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中川英二郎、SLIDE MONSTERSの新作『Travelers』と4年ぶりの全国ツアーを語る

インタビューバナー

 日本を代表するトロンボーン奏者、中川英二郎が2018年に結成したトロンボーン・アンサンブル「SLIDE MONSTERS(スライド・モンスターズ)」は、世界最強とも言える驚異のスーパー・ユニットだ。ニューヨーク・フィルの首席トロンボーン奏者に26歳で就任し、「トロンボーンの神様」と呼ばれるジョゼフ・アレッシと中川英二郎が意気投合して始めたこのカルテットには、ニューヨークのトップ・ジャズトロンボーン奏者であるマーシャル・ジルクス、ヨーロッパ屈指のバス・トロンボーン奏者ブラント・アテマが参加して、ジャズとクラシックの両方にまたがる素晴らしい演奏を聴かせてくれる。

 2018年のデビュー作『Slide Monsters』リリースと日本国内8か所で行われたコンサート・ツアーで、日本のブラス・シーンにセンセーションを巻き起こしたSLIDE MONSTERSが、この度セカンド・アルバム『Travelers』をリリース、そして9月3日から17日まで、全国9会場でのツアーを行うことになった。実はSLIDE MONSTERSの全国ツアーとCDリリースは、2020年に企画されていたものがコロナ禍のために中止され、翌21年に再設定されたツアーも感染拡大が収まらず実現できなかった、という経緯がある。「三度目の正直」となる4年ぶりのツアーとCDリリースを前に、リーダーの中川英二郎に話を聞いてみた。(Interview&Text:村井康司 Photo:Yuma Totsuka)

はじめは夢物語の一つぐらい、という感じでした

――そもそも、SLIDE MONSTERSを結成したきっかけは?

中川英二郎:およそ8年前になりますかね、僕が大ファンで、トロンボーン界では知らない人はいないジョー・アレッシと食事をする機会があって。一緒に仕事をしたことはあったのですが、ゆっくり話をするのはそれが初めてでした。そのときに、トロンボーン四重奏をやりたいんだよね、と言ったら、『僕でよければ声をかけて』と言ってくれて。はじめは夢物語の一つぐらい、という感じでしたが、それから1年ぐらい経ってだんだん具体化していって、CDを作ってツアーをやろう、と。


――クラシックとジャズの両方をやろうという構想は最初からですか?

中川:そうですね。侍BRASSというブラスアンサンブルを17年ぐらいやっているんですが、そこではクラシックのプレイヤーがジャズをやり、僕みたいなジャズのプレイヤーがクラシックもやる、ということを続けています。クラシックのプレイヤーはジャズをやりたいんだけど、がっつりやる方法がわからない、ということで、両方の言語を喋れるジャズのプレイヤーが、クラシックのプレイヤーが"話しやすい"ような譜面を作る、という。そういうことをずっとやっていますので、イメージしやすかったということがあります。

 ジャズの方で"4トロンボーン"というアンサンブルはよくあって、僕もそういったものに参加したことがありますが、それだとやる音楽がジャズに限られて、クラシックができないんですね。僕はジャズもクラシックもやりたいので、そうするとジャズが2人、クラシックが2人という編成がユニークでいいんじゃないかな、という気持ちはありました。


――トロンボーンだけで、リズム・セクションがない、という発想はどういった意図ですか?

中川:ジャズの場合は後ろにピアノ・トリオがつくのが普通ですが、クラシックにはトロンボーンだけの四重奏、というのがたくさんあります。コンサートで演奏するというのが本来の目的ですので、そうするとリズム隊がいない方が響きの点でもやりやすいなと思いました。そしてジャズの曲、ジャズのアレンジをやるときもそれでやってしまおう、というのが僕のアイディアでした。


――特にジャズの曲をやった場合、リズム隊がいなくてもスウィングする感じがしますね。

中川:トロンボーンを演奏するときに体の中にリズム隊をしっかりとイメージして、聴く方にはリズム・セクションの音を思わせる、ということですね。いいプレイヤーであれば技術的にそれができますので、そのためにこの4人が集まった、ということです。仲間と話していたときに、リズム隊がない演奏でリズムを想像させる場合に、いいプレイヤーじゃないと聴いている方がだんだん疲れてしまう、ということがあるんだ、と。この4人だと疲れないで、リズムの存在をさらっとイメージできるね、と言われて、それはあるかもしれないな、と思いました。


――トロンボーン・アンサンブルの音域って、実はかなり広いんですよね。何オクターブぐらいあるんですか?

中川:下はコントラバス・トロンボーンも使っていますので、チューバのような音域まで出せます。下の音域はどうしても反応が遅くなってリズムを取るのが難しいんですが、ブラントはそれにとても長けていて、彼にベースの役割を支えてもらっています。オクターブでいうと4オクターブ半ぐらいですね。だからピアノの音域の半分ぐらいになります。上は低めのトランペットぐらいまで出していますしね。


――ジャズのビッグバンドでもトロンボーン・セクションのハーモニーはとても美しいですね。それはなにか理由があるんですか?

中川:倍音が多いからなのかな。音域的にはテナーですから男性の声なわけですけど。あと、トロンボーン奏者というのはアンサンブルすることが好きな人種でもあります。ちょうど低音と高音の最初のあたりまでをカヴァーしていますので、トロンボーンだけのアンサンブルが成立するんですよね。サックスのアンサンブルは楽器が違うから音域が広いわけですけど、トロンボーン・セクションもそれに近いぐらいの広さをカヴァーしていますし。いいビッグバンドはトロンボーン・セクションが充実している、とよく言われますし、本当にそうだと思います。

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ニューヨークに帰ってから「燃え尽き症候群」みたいになった

――SLIDE MONSTERSは、そもそも超多忙な4人が集まるだけでも大変ですよね?

中川:大変ですね。なので数年に1回ぐらいしかできないんですけど。4人が同じ場所にいないので、4人のスケジュールが合った時点で仕事が半分ぐらい終わった、という気持ちになります(笑)


――するとレコーディングも短時間で?

中川:レコーディングは2日間でやりました。前回も今回も2日間です。4、5曲を1日で録るので、きっちりプランを考えて、計画通りに進めないとだめなんです。


――さて、2020年、21年と、SLIDE MONSTERSの日本ツアーは2度コロナ禍で延期になってしまいましたね。そのときに作成した動画がYou Tubeで配信されましたが、その話を教えてください。

中川:20年のツアーが中止になり、代わりになにかできないか、というのでリモートの映像を作りました。みんなそれぞれの家で模索していた時期なので、各自にビデオを撮影してもらって編集しました。日本、ニューヨーク、オランダで、自宅で撮影したり、学校の自分の部屋だったりで。そしてツアーを2021年に延期しましたが、そのときもビザが下りなかったりで、とてもできる状況ではなかったので再延期になってしまいました。それでCDの告知もしたかったので、オンラインライブをやることにしました。僕が一人で「ひとりモンスターズ」と名乗って、ルーパーというエフェクターを使って多重演奏をしたり、メンバーたちからビデオでメッセージをもらって、リモート演奏に合わせて僕が吹いたりで、2時間弱のライブ映像を流しました。


◎中川英二郎「Into The Sky [Solo & Loop Pedal Set]」


――そしていよいよ3度目の正直ですね。

中川:そうですね、今度こそ実現させたいです。メンバーとはちょこちょこ連絡は取り合っていて、ニューヨークで演奏はできているのか、ツアーはやっているのか、みたいな話をしつつ、この9月の日本ツアーはできるの? という話をして、なんとか煮詰めることができました。去年のある時期から、アメリカからヨーロッパへ演奏旅行に行くことは普通にできていましたし、ヨーロッパ内で動くことも問題なかったのですが、日本の事情が特殊で、ビザが下りないこと、そして特に隔離期間があることが問題でした。今は日本も隔離がなくなって、先日もジョー(ジョゼフ・アレッシ)が東京都交響楽団の公演のために日本に来ていたんですが、通常の国際線の入国と同じ時間で入れたそうです。ですので、感染状況の潮目が変わらなければ実現できると思っています。


――みなさん、4年ぶりのコンサート・ツアーで盛り上がってますか?

中川:すごく喜んでますね。2018年の2週間の濃密な体験が強かったみたいで、マーシャルなんかはニューヨークに帰ってから「燃え尽き症候群」みたいになった、と言っていました。いい音楽をみんなで集中してやっていて、それがなくなることについての喪失感は、僕も感じましたね。なので、みんなすごく楽しみにしています。


――トロンボーン4人だけのユニット、というのは本当にスペシャルですよね。

中川:ふだんはみんなジャズやポップス、クラシックなどのいろいろな分野で、他の楽器と一緒に演奏していて、もちろんそれも楽しいです。ですがトロンボーンが4人だけで、しかもお客さんの中にもトロンボーンや管楽器を演奏していて大好きな方々がたくさん集まってくださる、という体験はスペシャルなことで、それはメンバーみんなが感じていることだと思います。スペシャルだからこそ、2年、3年、4年に1度ぐらいがいいのかな、と。


――やはりコンサートに来るお客さんには管楽器をやったことがある方が多いんですか?

中川:会場で、トロンボーンをやっている、もしくはやっていた人は手を挙げてください、と訊くと、だいたい半分ぐらいが手を挙げますね。会場によっては9割ぐらいトロンボーンでした!


――そういう意味では、ジャズもクラシックも吹奏楽も、幅の広いファンがいるバンドですね。

中川:僕自身もそういう方が好きなので、それが嬉しいですね。自分の中で、ここまでトロンボーンを中心とした活動が他にないので、ライフワークとしてずっと続けていくつもりです。数年に1回ぐらいでいいからマニアックに(笑)、と思って始めたことがとてもいいバックアップを得て続けていけることが幸せですね。海外でコンサートをやってほしいというお話もいただいているので、機会をみつけてぜひやりたいと思っています。


――まさに世界的なユニット、ですものね。

中川:はい、メンバーがすごいですからね。でもみんなハッピーに、協調性をもってやってくれているので、本当にありがたいことだと思っています。


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最初から言葉でイメージできるように曲を作る、ということはしない

――今回は、コンサート以外に、9月8日にミューザ川崎でワークショップがあるんですね。どんな形でのワークショップ、クリニックになるんですか?

中川:今回はみなさんに楽器を持ってきていただいて、ステージに上がって一緒に演奏するという形でやります。クラシックの時間とジャズの時間に分けて、メンバーの専門がクラシック2人、ジャズ2人なので、時間によって講師の主役を分けてやろうと思っています。トロンボーン以外の楽器の方も参加できますよ。平日の夜の18時30分から、2時間45分という長い時間を取っています。


――すごいクリニックですね! 管楽器、特にトロンボーンをやっている方はぜひ参加した方が良さそうです。

中川:トロンボーンって演奏する人が多くないので、吹奏楽部なんかでもたとえば声楽の先生が指導されている、みたいなことがあるんです。ですので、一流のトロンボーン奏者が間近で吹いているところを見てもらえるクリニックは貴重だと思います。


――いやあ、これは遠くから川崎に来る価値がありますね。

中川:翌日の9月9日がミューザ川崎での本番なので、川崎に前乗りしていただいて、1日目がクリニック、2日目がコンサートを楽しむ、というのもお薦めします。


――そういえば9月6日の東京公演は、Shibuya WWW Xでの「クラブギグ・セット」ですね。他の会場はホールですが、違う感じになるんでしょうか?

中川:ちょっと変えようと思っています。ジャズ色を強くして、「ひとりモンスターズ」のようなこともやろうかな、と考えています。配信もあるかもしれません。ちなみにオールスタンディングです(笑)。大丈夫かな(笑)


――関東の方は、WWW Xにしようかミューザ川崎にしようか、所沢ミューズにしようか…。悩むところですね。

中川:それは全て来ていただくのがいいと思います!


――では、新作の曲についてお伺いします。まずは中川さんの曲、タイトル・チューンの「Travelers」です。この曲の旋律にはシルクロードやアラビア的な雰囲気がありますね。

中川:はい、4度とか5度の音程をたくさん使っていますしね。僕は最初から言葉でイメージできるように曲を作る、ということはしないんです。曲ができて、それを聴いた後でタイトルをつけるんですけど、なんかいろんなところに行っている感じがする曲かな、と思ってこのタイトルをつけました。



◎SLIDEMONSTERS『Travelers』ティザー

――2曲目の「Secret Gate」も中川さんの曲ですね。

中川:これは2008年に出した自分のアルバムの中の曲です。ラテンの雰囲気で、もともとはリズムが打ち込みだったんですけど、コンサートでもよくやっている曲なので、今回入れてみました。


――さて、ベートーヴェンの弦楽四重奏「第9番(ラズモフスキー第3番)」は……。

中川:これは大変でしたね。2020年がベートーヴェン・イヤー(生誕250年)だったのでベートーヴェンをなにかやろうと思って、ある程度しっかりした曲といえば弦カル(弦楽四重奏)だけど、その中で有名なのは何かな、と考えていて、「第9番(ラズモフスキー第3番)」になりました。他のベートーヴェンの弦カルに比べるとメロディもキャッチーで、『これだ』と思ったんですけど、弦楽器のために書かれた曲なので、息継ぎの場所もないわけですよね。僕がアレンジしたんですけど、譜面を送って『もし音が多すぎるから間引くから』と言ったら、みんなが『そんなことする必要ないよ』と言ってくれて。もちろん音域的には物理的に無理な箇所がありますので、それはうまくアレンジして、似たように聞こえるように配分しました。最初はジャズっぽくしようかな、と思ったんですが、やはりこれベートーヴェンにある意味忠実に編曲しようと思いました。


――家にあった弦楽四重奏版と比べたんですが、キーも一緒で長さもあまり変わらないんですよね。

中川:キーは一緒です。オリジナルはヴァイオリンの1番はずっと1番の高さですが、僕たちのは高い音を3人で分散させています。あとアーティキュレーションがずいぶん違うので、そこは工夫しています。長さもだいたいそうですね。リピートするところをしないだけで。


――でもこれ、ステージでやったらみんな驚きますよね。

中川:そうですね。トロンボーン・アンサンブルがこれを演奏する、というおもしろさを感じていただけるといいな、と思っています。


――ところで、トロンボーンのバス以外の3人は、どのパートを吹くかが曲によって決まっているんですか?

中川:実は曲の中でぐっちゃぐちゃに変わるんです。常にいちばん上を誰か一人が吹くわけではなく、フレーズによって、このフレーズは僕らしいな、このフレーズはマーシャルらしいな、ここはジョーが吹くことにしよう、という感じです。譜面の上では、この人が1番、と書いたりもしているんですけど、実際にやるときは上に行ったり下に行ったり、です。3番の譜面であっても、ある場所では1番になるみたいなことで、そうすると曲の中での色も変わるし、コンサートでのスタミナのことでも有利なので、分散していますね。みんなが主役にも脇役にも常になる、という感じです。


――4曲目の「Cora's Tune(コーラズ・チューン)」、6曲目の「Bare(ベア)」と、マーシャル・ジルクスさんの曲が2曲ありますね。

中川:彼の曲はメロディックですよね。彼はラインが順次進行で動くのが好きみたいです。彼にも好きに書いて、と言いました。"コーラ"というのは娘さんの名前なんです。彼の彼らしいところは僕にないところなので、グループの幅が広がりますね。ちなみにクラシックのプレーヤーって、9割9分作曲をしないんです。作曲は作曲家にまかせて、という。編曲をするという人はいますけど。僕やマーシャルが曲を書いてそれを自分で演奏する、というのが、クラシックの演奏家には新鮮みたいですね。


――ジャズ・ミュージシャンの場合は曲を書かないと……。

中川:あなた、何をしたいんですか? ということになりますよね。クラシックは基本的には再現音楽なので、そこはうらやましいですね、って言われますね。


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ツアーで同じ曲を何度も演奏していくうちに、曲の全体的なものが浮かんでくる

――さて、5曲目「Monster's Tango(モンスターズ・タンゴ)」。これはお兄様の中川幸太郎さんの曲です。

中川:兄に書き下ろしてもらった曲です。作曲家ですので、たくさんテレビや映画の音楽を依頼されてやっていて、こういう感じで、という要望に応えるのは得意なんですけど、いち作曲家でありアーティストであるからには、僕としては"丸投げ"をするのがいいのかな、と思いました。受ける方も、自由なんですけど、自由というのはある意味でいちばん難しい。僕の唯一のリクエストは『タンゴでやりたい』ということだけです。うちの兄らしい曲になったのでは、と思っています。曲の間にアドリブのパートもあって、われわれのバンド的な演奏ができてよかったんじゃないかな、と。


――7曲目の「Escher's Vision(エッシャーズ・ヴィジョン)」はサックス奏者の三木俊雄さんの曲ですね。

中川:僕は、彼がフロント・ページ・オーケストラで演奏している、この曲が個人的にとても好きなんです。それで三木さんに、この曲をSLIDE MONSTERSでやりたいと言ったら、『いいよ』ってトロンボーン4本に編曲してくれて。基本的には彼がアレンジしたものを僕が少し手を加えました。それこそエッシャーの絵のような、とらえどころのない不思議な感じで、これが三木さんの曲の特徴ですし、僕にはないところですね。自分にはない感覚をCDに入れるというのは、僕としてはとてもうれしいし、大事なことだと思っています。


――8曲目に置かれている、中川さんの「Masamune」という曲は?

中川:これは僕がずっとやっている侍BRASSのために書いた曲です。侍BRASSでは漢字のタイトルが付いているんですけど、これは「鍔音(つばおと)」というんです。それだと外国の人にはわからないので、外国に向けてのタイトルでなんかないかなあ、と考えて、名刀"正宗"の名前にしました。"Masamune"だと、これは何のこと? と聞かれても、カタナのシグネチャーの名前だ、と言えますよね。もともとはトランペット4人をフィーチュアしたファンファーレっぽい曲です。なので、CDの中でこういう明るいイメージの曲が欲しくて入れました。


――そして最後はジャコ・パストリアスの「Liberty City(リバティ・シティ)」。エリック宮城さんの編曲です。

中川:エリックさんが何にも言わずにこの譜面を書いてきたんですよ(笑)。実は違う曲をエリックさんに頼んでいて、それはそれで書いてくれたんですが、もう一つこれを持ってきて、『使っても使わなくてもいいから渡しとく』と。僕の想定したタイプの曲ではなかったんですが、この曲を入れるとアルバムの幅が広がると思って録音しました。ライブで盛り上がる曲ですよね。


――4人でやっているとは思えないようにビッグバンド的ですね!

中川:ジャコのオリジナルを知っている人はそう思って楽しめるし、知らない人も盛り上がると思いますよ。ジョーはこの曲を知らなくて、この曲ってメロディがなくてコードだけ、みたいな箇所がけっこうありますよね、そこを聴いて『これはなんなんだ?』って不思議がっていました(笑)。『ここはコードの動きを楽しむパートだ』と説明したら、ふーむ、と言ってましたけど。


――中川さん、曲のバラエティにはかなりこだわっているように思えます。

中川:僕はトラックごとにリズムやテイストが違うほうが好きですね。歌詞があるわけでもないので、自分のアルバムでもそうしています。


――メンバーの他の3人は、「僕はどの曲が特に好きだ」みたいなことを言ってますか?

中川:レコーディングの段階ではどんどんやってしまうので、まだそこまで行っていないんですよ。前回のときもそうだったんですけど、ツアーで同じ曲を何度も演奏していくうちに、曲の全体的なものが浮かんできて、ツアー中にそういう話が出るんだと思います。


――さて、コロナで観客の前での演奏ができなくなった時期が長くあって、やっと去年のある時期から少しずつコンサートやライブができるようになったわけですが、その間に中川さんが感じたことを教えてください。

中川:やっぱり観客の前で演奏して、僕たちが「これがやりたいんだ」と思ったことを観客の方々が受け止めてくれて、その反応が僕たちに返ってくる、ということがいかに大事か、というのを改めて感じましたね。それは、どれだけテクノロジーが発達しても変わらないんだ、と強く思います。お客さんがいる生演奏という、僕にとっては当たり前だったことの素晴らしさを感じています。


――待ちに待った4年ぶりのツアー、本当に楽しみです! 今日はありがとうございました。

SLIDE MONSTERS Eijiro Nakagawa L.V.Beethoven Marshall Gilkes Kotaro Nakagawa Toshio Miki Jaco Pastorius「Travelers」

Travelers

2022/09/03 RELEASE
ENR-211002 ¥ 3,300(税込)

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