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<インタビュー>ぼっちぼろまるに訊く、TikTok攻略術とボカロ文化からの影響【インタビュアー:みの】

インタビューバナー

Text:Takuto Ueda
Photo:Shintaro Oki(fort)

 ビルボードジャパンが毎週発表する急上昇チャート“Heatseekers Songs”から注目のアーティストをピックアップし、YouTubeチャンネル『みのミュージック』を主幸する“みの”が独自の目線で取材、音楽のルーツや楽曲制作のこだわり、ヒットに対する価値観などを深掘りするインタビュー企画がスタート。

 第1回目のアーティストは、ひとりぼっちロックバンドとしてミュージシャン活動を行う地球外生命体、ぼっちぼろまる。今年6月にリリースした「おとせサンダー」がTikTokを中心にバイラル・ヒットとなり、ビルボードジャパンによる“TikTok Weekly Top 20”では5週連続首位(6/29)を記録、“Heatseekers Songs”でも連続チャートインを果たした。

 10月5日にソニーミュージックのSNS特化型レーベル“FUNSUI”からメジャー・デビューすることも決まったぼっちぼろまるに、TikTokのバイラル術やボカロ文化からの影響、メジャー・シーンに期待することなど、話を訊いた。

「おとせサンダー」バズった経緯

みの:ビルボードジャパンの“TikTok Weekly Top 20”で「おとせサンダー」が5週連続1位、おめでとうございます。最初はショートで公開されていたんですよね。これは戦略的な意図があったんですか?

ぼっちぼろまる:実はこの「おとせサンダー」って、すでに1年ぐらい前にフル尺が完成していた曲で。それをショート尺に切り取ってTikTokに上げたんです。TikTokではまずショート尺だけ作って、それが流行ってからフル尺を完成させるというパターンも多いんですけど、この曲に関してはそうじゃなかったんですね。でも、リスナーさんから見たら同じような流れで、ショート尺で聴いてもらったときのわくわく感が、フル尺リリースされてバーッと盛り上がっていくような展開は上手くできたかなと思っています。


◎ぼっちぼろまる「おとせサンダー(Music Video)」


みの:じゃあ、TikTokでの戦略的な展開方法はいろいろあるけど、「おとせサンダー」に関しては、もともとあった曲がたまたまそういうフォーマットに上手く乗った、という感じなんですかね。

ぼっちぼろまる:そうですね。最初に発表したのはライブで、その頃には原型ができあがっていました。レコーディングではアレンジを少し詰めたぐらいで、メロディーや歌詞はほとんど変わっていません。


みの:TikTokで発表したショート尺は15秒でしたけど、これはお決まりの秒数があるんですか?

ぼっちぼろまる:TikTokでバズったのは1番のAメロの部分なんですけど、実は他にもサビとか2番のAメロとか、いくつか切り取った音源を出していて。その中でたまたまバズったのが15秒のAメロだったんです。


みの:なるほど。面白いですよね。昔だったら切り取るべきなのって絶対にサビじゃないですか。CMで使われるときもそうだし。今はある意味、サイコロを何回か振れるじゃないけど、何か所か切り取ってバズるかどうか試せるわけですもんね。

ぼっちぼろまる:イントロだけの音源もけっこう多いですね。






みの:実際、どれくらいの尺にするのがいいんですかね?

ぼっちぼろまる:やっぱり15秒ぐらいですかね。曲を作ってる側からすると、もっと長く聴いてほしくなりますけど、TikTokのアルゴリズムでは、動画が最後まで視聴されるとバズりやすい仕組みになっているので。ちょっと物足りないな、ぐらいの長さで切らないといけない。そのなかで、歌詞に関してもできるだけ完結させていたほうがいいですよね。


みの:ああ、なるほど。歌詞のストーリーがあまりにも見えないと跳ねないという。

ぼっちぼろまる:例えば比喩表現にしても、流れで聞いて分かる表現ってあると思うんですけど、そこだけ切り取ってしまうと、何のことだからわからない。ただ、僕はもともと具体性のある歌詞を書くタイプだったので、それがよかったのかもしれないです。8~16小節ぐらいでひとつ、こういう感じの曲だなというのが分かるワンフレーズにする必要はあるかもしれないですね。

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媒体の特性

みの:そのあたりのノウハウはどうやって学んでいったんですか?

ぼっちぼろまる:いろんなサイトを見たりしましたけど、攻略法なんてどこにも書いてないんですよね。なので、やりながら学んでいった感じです。それこそ最初は15秒ぐらいの新曲を作って、もし跳ねたらそれをフル尺にしようという作戦でやっていたんですけど、半年間ぐらい週1のペースで出していたのに、一切跳ねなくて。それでフル尺がすでにある昔の曲も使いながら試行錯誤した結果、ちょうどリリースが決まっていた曲がいいタイミングでバズってくれたという感じで。運がよかったなと思いますね。


みの:なるほど。僕も昔、YouTubeで関連動画に出てくる方法とか研究してましたね。ヒカキンさんの関連動画に載せよう、みたいな(笑)。

ぼっちぼろまる:僕もリリック・ビデオを毎月公開していた時期があって。なんとかYouTubeをハックできないかなと思って頑張っていたんですけど、月1のペースになってしまうのがけっこうツラくて。ちょっと伸びたとしても何がよかったのか分からないし、逆に跳ねなかったやつは何がよくなかったのか……。もちろん単純な曲のよしあし次第ではありつつ、クリック率みたいな部分でも変わってくるだろうなって。


みの:おっしゃる通り、YouTubeに関しては、音楽でトライ&エラーはなかなかできないというか。作曲にかかる時間や映像のコストとかを考えると、週1ペースで出したりするのはほとんど不可能で。だから、それを分割して出せるTikTokだと、いろんな情報も蓄積しつつ、次はこうしよう、ああしようと考えることができるんでしょうね。

ぼっちぼろまる:そういう意味では、やっぱりTikTokって音楽家にとって使いやすいプラットフォームだなと思います。あそこでトライ&エラーできたことはすごく有意義だったし、ちゃんと結果が出てよかったなと思います。






みの:ちなみにTikTokでバズると、YouTubeやサブスクへのアクセス流入も期待できるんですか?

ぼっちぼろまる:僕はかなりありました。わりとみなさん、TikTokで気になった曲をYouTubeに見に行くという習慣はけっこうあるみたいで。ただ、そこで引っ掛かるかどうかは、その曲がその人に刺さるかどうかなので、やっぱりそのあたりが難しいところですね。逆にバズり具合がそこまで大きくなくても、YouTubeやサブスクにめちゃくちゃ流れていくというパターンもあるみたいですし。一概に言い切れないんです。


みの:YouTubeでは跳ねたけどTikTokはまあまあだったとか、逆にTikTokでは全然だったけどYouTubeでは伸びたりとか。

ぼっちぼろまる:そうですね。僕の場合、TikTokで跳ねたものに関しては、YouTubeやサブスクに還元されているなって感じがあって。でも、YouTubeやサブスクで回る曲があっても、それを切り出してTikTokに上げたからといって、同じように跳ねるという結果にはならない。やっぱり部分的にしか聴いてもらえないというのが大きいんだと思います。曲全体を通していいなと感じる曲ではなく、この曲のこの部分がいいよねと思える曲のほうが、やっぱりTikTokでは強いので。


みの:媒体の特性の違いですね。ちょっと答えづらい話かもしれないんですけど、TikTokって儲からないじゃないですか。でも、創作活動を続けるうえで、資金は絶対に必要だと思うんですけど。マネタイズはどんな部分で行っているんですか?

ぼっちぼろまる:やっぱりサブスクへの流入が大きかったです。そこで「やっていけるな」と思えるぐらいにはなったので。


みの:そこから他の楽曲の再生回数も底上げされたりするんですか?

ぼっちぼろまる:そうですね。「おとせサンダー」ほどじゃないにしても、2~3倍ぐらいは増えたかなと思いますし、次に出した曲も、TikTokからサブスクへの流入がきちんとあって。


みの:ある程度、自走してくれる状態になったんですね。一方で、やっぱりTikTokの15秒間の世界で勝負していくなかで、作り手としてはもっと1曲通して聴かせたい、全体の流れや展開で伝えていきたいという思いもあると思うんですけど、そのあたりの葛藤については?

ぼっちぼろまる:この「おとせサンダー」の15秒間は、本当にたくさんの方が聴いてくれたと思うんです。でも、フル尺を聴いたことがあるのは、その百分の一とか千分の一みたいなレベルだと思うんですけど、それでも今までより何十倍も多いぐらいで。もちろん僕も最初から最後まで曲を聴いてほしいし、それもあって歌詞をストーリー調で書くことが多いんですけど、そうやってフル尺で聴いてくれる人の絶対数を増やすことには成功しているので、全然問題はないかなと思っていますね。


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ボカロと邦ロックからの影響

みの:ぼっちさんの音楽ルーツは? 曲を聴いた感じ、やっぱりニコニコ動画のコミュニティの香りがするサウンドだと思うんですけど。

ぼっちぼろまる:そうですね。ボカロは普通に好きでずっと聴いてました。2010年頃からですかね。その後も近づいたり離れたりしつつ、ボカロのシーンは大まかには追っていて。特に聴いていた時期はかなり掘っていたので、影響はすごく受けてます。


みの:そういうボカロ的な要素と、あとはギターのリフやリズムの感じは、10年代の邦ロックの感じというか。

ぼっちぼろまる:まさにそういう邦ロックとボカロで育ってきたのは大きいと思います。






みの:楽曲はどの領域までご自身で制作されているんですか?

ぼっちぼろまる:基本的にはアレンジまで自分でやってます。でも、最近はバンドのメンバーとスタジオに入って、一緒にアレンジまでやったりもしていて。まさに「おとせサンダー」は、初めてバンドで作った曲だったんですよね。それまではずっとDTMで完結してました。ギター以外はもう全部打ち込みで。


みの:「おとせサンダー」ではリズム・ギター?

ぼっちぼろまる:そうですね。リードは弾いてくれるメンバーがいるので、僕はバッキングと歌です。僕、出自はインターネット・ミュージシャンということになると思うんですけど、生音に対する憧れは漠然とあって。「おとせサンダー」を初めて生バンドでレコーディングして、やっぱりいいなと思ったんですよね。


みの:ぼっちさんが最近、刺激を受けた音楽って?

ぼっちぼろまる:マネスキンですかね。僕、5年前ぐらい前からずっと四つ打ちの曲を書いているんですけど、当初はそういう曲がダサいとか、四つ打ちは死んだみたいな風潮で。でも、マネスキンみたいなバンドが出てきて、キックがドンドン鳴っている四つ打ちの曲かっこいいよね、みたいな評価が徐々に戻ってきて、そういう意味でも勇気づけられました。


◎Måneskin「I WANNA BE YOUR SLAVE (Official Video)」


みの:ぼっちさんの四つ打ちの使い方って、ちょっとレトロな感じがするなと思いました。

ぼっちぼろまる:アークティック・モンキーズがめっちゃ好きだったんですよね。あとはフランツ・フェルディナンドとかザ・フラテリスとか。もちろん邦ロックでも当時流行ってましたし、けっこうそのまま影響を受けてます。


みの:ちょっと東洋的な曲もありますよね。タンメンの。

ぼっちぼろまる:ああ、「タンタカタンタンタンタンメン」ですね。基本形はまさに邦ロックって感じなんですけど、いろんな国の楽器を取り入れたシリーズで曲を作りたいなと思って。それ以降は続けられていないんですけど(笑)。


みの:その「タンタカタンタンタンタンメン」でソニーミュージックからメジャー・デビューされるそうですね。

ぼっちぼろまる:リアレンジして出します。けっこう長いあいだ代表曲として思っていた曲なんですけど、やっぱりTikTokで跳ねると一気に注目してもらえるんだなと改めて思いましたね。


◎ぼっちぼろまる「タンタカタンタンタンタンメン (Official Lyric Video)」


◎「超超超超超超超超超超超超超超重大発表 #ぼろまるメジャー」


みの:でも言ってしまえば、制作からバズらせるところまで、ぼっちさんは自分でできちゃってますよね。そんななかでメジャーに期待している部分って?

ぼっちぼろまる:でも、広め方の部分はまだまだ素人のラッキーパンチだなとは思っていて。なので、いろんなやり方を教えてもらいたいし、カードはたくさん持っているだろうから、それをいろいろと使わせてもらえたら嬉しいなと思っています。最終目標は大きい会場でライブすることです。


みの:具体的に思い浮かべている会場があるんですか?

ぼっちぼろまる:武道館です。まだまだ遠いとは思ってるんですけど、自分でもポップな音楽をやっている自覚があるので、もっとたくさんの人に好きになってもらえたら嬉しいです。


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