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<インタビュー>ロックの衝撃を受け継いでいく。ONE OK ROCK最新作『Luxury Disease』をTakaが語る

インタビューバナー

 ONE OK ROCKのニュー・アルバム『Luxury Disease』が正真正銘のロック・アルバムになったのは偶然ではない。彼らは明確な意義と使命と共にそこに立ち返ったのだということを、本作に漲る剥き出しの熱が伝えてくる。リンキン・パークやグリーン・デイの名盤を手がけたことでも知られる巨匠ロブ・カヴァロをプロデュースに迎え、パニック・アット・ザ・ディスコのブランドン・ウーリー他、豪華ゲストが参加。その最強のロック布陣に加え、前作『Eye of the Storm』で培った最新ポップのテクニックをも生かした『Luxury Disease』は単なる原点回帰作ではなく、ONE OK ROCKの最新形としてアップデートされたロック・アルバムだ。デビュー・アルバム『ゼイタクビョウ』から15年、第二章と位置付ける新時代のスタートを切ったONE OK ROCKの目指す先をTakaに訊いた。(Interview & Text:粉川しの)

新しいロール・モデルとしてのバンド像

――『Luxury Disease』は、ONE OK ROCKが再びロックと真正面から向き合ったアルバムになりましたね。

Taka:もともとアメリカで挑戦し始めた時、僕らがずっと聴いてきたロックのシーンそのものがなくなってしまっているという危機感がありました。それを僕らの力で元に戻したいっていう気持ちから、色々試行錯誤もしました。でも当時は、僕らが日本のバンドとして向こうでロックをかき鳴らしても、正直伝わらないだろうなって思った。だからまずは、アメリカの文化や現状を知ること、今USシーンでどんなものが流行っているのかというのを勉強する期間として捉えたんですね。結果、前作『Eye of the Storm』では敢えてロックから離れて、自分がアメリカで学んだことをアルバムの中に詰め込んだ作品になりました。でも今回は、アルバムがリリースされる2022年9月を念頭に置いた時に、そのタイミングだったら恐らく、ロックがターム的にアメリカにも戻ってきているんじゃないかっていう予感があって。なので久々に、自分たちのロックに対する愛情をぶつけてみるっていうところからスタートしました。

――その予感に加えて、ONE OK ROCKとしてロックへのモチベーションが高まるきっかけはあったんですか?

Taka:『Eye of the Storm』でツアーを回らせてもらった時に、日本での活動を疑問に思ったことがあって……僕らはロック・バンドなので、戦う相手がいないとバンドとしてモチベーションが下がっていくんですよね。やっぱり、日本と海外のギャップが大きくて。日本に戻ってくるとチケットが取れないバンドになっているという。もちろんそれはとても嬉しいことでもあるんですけど、日本での自分たちの立ち位置を見直さなきゃいけない瞬間があったんです。海外を視野に入れて活動していくと、どうしても日本の業界システムに対する不満みたいなものもあった。これは自分たちにとっていいタイミング、僕らが本来持っていた怒りみたいなものを吐き出すいいタイミングなのかなというところで、そこに向けてバンドが動いていったんだと思います。



ONE OK ROCK - Change [Official Video from "EYE OF THE STORM" JAPAN TOUR]


――前作のインタビューでTakaさんは「アメリカのロックは死んでいる」とおっしゃっていて、確かに当時はそういう状況でした。でもそこから状況は徐々に変わって、近年ではアメリカでもポップ・パンクやエモのリバイバルも顕在化しつつありますよね。

Taka:そうですね。ただ今はまだスタンダードなパンクや、オールドなロックがトレンドですよね。もう少しハイブリットなギター・ロックも、この先出てくるんじゃないかなっていう期待があります。というのも、僕らより下の世代の子たちは、これまでロックに触れずに育ってきてますから。

――確かにそうですね。

Taka:そういう意味では、今はロックが若い子たちにファッション感覚で聴かれている状況だと思うんです。ただ彼らもそうやって一旦ロックを体に取り入れた以上は、ミュージシャンとして追求していく本能みたいなものは絶対あるだろうなと。今後彼らがよじ登ってくるとして、僕らは最先端でロックを体験してきた身として、下に流すじゃないですけど、伝えていく意味があると思っていて。そういう環境がちゃんと整えば、これから先もっと長いスパンでロックが戻ってくる可能性は十分あるんじゃないかなって、強く感じています。

――新しいロール・モデルとしてのバンド像を確立するという。

Taka:そうですね。僕らの世代だと小学校、中学校の頃にリンキン・パークみたいなバンドがいて。その影響は僕らがエモ、パンクといったものをやり始めるまでずっと続いていた。それと同じような環境が再び来るんじゃないかなって。それは皆が想像するよりもっとハイブリッドなかたちだと思いますけど。

――本作の制作はいつから始まったんですか?

Taka:コロナが始まる前でした。最初にレコーディングしたのが「Renegades」で。イギリスのエド・シーランのスタジオで制作しました。「Wonder」もそのタイミングでできた曲。4曲くらい作って、日本に戻ってきてツアーして……それですぐコロナ渦になってしまったんです。



ONE OK ROCK - Renegades Japanese Version [OFFICIAL MUSIC VIDEO]




ONE OK ROCK - Wonder [Official Video from "Field of Wonder at Stadium"]


――ロブ・カヴァロとやろうというのはどういうきっかけだったんですか?

Taka:僕らが若い子たちにロックというものを見せていくことを念頭においた人選でした。同時に僕らとしても、ずっとロックの最前線で戦い続けている人の気持ちをもらっておこう、というのもあって。もちろん彼から全部もらうというよりも、ロブから20%、僕らのいいところから20%、ONE OK ROCKの目指す未来が20%……っていう感じで、最終的に100%にしていくというのが本作のテーマでした。

――ロブ・カヴァロと「こういうアルバムにしたい」というディスカッションはしたんですか?

Taka:ロブの面白いところが、アルバムを作り始める前にインタビューをするんですよね。メンバー全員、彼が用意した質問に答えていくっていう。どういう方向性でやりたいのか、どういう結果が欲しいのか、みたいなことを全て彼が理解した上で、「じゃあこうしよう」っていうのを提示してくれて。

――ONE OK ROCKの未来をプレゼンしたんですね。

Taka:そうです。それでロブが「じゃあアルバムにロック以外のテイストを入れる必要はないね」と。最初にそこをはっきり決めたのは大きかった。アルバムを作っているとどうしても迷いが生じてくるので、そういう無駄な思考みたいなものを最初から排除した状態で制作できたアルバムなんです。ロブは総合プロデューサー的なポジションでしたけど、レコーディングではギターも弾いていて、ある意味第5のメンバー的な存在でもありました。

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直観から生まれたもの大事にした

――「Neon」ではパニック・アット・ザ・ディスコのブレンドンがコーラスで参加していますね。マイ・ケミカル・ロマンスの『ザ・ブラック・パレード』を彷彿させるシアトリカルな曲で、かなり作り込んだ新機軸だなと感じました。

Taka:僕がもともと持っているミュージカル気質が、もろに反映された曲だと思います。普段はあまり音楽を聴かなくて、映画のサントラやミュージカルなどに刺激を受けることが多いんです。ディズニーや、『グレイテスト・ショーマン』とか。そういうもののほうが自分としては作るのが得意……というとあれですけど、放っておくとその方向性になっている(笑)。でも、僕のそういう音楽性は、これまでは周りから「NO」と言われることのほうが多かったんです。ロブはそこも含めて面白がってくれたんじゃないかな。「でも、それがお前でしょ?」みたいな。

――アルバム終盤のハイライトである「Your Tears are Mine」もまさにそうした曲で。

Taka:あの曲はスーパーマジカルで、3分くらいで作った曲なんです。ロブがあの最初のリフを弾き出して、僕がそこにふざけてメロディを乗っけて……それをたまたまエンジニアが録音していて……パーっと最後までノンストップで録ったものにそのまま歌詞が乗って曲になったっていう。

――すごい。

Taka:だから無理してないんです。考えないで、その場で出てきたものを大事にしたっていう。

――その直感的な手法は、前作とは真逆だったのでは。

Taka:真逆も真逆ですね! 前作はまずAメロ作って、ブリッジ作って、そこにサビを組み込んでっていうことを緻密にやっていて……辛かったですね(笑)。

――(笑)。

Taka:でも、それが今のアメリカのポップ主流のシーンに必要とされているメロディ・ラインなんだとか、プロダクションも含めて学ぶことでもあったんです。あのタイミングでちゃんと学んでなかったら、今回はうまくいかなかったと思うんですね。

――1曲目の「Save Yourself」はすごくONE OK ROCK的な曲で。

Taka:そうですよね、一番僕ららしい曲だと思う。



ONE OK ROCK - SAVE YOURSELF [OFFICIAL VIDEO]


――そうしたONE OK ROCKらしさで始まって、これまでいないタイプの「Your Tears are Mine」で本編が終わるという構成に、アルバム・トータルとしての流れを感じました。前作はもっとランダムでコンピレーション的でしたよね。

Taka:作っている時はそこまで見えてこなかったんですけど、結果としてそうなっているのかもしれない。制作中にロブがよく絵を見せてきて、「やりたいのって、こういう感じだよね」とか言うんですよ。「えっ…?」ってなるんですけど(笑)。

――(笑)。どんな絵だったんですか?

Taka:中世ヨーロッパの女の人が水浴びしているものや、古代ローマの遺跡のカラー写真とか。でも言いたいことはわかるっていう。抽象的ではあるけれど、パッと出てくるイメージとイメージを直感で掛け合わせて物語にしていく感覚、というか。緻密であって緻密でない、みたいなもの。そこがロックンロールっぽいですよね。

――感覚的にどこまでやれるかという。

Taka:そうですね。僕も感覚人間なので、そういうやりとりは楽しかったんです。僕はアルバム・タイトルとか曲のタイトルとかもどうでもいいと思ってしまうタイプなんで(笑)、中身の方が大事。僕の歌い方やプロダクション、聴いた時にちゃんと五感が刺激されるか、っていうのを重視しているので、外側はどうでも良くなってしまう。だから絵を見せてくるのは面白かったし、こういう感覚でアルバムが作れたらいいなと。

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日本を背負い世界で戦う

――アルバム制作がパンデミックの時期と重なったことは、ポジティヴとネガティヴのどちらが強く反映されましたか?

Taka:どっちもですかね。その期間中に知り合いが亡くなってしまったりもして……だから、生きていくことを深掘りして考えさせられたし、ポジティヴなこともネガティヴなことも、一つひとつのかたちにしていくことがミュージシャンの使命だとも思ったんです。今僕らは何をすべきかを考えて物作りをしていたので、辛い時期もあったけど、このアルバムが世に出る頃には世の中にいい結果が広がっていてほしいという願いもありました。考えて狙って作るというよりも、本能的にミュージシャンとしての在り方みたいなものに注力して作品を作っていました。

――タイトルの『Luxury Disease』は、15年前のデビュー・アルバム『ゼイタクビョウ』へのオマージュではなかった?

Taka:レーベルから「もう締め切りが近いよ!タイトルどうするの?」って言われて、ある日友人とドライブしながら相談してみたんです。今回のアルバムに込めた思いとか、日本ではどういう感じだったのか細かく聞かれて「もう一度アメリカでブレイクスルーするためのアルバム」だよ、「最初のアルバムは『ゼイタクビョウ』っていうんだけど……」って話してしたら、「ゼイタクビョウって何?」って。英訳がわからなくてスマホで調べたら“Luxury Disease”って出てきたので見せたら、「めちゃくちゃいいじゃん!」って(笑)。英語だと「お金持ちの子供のかかる病気」みたいな意味らしいんですけど、「すごくパンクっぽいよ」って言われて。それで決めました。

――アメリカでのブレイクスルー、もう1回ここから始めるんだ、という意味が結果として含まれたタイトルだったと。

Taka:そうですね。アメリカのレーベルに所属して、マネジメントも独立して海外でやっていくっていうのは、やっぱりすごく大きな変化だったんです。新しいスタートを強く意識しましたし。

――その変化とはTakaさんにとって身軽になることを意味するもの? それともリスクを背負ってでもやるべき挑戦でしたか?

Taka:もちろんリスクを背負わないと燃えないという自分の性格もありますけど、前提として、クリエイティブって、既存のシステムに乗っかっていくことではないと思っているんです。日本のクリエイティブは1から10を作る場合が多くて、0から1を作るアメリカとは圧倒的に個性が異なるんです。僕らは1から10を作る環境で育ってきているので、せめて自分の生き方くらいは0から1でありたいんです。アメリカに行って自分たちでそうした感覚をしっかり築いて、それを日本に持って帰ってきたい。それが日本を背負って戦うっていう、僕の中のサムライ魂なので。それをやらないと意味がないんです。だから迷いはなかったですね。

――「Gravity」ではOfficial髭男dismの藤原聡さんとのコラボレーションが実現しました。

Taka:彼がONE OK ROCKの音楽をずっと聴いていて、ライブにも来てくれていたっていうのを聞いていたんです。そんな光栄なことってないし、同時に僕も年を取ったなっていうのを感じましたね(笑)。以前インスタライブでカラオケしているところを配信したことがあって。そこで「Pretender」を歌っているのを彼が見てDMをくれたことがきっかけで一緒にご飯に行くことになって、そこからの流れでアルバムに参加してもらうことになりました。レコーディングではアレンジも色々足してくれて、すごくいいものに仕上がりました。



One Ok Rock - Gravity feat. 藤原聡 (Official髭男dism) (Teaser)


――ONE OK ROCKもそうやって年下のバンドに継承していく立場になったんですね。

Taka:そうですね。新しい子たちがどんどん新しいクリエイティブなことをして、日本の未来を引っ張っていってもらわないといけないから。日本にはせっかくこれだけ素晴らしい文化と材料があるし、ロックに関しても世界と違った視点と思考を独自で持っていると思うんですよね。そういう視点を世界にもっともっと自信を持って発信していって欲しいんです。

――Takaさんは以前、主題歌をずっと担当されてきた『るろうに剣心』シリーズの最終章と同時に、ONE OK ROCKも第二章に入るとおっしゃっていました。その第二章のまさに幕開けである『Luxury Disease』を、ロブ・カヴァロ流に絵で表現するとしたら?

Taka:難しいな……でも意外と、白黒なんじゃないかな。カラフルではないと思う。どんどんオリジナルに戻っていくというか……もう装飾に飽きている感じがすごくあって。もっと物事の本質にアプローチしていくっていうことが今やっていてすごく楽しいんです。アーティストとして、クリエイティブをしていく覚悟を決めて生きている人間として、ここ10年くらい先の未来は恐らくそうなるんじゃないかなと。普遍的であり、モノクロである。いらないものはどんどん捨てていくんだと思います。一番僕らが過剰でカラフルだったのは『Ambitions』の頃だったと思うけれど……あれ以降は一旦終わりが見え始めた感じがしたんですよね。そういう意味ではある種、絶望的ではあったのかもしれない。

――その絶望的なものに折り合いがつけられたからこその、モノクロだと言えますか?

Taka:多分、そうだと思います。着心地の悪いものってファッション的ですよね。ファッション的に見えている間は、すごく着心地の悪い人生を生きていかなきゃいけない。でも、大人になるとそれってもう辛いじゃないですか。これはどの分野においてもそうだと思うんですけど、そうなった時に自分がどうすべきかと考えた時、迷いを捨てるっていうのもそうだし、そこでもし自分がいらないものを捨てて生きていくことができれば、それに越したことがないっていう。



ONE OK ROCK - Let Me Let You Go [Live Documentary Video]


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