』のオープニング主題歌として制作された、歌謡曲や古き良き時代のアニソンを下地にした1曲。和テイストを散りばめながら楽曲制作を続けてきた彼らにとって、新たな挑戦とも言える仕上がりだ。さらに、10月19日には「極楽浄土」をはじめとする「踊っちゃってみた」シリーズの最新曲「謳歌爛漫(おうからんまん)」もリリース。こちらはコレオグラファーとしても活躍するみうめがステージから引退することもあり、はなむけの1曲だ。
昨年11月発売のアルバム『Duality Code』以降も、新たな挑戦を続けているGARNiDELiA。このインタビューではそういった活動を通じて得られる手応えや、新曲の制作過程についてじっくり話を聞いた。(Interview & Text:西廣智一 / Photo:トモノユウ)
時代が交差するところも含めて、楽しみつつやっている
――GARNiDELiAは先頃『GARNiDELiA 3.0プロジェクト』と題して、数々のステージ衣装をモチーフとしたNFTアートのプロジェクトを始動させました。皆さんは今日まで常に新しいことに挑戦している印象がありますが、このタイミングに衣装をモチーフにしたNFTというコンテンツを発表してみていかがですか?
MARiA:GARNiDELiAには海外のファンもたくさんいるので、世界的に新しいチャレンジのお話をいただく機会も多くて、自分たちも実験的に挑戦しつつやっていっている感じです。なので、できることは全部やりたくて。ワールドワイドにやっていけたらいいなという気持ちと、待ってくれているお客さんが海外にもいるから、その動き方には合っているのかなと思います。
toku:今はまだコロナがあとを引いている感じですが、世界中のファンの方からも「ライブをしてほしい」という声がたくさん届いている中で今何ができるのかを選んでいくと、ネット関係で何かを発表していくことが一番伝わりやすいのかなと。そういう意味では、この動きもフィットした感じになっていると思います。
MARiA:私たちも参加させてもらっている身ながら、ここからどうやって広がっていくのかと楽しみにしているプロジェクトでもあって。今回のNFTプロジェクトも立ち上がってからどんどんフォロワー数も増えていて、この先「ああ、こんな広がり方したんだ」みたいな予期せぬ展開も待っているんじゃないかな。いろんなやり方がありそうなので、探りつつですけどファンのみんなと楽しめるプロジェクトにしていけたらいいなと思っています。
――やっぱり海外とつながっていけることは大きいですよね。
MARiA:そこが一番かな。NFTって今、日本よりも海外で浸透しているイメージがあるので、まずは海外のお客さんから盛り上げてもらって……。
toku:逆輸入でね。
MARiA:そうなっていけたら、面白そうですよね。
――また、3月にはJ-POPカバー企画『GARNiDELiA Cover Collection』も再始動しました。
MARiA:これはもともと、コロナ禍をきっかけにYouTubeでスタートしたプロジェクトで。
toku:始まってからもう2年くらい経っているんじゃないかな。
MARiA:もはや自分たちの趣味みたいなところもあるから、お遊び的に楽しみながらやっています。
toku:皆さんに認知されている曲ばかりだから、GARNiDELiA流にアレンジして、MARiAが歌うことで生まれる変化を楽しめる企画かなと。昔、ニコニコ動画にアップしていた頃の、公開してすぐ反響がある感じみたいにリアクションが如実にわかるシリーズだなと思います。
MARiA:まさに「歌ってみた」だよね。自分たちはその文化にいた人間だから、ボカロ曲がJ-POPに変わったようなニュアンスかな。しかも、今はJ-POPとボカロ文化の境目もなくなりつつあって、ボカロPが書いた曲がJ-POPになっているし、今のメジャーシーンを牽引している。今流行っていて人気の曲をカバーするとなると、結局「歌ってみた」になってしまうという、すごく不思議な現象が起きているなと(笑)。そういうごちゃ混ぜの文化が、面白い音楽シーンを作っているんじゃないかな。その中で、昭和の名曲とか歌謡曲を私たちがカバーすることに意味があるのかなと、ちょっと思っていて。私たちが歌うことで、その曲を初めて知る若い子たちもいるし、私も歌謡曲が大好きなので歌っていても楽しいし。その時代が交差するところも含めて、楽しみつつやっているプロジェクトです。
リリース情報
シングル『幻愛遊戯』
- 2022/09/30 DIGITAL RELEASE
音楽配信総合リンク:
https://lnk.to/GARNiDELiA_streaming
GARNiDELiA 関連リンク
古き良きアニソン感が詰まった「幻愛遊戯」
――ここからは新曲「幻愛遊戯」についてお話を伺います。歌謡曲的な要素もありつつ、かつ王道のアニソン感もあり、と同時にJ-POP的要素もしっかり備わっている。いろんなエッセンスが凝縮された、いかにもGARNiDELiAらしい1曲だと思いました。この曲はテレビアニメ『うちの師匠はしっぽがない』のオープニング主題歌として制作されたものですが、まず最初にどういう話からスタートしたんですか?
toku:アニメの製作委員会から、今回は「和メロでダンスチューンで、ブラスも加えて派手にしてほしい」というオーダーがあって。
MARiA:かつ、物語自体が大正時代のお話と、昨年のテレビアニメ『大正オトメ御伽話』における「オトメの心得」から引き続き大正づいていまして(笑)。しかも、管楽器を含むビッグバンド感が欲しいというオーダーも「オトメの心得」と同じだったので、「オトメの心得」とどう差別化するかも自分たちの中では課題でした。前作を超えるんじゃなくて違うものに仕上げるという、自分たちが試されている感もあるじゃないですか。どうしようかと2人で話し合って、同じ華やかさでも「幻愛遊戯」に関してはギラツキ感が欲しいなという結論になりました。
――ギラツキ感、ですか。
MARiA:ちょっと夜の匂いというか。「オトメの心得」はパーっと華やかに乙女の心を歌うみたいな、そういうピュアな気持ちを表現したんですが、今回の『うちの師匠はしっぽがない』は芸事を極めていくお話で、絵柄はポップなんですけど芸の世界について語るところは結構エグめで、エッジの効いていることを言っていたりもしていて。「芸をやる人間は正気の沙汰じゃない」ってところからスタートしているんですけど、そもそも自分たちもそうだよなと(笑)。ずっと芸事をやっている人間としてはすごくリンクする部分もあったので、最終的にはそこで自分たち的に差別化が図れたんです。そこから芸の世界の魅力にみんなを巻き込んでいくテーマで作り初めたんですが、『うちの師匠はしっぽがない』の“しっぽ”は絶対に歌詞に使いたいなと(笑)。これを入れられるかが勝負だ、入れられたら私は勝てると思って悩んでいたら、「……『しっぽは掴ませない』だ!」と閃いて、そこから芸事の世界としっぽを掴ませないというところと、パパラッチに追われるアーティストみたいなイメージも合わせつつ、歌詞を展開させていきました。
――なるほど(笑)。
MARiA:芸の世界って表現して演じて、みたいなところも魅力のひとつで、ステージ上のその人の顔はもしかしたら別の顔かもしれないけど、お客さんにとってはステージで見えているものが大正解だから、それが届けばいいという世界でもあるなと思っていて。だから、「しっぽは掴ませない」につながるんですけど、自分はわりと裏表なくステージに立っているつもりではいますが、そんな私にもMARiAとしての顔があるわけで、本当の意味での私はまだみんなには見えていないかもよ、と。しかも、落語の話なので言葉遊びも楽しいし、かつキャラクターがタヌキとキツネをテーマにしているのもあって「化かしていくこと=演じること」みたいな、そういうところにリンクさせたことでこういう歌詞になったんです。サウンドもかなりキャッチーだったしね。
toku:そうだね。まず最初に、落語のお話だから言葉を詰め込むようなスタイルがいいかなと、普段の曲よりもサビの音符数が多い形で作ろうかなと思って。その間にブラスがパッと入ってくると華やかになるかなと。そこが一番意識したところですね。
――歌詞の世界観と相まって、どこかスリリングといいますか。メロディラインの歌謡曲的な懐かしさも含めて、古き良き時代のアニソンとリンクするんですよね。
MARiA:確かに。ちょっとセクシーで、『キューティーハニー』的な感覚もありましたし。
toku:その当時は、基本的にジャズハーモニー的な進行が多かったと思うんですよ。
MARiA:『キューティーハニー』とか『ルパン三世』とかね。
toku:そのエッセンス的なものがコード進行とかに、今回は自然と出てきた感じなんですけど、言われてみるとそことのリンクは感じますね。
――それでいて、しっかりGARNiDELiA感も維持されていて。そのバランスも絶妙なんですよね。
MARiA:自分たちも何でGARNiDELiA感を出しているのか、わからなくなってきているんですけどね(笑)。
toku:(笑)。
MARiA:「もう全部私たちがやればGARNiDELiAかー」という(笑)。これはアルバムのインタビューのとき(<インタビュー>GARNiDELiA “今、直接届けたい歌”を詰め込んだアルバム『Duality code』)にもお話したかもしれませんが、あまりにいろんなジャンルの曲を、幅広くやってきているから、もはや二人で生み出したものはすべて「これ、GARNiDELiAだよね!」って感じになってしまうのかな。
toku:アニソン自体がいろんなジャンルのミクスチャーだし、日本の音楽の最先端になるような楽曲がたくさん生まれる場所だからね。
MARiA:ロックもあればEDMもあるし、歌謡曲みたいなテイストもあるし。
toku:なんでもアリといえばアリだし、それが聴く人によって可愛かったりカッコよかったりして、うまくアニメとリンクできればいいのかなと。だから、アニソンをいろいろ聴いている人ってすごくアンテナが高い気がしていて。そこは僕らも毎回ドキドキしながら作っているところでもあります。
――そういう意味では、今回の「幻愛遊戯」におけるミクスチャー感もハンパないですよね。2番に入ると、いきなりレゲエテイストに転調しますし。
MARiA:あれは面白かったよね。「えっ、こうくるか!」と私も思いました。
toku:最初は4つ打ちじゃなくて、昔のドラムンベースとかジャングルとかのエッセンスでやろうかなと考えていたので、だったらレゲエは合うなと思っていたんですけど、最終的には4つ打ちにして。でも、ずっと同じテンポ、ビートが続くのもアレだし、途中で(ビートを)半分にしようかなっていうことでレゲエパートは残しました。そのジャンルを専門にやっている方からしたら「なんじゃこれ?」と思うかもしれないですけど、こちらからしたら「『なんじゃこれ?』と思ったでしょ?」と(笑)。そういう意表を突くことをやりたかったんですよね。
――そういったトラックの上で、MARiAさんが艶やかな歌声を乗せるのがまた気持ちいいんですよ。
MARiA:ありがとうございます。今回はいつもと比べて語尾をちょっとしゃくって歌ったりとか、大袈裟にわざとらしく歌ってみたりと、歌詞のテーマに合わせてあえてキャラを作って歌った感じですかね。そんな中、Bメロでは素に戻って歌っていたりもして。ここだけステージを降りた人間が思ったことを歌うみたいな、そういうストーリーの付け方をしています。
リリース情報
シングル『幻愛遊戯』
- 2022/09/30 DIGITAL RELEASE
音楽配信総合リンク:
https://lnk.to/GARNiDELiA_streaming
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「和メロで四字熟語の曲は出し尽くしたかも?」と思っていたけど……
――そして10月19日には、早くも次のデジタルシングル「謳歌爛漫」がリリースされます。
MARiA:意図せず四字熟語が続いちゃいました(笑)。
――この曲は「幻愛遊戯」とはまた違って、モダンなデジタルダンストラックと和テイストがミックスされた、王道のGARNiDELiAナンバーです。
MARiA:「極楽浄土」から入ってきてくださったお客さんは、「これだよね!」って感じになるのかな。「踊っちゃってみた」シリーズを一緒にやってきたみうめが、10月いっぱいで表舞台から引退するということで、みうめと217と一緒にやる最後の作品になるから、それをどんな作品にするかというところからスタートしました。まずは有終の美を飾るといいますかフィナーレ感を出したいんだけど、涙でしっぽり終わるのは私たちらしくないから、華やかにみうめを送り出すじゃないですけど、私たちが築いてきたものの集大成みたいな曲にしたいね、と。それで、花火をテーマにしたんです。
――最後に花火を打ち上げるような?
MARiA:そう。世界中に待っていてくれるファンがいるプロジェクトだったから、しっかり「最後だよ、ありがとね!」と一花咲かせつつ、その感謝の思いをしっかり伝えられる曲が、私たちっぽい終わり方だよねと。そこから、タイトルもすごく華やかな感じがいいなということで、四字熟語で「これ!」というものを探していく中で、「爛漫」という字を絶対に使いたくなったんです。さらに、「謳歌」……本来は桜の花の「桜花爛漫」でもあるんだけど、人生を「謳歌」することにもつなげて、「謳歌爛漫」にしました。このプロジェクト自体は最終章だけど、私たちが作り上げてきたものはずっと残り続けて、みんなの心の中にもあり続けて、なんならそれを広げてくれる人たちがいて。それがこの二次創作の世界、「踊っちゃってみた」「踊ってみた」「歌ってみた」だと思っているし、今までも何年も前に作ってきた作品がいろんな人たちの手で進化していったり、花開いていろんなところにつながっているから、このプロジェクトは実質終わらないと思っています。
――なるほど。
MARiA:あとは、3人で立つ最後のステージも想像しながら書いたから、制作途中でもグッときてしまって。今まで書いてきた作品の歌詞も見返しながら、そういうエッセンスも織り混ぜたんですよ。tokuもサウンド面において、いろんな曲から引っ張ってきていると思いますし。
toku:今までの「踊っちゃってみた」シリーズの各楽曲のパーツが垣間見れるようなメロディラインやアレンジをちょっとずつ入れていて、それがシリーズのまとめみたいに感じてもらえたらいいなと思って。
――「踊っちゃってみた」シリーズを楽しんできた人たちには、たまらない1曲だなと思いますよ。この曲がシリーズの締めくくりかもしれないけど、世の中がちょっとずつ明るくなり始めているこのタイミングだからこそ、「謳歌爛漫」が新たな起爆剤となって海外で何か起こしてくれるかもしれませんし、あるいは日本で突発的に面白いことになるかもしれませんし。そういう未来への期待感が高まる1曲でもあるのかなと。
MARiA:ありがとうございます! 3人それぞれの道を歩んでいく上で、みんなの背中を押してくれるような、そんな始まりの1曲でもあるのかな。
――それにしても、対照的な2曲が揃いましたね。
MARiA:面白いですよね。2曲ともタイトルは四字熟語だけど、キャラがあまりに違うから(笑)。そこが私たちっぽいなと思います。
toku:でもね、これだけ和メロものを作るのは結構大変なんですよ(笑)。
MARiA:しかも、どれもキャラ違いの和メロだからね。この12年で何曲和メロを書いてきたことか(笑)。「次のタイトルはどんな四字熟語にする?」みたいな。
toku:確かに(笑)。
MARiA:でも、楽しいんですよ。「響喜乱舞」という曲を作った頃から、「もう和メロで四字熟語の曲は出し尽くしたかも?」と思ってしまっていたんですけど、まだできましたからね(笑)。それに、出なくても日本のみならず海外からも求めていただけるようになったのはすごくうれしいです。
toku:だから、今回の『うちの師匠はしっぽがない』のオープニング主題歌も「踊っちゃってみた」シリーズの延長線上にあるこの曲が採用されたのは、すごくうれしいなと思っていて。今まではシングルでもカップリングとかそういう位置が多かったので、晴れてリード曲といいますか。
MARiA:それぐらい「踊っちゃってみた」シリーズが私たちにとって大きい分岐点だったというか、与えた影響がすごく大きかったんですよ。じゃなかったら、今こうなっていないはずですし。私たちの人生を変えてくれたプロジェクトだし、いろんな出会いやチャンスをくれた。それがあったから、この「謳歌爛漫」という楽曲ができあがったのかなと思っています。
リリース情報
シングル『幻愛遊戯』
- 2022/09/30 DIGITAL RELEASE
音楽配信総合リンク:
https://lnk.to/GARNiDELiA_streaming
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