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<特集>3日間晴天に恵まれた【FUJI ROCK FESTIVAL '22】、ライブレポ&撮り下ろし写真で振り返る

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 新潟県・苗場スキー場にて2022年7月29日~31日にかけて行われた国内最大級の野外音楽フェスティバル【FUJI ROCK FESTIVAL】。2020年の開催延期、2021年の“特別なフジロック”を経て、今年は“いつものフジロックを目指して”、マスクの着用、検温、大声での発声を控えるなどの感染防止対策を講じた中での実施となった。

 初日<GREEN STAGE>のトップバッターを飾ったモンゴルのThe HUから最終日を締めくくった石野卓球、そしてヘッドライナーのヴァンパイア・ウィークエンド、ジャック・ホワイト、ホールジーの姿を見るために、2022年は前夜祭を含めて69,000人の来場者が苗場に集まった。ここでは、稀に見る3日間晴天の中で行われたパフォーマンスの撮り下ろし写真とともに、国内外のアーティストたちが繰り広げた個性豊かなパフォーマンスの模様を振り返る。(Text: Billboard JAPAN l Photo: Hiroshi Yamaguchi [@hrc164] ※一部公式写真あり)

Michael Kaneko
10:30~ @ RED MARQUEE



 <RED MARQUEE>初日のトップバッターを務めたのは、シンガーソングライターのMichael Kaneko。「いつか4大ステージに出るのが夢だったので嬉しいです」と話したこの日は、近藤邦彦(Key.)、太田尚人(Ba.)、松浦大樹(Dr.)を迎えたバンド・セットでの出演となった。6月にリリースしたコラボレーション・アルバム『The Neighborhood』から、「GIRlS feat.大橋トリオ」や「SANDIE feat.さかいゆう」「RECIPE feat.ハナレグミ」」といった豪華アーティストらとコラボレーションした楽曲たちを、ゲストなしのバージョンで披露していく中、「SHIGURE」では2日目に自身のオンステージを控えた、さらさが駆け付けた。Michael Kanekoバンドのチルな空気に、さらさのスモーキーなボーカルが加わり、ゆったりとオーディエンスを踊らせる。Michael Kaneko自身も「RECIPE feat.ハナレグミ」では「レッドマーキー 俺はマイキー」と替え歌したりと、ごキゲンなライブで<RED MARQUEE>を幕開けた。

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THE HU
11:00~ @ GREEN STAGE



 2020年に予定されていた来日公演が中止になったため、ライブを待ちわびていたファンも多かったであろう、The HU。その日本初パフォーマンスは、快晴の<GREEN STAGE>にて「Shihi Hutu」の安定感たっぷりの演奏でゆっくりと幕を開けた。モンゴル独自の歌唱法であるホーミーや馬頭琴を駆使した、一筋縄ではいかない独特なステージングでじわじわと観客の興味を駆り立て引き込んでいく。迫力満点のツイン・ドラムとフロントマンのJayaが奏でるツール(縦笛)の軽やかな音色が、広大な<GREEN STAGE>に響きわたった「Black Thunder」や、軽快なビートに合わせてハンドクラップが沸き起こった「Yuve Yuve Yu」は、さらに観客を活気付けていた。そしてラストの「This is Mongol」と共に国境を超えた胸熱な一体感に包まれると、音楽が最もパワフルな世界共通の言語であることを証明してくれた。伝統をリスペクトしつつも、圧倒的なハード・ロックへと昇華させ、観るものを虜にする姿はなんとも爽快。9月に予定されているニュー・アルバムのリリースが今から待ち遠しい。

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No Buses
12:00~ @ RED MARQUEE



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OAU
13:00~ @ GREEN STAGE



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WONK
14:00~ @ RED MARQUEE



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Original Love
15:00~ @ GREEN STAGE



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JPEGMAFIA
16:10~ @ WHITE STAGE



 「JP!」コールに合わせて、トヨタのつなぎ姿でステージに登場したJPEGMAFIA。「みんなのためにグッド・シットをぶちかますぜ!」と始まったのは、「Jesus Forgive Me, I Am A Thot」。ゆったりとしたトラックに合わせて、ステージを行き来しながら披露される気概に満ちたラップに観客のボルテージは早くも爆上がり。続く「BALD!」はラストをアカペラを披露したと思ったら、「DIRTY!」でそのまま客席に飛び込み、もみくちゃになりながらご満悦の様子。突如通訳をステージに呼び、アカペラで歌うことを告げると始まったのは、なんとカーリー・レイ・ジェプセンの「コール・ミー・メイビー」のオートチューン・カバー。シングアロングしていた観客が多かったのにも驚いた。かなり暑かったようで、途中ぐったりとした様子で、2台のラップトップが設置されたテーブルに寄りかかったり、一旦退場する場面もあったが、最後まで持ち前のカリスマ性で乗り切っていた。その後も「WHAT KIND OF RAPPIN' IS THIS?」〜「TRUST!」とDJばりに楽曲をつないでいき、スロウタイとの未発表のコラボ曲もチラ聴かせしてくれた。メロウな「Free The Frail」から混沌としたエスニックなトラックが耳に残る「Rainbow Six」、そしてブロックハンプトンとのコラボ曲「CHAIN ON」でパフォーマンスを締めると、鮮やかにラップトップ2台同時閉じをキメた。予想不能な嵐のような怒涛のステージで、凄まじいものを見せつけられたという強烈な感覚に陥った。

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clammbon
17:00~ @ GREEN STAGE



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Awich
18:00~ @ RED MARQUEE



 まだまだ暑さの残る18時頃、<RED MARQUEE>にはフジロック初参戦の女性ラッパー・Awichが降臨。その姿を一目見ようと、入場規制がかかるほど大勢の観客が集まった。「Queendom」のイントロと共にAwichが現われると、冒頭から興奮を抑えきれない様子の観客からの熱気がむわっとあふれ返るようだった。3曲目「NOW」からはバック・バンドである丈青(Pf.)、秋田ゴールドマン(Ba.)、みどりん(Dr.)、そして社長(Mani.)ら、SOIL & “PIMP” SESSIONSのメンバーが登場し、サウンドに重厚感を増していく。

 「口に出して」「どれにしようかな」といったお馴染みの楽曲達に続き、中盤の「NEBUTA」ではアルバム・バージョンにも参加しているYENTOWNからの盟友kZmも登場。さらに「フジロックでしかできないコラボレーション!」とEGO-WRAPPIN'の中納良恵を呼び込んでの「色彩のブルース」では、2人の力強いヴォーカルでオーディエンスを沸かせた。「Revenge」前のMCでは「こんなこと、夢にも思わなかった。想像できなかった。もう何もかもやめようと思った時期もありました。でもやめなかった。それで気づいたことがある。やめなければいつでもリベンジできます」と語る彼女の素直な言葉は、リリックに説得力を宿す。後半も「GILA GILA」でJP THE WAVY、「Link Up」ではKANDYTOWNのKEIJUと、次々とゲストを呼び込んでいき、「TSUBASA」では愛娘のYomi Jahも登場。楽曲最後にはステージ上で2人で自撮りするという微笑ましい一幕も見せた。クライマックスの「Bad Bad」まで怒涛の約60分間、“女王”Awichは様々な表情を魅せながら濃密なライブを繰り広げた。

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HIATUS KAIYOTE
19:00~ @ GREEN STAGE



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DAWES
19:30~ @ FIELD OF HEAVEN

 手拍子と笑いが沸き起こった「苗場音頭」から、発売されたばかりの最新アルバムのオープニングを飾る10分近いジャム・ナンバー「Someone Else's Café/Doomscroller Tries to Relax」という意表をつく選曲で幕を開けたドーズの初来日ライブ。音楽一家に生まれたゴールドスミス兄弟を中心に、10年以上のキャリアに培われた確固たる演奏力と音楽的信頼によるタイトなアンサンブル、そしてヘブンの幻想的な雰囲気も相まって、観客は冒頭から息を呑んで聴き入っていた。新作のコンセプトになぞって、過去曲は大胆にアレンジが施されていて、エモいキーボードのフレーズ、哀愁漂うギター・ソロと極上のハーモニーが印象的だった「Somewhere Along the Way」、テイラーがハンドマイクで一心不乱に歌うファンク・ロック・ナンバー「When the Tequila Runs Out」、豪快なオルガン・サウンドに酔いしれた「If I Wanted Someone」など、どれも見ごたえ抜群。各メンバーの見せ場も作りつつ、ライブ・バンドとしての力量とアメリカン・ロックの良心と素養が存分に味わえる内容の詰まった1時間半だった。最後に披露された「All Your Favorite Bands」には、「君の好きなバンド達がずっと続くといいね」という歌詞があるが、彼らこそずっと続いて欲しい。こんなにも素晴らしいバンドなのだから。

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JONAS BLUE
20:00~ @ WHITE STAGE



 巨大なバックスクリーンの映像とスモーク。ド派手な照明演出の中登場したのはイギリス出身のDJ、ソングライター、プロデューサーのジョナス・ブルーだ。<WHITE STAGE>に響き渡る爆音の重低音で、「Ritual」「Fast Car」「All Night Long」と冒頭からオーディエンスを踊らせまくる。4曲目ではジョナスの呼び込みで登場したBE:FIRSTと共に「Don't Wake Me Up」を披露。爽やかで夏らしい装いを身に纏ったBE:FIRSTメンバーは、堂々としたパフォーマンスと初披露のコレオグラフィーでもオーディエンスを魅了した。ジョナスのステージはさらに続いていき、「Show Me Love」「Perfect Melody」「Needin‘U」と立て続けに自身のヒット・シングルやリミックスを織り交ぜながら、フロアを沸かせ続けた。

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VAMPIRE WEEKEND
21:10~ @ GREEN STAGE



 AC/DC「バック・イン・ブラック」をSEに登場した、初日のヘッドライナー、ヴァンパイア・ウィークエンド。エズラ・クーニグ(Vo./G.)が「オツカレサマ、フジロック。よろしくお願いします」と日本語で挨拶し、元気に「Sunflower」でライブをスタートしたものの、冒頭3曲で音響トラブルに見舞われ、「White Sky」終わりに一旦ライブは中断。しかしそんなトラブルをも吹っ飛ばすかのように再開後「Sympathy」からは快進撃を繰り広げる。

 ヴァンパイア・ウィークエンドが最後に【FUJI ROCK】に出演したのは2018年。その後コロナ禍で来日できず、披露できていなかった2019年リリースのアルバム『ファーザー・オブ・ザ・ブライド』からの楽曲を中心に、「This Life」「Harmony Hall」や、細野晴臣の「Talking」をサンプリングした「2021」もしっかりと披露。もちろん彼らのアンセムとも言える「Campus」「A-Punk」も披露しつつ、後半の「Oxford Comma」では地球柄の巨大ボールが客席に投げ込まれるサプライズも。アンコールのラストではボブ・ディラン「Jokeman」をしっとりとカバーし、多幸感溢れるステージで初日の<GREEN STAGE>に幕を下ろした。

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BONOBO
22:00~ @ WHITE STAGE



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BLOODYWOOD
11:00~ @ GREEN STAGE



 ロック・アクトが躍動した2日目の<GREEN STAGE>のトップバッターを務めたのは、インド発の“フォーク・メタル・バンド”=ブラッディウッド。伝統楽器を融合したという意味合いでの“フォーク”で、そのサウンドは日本のロック・ファンが敬愛するリンキン・パークやレイジ・アゲイント・ザ・マシーンなどを彷彿させる、ゴリゴリのミクスチャー・ロックだ。インドの伝統打楽器ドールの気迫あふれる演奏とボーカルのJayantのドスの効いたスクリームが入り乱れた「Gaddaar」でキックオフすると、Raoulの高速ラップが冴え渡る「Dana-Dan」、哀愁漂うフルートの音色が客席を包み込んだ「Jee Veerey」など、中毒性が高く同時にメッセージ性にも富んだナンバーが次々と繰り出された。各曲を紹介する形で、DVやうつ、女性の権利についてMCで熱く言及していたのも印象的だった。掛け声に合わせて無数の拳が<GREEN STAGE>を埋め尽くした「Ari Ari」で盛り上がりは最高潮を迎え、渾身の「Gaddaar」を最後に再び投下すると、2002年にタイムスリップしたかのような懐かしさと清々しさが入り混じる余韻を残した。

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崎山蒼志
12:00~ @ RED MARQUEE



 <RED MARQUEE>のお昼時に登場した、シンガーソングライターの崎山蒼志。サディスティック・ミカ・バンドの「よろしくどうぞ」をSEに登場すると、まずは「ソフト」を弾き語り。若干19歳の若者が1人で演奏していることを忘れさせる、圧巻のギタープレイで観る者を引き込んでいく。2曲目以降はサポートのバンドメンバーが参加し「舟を漕ぐ」「Heaven」と続けていく。「嘘じゃない」ではエレキギターに持ち替えたり、「Pale Pink」「水栓」ではハンドマイクに持ち替え、バンドの演奏にプラスして崎山がサンプラーを操作するアレンジを披露したり、様々なアプローチに目が離せない。【FUJI ROCK】初日は観客として楽しんでいたという崎山だが「昨日そこら辺を歩いてたんだけど、1人くらいにしか気づかれなかったのに、今日は僕の音楽を好きな人がたくさん集まってくれて嬉しい」と話し笑いを誘う。そんな和やかなMCとは裏腹にたちまち演奏が始まると、ステージ上を跳んだり転がったりアグレッシヴな演奏で圧倒し、ラストは「潜水」で圧巻のステージを締め括った。

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ORANGE RANGE
13:00~ @ GREEN STAGE



 「結成から21年、ようやくこのステージに辿り着いたぜー!」と<GREEN STAGE>に登場したORANGE RANGE。まずはヒット・ソング「花」で会場を温めてから「以心伝心」へ。あいにくの曇天ながらも「なんかイイ感じかも!」とHIROKI(Vo.)の振りでスタートした「ロコローション」「祭男爵」とサマー・アンセムを惜しみなく連発。「いろんな思いがあると思うけど、ステージにぶつけてくれたら全部俺たち返します」というRYO(Vo.)の言葉に応えるように、オーディエンスもクラップやジャンプで踊り狂っていた。沖縄本土復帰50年のテーマ・ソング「Melody」ではYAMATO(Vo.)が三線を披露したり、「上海ハニー」ではオーディエンスも全員でカチャーシーを踊ったり、青空も海もない苗場に彼らの地元・沖縄の風を吹かせたのは言うまでもない。後半もトップギアなまま新曲「Pantyna feat. ソイソース」「イケナイ太陽」と暴れ、最後にはメジャー・デビュー・シングルの「キリキリマイ」を投下。新旧を織り交ぜたキラーチューン連発で、最早日本の夏フェスには不可欠という存在感を見せつけた。

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折坂悠太(重奏)
15:00~ @ GREEN STAGE



 雨降りの予報を裏切り、曇り空に晴れ間が差してきた午後15時頃。<GREEN STAGE>には、折坂悠太が重奏編成で登場。そのステージの幕開けは「さびしさ」「みーちゃん」とアルバム『平成』からの楽曲達。ドラム、パーカッション、ウッドベース、ピアノ、そしてサックスといった、重奏ならではの重厚なサウンドで披露していく。「朝顔」はショート・バージョンながらアカペラでの歌唱も披露し、広大な敷地に歌声を響き渡らせたりとオーディエンスの心を揺さぶった。

 昨年は<WHITE STAGE>への出演が決定していたが、状況を鑑みて出演を辞退。そして今年は<GREEN STAGE>へとステージを変え、出演を果たした折坂悠太。「去年と今の状況のなにが違うのかと聞かれると、ここに来るまでにいろいろ考えたんですが、答えられません。“去年はやめた、今年はやる”そうやって試行錯誤するしか方法がわかりません」と、コロナ禍での在り方について苦悩を吐露。「フジロックがどんどん変化しながらこういうお祭りになったように、私も自分の営みを止めないでやってみようと思います。試行錯誤の場を私に与えてくれて、本当にありがとうございます」と述べ、未発表曲を披露した。「トーチ」のイントロでRCセクションの「わかってもらえるさ」を一節歌ったのは、彼なりの【FUJI ROCK】へ敬意の表し方だったのかもしれない。

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CreativeDrugStore
18:00~ @ RED MARQUEE



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FOALS
19:00~ @ GREEN STAGE



 最新アルバム『ライフ・イズ・ユアーズ』から「Wake Me Up」で軽やかにスタートした、フォールズによる約3年ぶりの来日ライブ。冒頭は、一際ポップでキャッチーな「2am」、ヤニスの囁くようなボーカルと煌びやかなシンセ・サウンドに彩られたノスタルジックな「2001」、ファン人気の高い多幸感溢れる「In Degrees」など、ここ数年の作品からの楽曲がメインに披露されていく。サポート・メンバー3名が加わったことによりサウンドの厚みが倍増し、6人がユニゾンで紡ぎ出すほとばしる人力グルーヴと繰り返されるキャッチーなリフは、<GREEN STAGE>を隅から隅まで揺らしていた。円熟味の増したヤニスのハスキーな歌声が苗場の山々に響き渡る「Spanish Sahara」で一旦クールダウンすると、ラストはおきまりの「What Went Down」から「Two Steps, Twice」になだれ込み、観客は荒れ狂う波のようにステップを踏んでいた。新旧楽曲を巧みに織り交ぜたセットで、これぞライブという鮮烈な余韻を残し、恵まれた状況とは言えなかった2013年の豪雨の<GREEN STAGE>出演を十分に払拭できたパフォーマンスになったのではないだろうか。

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ARLO PARKS
20:10~ @ RED MARQUEE



 その注目度の高さが伺える大入りの<RED MARQUEE>。バンド・メンバー4名が、ひまわりが飾られたステージで「Green Eyes」の演奏を始めると、「コンニチワ、フジロック、ハロー!」という挨拶とともにアーロ・パークスがにこやかに登場。音源だとクリアな彼女のボーカルだが、曲によってややハスキーだったり、細やかなニュアンスが感じ取れたのもライブならでは。その語りかけるような歌唱からは、ごく普通な日常とそこから生まれる万華鏡のような感情がストレートに伝わってくるが、それがさらに倍増されている気がした。とりわけ「Black Dog」では、その切なさに押しつぶされそうになった。ロンドンの残り香を感じさせるジャジーな「Bluish」やファンキーなアレンジの「Sophie」など、バンドの変幻自在でダイナミックな演奏も肝で、彼女のスウィートで親密な歌声をさらに引き立てていた。「このフェスティバルで演奏することは長年の夢だった」と話し、何度も観客に感謝していたアーロに対し、数年日本に住んでいたというドラムのジェームズも流暢な日本語で、その都度場を和ませていた。そして白眉だったラストの「Softly」では、<RED MARQUEE>全体が優しさと多幸感に包まれた。日々の不安や心配事にそっと寄り添ってくれるアーロの魔法のような歌声とキュートな立ち振る舞いは、フェス折り返し地点の疲れを瞬く間に癒してくれた。

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JACK WHITE
21:10~ @ GREEN STAGE



 冒頭で流れたMC5の「Kick Out the Jams」の歌詞にあるように、自身やこれまで参加してきたバンドによる数々のヒットが稲妻のごとくラウドで、生々しい迫力とともに披露された濃厚なステージだった。今年発売された2枚のアルバムからまず1曲ずつ手始めに演奏され、モノトーン・ブルーのミステリアスな照明の中、髪を振り乱しハイテンションでギターをかき鳴らすジャックの姿は音のマッド・サイエンティストそのもの。数か月前に再婚したこともあってか、湿っぽいカントリーからモダン・ロックに昇華された「Love Interruption」、メロウでしなやかなバラード「Love Is Selfish」、トゥワンギーでブルーグラス調のザ・ホワイト・ストライプス(TWS)の名曲「Hotel Yorba」とラブ・ソングを連発した際の表情は対照的に柔らかかった。ギタリストとしての天才ぶりは周知の事実だが、かなり大胆にアレンジが加えられたTWSの「Dead Leaves and the Dirty Ground」での狂乱シャウト、ヴォコーダー使いが遊び心のある「Hi-De-Ho」など、ボーカリストとしての多彩さも随所で感じさせられた。

 本編が「Ball and Biscuit」の脳天が痺れる壮絶なジャムで締めくくられると、アンコールは、カスタムのグリッター・ブルーのテレキャスから凄まじい音圧が発せられた「What's the Trick?」に始まり、誰もが待ち望んでいたTWSの「Seven Nation Army」で最強の大円団を迎えた。最後にメンバー全員で深くお辞儀をすると、ジャックは笑顔で「God bless you, Japan, Fuji Rock!」と言い放ち、前方にいる「サード・マン・レコーズのファンもちゃんと見えてる!」「君達は最高だ!」と感謝の言葉を述べ、満足げにステージを後にした。孤高のギター・ヒーローをサポートする同郷のドミニク(Ba.)をはじめ、クインシー(Key.)、ダル(Dr.)の手腕が所々で光る鋭敏な演奏も相まって、とにかく無駄がなくフル・スロットルな90分間の完璧に近いパフォーマンスにアドレナリン大噴出だった。

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Kroi
11:00~ @ WHITE STAGE



 最終日の<WHITE STAGE>トップバッターは、5人組ネオミクスチャー・バンドのkroi。「Kroiちゃんでーす」とポップに登場した彼らだが、「Balmy Life」で演奏がスタートすると、そのタイトなプレイでたちまち空気を一変させた。「Juden」「selva」と踊れるナンバーを続けた後は、「熱海」でクールダウン。「Pixie」では、長谷部悠生(Gt.)の繰り出すギターソロで最終的に歯弾きまで飛び出し、何よりも彼ら自身が全身全霊で音楽を楽しんでいることが伝わってくる。「気持ち良くなってもらってもいいですか?」とスタートさせた「Never Ending Story」ではゆったりと身体を揺らさせたかと思えば、後半はギアチェンジし「Network」「Sincha」「Fire Brain」と締め括った。そんなkroi自身も学生時代は“フジロッカー”であり、憧れのアーティストを見たステージに自分達も立っているということを実感すると「脈々と音楽は受け継がれているって感じました」と語る内田怜央(Gt./Vo.)。「また来ます絶対に」と決意表明し、初登場の【FUJI ROCK】のステージを後にした。

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JAPANESE BREAKFAST
13:00~ @ GREEN STAGE



 「Paprika」の澄みわたるシンセと渋いサックスの音色に合わせて、プードル(?)のぬいぐみトップスにグリーンのアイメイクという出で立ちで登場したミシェル・ザウナー率いるジャパニーズ・ブレックファスト。2曲目にキャッチーな「Be Sweet」を早々と投下すると、ミシェルのアコースティック・ギターとピーターのエレキ・ギターが鮮やかに対比をなす「Kokomo, IN」、そのクールで抜けのいいボーカルが苗場の山々に心地よくエコーした「Road Head」など、最終日の昼下がりにうってつけのメロウな楽曲がテンポよく繰り出されていく。終盤にかけては、カラフルなビジュアルと遊び心のあるサウンドが絶妙にマッチした「Everybody Wants to Love You」、「イチニサンシー、ジャンプー」というミシェルの掛け声が観客を一丸となって跳ねさせた「Slide Tackle」や手拍子が沸き起こったクランベリーズの「ドリームス」の疾走感溢れるカバーなどアッパーな楽曲で畳み掛けていき、「Posing for Cars」の聞きごたえ抜群のジャム〜スペイシーなアレンジが光る人気曲「Diving Woman」の熱を帯びたパフォーマンスで締めくくられた。キュートで自信に溢れたミシェルと息のあったバンドの演奏とともに色鮮やかで愉しげな楽曲の数々が、ゆったりと堪能できた華美な1時間だった。

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鈴木雅之
14:10~ @ WHITE STAGE

Photo: Hiroshi Yamaguchi


Photo: ⓒ Masanori Naruse

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BLACK COUNTRY, NEW ROAD
16:00~ @ WHITE STAGE



 ザ・ホワイト・ストライプスの「Seven Nation Army」に合わせて、メンバー6人ほぼ全員がフジロックのTシャツ姿で登場したブラック・カントリー、ニュー・ロード。今年上旬に中心人物のアイザック・ウッドが脱退したこともあり、全曲新曲という大胆不敵かつバンドの気骨が伝わってくるステージングだった。センターに立つルイスのジャジーなサックスとタイラーのややパンクなボーカルに惹き付けられた「Up Song」に続いて、メイが奏でる柔らかなアコーディオンの音色とタイラーが弓でベースを弾く「The Boy」と遊び心のある演奏で、緩やかにそしてドラマチックに展開されていく。終盤の「Turbines/Pigs」では、メイとジョージアによる息をのむほどピュアな歌唱と演奏を、残りのメンバーがステージに座ったまま鑑賞するという一幕もあった。そんなメイは日本語が堪能で、ドラムのチャーリーに「ここに来れて嬉しい、的なことを言って」などと曲間に指示されていたのも、なんだか微笑ましかった。そしてタイラーがラストの「Dancers」で感極まって涙してしまったのには、こちらも目頭が熱くなってしまった。やや荒削りではあるものの、複雑さと柔軟性を持ち合わせた至福のアンサンブルには、初期のアーケイド・ファイアを観た時の興奮に通ずるものがあったし、今後の活躍が本当に楽しみなバンドに出会えた気がした。

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SUPERORGANISM
17:50~ @ WHITE STAGE



 【FUJI ROCK】も後半に差し掛かった18時頃の<WHITE STAGE>には、インディー・ポップ・バンドスーパーオーガニズムが登場。5人体制になった彼らの新作『ワールド・ワイド・ポップ』を引っさげてのステージというだけあって、アルバム表題曲「World Wide Pop」からライブがスタートした。アンニュイに歌うオロノの両脇で、R&Bとソウルのキュートなダンスを披露するそのバランスがなんとも絶妙。「Flying」ではオロノがサックス・プレイを初披露したり、「Nobody Cares」ではステージ上に置かれたカウチに寝転んだり飛び跳ねたり、相変わらずの自由奔放なステージを展開していく。ライブ終盤にはオロノがランダムに選んだ観客をステージにあげ「カウチに座ってもいいし、ドリンクも飲んでいいよ」と、ステージ上のクーラーボックスからドリンクを振る舞ったりしているうちに、ステージ上の観客はついに30人ほどに。大団円の中「Something for Your M.I.N.D.」でフィニッシュとなった。

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TOM MISCH
19:00~ @ GREEN STAGE



 薄暗くなり、ミステリアスなノイズに包まれた<GREEN STAGE>に現れたトム・ミッシュと6名のバンド・メンバー。激しく点滅するブルーの照明に合わせて、トムの甘美なファルセットが客席を包み込んだ「What Kinda Music」、軽やかに刻まれるパーカションのリズムとトムのギター・ソロ、カイディの艶っぽいサックスに彩られた「It Runs Through Me」、そしてスナップ&ハンドクラップからシームレスにつなげた「Losing My Way」と、冒頭から表現力豊かでソリッドな演奏で魅せてくれる。盛り上げ上手なゲスト・ボーカルのジョエルを迎えた「Money」、オープニング・フレーズからどよめきが起こった「Disco Yes」、ファンキーなサックスと掛け合いが秀逸だった「Water Baby」など、その後もエモーショナルな演奏とともに、ほれぼれするようなグルーヴが始終紡ぎだされた。直前まで出演が心配されていたが、幻想的な雰囲気の中、スリリングな極上のサウンドの洪水とともにその魅力と実力を十分に発揮した、鳥肌立ちまくりの70分だった。

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MOGWAI
20:10~ @ RED MARQUEE



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HALSEY
21:10~ @ GREEN STAGE



 【FUJI ROCK】3日間の大トリを飾ったのはホールジー。イエローのボブ・ヘアーが目を引く、黒のトップスと白いショート・パンツ姿で登場。「Nightmare」でライブがスタートすると「Castle」「Easier than Lying」と続けていく。日本ではBTSとの「Boy With Luv」や、ザ・チェインスモーカーズとの「Closer」といったコラボレーションでの印象が強い彼女だが、そのステージはロック色がかなり強く、ギターに持ちかえた「Bad At Love」でもそれを痛感することになった。バックには大きなスクリーンに映像が投影され、さらに彼女の世界観に引き込んでいく。そして『ストレンジャー・シングス』の劇中で使用され話題の、ケイト・ブッシュ「Running Up That Hill」のカバーも飛び出し、日米共通のトレンド・ソングでも、オーディエンスを盛り上げた。クライマックスは、映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』の「Experiment On Me」から「Without Me」「I am not a woman, I'm a god」でフィナーレ。紙吹雪が舞い、花火まで上がる特攻ありまくりのビッグスケールで締め括った。全18曲を披露した約90分ほどのライブだったが【Love and Power Tour】を少しでも味わうことができるショーだった。

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MURA MASA
22:00~ @ WHITE STAGE





 来月発売されるニュー・アルバムから中毒性抜群なタイトル曲「demon time」で幕開けた、ムラ・マサによる燦爛たるステージ。今回はFlissとCoshaの二人のシンガーが帯同しており、ロングヘアをなびかせステージを行き来しながら、「踊ろう!」と異国ながら積極的にコミュニケーションを取っていく。一方、本人は深くキャップをかぶりドラムやギターの生楽器を淡々と演奏していたが、途中「あまりステージで話すのは上手じゃないんだけど……」とはにかみながら日本愛を語るギャップが愛らしかった。カラフルなビジュアルが絶え間なく背景で点滅する中、クレイロとのコラボ曲「I Don't Think I Can Do This Again」や唯一のインスト曲「Lotus Eater / Hell」のマッシュアップでは、とりわけ観客が沸き立っていた。中盤から後半にかけては、2004年のUKガラージ代表曲をオマージュした「bbycakes」やシンプルなギターのメロディに切ないボーカルが映える「2gether」、ジャジーなフレーズがアクセントとなった異色のハウス・ナンバー「Hollaback Bitch」、さらにはまだリリースされていない「e-motions」など新曲を数多く聞かせてくれた。ダンス、ポップ、パンクなどが血肉化された破格のセンスとアンセム級のナンバーとともに3日間の疲れを忘れそうなほど、無我夢中で踊らせてくれたムラ・マサに感謝。

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Photo: Hiroshi Yamaguchi (@hrc164)
































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