今や日本を代表するバンドの一組となった、Official髭男dismの「ミックスナッツ」のヒットが止まらない。7月6日には自身最速でストリーミング累計1億再生を突破。さらに2022年にリリースされた国内楽曲としては、初の1億再生を超えたことにも注目をしたい。令和音楽シーンでは、1億再生の突破が、国民的ヒットのひとつの指標となるからだ。（Text:ふくりゅう）

様々なジャンルや高揚感が折り重なったキラーチューン

　躍進のポイントは、TVアニメ『SPY×FAMILY』のヒットだ。オープニング曲「ミックスナッツ」は、Official髭男dismによる書き下ろし曲。2022年4月15日に楽曲配信がスタートし、5月18日公開および7月6日公開の総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”では首位を獲得している。6月22日には、本曲を表題曲としたEP『ミックスナッツEP』がCDリリースされ、さらなる伸びをみせることとなった。

　驚くべきことに、配信でのチャートイン13週目（集計期間：2022年7月4日～2022年7月10日）を迎えた週でも勢いは衰えず、“JAPAN HOT 100”のストリーミング指標では3週連続11度目の1位を記録。ダウンロードでは4度目の1位、動画再生では4位と、この3指標が牽引して2週連続3度目の総合チャート首位を獲得している。さらに、7月20日公開、Billboard JAPANアニメチャート“Hot Animation”では13週連続の1位を記録し、アニメ『BEASTARS』オープニング曲YOASOBI「怪物」を超え歴代2位を記録。アニメ『鬼滅の刃』オープニング曲である、LiSA「紅蓮華」が打ち立てた16週連続首位までもう一歩だ。

　その人気の秘密は、音楽性の高さに裏付けられている。ジャジーながらも疾走感に溢れたパンキッシュかつカラフルなポップソングである「ミックスナッツ」。まさに、Official髭男dismによるスキルフルな演奏力の高さを発揮した、様々なジャンルや高揚感が折り重なったキラーチューンだ。

　そもそも『SPY×FAMILY』とは、主人公である黄昏（父役：スパイ）が戦争を食い止めるためにスパイとして暗躍し、任務遂行のために疑似家族を作るところから物語ははじまった。疑似家族のメンバーは、黄昏、ヨル（母役：殺し屋）、アーニャ（娘役：超能力者）という多様な能力者の集まりであり、3人でフォージャー家を作り上げていく。スリリングな物語性を持つスパイものでありながらも、立場や能力によるすれ違いから生じたクスッと笑えるコメディー要素が幅広い世代から人気を獲得する理由となった。

　楽曲タイトルである「ミックスナッツ」とは、複数のナッツが詰め合わされたミックスナッツを意味する。ミックスナッツには娘役である、アーニャの大好物であるピーナッツが紛れているのだ。様々な種類が混在したミックスナッツとは、現代社会における多様性を言い表しており、さらに“スパイもの”という国境を超えて楽しめるエンタテインメントなテーマ設定と重なりヒットの追い風となった。

　結果、アニメ人気、楽曲人気など、様々な要素が折り重なり、配信リリースのタイミングから米ビルボード グローバル・チャート“Global200”にて、「ミックスナッツ」はTOP100内にランクインし続けている。ここで、チェックしておきたいのがアニメ『SPY×FAMILY』が、すでにSNSを通じて世界中で話題になっていることだ。

　そもそも『SPY×FAMILY』は、集英社『少年ジャンプ＋』にて連載中の漫画を原作とした作品であり、アニメ放送開始時点でコミックス累計発行部数は1250万部を突破（※5月末には2100万部超え）。アニメ放送によって、さらに人気は加速中だ。なかでも、Netflixではシンガポール、インドネシア、ベトナムなどアジアの国々を中心に、10か国以上のトップ10に入っていることにも着目したい。

　ネット上では、『SPY×FAMILY』に関連したSNS上でのファンアートが伸びをみせており、主役キャラであるアーニャに関連したミームが世界的にも現象化。国内でも「アーニャ、ピーナッツが好き！」のセリフを音声に合わせて踊るミームがたくさんアップされ、TikTokでは“#spyxfamily”のハッシュタグで投稿された動画の累計視聴数は、すでに100億を超えているという。

　こうした勢いや注目度の高さは、アニメ『SPY×FAMILY』主題歌である「ミックスナッツ」のヒットにも還元されることであろう。最新週である7月23日付けの“Global200”における「ミックスナッツ」チャートインの記録は104位を記録。最長チャートイン記録も13週となり、同チャートにおける日本発アーティストの最長チャートイン記録 歴代TOP10にもチャートイン。さらなる人気を予感させてくれる。

▲日本発アーティスト※の最長チャートイン記録 歴代TOP10
（集計期間：2020年9月4日～2022年7月14日）
※日本のレーベルからリリースされた、洋楽/K-POP以外のアーティスト

　2022年、今年を代表する曲として、Official髭男dism「ミックスナッツ」の注目度は下半期も継続して高まりそうだ。