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<コラム>SixTONESの新たな一手、開放的なサマー・チューン「PARTY PEOPLE」
開放感に満ちたパーティー・チューン
8月5日に突如発表されたSixTONESの新曲「PARTY PEOPLE」。“リリース”ではなく“発表”、“ニュー・シングル”ではなく“新曲”と書いたのは、この曲がCD化されないYouTube限定の配信曲であるからだ。デビューから約2年半、2枚のオリジナル・アルバムと7曲のシングルをリリースし、そのすべてがチャート上位を獲得するなどトップ・アイドルの地位を確固たるものにしたSixTONESは今、グループの力を発揮するフィールドをさらに拡大しようとしている。そう、いくつかの意味において「PARTY PEOPLE」は、極めて戦略的な彼らの新たな一手だと思うのだ。
まず何と言っても「PARTY PEOPLE」が新鮮なのは、この曲がSixTONESきってのジョイフルなパーティー・チューンであり、<君と Shake! Shake! Shake!/この夏の恋を/全部、飲み干して>と歌う、正真正銘の夏曲だということだ。彼らのシングルといえば、美しいバラッドの「Imitation Rain」「わたし」や、ハードなエレクトロ、ロック調の「NAVIGATOR」や「NEW ERA」のように、彼らのスキルフルな音楽性を存分に生かした、どちらかと言えばシリアスで構築的なナンバーが多い。それを思えば、6人個々のチャームや勢いを生かし、理屈よりもヴァイブを優先した「PARTY PEOPLE」はかなり異質な新曲だと言えるだろう。
もちろん、SixTONESのレパートリーにはアッパーなパーティー・チューンと呼ぶべき曲も数多く存在する。彼らのコンサートでは「Special Order」や「WHIP THAT」でレイヴのごときピーク・タイムに突入するし、シングルのカップリング曲ながらファンに人気が高く、MVも制作された「Strawberry Breakfast」もパーティー感の高いディスコ・チューンだった。ただし、これらの楽曲はどちらかと言えば“夜”かつ“屋内”をイメージさせるものだったのに対し、ピーカンの日差しや野外の開放感に満ちた「PARTY PEOPLE」はやはり未だかつてない1曲だ。言わば、ディスコやクラブよりもサマー・フェス的なパーティー・チューンなのだ。
SixTONES - 「Special Order」 from LIVE DVD/Blu-ray「on eST」(2021.06.07 YOKOHAMA ARENA)
SixTONES - Strawberry Breakfast
冒頭のハンド・クラップからジェシーのハイテンションな煽りへ、イントロの時点で早くも“パリピ”ノリが全開で、普段はノーブルな歌声を聴かせる京本大我や、インドア文系キャラの松村北斗すら、思いっきりやんちゃに弾けている。一方、元来やんちゃでノリのいい森本慎太郎や、日向の香りを纏った陽性キャラの高地優吾はまさに本領発揮だ。また、田中樹のラップはレゲエやラガを感じさせるリラックスしたフロウで、随所でセンシュアルなR&B調のファルセットを挟むジェシーと共に、お祭りムードの中にちょっと大人びた色気を差し込んでいる。いずれにしても、直近のシングル「わたし」が張り詰めた空気の中で6人が繊細に歌い繋ぐバラッドだったことを思えば、その陰と陽、静と動のギャップに驚かずにはいられないのではないか。
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性別も人種も入り混じった群像ダンス
YouTube限定配信ということもあり、「PARTY PEOPLE」はMVも非常に力の入った凝った仕上がりになっている。抜けるような青空やテラコッタ色の壁がどこか異国の街の広場を思わせるセットに加え、6人の衣装もゆったりとしたシルエットやカラフルな色味で統一され、まるで南国のリゾート地にいるようだ。やがて日が暮れ、手持ち花火ではしゃぐ6人は夏休みの中学生のようだが、かと思えばシャンパン・ファイトが始まってみたりと、とにかく彼らのパーティーは朝から晩まで続く。
「PARTY PEOPLE」のMVには思い思いに着飾った、性別も人種も多様なエキストラが大勢参加しているのもポイントだろう。SixTONESと彼らが息のあった群舞を見せてくれるダンス・シーンのカメラ・ワークは基本的に俯瞰で、ある意味SixTONESもエキストラの一部、“大勢のパリピの中の6人”に見えてくるのが面白い。ダンス・フロアには序列がないように、彼らが楽しむパーティーもまた、どこまでもオープンでイーヴンな空間として描かれているのだ。あとこれは単純な話だが、京本以外の5人が基本サングラスをかけているというスタイリングも、アイドルのMVとしては攻めていると感じた。俯瞰のカメラ・ワークとサングラス。この二つの要素からもSixTONESが今回のMVでアピールしたかったものが窺い知れるのではないか。
SixTONES - PARTY PEOPLE
「PARTY PEOPLE」のMVはSixTONES史上最速で100万回再生を突破。公開からわずか2週間で1,500万回を超えるなど、いまだかつてないスピードで拡散中だ。また、ソニーミュージックSixTONES公式Twitterには「PARTY PEOPLE」のダンス・レクチャー動画が投稿され、こちらもすでに100万回近く視聴されている。さらに「PARTY PEOPLE」は、TikTokでも積極的に展開されている点も見逃せない。TikTokをきっかけとしたポップ・ソングのバイラル・ヒットが世界中で多発している今、SixTONESはまさに相応しいタイミングで相応しい曲をドロップしたと言える。
とにかく、SixTONESが夏の日差しの中へと、開放感たっぷりのフィールドへとファンを連れ出すような「PARTY PEOPLE」を聴いていると、「いつか夏フェスのステージに立つSixTONESが見たい!」と切に願ってしまうのだ。(Text:粉川しの)
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