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<インタビュー>打首獄門同好会、大澤敦史のミステリー愛が詰まった「死亡フラグを立てないで」とサンバ・ミクスチャー・ロックな「地味な生活」

インタビューバナー

Interview&Text:田中大
Photo:Yuma Totsuka

 今年の夏も各地の音楽フェスを盛り上げている打首獄門同好会。2週連続でリリースされたデジタル・シングルも、幅広い層に唯一無二の存在感を示すことになるだろう。8月20日に配信された「死亡フラグを立てないで」は、“この人物は死亡することになるであろう”というフィクション作品内での予見性を示す“死亡フラグ”をテーマとしている。YouTube公式チャンネルの『10獄放送局』は、MV撮影と連動した非常に面白い動画となっているので、これもぜひチェックしていただきたい。

 そして、8月27日に配信された「地味な生活」は、サンバとラウド・ロックを大胆にミックス。コロナ禍の日々の中で抱く心情を描写しつつ、独創的なサウンドを鳴り響かせている様は、彼らが追求し続けている“生活密着型ラウドロック”を存分に体感させてくれる。この2曲について、大澤敦史(Gt/Vo)に語ってもらった。

「無事に帰れたら俺、結婚するんだ…!!」

――打首獄門同好会史上、曲の中で犠牲者が出たのは「死亡フラグを立てないで」が初めてでしょうか?

大澤:犠牲者、出たことあるかなあ?

――「きのこたけのこ戦争」は血なまぐさい争いを描いていましたが。

大澤:まあ、あの曲で飛び散るのはチョコレートだけですけど。でも、一番バイオレンスなのは、やっぱり「きのこたけのこ戦争」なんですかね? あれは戦争を描いていますから。

――「死亡フラグを立てないで」は死亡フラグについて描いていますが、このテーマに焦点を当てて曲を作ることになった経緯を教えてください。

大澤:ウチのバンドがやってるインターネット番組の『10獄放送局』とMVを連動させようという話が最初の段階であったんです。それで“ドラマ仕立てのMV”という発想に繋がったんだと思います。もともとミステリーが好きなので、ストーリーものならミステリーかな、と。

――『10獄放送局』とMVがここまで密に連動するのは初めてですよね。

大澤:そうですね。初期に既存曲のMVを作る企画をやったことはあるんですけど。

――「上野ZOO」ですよね?

大澤:はい。でも、今回は新曲です。曲が未公開の状態からMVを作っていく企画なので。

――「上野ZOO」は曲がリリースされてからしばらく経ってからのMV制作でしたから、上野動物園からいなくなってしまった動物もいましたよね?

大澤:そうでしたね。あの撮影は「もういないんだ……」と途方に暮れるところまでがワンセットでした。




打首獄門同好会「死亡フラグを立てないで」


――調べてみたらあの企画、2014年ですよ。早いものです。

大澤:もうそんな経つんですね。あれは結成10周年企画のひとつだったんです。そのインターネット番組がここまで続くとは。

――『10獄放送局』のクオリティの高さにはいつも驚かされます。本業ではないことに膨大な時間とエネルギーを注ぎ続けているじゃないですか。

大澤:途中から悪ノリになったというか(笑)。あれがどこまでバンドのプロモーションとして活きているのかわからないんですけど。どこかの段階で「面白くしなければいけないんだ!」という何かを背負い始めてしまったのかも。

――アシュラシンドロームの青木亞一人さんの登場を毎回楽しみにしています。

大澤:そもそも打首獄門同好会のメンバーではない人がメインになってしまうこと自体、何かがおかしい(笑)。ただただあの人が面白いからぜひ出て欲しいという、よくわからないことになっているんです。亞一人くんは最近、北海道に住んでいるので、わざわざ呼ばなきゃいけなくて大変なんですよ。

――“ストーリーもの→ミステリー”という流れでMVと曲の内容が決まっていったわけですが、“死亡フラグについて描く”という切り口に至った経緯は覚えています?

大澤:その辺のいきさつがもはや思い出せなくて(笑)。「死亡フラグをいじろう」みたいなところは、曲を作り始めた最初の段階であったんじゃないかなあ?

――“ミステリーあるある”が満載されていますね。<見知らぬ同士が集ったペンション><突然起こった殺人事件><吹雪により陸の孤島に>という舞台設定は、『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』などでもよく出てきます。

大澤:最近のミステリー作家は、携帯電話の普及によってこういう設定を作るのが難しくなって大変らしいですよ。

――この前コナンを観ていたら、携帯電話の基地局が爆破されていました。

大澤:犯人も大規模なことをしなくてはいけなくなっているんですね(笑)。「死亡フラグを立てないで」に関しては、吹雪によって一晩だけ陸の孤島になる小規模な事件にしています。





――“こういうことを言った人は死ぬことになる”という死亡フラグは、ミステリー以外の作品でもありますよね?

大澤:そうですよね。『ジョジョの奇妙な冒険』の第5部だったかな? 終盤で主要人物のひとりが唐突に死亡フラグを立てるんですよ。そういうのが僕の中に鮮明に残っています。

――例えば刑事ドラマで「今度結婚するんです」「孫が生まれるんですよ」とか唐突に言う刑事は必ず殉職する印象です。

大澤:おそらくこういうのは物語作りの原点にあるものなんでしょうね。

――この曲の歌詞に盛り込まれている<私は部屋に戻らせてもらうわ><私がここで食い止めるから あんたら先に行きな><ここから無事に帰れたら俺 彼女に結婚を申し込むんだ>は、3大死亡フラグと言っても過言ではないでしょう。

大澤:これを言って死ななかったら逆に新しい(笑)。でも、<私がここで食い止めるから>に関しては、けっこう2種類のパターンがあるんです。『龍が如く』だとこういうのは大丈夫なんですよ。あの作品の場合は主人公を一人で戦わせたいので、そういうシナリオになっているんだと思います。

――<ここから無事に帰れたら俺 彼女に結婚を申し込むんだ>の部分は、亞一人さんの声ですか?

大澤:そうです。あす香、junkoさんもMVの映像と連動しているので、「あなたの死亡フラグのところを言ってくれませんか?」ってレコーディングの際に東京まで来てもらいました(笑)。

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