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<インタビュー>全米ツアー間近のBAND-MAIDが語る、ニューEP『Unleash』に込めた新たな決意と意志
BAND-MAIDが、9月21日にEP『Unleash』をリリースした。インスト曲や共同作詞曲など新たな試みにも挑戦した本作では、コロナ禍を経てさらにパワーアップしたBAND-MAIDサウンドを楽しめる。
そんな濃厚な一作を引っ提げ、10月9日からは約3年ぶりの全米ツアーもスタートした。新作リリース&海外ツアー前、期待に胸躍らせるメンバー5人に話を訊いた。(Interview:もりひでゆき / Photo:池村隆司)
テーマは“世界征服第2弾”
――今夏は【DOWNLOAD FESTIVAL JAPAN】【SUMMER SONIC 2022】といったフェスへの出演や、国内ツアー【BAND-MAID PRE US OKYUJI in JAPAN】で有観客ライブをたくさんやられましたね。コロナ前の状況を少し取り戻せた感覚もあったのではないですか?
SAIKI(Vo.):そうですね。どこか懐かしい気持ちもありつつ、でも同時にご主人様やお嬢様(※BAND-MAIDファンの呼称)が声を出せない状況に新しさを感じたりもしていて。「有観客お給仕(※ライブの呼称)がずっとやりたかったんだよ!」って思いつつ、「なんだこれは!?」みたいな(笑)。
小鳩ミク(Gt./Vo.):うん。コロナ禍ではオンラインお給仕をたくさんやっていたので、そっちにちょっと慣れてきてしまっていたところがあったんですよ。なので、久々に有観客でやると初心に少し帰る気持ちと、初めてお給仕をしたときの感覚に近いものを感じたりしてますっぽね。
MISA(Ba.):いい緊張感があって、それがすごく気持ちいいですね。しばらくそういう感覚を味わっていなかったので、ワクワクゾクゾクする(笑)。
KANAMI(Gt.):お給仕はやっぱり楽しいもんねぇ。まるで遠足に行く前の日の子供みたいな感じで、お給仕の前日は全然眠れない(笑)。
AKANE(Dr.):ご主人様、お嬢様が声を出せないお給仕ってどんな感じなんだろうって、最初は不安があったんですよ。でも実際にやってみたら、その場にみんなが居てくれるだけで本当に嬉しい気持ちになるし、不思議と歓声が聴こえてくる感じもあるんです。有観客でお給仕できることのありがたさをあらためて感じてますね。
――バンドにとってすごくいい兆しが見えている状況だと思いますが、そんな今のBAND-MAIDのムードを色濃く感じさせてくれるのが新作EP『Unleash』。収録される全8曲には、未来に向けた新たな決意と意志がほとばしっていますよね。
小鳩ミク:そうですっぽね。溢れ出ちゃったって言ったほうが正しいかもしれないですっぽ。今回は“世界征服第2弾”をやろうという大きなテーマを掲げて制作をスタートさせて。
――“征服者”を意味するタイトルを掲げたアルバム『CONQUEROR』(2019年12月リリース)に続く作品にするイメージですかね。
小鳩ミク:はい。コロナ禍でもずっと制作は続けていたので、曲はたくさんあったんですっぽ。なので、その中からこのEPのために選りすぐっていった感じでしたっぽね。
――メインのソングライターであるKANAMIさんは、今回の楽曲たちにはどんな感情を落とし込みましたか?
KANAMI:……日頃の鬱憤?
小鳩ミク:あははは。
SAIKI:コロナ禍で活動が思うようにできなかったことへの鬱憤ってことだよね。
KANAMI:そうです、そうです。私は日頃からモヤモヤ、イライラする感情を大事にはしていて。そういうときにはやっぱりちょっと強めの曲が生まれるものなんです。今回は、そういう部分が楽曲にもギターのフレーズにも出ているような気がします。
小鳩ミク:そういうモードでKANAMIが作ってくれた曲が、今回のEPのテーマにはぴったりハマったところはありましたっぽね。しかも、今までBAND-MAIDとしてはやってこなかったような楽曲もたくさんあって。
SAIKI:BAND-MAIDの既存曲、例えば「DOMINATION」「Choose me」「モラトリアム」のような曲が欲しいと伝えて作ってもらったものもあるんですよ。5曲目の「I’ll」なんかは初期の頃によくやっていたテイストを意識してもらって、私と小鳩の掛け合いがあったりするし。ただ、どれもやっぱりちゃんと進化した、今のBAND-MAIDの曲になってるんですよね。
KANAMI:うん。過去の曲をイメージして作ったとしても、やっぱり同じようにはならないんですよ。それはやっぱりBAND-MAIDの音楽が常に更新されていってることの証明だと思います。
SAIKI:KANAMIの新しい欲求、探究心みたいなものは、どの曲にもしっかり出ていると思います。しかも、今回はお給仕映えする曲ばかりなので、今後のセットリストが華やかになりそうだなって思ってます。
――MISAさんは今回、どんなプレイを意識してベースフレーズを構築していきましたか?
MISA:KANAMIからデモが届いたらすぐフレーズを自分なりに考えるんですけど、だいたいその日のうちにはできちゃってましたね。提示したものに対してKANAMIから別の要望がくることもあって、そういうときはちょっと考える時間がかかりましたけど、基本はあんまり苦戦しなかったです。
KANAMI:MISAは仕事が早い方なので(笑)。
MISA:今回は今までの手癖をなるべくなくしたい気持ちが強かったんです。なので、あえて鍵盤を使った打ち込みでベースフレーズを作ることが多かったですね。
――鍵盤で作ると出てくるフレーズも大きく変わりそうですよね。
MISA:全然違いますね。弦で作ると、どうしても普段弾いているようなフレーズを入れがちになっちゃうというか。でも鍵盤だと、ベースの運指を意識しないで作れるから新鮮なものが出てきやすいんです。ただ、後々それをベースで弾くとなるとちょっと難しかったりはするんですけどね(笑)。自分に対していいハードルを作れた気がします。
――AKANEさんはドラムに関してどんな気持ちで向き合いましたか?
AKANE:コロナ禍で活動がなかなかできない状況の中、自分の練習時間をたくさん取ることができたんですよ。自分の中のタイム感をあらためて見なおしたり、しっかりテンポキープができるように意識したり、とにかく基礎を中心にめちゃくちゃ毎日練習していて。そういった時期を経て今作のレコーディングに臨めたので、練習していたことをすべて活かせた実感がありますね。例えば2曲目に入っている「Balance」のように、途中でテンポチェンジする曲では自分の成長を実感することができました。
――結成から約10年のキャリアがありながら、あらためて基礎を見直す姿勢は素晴らしいですよね。
AKANE:活動を続ける中で、自分にとっては基礎が大きな課題だなとずっと思ってきたんですよ。まだまだ全然できないこともいっぱいあるし、鍛えなきゃいけないこともありますから。たぶんここから先も基礎練は続けていくと思います。
SAIKI:AKANEのそういう姿勢はバンドとしてもすごくありがたくて。久しぶりにみんなでスタジオに入ると、「わ、ドラムの鳴りが全然違う!」みたいなこともありましたし。まさに練習は嘘つかないなって思いますよね。今回のEPでは華やかさが足されたプレイで土台を担ってくれていると思う。
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小鳩ミクとSAIKIの作詞の違いとは?
――あと大きな変化で言うと、作詞にSAIKIさんのクレジットが加わったことがあげられると思います。
小鳩ミク:「Sense」のカップリングだった「Corallium」からSAIKIも作詞をしてくれるようになったので、今回のEPでは2人でそれぞれに歌詞を書いて、コンペ形式で選んだ曲がいくつかあるんですっぽ。「I’ll」は私のほうが採用されて、「HATE?」はSAIKIの歌詞が採用された感じでしたっぽね。「Unleash!!!!!」に関してはそれぞれにいいフレーズがあったので、それを組み合わせて作っていったので、共作という形になってます。
――SAIKIさん、作詞に楽しさを見出せてきましたか?
SAIKI:……普通です(笑)。「Corallium」の歌詞を書いたとき、ご主人様・お嬢様からいろんな感想をいただけたのは嬉しかったし、小鳩の歌詞との差がバンドにいい影響もあるかなとは思うので、これからも書いていきたいという気持ちはありますけどね。曲によってかなぁ。今回で言えば、「Balance」や「influencer」は小鳩に「書いてね」って投げましたし。
小鳩ミク:「これは私書かないので小鳩が書いてね」って言われましたっぽ(笑)。
SAIKI:うん。今後も基本は書きたいときに書いていこうと思います(笑)。
――めちゃくちゃ怒ってる「HATE?」の歌詞は最高ですけどね。SAIKIさんにしか書けないものになっていると思います。
SAIKI:この歌詞を書いた時期、ネットニュースで“お不倫”の報道がめちゃくちゃ多かったんですよ。
小鳩ミク:“お”をつけなくてもいいと思うけどね(笑)。
SAIKI:不倫をするような人にちょっとムカついちゃったというか(笑)。その気持ちを「HATE?」では書いたんですよね。これを聴いたパートナーに対してやましいところがある人がちょっと心苦しくなればいいかなって(笑)。
小鳩ミク:“I hate you”ってフレーズを使いたかったんだっぽね。
SAIKI:そうそう。歌うときに口が気持ちいいフレーズだから、曲の中で連呼したかったんですよね。私が書く歌詞は“口気持ちいい”重視なので(笑)。
MISA:小鳩の書く歌詞は頭がいいというか、ちょっと哲学的な感じがあるんだけど、一方のSAIKIの歌詞は感情がめちゃくちゃわかりやすいところがいいんですよね。言葉選びにもSAIKIらしさが出ているし。小鳩とは違った要素が歌詞に加わったのはいいことだなって思います。「HATE?」の歌詞見たらね、ドキッとしてちっちゃくなっちゃう人もいそうだけど(笑)。
SAIKI:いや、落ち込む必要はないんだけれども(笑)。
KANAMI:でも逆にさ、SAIKIに“I hate you”って言われて嬉しい気持ちになる人もいるかもしれないよね。
小鳩ミク:そうかもしれないっぽね(笑)。
MISA:嫌いって言われて喜ぶって、どんだけドM(笑)。
小鳩ミク:嫌い嫌いも好きのうち、みたいなね。それはもう信者の考え方だっぽね(笑)。
――本作に満ちた勢いを象徴するのが先行配信もされたリード曲「Unleash!!!!!」だと思います。“解き放つ”“爆発させる”という意味を持ったタイトルからすでに、今のBAND-MAIDの思いが詰め込まれていますよね。
小鳩ミク:そうですっぽね。EPの制作において、最後にできたのが「Unleash!!!!!」だったんですよ。デモができた瞬間、「あ、これが表題曲だね」って、最後のパーツがハマった実感がありましたっぽ。そこから、SAIKIと歌詞を書いていって。
SAIKI:サビ頭に“激情的Emotion”っていう印象的な言葉を持ってきたり、全体的にわかりやすい言い回しを使ったところがこだわりだよね。“約束するから”とかは今まであまり言ってこなかったんですけど、今回はストレートに書いた方が伝わるかなと思ったので。
KANAMI:曲の構成的には、元々ブレイクがあってからサビに入る流れだったんですけど、そこをちょっと変えたんだよね。
小鳩ミク:うん。SAIKIが、もうちょっと突っ込んだ感じでサビに入ったほうがかっこいいんじゃないかって言ってくれて。結果、一小節前からサビに入るようにしたんですっぽね。
SAIKI:ほんとにいい勢いが出たと思う。
AKANE:「Unleash!!!!!」はみんなが聴きやすいキャッチーさとノリやすさを意識して、ビートはあくまでもシンプルに、あまりフレーズを変えないようにしましたね。フィルもあまり凝ったことはやらず、シンプルに。BAND-MAIDのライブの定番曲はそういうパターンがけっこう多いような気がします。
MISA:この曲はレコーディングの段階で、アニメのMVを作ってもらえるという話を聞いていて。なので映像になったときにも音が耳に残りやすいように、普段とはちょっと違った音を出してみました。設定を変えてみて、より攻撃な音にしたりとか。ベースラインに関してもグリスを多めに使ってますね。
――今お話に出ましたけど、この曲のMVが最高の仕上がりで。BAND-MAIDが地球を救うストーリーがアニメーションを中心に描き出されています。
SAIKI:ほんとに豪華な仕上がりになりました。これを観ていただければ、私たちがどんな人たちなのかがわかると思います。
小鳩ミク:自己紹介MVにもなってるっぽね。メンバー全員お気に入りですっぽ。
AKANE:私は元々アニメ好きなので、いつかBAND-MAIDでアニメのMVを作ってみたいっていう夢があったんですよ。自分たちを2次元化したいなって。それが叶ったのがとにかく嬉しいですね。メンバーぞれぞれの性格やしぐさまでちゃんとアニメとして表現されていてビックリしました。
小鳩ミク:アニメを制作してくださった方が、私たちのことを本当によく調べてくださっていて。アニメの中で過去のMVを再現してくれていたり、衣装もすごく細かく描いてくれているんです。ご主人様・お嬢様にはそういう部分にもぜひ注目して欲しいですね。
――あと今作の1曲目にはインスト曲「from now on」が収録されていますが、CDの初回生産限定盤にはこの曲のMVも収録されるんですよね。
小鳩ミク:そうなんですっぽ。この曲がまたかっこいいんですっぽ!
SAIKI:「こういうインスト待ってました!」って感じだよね。だから迷わずEPの1曲目にしました。楽器チームのみなさん、ありがとうございます(笑)。しかもMVもめっちゃかっこいい仕上がりだしね。
小鳩ミク:インスト曲のMVは初めてなので。きっとみなさんビックリすると思います。
KANAMI:ギターが想像より目立っちゃってて……少し恥ずかしかったです(笑)。
AKANE:いつもはボーカルメインだもんね(笑)。
小鳩ミク:今回はKANAMIがギターヒーローとしてしっかり映ってますので。最初に観たとき、「私、多くない?」って言ってましたけど(笑)。
KANAMI:「恥ずかしいから小鳩のシーンを多めにしてください!」みたいな(笑)。
SAIKI:インストでMVを作れるのはまさにBAND-MAIDだからできることのような気がしますよね。私たちのインスト曲がライブでもすごく人気なので、みなさん待っていてくれたんじゃないかな。
小鳩ミク:この「from now on」はすでにお給仕では披露していて。
SAIKI:うん。すでにお給仕映えしてる曲だからね。CDが出れば、MVとともに人気がまたどんどん上がってくるんじゃないかな。
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全米を回って成長した私たちを見せたい
――今作のリリース後、10月には待望の全米ツアーがスタートしますね。
AKANE:ようやく行けます!
小鳩ミク:コロナ禍で何度も計画が頓挫しましたからね。約3年ぶりです!
KANAMI:週に3本、多くて5本もある日程だよ。すごいね。いっぱいライブがしたいと思っていたので嬉しいです。
SAIKI:しかも今回のツアーは、カルフォルニアの【AFTERSHOCK FES】から始まるっていうすごいことになっていて。インプットしかないツアーになると思います。/p>
小鳩ミク:終わったとき、BAND-MAIDがどうなってるかが想像つかないっぽね。海外ツアーはね、いつも何かしら強く、成長させてくれるので今回もすごく楽しみ。
KANAMI:みんなマッチョになって帰ってくるかも(笑)。
――即完の公演も多いそうですからね。海外のファンもみんな渇望していたんだと思います。
KANAMI:シカゴ公演は10分で即完したみたいで。ありがたいです。
SAIKI:急遽、会場の規模をグレードアップしてもらった場所もありますし、追加公演まで決まっちゃいましたからね。
小鳩ミク:うん。自分たちの想像してないことが起きすぎてるっぽね。トータル2万人動員って、パッと言われても想像がつかないですっぽ。
SAIKI:アメリカはもうコロナ前の状況に戻っているみたいなので、それもすごく楽しみですよね。
――向こうではオーディエンスの声出しもできるようですからね。
小鳩ミク:そうですね。なので、また日本とは違ったお給仕になるのかなと思います。
MISA:コロナも含め、とにかく健康に気をつけながら全公演回りきりたいよね。
AKANE:ほんとそれだよね。無事に回るのも大きな目標だね。
MISA:今回の日程だと、お酒を飲みすぎるとどっかの公演で2日酔いになっちゃうと思うんで、それも気をつけないと。お酒はライブ中だけで飲むようにします(笑)。
――全米ツアーを大成功させて、来年1月の東京ガーデンシアター公演にいい形で繋げたいですよね。
MISA:去年、やれなかった日本武道館公演のリベンジでもあるし、結成10周年記念でもあるからね。がんばらないと。
SAIKI:全米を回って成長した私たちを見せたいです。
KANAMI:マッチョになった私たちを(笑)。
AKANE:ムキムキなBAND-MAIDをぜひ見てください!
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