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NAQT VANE(澤野弘之×Harukaze)独占インタビュー
様々な映像作品の音楽を手掛け、ボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト「SawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキ ヌジーク)でも注目を集め続けている澤野弘之。そんな彼が「常に夢中にさせてくれるボーカリスト」と絶賛する新人シンガー・Harukaze。このふたりの他に類を見ない音楽人生と才能の重なりによって、新たに発足した音楽プロジェクト・NAQT VANE(ナクトベイン)の全貌に迫る独占インタビュー、ここに公開。
Interviewer:平賀哲雄
澤野弘之×Harukazeの出逢い~それぞれの音楽ストーリー
--お二人はどのような経緯で出逢ったんですか?
澤野弘之:Do As Infinityの楽曲プロデュースをさせて頂いた際に出逢ったエイベックスの方がいて、僕が新しい音楽プロデュースプロジェクトをやりたいと相談したら動いて下さることになって、その流れでHarukazeを見つけてきてくれたんです。彼女は洋楽のカバー動画をインスタに上げていて、それで歌声を聴いてみたらすごく格好良いし、実際に話してみたらネイティヴに英語を喋れるし、今回のプロジェクトでは英語を多用しようと思っていたこともあって、ピッタリだなと。 Harukaze:お声掛け頂いたときは驚きました。気が向いたときに趣味でカバー動画を上げていたインスタにメールアドレスを載せていて、そこからコンタクトを取って下さったんですけど、最初は「え、なんだろう? 詐欺じゃないよね?」みたいな(笑)。でも、私は他のレコード会社でスタッフとして働いていて、突然そういうオファーをすることがあるのも知っていたので、ひとまず詳しくお話を聞いてみようと。そしたら澤野さんと初めてお会いすることになりまして、メールをちゃんと返してよかったなと思いました(笑)。--お会いするまでは、澤野さんにどんな印象を持たれていました?
Harukaze:澤野さんはアニメの劇伴や主題歌をたくさん手掛けられているじゃないですか。それを聴いて「戦う気分になる楽曲を書かれている」イメージを強く持っていましたし、私は澤野さんの楽曲を聴いてから映像と音楽がマッチする凄みみたいなモノを知ったので、そんな方の新しいプロジェクトにボーカリストとして選んでもらえたことはすごく光栄に思っています。ただ、澤野さんは何もかもスピーディーで、それでいて完璧なので、そのレベルに合わせられるよう必死に頑張らなきゃなって。 澤野弘之:でも、僕は僕で彼女の歌声に惹かれていて。インスタの動画を観たときは、家で撮っていたこともあってか、そんなに張り上げて歌うような曲はなかったんですよ。なので、力強く歌うアプローチを必要としたときにどうなるのかな?と思っていたんですけど、最初のボーカルチェックで「こういうエモーショナルな感じのアプローチも出来るんだ」と知れたので、その時点で「来たぁ!」と思って。その後も歌えば歌うほど、感動すると同時に新しい魅力に気付かせてもらっていますし、常に夢中にさせてくれるボーカリストだなと感じています。--SawanoHiroyuki[nZk]などの活動を通して、澤野さんはこれまでも様々なボーカリストと楽曲を制作してきましたが、今回はHarukazeさんと今後ずっと共に歩んでいくプロジェクトになるんですよね?
澤野弘之:そうなんですよ。SawanoHiroyuki[nZk]をスタートするときも固定のボーカリストで活動していきたい思いはあったんですけど、結果的に作品ごとにボーカリストを変えていって、今となってはコラボプロジェクトみたいな感じになっていて。それはそれで面白い形へと転がっていったなと思っているんですけど、やっぱりお客さんってなんだかんだフロントに立っているボーカリストのことを見ながら聴いているので、僕がちゃんとひとりのボーカリストに曲を書き続けていくことによって、お客さんがどう反応してくれるのか気になっていたんですよね。それを実現したいと思っていたプロジェクトで、彼女と出逢えたことは本当に大きかったです。--そんなHarukazeさんのここに至るまでのストーリーを掘り下げたいのですが、どのような経緯で音楽に傾倒していくことになったんですか?

▲NAQT VANE(Harukaze)
--すごい小学生ですね。
Harukaze:そんな子供だったので、小6ぐらいからオペレッタを始めたり、歌を習ったりしていて。あと、バンクーバーの高校に留学していた期間があるんですけど、アジア人が少なかったこともあって、イジメじゃないですけど、なかなか友達ができなくて。でも、高2のときにみんなの前で歌う機会があって、それがきっかけで認めてもらえて友達がたくさんできたんです。その経験によって「歌は言語関係なく通じるんだな」と知って、やっぱり歌手になりたいと改めて思ったんですよね。ただ、私は「音楽ビジネスも学んでおきたい」と思っていたので、ロサンゼルスの州立大学の音楽ビジネス科に進学したんです。--具体的にどんなことを学んだんですか?
Harukaze:著作権について学んだり、将来有望なアーティストの探し方とかも勉強しましたね。インターンもやらなきゃいけなかったので、日本のレーベルなんですけど、アメリカにオフィスがあるところで、女の子たちのグループのグッズを考えたりして。あと、音楽ビジネス科に入るには楽器を弾けなくちゃいけないんですけど、喉=ボーカルも選択できたので、歌でオーディションを受けたり、ボイスレッスンも受けさせてもらったり。オールマイティに音楽のことなら何でも教えてくれる学校だったので、ピアノもやったし、いろいろ経験しました。--2018年に楽曲リリースもされていますよね?
Harukaze:音楽ビジネス科なので、しかもハリウッドに近いところだったので、真剣に音楽業界を目指している子たちがたくさんいたんですよね。それでインスパイアされることが多くて、SpotifyやApple Musicで曲を出せることもそこで知って、よく遊んでいた友達がビートメーカーだったから、その子と一緒に曲を作ってリリースしてみたんです。なので、遊びの延長線上のものではあったんですけど、いろんな人たちが反応してくれて。ただ、実際に音楽活動をしてみて難しさや厳しさも知って、同時にいろんな才能のある子たちにも出逢っていたので、そういう子たちを日本で売ったり、逆に日本で発掘されていない子たちを海外で売ったりしてみたいと。それで日本のレーベルでA&Rとして働くことにしたんですよね。--ただ、その後、Harukazeさんは澤野さんと出逢い、NAQT VANE(ナクトベイン)のボーカリストになりました。
Harukaze:そのレーベルで一緒に働いていた人たちが知ったら、たぶんビックリすると思います(笑)。--続いて、澤野さんのストーリーも掘り下げさせて頂きたいのですが、どのような経緯で音楽の道を目指すことになったんでしょう?
澤野弘之:子供の頃にCHAGE and ASKAのASKAさんのことが好きで、初めてひとりのアーティストに熱中して追いかけるみたいなことをして。会ったこともない少年を感動させたり、勇気づけたりできる音楽って凄いよなと思ったんですよね。それで「自分もそういう仕事をもしやれるんだったら、やりたいな」と漠然と思うようになったんです。だから最初はシンガーソングライターを目指していたんですけど、高校生のときかな? いったん活動終了しちゃったぐらいのタイミングで、TM NETWORKの音楽と出逢いまして、小室哲哉さんの存在を知るんです。TMって宇都宮隆さんがセンターで歌っているんですけど、小室さんの存在が特殊的に見えて「こういうアーティストっているんだ?」と驚いたんですよね。- バンドのような喜びを共有しながら進んでいきたい
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