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<コラム>J-WAVE「SAISON CARD TOKIO HOT 100」×Billboard JAPAN「HOT100」 2つの上半期チャートが映し出すヒット感の違いとは?
2022年6月10日にBillboard JAPANから上半期チャートが発表された(集計期間:2021年11月29日~2022年5月29日)。なかでもBillboard JAPANの総合ソングチャートである「JAPAN HOT 100」に注目した人も多いだろう。今回はBillboard JAPANの「JAPAN HOT 100」と、J-WAVE(81.3FM)の≪SAISON CARD TOKIO HOT 100≫の2つのヒットチャートの上半期分をそれぞれ分析し、各々のヒット感を比較していきたい。
≪TOKIO HOT 100≫とは、J-WAVE全番組のオンエアのほか、Billboard JAPANのデータより各音楽ストリーミングサービスのデータ・ダウンロードデータ・動画再生回数・CDセールスデータ・Twitterのツイート回数の要素をポイント計算してはじき出しているチャートである。「JAPAN HOT 100」とどのような違いがあるのか、さっそく見ていこう。(Text:日野綾)
結果が全く異なる2つのチャート
まずはそれぞれのTOP10を紹介する。
こちらの表からわかる通り、「JAPAN HOT 100」と≪TOKIO HOT 100≫のトップ10には同じ楽曲がBTS「Butter」しか入っていない。それどころか「JAPAN HOT 100」の楽曲のうち、TOKIO HOT 100にも同様の楽曲がランクインしているのは100曲中18曲しかないほど内容の異なる結果となっている。
例えば、今回の「JAPAN HOT 100」の1位を獲得したAimer「残響散歌」はBillboard JAPANの上半期チャートのラジオ指標でも1位となっているが、≪TOKIO HOT 100≫では11位にランクインしている。これはJ-WAVE以外の他局でのオンエアが多いことが考えられるだろう。一方、TOKIO HOT 100で上半期の1位となったのはVaundy「踊り子」だ。この曲は「JAPAN HOT 100」では25位となっている。踊り子は2021年11月17日にリリースされた楽曲だが、音源は11月11日のJ-WAVE番組『STEP ONE』にて先行解禁されている。その後、リリースを経て同年12月に入ると3週連続でTOKIO HOT 100のウィークリーで1位を獲得。2022年3月には有観客で開催となった【J-WAVE SAISON CARD TOKIO HOT 100 LIVE】にVaundyも出演し、「踊り子」を披露。ライブ効果もあり、2022年の上半期も引き続き支持されていたことが考えられる。
また、「JAPAN HOT 100」のなかで圏外だった楽曲がTOKIO HOT 100でランクインしているケースも多い。たとえばBE:FIRST「Brave Generation」は「JAPAN HOT 100」では圏外だったものの、TOKIO HOT 100で2位にランクインしている。「Brave Generation」は2月20日にオンエアされた『SAISON CARD TOKIO HOT 100』で首位を獲得した楽曲である。その後も3月13日付のチャートまで首位をキープし、4連覇を達成した。この結果は3月まで設置されていた番組サイトのVOTEボタンから寄せられるリスナーズポイントや、Twitterでのシェアが大きく寄与していると考える。というのも、BE:FIRSTをサポートする「BESTY」がSNSを通してVOTEリクエストやTwitterのシェアを呼びかけていたからだ。Billboard Japanチャートにランクインさせるべく、さまざまなアーティストのファンが上位を目指す行動は近年で多く見かけるようになってきた。BESTYも彼らの曲をチャート上位に入れるべく、そこに繋がるストリーミングの聞き方や応援の方法を常日頃から取り入れている。
さらに、この曲は札幌 FM NORTH WAVE、東京 J-WAVE、名古屋 ZIP-FM、大阪 FM802、福岡 CROSS FMによるJAPAN FM LEAGUEの共同キャンペーン「JFL presents FOR THE NEXT 2022」のテーマソングとなっており、J-WAVEと所縁のある曲である。そんな曲をJ-WAVEのチャートの上位へ登場させ、多くの新規リスナーへ届けたい気持ちが今回の結果に繋がったのかもしれない。「Brave Generation」以外にも「JAPAN HOT 100」で22位にランクインした「Bye-Good-Bye」も上半期のラジオ指標では2位に、TOKIO HOT 100では5位という好成績を残している。
JAPAN HOT 100とTOKIO HOT 100の特徴
両者のチャートの大きな違いの一つは洋楽のランクイン数だと考える。JAPAN HOT 100を見ると洋楽は37位のザ・キッド・ラロイ&ジャスティン・ビーバー「ステイ」のみだが、TOKIO HOT 100では半数が洋楽となっている。TOKIO HOT 100をみると、3位にアデル「イージー・オン・ミー」、7位にザ・ウィークエンド「サクリファイス」、8位にカミラ・カベロ「バン・バン feat. エド・シーラン」、9位にカイゴ ft. DNCE「ダンシング・フィート」とTOP10だけでも4曲もランクインしている。10位以降もハリー・スタイルズ「アズ・イット・ワズ」、ザ・チェインスモーカーズ 「ハイ」などアメリカのBillboardチャートでも連日ランクインしている楽曲が多く登場していた。上半期のJAPAN HOT 100に洋楽が1曲しかランクインしていない結果を見ると、ここにチャートインする楽曲はよりドメスティックなものが占めるようになっており、国内外問わず多様な楽曲がランクインしているTOKIO HOT 100の方がグローバルトレンドがより反映されていると考える。
一方でJAPAN HOT 100の全体の特徴を言うならば、過去のヒット曲が2022年上半期のチャートにも引き続きランクインしていることだろう。JAPAN HOT 100のなかで2020年以前にリリースされた曲は27曲あった。例えば2013年のback number「高嶺の花子さん」や2015年のback number「クリスマスソング」のようなロングヒットし続けている曲が今もなお100位以内に登場している。さらに興味深いことにJAPAN HOT 100に登場しているアーティストは全53組、TOKIO HOT 100は全84組となっている。Official髭男dismとVaundyが6曲、Ado・King Gnu・優里が5曲といった形で同じアーティストによる複数の曲がチャートインしているのが多く見受けられた。なお、最も多くの曲で登場していたのはYOASOBIで9曲ランクインしていた。
このようにそれぞれのチャートは全く異なる性質ではあるが、先ほど記述した通り共通してランクインしている曲が18曲ある。例えばマカロニえんぴつ「なんでもないよ、」はBillboard JAPANの上半期のラジオ指標では5位に、TOKIO HOT 100では14位に登場している。デビュー当時からラジオでも支持が高いOfficial髭男dismもBillboard JAPANの上半期のラジオ指標で「ミックスナッツ」が4位、「Anarchy」が7位にランクインしており、TOKIO HOT 100でもそれぞれ44位と89位に登場している。また、18曲中Vaundyは3曲共通しており、J-WAVEを中心にラジオでも人気の高いアーティストや曲がTOKIO HOT 100の上半期においても反映されていることがわかる。
最後に、今回はこの2つのチャートを取り上げたがBillboard JAPANのチャートには他にもさまざまなランキングや指標が存在している。時代が変わることで集計方法も日々進化しているが、Billboard JAPANのチャートはさまざまな角度からトレンドを掴めるものであることは今も変わっていないように思う。TOKIO HOT 100は今年4月より集計内容が変更され、Billboard JAPANのデータが合算されるようになり、東京の今のトレンドをより伝えるチャートにリニューアルされた。とはいえ、両者のチャート結果は今後も異なるものとなるだろう。上半期の結果を踏まえ、HOT100とJ-WAVEのTOKIO HOT 100の年間チャートはどのような結果になっていくのか。今からとても楽しみである。
記事初出時、本文の説明に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。(2022/7/13)