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<インタビュー>miletが“タング愛”を詰め込んだ映画主題歌「Always You」、3周年を刻む最新シングルを語る
miletが現在公開中の映画『TANG タング』の主題歌として、新曲「Always You」を書き下ろした。映画の世界観やストーリーも反映させた同曲は、作中に登場するロボット“タング”と二宮和也が演じる主人公“健”の絆や、人間関係における“繋がり”、“愛”といったテーマで綴られた、非常に人間味溢れる楽曲に仕上がっている。
また、カップリングには8月11日ローンチ予定のオープンワールドRPG『Tower of Fantasy(幻塔)』のテーマソングで、表題曲とはガラッと表情を変えた歌声でアプローチされた「Clan」、7月20日に開催された【milet 3rd anniversary live “INTO THE MIRROR”】のために書き下ろした「Into the Mirror」といった2曲も収録。「inside you」でデビューしてから3年間、歩みを止めることなく濃密なキャリアを重ねてきながら、それでもなお「どんなことでもまだまだできる」を語るmiletの最新型を提示する今作について、話を訊いた。(Interview & Text:もりひでゆき / Photo:Shintaro Oki(fort))
つながりと愛
――前作『Walkin' In My Lane』のCDリリースから約2か月強で届いた新曲「Always You」は、8月11日から公開される映画『TANG タング』の主題歌として書き下ろされたそうですね。
milet:はい。『TANG タング』は『ロボット・イン・ザ・ガーデン』という劇団四季さんでも上演されているような有名な作品が原作ですし、映画には二宮和也さんや満島ひかりさんといった豪華なキャストの方々が出演されているので、その主題歌を手掛けられることになったのがとにかく嬉しかったのと同時に、責任感もずっしり感じつつ(笑)。夏に公開される映画なので大人の方はもちろん、小さなお子さんもたくさん観られることになると思ったので、曲作りにあたってはそこをすごく意識しました。かわいらしいポップでキャッチーな側面がありつつ、同時に大人の方たちにはちょっと懐かしい、センチメンタルな気持ちを呼び起こしてもらえるような楽曲にしたいなって。
――事前に映像や脚本には目を通したんですか?
milet:もちろんです。脚本に加えて、二宮さん演じる健とタングが絡む予告映像のようなものを見せていただいて、そこからいろいろとイメージを膨らませていった感じでした。この作品はAIやロボットが日常に溶け込んでいる近未来を舞台にしているので、そこに自分を寄せていく作業は少し難しかったんですけど、タングがすごく人間味を持ったロボットだったことで救いになったところもあって。
――タング、かわいいですよね。
milet:そうなんですよ! ポンコツロボットで、思ったことを真っ直ぐ口に出しちゃうようなかわいさがある。人の気持ちがわかるというすごいロボットなんだけど、ちょっとおバカなところが妙に人間っぽくて。それによって作品の世界観との距離をグッと縮められた感じがありました。
――楽曲にはタングと健の関係性、絆が落とし込まれているように感じました。
milet:タングと健の友情と絆はもちろん、映画の中では健と奥さんである絵美さんとの関係性もけっこうフォーカスされているんです。そういった1対1のラインがいくつも伸びている映画でもあるので、楽曲としては人間同士のつながりと、そこにある愛を大きなテーマに書いていきましたね。あとは冒険というテーマもこの曲ではひとつ大事にしたところでもあります。
――そこも映画から受け取ったテーマですか?
milet:そうですね。日本を飛び出して海外にまで舞台が広がっていく物語でもあるので、楽曲としてもスケールの大きさは意識しました。健とタングが出会ったことでそれぞれの世界がどんどん広がり、新しい景色に繋がっていくので、そういう部分をサウンドでも表現しようと思い、音作りからこだわりましたね。
――ご自身で書かれた歌詞において、特に気に入っているフレーズってありますか?
milet:歌っていてキュンとくるのは、サビ前あたりの<そんなバカみたいなことを本気で願ってしまうよ>、<いつでも君のことを想ってしまうよ>のところかな。本当に相手のことを心から思っている気持ちがにじみ出ているようなフレーズだと思うので、そこはグッと感情を込めた息遣いで歌うことを強く意識しましたね。あとは間奏の<You're always you>から始まる英語のパートも好き。どんなときでもあなたがあなたでいてくれるから、私はあなたが好きでいつも一緒にいるんだよっていう。そこがこの曲を統括する部分だと思います。
――サウンド・プロデュースはTomoLowさんが手掛けられていますね。
milet:基本的な曲の作り方は普段とそれほど変わらなかったんですけど、サウンドが担うドラマチックさや緩急のつけ方みたいな部分は映画の主題歌ということで、いつも以上に練りました。劇場で流れることを想定して、音の広がりを生むリバーブ感やディレイの伸び方みたいな部分もかなり細かくやり取りをして。サビ始まりにするかどうかとか、アウトロでどう余韻を残すかとか、普段だったらけっこうすぐに決着がつくようなところも、今回はかなり時間をかけて考えました。
――サビ前にロボットっぽい音が鳴っているところがありますよね。
milet:そうなんです! サウンド的にもロボットっぽさを出してみたいなと思って、“ピコン”って音を入れてもらったんです。あの音が入っているだけでキャッチーさや可愛さが出ているし、「あ、タングだ!」っていう明確なイメージが一気に沸くというか。あと、間奏で聴こえるサウンドは学校のチャイムをイメージしたところがあったんですよ。
――あぁ、たしかにそう聴こえますね。
milet:最初にお話したように、大人の方が聴いたときにちょっと懐かしい雰囲気を感じて欲しかったので、そういった音を入れてみました。学生時代の夕方の景色を思い浮かべてもらえたら成功ですね(笑)。
今までになかったアグレッシブな部分
――ボーカルに関してはどんな感情をのせていきましたか?
milet:全体的にクール過ぎないように歌うことを意識しました。タングから受け取った愛らしさ、可愛らしさを自分なりに表現しつつ、同時にちょっと幼さというか、少年っぽさみたいな表現をした部分もありましたね。
――そういった表現は得意なチャンネルですか?
milet:どうなんでしょう(笑)。でも、例えば英詞で歌うような曲の場合は、何も作りこまずに素の自分で歌えるんです。そこと比較すると、この曲ではだいぶキャラクターを作ってレコーディングに挑みましたね。ある種、演じる感覚というか。あと、今回は笑顔で歌っていたところが多かったと思います。実際の表情と声のニュアンスはシンクロするものだと思うので、聴き手の方に笑顔になって欲しいラインのところでは、自分も大切な親友のことを思い浮かべながら笑顔で歌いましたね。
――完成した映画はご覧になりましたか?
milet:観ました! 曲が流れるシーンもものすごくよくて。思いきり泣いちゃいましたね(笑)。自分が想像していた以上に『TANG タング』という作品により広がりをもたらせる楽曲になったような気がしていて。映画の余韻としていい役割を果たせたんじゃないかなと思います。しかも、映画を観た前日にMVの撮影をしたんですけど、今回はタングにも参加してもらったんです! MVの撮影でたくさん戯れたあとに映画を観たので、「わー、タングはこんなに頑張ってたんだね!」って余計にグッときちゃったところもあって(笑)。
――MVの仕上がりも楽しみですね。
milet:私とタングの世界をしっかり楽しんでもらえる作品になっているので楽しみにしていて欲しいですね。タングはほんとにかわいかったです。たくさん仲良くして、ひと夏のいい思い出を作ることができました!
milet「Always You」MUSIC VIDEO(映画「TANG タング」主題歌 先行配信中)
――8月17日にリリースされるCDには表題曲「Always You」に加え、「Clan」「Into the Mirror」というカップリング曲も収録されます。
milet:今回のカップリングはどちらも英詞の曲になっていますね。まず「Clan」は『Tower of Fantasy(幻塔)』というゲームのテーマソングとして書き下ろした楽曲で。海外のゲームだったので、先方からのオーダーややり取りの仕方がいつもとは違う部分があったりして。すごく新鮮な気持ちで制作に臨むことができましたね。
――どんなオーダーがあったんですか?
milet:私のいろんな曲をリファレンスとして提示してくださったんですけど、それが「『Waterfall』のこういう雰囲気や『Walkin' In my Lane』のこういう部分が欲しいです」といったいろんなベクトルのヒントをいただきました。私の曲をしっかり聴いてくださっていたことがすごく嬉しかったんですけど、その反面「その曲たちの共通点ってなんだろう⁉」と深く考えてしまったりする部分もあって。
――だいぶ雰囲気の違う2曲ですもんね。
milet:そうなんです(笑)。でも、そういったヒントをくみ取りながら曲を作り上げていくのは冒険感があってすごくおもしろい経験でした。結果、仕上がった曲をお届けしたら、先方の方がすごく喜んでくださったのでよかったです。今までにあまりなかったようなアグレッシブな部分を出すことができて、私自身すごく好きな曲になりましたし。
――音像と詞が相まって、物語性を感じさせてくれる仕上がりだと思います。
milet:チームを組んで戦っていくゲームなので、仲間との繋がりや闘志みたいな部分をテーマにして制作をしていきました。ちなみにタイトルになっている“Clan”という言葉は、私の好きなハイエナの群れを意味する言葉なんですよ。
――“一族”といった意味を持つ単語ですよね。
milet:はい。私はずっと前から“Clan”という言葉が好きで、それを使った曲を作りたい気持ちがあったんです。ゲームの中のチームも“クラン”と呼ばれているという偶然の一致もあったので、ちょっと運命を感じました。
――ボーカルに関しては「Always You」とは明らかに違った表情が出ています。
milet:こっちはかなり強いボーカルになってますからね。全然違う(笑)。制作時期は「Always You」と同じタイミングだったんですけど、曲のテンションも歌の表情もまったく違ったベクトルで臨むことができたのがおもしろかったです。頭の切り替えを振り切ってできたので、どこかスッキリしたところもあったし。
――グッと大人っぽい雰囲気が出た曲でもありますよね。
milet:ファルセットから始まる出だし部分なんかは、けっこうセクシーさを出せたかなと思っていて。強さとセクシーさを歌い方でしっかり表現できたと思うので、「Always You」よりは年齢がちょっと上がった感じがあるかもしれないですね。
自分を解放できるのは自分自身
――もう1曲の「Into the Mirror」は、7月20日に東京ガーデンシアターで開催された【milet 3rd anniversary live “INTO THE MIRROR”】と同タイトルの楽曲です。
milet:以前、毎日私が一つの単語を発表して、それを並べ替えると“音楽はみんなを映す鏡”という意味のセンテンスになるというファンクラブの企画をやったんです。自分で考えた言葉なんですけど、その中の“Into the Mirror”という言葉がすごく気に入ったんですよね。で、3周年記念ライブのタイトルに使うことをまず決めて、そのあとに同タイトルの曲を作ることにしたんです。
――歌詞に関してはどんなイメージで書き上げていったんですか?
milet:ライブにおける“INTO THE MIRROR”は、音楽という鏡にありのままの自分を映して楽しもうという開けた意味合いをもたせているんですけど、楽曲としての“Into the Mirror”はもっとプライベートな内容でもいいのかなと思って。なので、自分自身と思い切り向き合っていく曲にしました。私の中の私と対峙した曲でもあるので、歌詞に出てくる“I”も“You”も私だし、“We”は“自分”と“自分の中の自分”という二人って感じですね。自分以外に対象がいるという受け取り方もできるんですけど、実は自分の中だけで完結している曲なんです。
――Ryosuke“Dr.R”Sakaiさんによるサウンドは、後半に景色が変わる展開が用意されながらも、全体的にすごくシンプルですよね。
milet:そうですね。シンプルだからこそちょっと物々しいというか。「この音の裏に何が潜んでいるんだろう」って想像させるミステリアスな感じがあって。そこがこの曲の推しポイントではありますね。ある種、突き放すような強さのあるサウンドではあるんだけど、でも、この曲では逆に引き寄せる強さに感じられるところもあるんですよ。自分のことを愛せていない自分を抱きしめるような、そんな感覚があります。
――それはつまり、自分の中の自分とちゃんと共存していきたいという意志なわけですよね。
milet:はい。自分の中にいる自分の存在をちゃんと受け入れてあげるという意味合いですね。「ありのままでいいのかもしれないね」という思いでちゃんと自己肯定してあげる。そして共存していくようなイメージです。やっぱり自分を解放できるのは自分自身だと思うんですよ。今まで抱えてきた痛みや自分自身を縛っていた鎖を解き放てるのも自分。そうしたときに新しい世界がきっと見えると思うんですよね。
――そういうお話を聞くとネガティブな曲でないことは明白なのですが、曲の最後に入っている鏡の割れる音がちょっと不穏な感じも……。
milet:あははは。そう思いますよね(笑)。あの音はライブの演出を考えて入れたものなんですよ。この曲で夢のような世界に誘ったあと、鏡が割れた瞬間に現実へ引き戻される、みたいな演出を狙っていたので。そういった部分も含め、この曲は3周年ライブありきで生まれたものではありますね。
――デビューから3年経ってみて感じることってありますか?
milet:3年って……短いですよね。デビュー以来ずっと駆け抜けて、たくさんリリースをしてきたけど、数字にしたら「まだ3年か!」みたいな(笑)。そう考えると、ここからの長いキャリアの中ではどんなことでもまだまだできるなって。今後がますます楽しみになってきています。とりあえず今夏は夏フェスで、みなさんと一緒にたっぷりハジけようと思います!
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