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<インタビュー>梶原岳人が今届けたい音楽が詰め込まれた『ロードムービー』が完成



梶原岳人インタビュー

 『ブラッククローバー』や『炎炎ノ消防隊』、『古見さんは、コミュ症です。』など、多くの人気アニメ作品の主要キャラクターを務める声優・アーティストの梶原岳人が2ndミニアルバム『ロードムービー』をリリースした。自身の人生を投影させたという新作には、試行錯誤を経て作り上げたという作詞・作曲担当曲2曲が含まれている。

 “アーティスト”梶原岳人として伝えたい・表現したい楽曲がどのように作られたのか――そこには憧れのMr.Childrenからの影響もあったようだ。(Interview: 渡辺彰浩/ Photo: Yuma Totsuka)

――今回の『ロードムービー』というアルバムタイトル、テーマはどのように決まったのですか?

梶原岳人:まだラフな状態でしたけど、歌詞が上がってきた(収録曲の)5曲を見返した時に、1曲1曲が自分の人生をなぞっていくような楽曲だと思ったんです。感覚って、その時々で変わっていくと思うんですけど、この作品では今の自分がしっくりくる曲や歌詞を作っていきたいと思っていて。現実からかけ離れた曲というよりかは、自分が辿ってきた人生経験を身近に感じられる曲……タイトルもそういった映画ジャンルを表す“ロードムービー”がいいなと思って決めました。個人的にはミスチル(Mr.Children)が好きなのもあって……だいぶ昔の曲なんですけど。

――2000年リリースのアルバム『Q』に収録されている曲ですよね。

梶原岳人:よくご存知ですね。そこから取って、アルバムのタイトルにしたいなと。

――「ロードムービー」は桜井和寿さんも自身の楽曲の中で「一番好き」だとライブのMCで話していたほどで、ファンからも人気のある楽曲です。

梶原岳人:「ロードムービー」には2人乗りのバイクで旅をしながら等間隔に置かれた街灯を越えていくイメージがあって、今回のキービジュアルもそういった夜の雰囲気のショットになっています。

――最近は配信やTikTokのブームによって、アルバム単位よりも単曲での比重が増しているようにも思えますが、梶原さんとしてはアルバム1枚として聴いてほしいという思いもありますか?

梶原岳人:アルバムで聴くのが好きなのもあって、そこは大事にしているところです。シャッフルで聴きたくないタイプ。アルバムが聴いていて一番楽しめますし、作品として成立していてほしいと思うから。アルバムの始まりや曲順、繋ぎ、「この曲が入るからこういう曲も入れてみよう」という構成を考えるのが好きで、だからこそやっていきたいと思っていますね。

――それでは今回の曲順についても梶原さんが?

梶原岳人:一緒に考えていきました。

――1曲目は「海のエンドロール」でいきたいと。

梶原岳人:逆に“エンドロール”が最初っていうのもいいなと思って。曲調としてもこの曲は始まりに相応しいなと感じました。僕って未練たらしいタイプなんですけど……(笑)。

――そうなんですか(笑)?

梶原岳人:「海のエンドロール」で描かれている主人公もスッキリした人物じゃなくて、歌詞がタラタラしていて、自分っぽくていいなと(笑)。明るい見通しが立っているわけでもないんだけど、どこか爽やかさもあって、アルバムの始まりとしてワクワクさせられるような曲だなと思います。

――センチな音色とサビのコーラスの入りが夏を想起させる楽曲です。

梶原岳人:そうなんですよ。気づけばもうすぐ夏も終わっちゃいそうなので、その前に聴いていただきたいです。

――『ロードムービー』は9月末発売ですからね。聴いていてサビの<ドォント ドォント ドォント セイ グッバイ>の語呂が単純に気持ちいいなと感じました。

梶原岳人:そうですよね。<ドォント ドォント ルックバック>の部分も含めて、最初は全部英語で書いてあったんですけど、僕から「カタカナで書いてもいいですか?」と提案させていただいたんです。変わった字面になりましたけど、こっちのほうが引っかかりがあって好きです。

――なるほど。和製英語のような親近感がありますね。

梶原岳人:「不器用な人が歌ったら、こうなっちゃった」「英語上手くねぇよ」みたいな感じになってほしいなと思って。カッコつけたくなかったんですよね。

――「otona」は今作のリード曲です。

梶原岳人:今までの自分の曲にはない、チャレンジングな曲だと思っています。自分では書けないけれど、少し背伸びした雰囲気のある曲。最後のサビの<最終形態はきっとまだ先のfuture>は自分にはない言葉選びです。最近は、激しくノレる曲より、ゆったりノレるくらいのほうが好みで、今作にはそういった曲が多く収録されています。

――「ぼくらのメロディ」がまさにそうですよね。

梶原岳人:そうですね。そこは一番極まっていますね。

――タイトルは「otona」ですけど、歌詞では<オトナ>とカタカナだったりして、そんな曖昧な表記が、主人公の揺れている心情を自分には感じさせました。

梶原岳人:自分自身も曖昧で、大人になってしまうのかと思うことがあります。この仕事を始めたのが21歳ぐらいで、そこからもう7年も経つのかと思うと寂しい気持ちもあり、自分が思い描く理想の大人にならないと、とも感じます。この「otona」にあるような心の揺れ動きや葛藤は自分にもあると思いますね。

――ミュージック・ビデオ撮影はいかがでしたか? 映画館での撮影はまさに“ロードムービー”を象徴しています。

梶原岳人:映画館での撮影も一部ありましたけど、大部分が外での撮影でした。夜10時くらいから東京タワーの見える場所で撮っていたんですけど、めちゃくちゃ目立ってしまって(笑)。人が少ない時間帯を選んだので、逆にみんな見ちゃうんですよね。今まで外での撮影ってなかなかなかったので、悪いことをしているみたいで新鮮でした(笑)。


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――今作には梶原さんが作詞、作曲を手がけた楽曲が2曲収録されています。特に「ぼくらのメロディ」は、梶原岳人のイメージを覆すような楽曲で、聴いていて驚きました。温かで揺らぎを感じる電子音から始まり、途中からは金管の音色も入ってきたりして、様々な音が織り混ざっていくようなゆったりとした楽曲です。

梶原岳人:自分でもこの曲はこだわりすぎなくらいなんじゃないかとも思っています。一番思い入れがあるかもしれないですね。「ぼくらのメロディ」は、このアルバムを作ると決まった時から書きたいと言って書かせてもらった曲で、最後にできた曲なんです。人に聴いてもらってないからどういう評価なのか、めちゃくちゃ気になってるんですよね。どういうイメージですか?

――前回、サイダーガールのみなさんとの対談の際に梶原さんが「自分で曲を作っていないので、人に提供してもらう曲と自分の思いや自分がやりたいことのラインが完全に一致することがないような気がしていて」「自分が想像する音を好きなように鳴らして、それにファンの方が反応してくれるのが音楽の面白さ、魅力の一つなんじゃないかと思っているんです。そこは改めて挑戦したいなと思いましたね」と話していたのを聞いていたので、まさにこれが梶原さんがやりたい音楽なんだろうなと納得しました。

梶原岳人:やりたい音楽はいろいろとありますけど、その中の一つでは確実にありますね。メロディーも1番と2番で変えていたり、歌詞やリズムの刻み方など、いろいろと変化を持たせていたりしています。「わすれないように」はストレートな曲になったので、「こっちはもっと不思議な音とかも入れてみたい」と提案させてもらって、アレンジャーの佐藤厚仁(Dream Monster)さんと一緒に進めていきましたね。

――ボーカルにリバーブがかかっていたりもしますね。

梶原岳人:耳元で喋っているような雰囲気にしたいと思ったんです。あとは全部の楽器が気持ちいい曲にしたいなと思って、ベースも心地よく、自分が音楽を楽しめる曲だと思っていますね。

――制作はどのくらいかかったんですか?

梶原岳人:2か月くらいかかったんじゃないかな。1番と2番とその先で変化するメロディー、新たなアプローチを考えていくと、なかなか最後まで辿り着けなくて。特にDメロ以降は苦労しました。雨の音を入れたり、ボーカルでオクターブを重ねたり、その重ねるためのメロディーにしたりと、アレンジに至るまでにも時間がかかりました。自分でもイメージができていなかったんですけど、佐藤さんのアレンジのおかげで期待以上の曲になってよかったです。

――「わすれないように」は誓いにも似たメッセージ性の強い楽曲です。

梶原岳人:この曲はもともと数年前にできていた曲で、そこに新たに歌詞を書き加えてできました。僕は大学で映画学科に通っていて、卒業制作で映画を撮ることになったんです。僕も出演者の一人で、その映画は飼い犬が亡くなってしまったことを受け止められずにいる主人公の女の子が、最後にその死を受け入れて次に進んでいくストーリーだったんです。当時、前に進まなきゃいけないんだけど、大事なことは忘れないでいたいという気持ちを込めてこの曲を作っていたので、今回、自分も実家で飼っている犬や迷惑をかけたであろう家族のことを考えながら、忘れないように生きていきたいというイメージで書いていきましたね。

――サイダーガールのみなさんとの対談の際に、梶原さんは様々なジャンルの音楽を聴かれているようでした。最近、聴いている音楽や影響を受けたアーティストはいますか?

梶原岳人:僕は車に乗る時、基本的にはラジオを聴いていて、そこでキャッチした音楽をサブスクの検索にかけてプレイリストに追加して、あとで聴き直すんです。最近、TOKYO FMでマハラージャンさんがかかっていて、ノリがいいし、楽器が楽しくて、アルバム『正気じゃいられない』もすごく良かったです。全ての楽器が一個一個感じられるというか。(OKAMOTO'Sの)ハマ・オカモトさんのベースラインも気持ちよかったです。

――先ほどの「ぼくらのメロディ」の話と通ずる部分がありますね。

梶原岳人:そうですね。もっとノリがいい曲も作ってみたいなと思ったりもしていますね。

――11月には2ndワンマンライブ、アコースティック&バースデーイベントが2日間にわたって開催されます。今作の<LIVE盤>に収録となる、昨年の1stワンマンライブに続く公演となりますが、どのようなライブになりそうですか?

梶原岳人:1回目に関してはカバー曲が多かったのもあって、イメージとしてはファンのみなさんに歌やパフォーマンスを提供する回でした。どちらかというと僕は受け取る側のイメージも強い気がしています。曲を書いていただいたり、すでにある曲を受け取ってそれを渡していくような。でも、今回はより自分が中心となって発信していくイメージを持っていますね。曲を作る側になったのもありますし、以前よりも作品と関わりが深くなっているので、ライブでは自分に基づいた、浸透した音楽を内側から発信できるように頑張ろうと思っています。

――シングルやミニアルバムももちろん素晴らしいのですが、個人的にはいつか梶原岳人のフルアルバムを聴いてみたいです。

梶原岳人:そうですね。ミニアルバムって聴きやすくて好きなんですけど、自分はフルアルバムのほうが聴いてきた比率が高いんです。特にミスチルはフルアルバムがあってこそ、というのもあるので。例えば、ミスチルのように1曲目をインストにして、そこからシングルで出した曲に繋がっていくみたいな。

――「prologue」から「Everything (It's you)」に続いていく『BOLERO』がそうですね。

梶原岳人:曲の繋ぎも意識しながらそれだけのボリュームでツアーができる、そんなフルアルバムがいつか作れたらいいなと思います。ミニアルバムの段階でこんなに大変だったので、フルアルバムだとどれだけ時間がかかるんだろうとは思いますけど……(笑)。自分の好きなアーティスト像として、そこにすごく憧れがあるので、聴いてくれる人たちが自分をそう思ってもらえるような作品をいつか作りたいと思っています。

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