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<インタビュー>2023年に解散を控えたBiSH、覚悟の一歩を踏み出した新たなチャレンジ「サヨナラサラバ」に込めた思い

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Interview:Takuto Ueda
Text:Maiko Murata
Photo:Yuma Totsuka


 「BiSHは2023年をもって解散いたします。よろ。」

 初めての『NHK紅白歌合戦』出演を目前に控えた2021年のクリスマスイブに、突如解散を発表したBiSH。あわせて発表された“BiSHからのPROMiSE”のひとつとして、まさに今、怒涛の12か月連続リリースを続けている彼女たちが、その第8弾として放ったシングルがこの『サヨナラサラバ』だ。作曲にTaka(ONE OK ROCK)とMEG(MEGMETAL)、作詞にKENTA(WANIMA)を迎え、連続リリース初の外部プロデュースとなった同作は、BiSHにとっても大きなチャレンジがあったという。解散発表後初めて迎えたフェスシーズン、“楽器を持たないパンクバンド”としての活動を振り返りながら、6人全員でたっぷり語ってもらった。

“夏フェス”への想い

――近況としては、まさに夏フェスシーズンですよね。ちょうど先日も(※取材は8月末に実施)【SWEET LOVE SHOWER】や【RUSH BALL】に出演されていましたが、この怒濤の夏フェスラッシュは3年ぶりだと思います。どうですか?

ハシヤスメ・アツコ:去年は開催の直前に中止になったりとかして、今年は久々の夏フェスでした。すごく熱も入りましたし、やっぱり久々のフェスということで、屋内と違って草の匂いだったりとか、熱気だったりとか、そういうフェスならではの空気を目でも鼻でも耳でも味わえて。なんというか、日常がちょっとずつ帰ってきたなという気持ちになりましたね。



Photo: Yuma Totsuka

――今でこそたくさんの清掃員(BiSHファンの総称)がいらっしゃいますが、フェスに出始めた頃はきっと今よりアウェーな空気感もあったと思います。だからこそ、BiSHのライブパフォーマンスで新しいファンをつかむ場でもあったんじゃないかと思うのですが、振り返ってみていかがですか?

セントチヒロ・チッチ:最初、本当に出だしのときは、お客さんの手が全然挙がらないときもありましたし、裏の先輩バンドさんに流れていっちゃうことも多かったです。空気のつかみ方も全然分からなくて、すごく悔しくて……。でも、その経験のおかげで「どうしたらBiSHがBiSHらしいものを見せられるのか」みたいなことをみんなで話し合うようになって。やっぱり、BiSHは楽器を持たないからこそできることがあるし、女の子6人でこういうふうにやってることがすごく異質だったけど、それが強みでもあるので。少しずつ自分たちの強みを分かってきて、なめられないように、どういうふうにライブするかというのをすごく考えるようになったんです。フェスがなかったらそういう成長はなかったと思います。


――なるほど、そうですよね。

チッチ:ライブを見せてもらったことも、ひとつひとつの言葉も、すごくBiSHにとっては大事だったなと思うので。しかもフェスって、場所によって本当に空気が違うんです。アイナが作ってくれる(私たちの)振り付けって、すぐに一緒に踊れるものが多いんですよ。なので、清掃員じゃない人たちもBiSHを初めて見たときに、すごく楽しそうに手を上げて踊ってくれてるのとか見ると、今でも感動して泣きそうになる瞬間もあって。解散が決まってからも新しいことを経験させていただいてることが、すごく幸せだなと思いました。

――昨年2021年のクリスマスイブに解散を発表してから、夏フェスの舞台は初めてですもんね。解散発表の以前と以降で、自分たちの捉え方とか、改めて再確認したことはありましたか?

チッチ:どこに行っても、初めてのことも、「これが最後かも」と思うことが多くなりました。夏フェスに限らず、日々思うことばっかりです。寂しさはやっぱりいつも以上に感じるなって。



Photo: Yuma Totsuka

――今年の夏フェスで、他のアーティストを観て、衝撃や刺激を受けたとか、印象に残ってる他の共演者はいましたか?

アユニ・D:体調不良で出られなくなっちゃったフェスがいくつかあったんですけど、そのとき私たちの代打で出てくれた先輩方――THE BAWDIESさんとかがいて。あと、出られなかったときに他のアーティストさんから、DJの方がBiSHの曲を流してくださったと聞いて。何年か前だと、たぶんBiSHってそんなに受け入れてもらえなかったというか……他のアーティストさんとかもきっと「この女の子6人組はなんなんだろう?」みたいにきっと思ってただろうなと思うんですけど、でも、がむしゃらにやってきて……さっきチッチが言った“楽器を持ってないこと”は私たちにしかできない強みだから、それをずっと貫き通して信じてやってきたからこそ、そうやって他のアーティストさんも気に掛けてくださったり、少し受け入れてもらえたりするようになったのかなと思いましたね。すごくありがたいし、貫き通してよかったなって。信じてきた甲斐があったなと思いました。

モモコグミカンパニー:【MONSTER baSH】のときに、東京スカパラダイスオーケストラさんとのコラボステージがあったんです。【SWEET LOVE SHOWER】と【RUSH BALL】では04 Limited Sazabysさんがいて……みたいな、そういうフェス常連で(BiSHと)仲良くしてくださってるバンドさんとかが、裏で声を掛けてくださるのがとてもありがたいなと思って。でも、解散が決まっているからもうあまり会えないのかなとか思うと、すごく寂しい気持ちになっちゃいましたね。よく対バンとかしてくださったんですけど、また一緒になる機会があったらいいなって……寂しいな。


――解散を発表した昨年末から8か月が経ちました。この8か月間は、BiSHにとってはどんな期間でしたか?

リンリン:解散発表してからのライブ【COLONiZED TOUR】で、初めての土地に行ったりして。そうすると、清掃員と私たちが“初めまして同士”って感じの空気がすごかったんです。でも、その「やっと会えた」という嬉しさが、声は出せなくてもめちゃくちゃ伝わってきて。だから最後に一回でも会えてよかったし、またライブでも再会できたらいいなという気持ちで……清掃員と会えることが本当に嬉しくて楽しかったし、幸せな空間だなって、ライブをしていて毎回思いました。

アイナ・ジ・エンド:やっぱり終わりが決まっていると、今までと違う頑張り方ができるんだなというのは実感してます。今までだったら、少し体調が悪いときとかだと、自分の中での全力ではやるけど、「どこかでコントロールしなきゃ」とか思っていた時期もあったんです。でも、今はいくら大変でも「この辛さが最後になるかもしれない」とか、「この清掃員が最後に私たちを見る日になるかもしれない」と思うと、コントロールしてる場合じゃないなと思います。そういう頑張り方を個人的にしていると、新しい表現も出てきたりしていて。8か月間いろんな発見がありました。


――なるほど。終わりが明確に決まっているなかで、自分の表現の新しい引き出しが見つかる、新しい発見があるというのはすごく前向きですよね。

アイナ:そうですね。



Photo: Yuma Totsuka

――その解散を決めたからこそ見えてきたものとか、改めて発見したことって?

チッチ:うーん……解散があるから気づくことというより、今までBiSHがやってきたことを大事に届けていく期間なのかなと思っていて。そのなかで、すごくたくさんの人に支えられてたというか、メンバーのそれぞれもそうだし、この子はこういうふうにやってきたんだなとか知ることが多くなって。なんか、いつもより優しくなる(笑)。


――あはは(笑)。

チッチ:スタッフさん一人ひとりも、もしかしたらあとちょっとで会えなくなるかもとか思うと、寂しいなって。今までのことを思い出したりしちゃうんです。「あ、この人こういうことしてくれてたんだ」と知ることもあって、ちゃんと感謝しなきゃなと思ってるところです。


――それは逆に、解散を発表したから、周囲の人たちから思いを伝えられる機会も増えてきたということでもあるんですかね?

チッチ:それもありますし、自分たちが気付くことも多いです。今まで見えてなかったことに焦点が合ってきたという感じ。


――なるほど。でも、だからといって、何か発するものを変えようというわけでもないですよね?

チッチ:何か変えようというより、BiSHが積み上げてきたものとか意思とかは変わらず届けていかなきゃと思います。でも、アイナが言ってたように、いつ何が終わっていくか分からないから、コントロールしている暇はなくて。だから後悔しないように、愛情とか感謝とか、いろんな感情をちゃんと出し切っていきたいなとすごく思ってます。

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BiSH「サヨナラサラバ」

サヨナラサラバ

2022/08/31 RELEASE
AVCD-61235 ¥ 1,100(税込)

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Disc01
  1. 01.サヨナラサラバ
  2. 02.A long way to go

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