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<インタビュー>リトルブラックドレス、シティポップレジェンド達と化学反応を起こした新曲「逆転のレジーナ」を語る
リト黒ことLittle Black Dressの新曲「逆転のレジーナ」は、6月17日に劇場公開されるアニメ映画『怪盗クイーンはサーカスがお好き』(原作は、はやみねかおるのジュブナイルミステリー)の主題歌。作詞:及川眠子、作曲:林哲司、編曲:本間昭光というレジェンド作家が結集し、子どものころ『怪盗クイーン』シリーズを愛読していたというリト黒も熱唱を披露。とある理由のために呪いの宝石「リンデンの薔薇」を奪い合う怪盗クイーンと謎のサーカス団の勝負を鮮烈に彩っている。「逆転のレジーナ」の主題歌起用に至るまでの縁と運を感じさせる経緯、リト黒の同曲への思いなどについて語ってもらった。
レジェンド達から受けた衝撃
――映画のトレイラーを見ましたが、どんなストーリーなんですか?
リト黒:ネタバレになるので詳しくは言えないんですけど、狙った獲物は必ず盗むクイーンが「リンデンの薔薇」という宝石をサーカス団に横取りされてしまって、とある目的のために争うんです。子どもだけじゃなくて、大人のわたしが見ても、クイーンとサーカス団がそれぞれの理由で勝負するストーリーがエモすぎて。むしろそっちにフォーカスが当たっちゃいました。歌詞にある《悲しみが変えた世界》って、今の現実の世界にも通じるじゃないですか。こういうテーマを受け取りました、という話を及川眠子さんにして、作詞していただきました。
――及川さんの作詞は「心に棲む鬼」以来ですよね。
リト黒:お仕事はそれ以来ですけど、プライベートでもお茶会をしたり、作詞の師匠としてアドバイスをいただくこともあります。今回、主題歌のお話をいただいて、最初は自分で作詞作曲にトライしたんですけど、熱が入りすぎてウワーっとなっちゃって、ちょっと頭を冷やそうと眠子さんにご相談したんです。「一緒に書いてみようか」と言ってくださって、わたしが書いたものを見せて助言していただくのを繰り返して、最終的に「りょうちゃん(※リト黒)の思いは全部聞いたから」って眠子さんが形にしてくださいました。
――じゃあ、共作に近いですね。
リト黒:思いは眠子さんにすべて託しました。さっき言った《悲しみが変えた世界》という箇所は、わたしがメッセージとして受け取ったものなので、そこを変えないで書いてくださった感じですね。
――歌ってみていかがでしたか?
リト黒:サビのメロディが一番強くなるところで《強欲》とか《武器》みたいに濁点がついてアタックの効く言葉を持ってきたり、♪未来を~、のところも、メロディが明るくなるところで言葉も明るくなったり。「らい」って音は喉が開いて声も明るくなるので、ここにこのワードを持ってこられるのはすごいなと思いました。
――具体的になりすぎない範囲でストーリーのエッセンスを抽出して展開させる、想像力を刺激する歌詞ですよね。
リト黒:眠子さんは「残酷な天使のテーゼ」(『新世紀エヴァンゲリオン』主題歌)を、詞の依頼を受けた時点では本編が出来上がっていなかったのでほとんど少しの情報だけで書いたっておっしゃっていたんです。今回も、わたしからお伝えした原作のイメージしかご存じなくて。わたしのなかでも、もちろんアニメの主題歌だけど、Little Black Dressとして長く歌い続けられる曲を目指したかったし、そうお話ししていました。曲名の「レジーナ」はイタリア語でクイーンの意味なんですけど、怪盗クイーンは年齢・性別不詳という設定なので、女王とは言い切っていないんですね。なので「わたしのことなのかな?」って思ったり思わなかったりもできます(笑)。
――そこにも連想を挟んで、あえて距離を置いているわけですね。本間昭光さんとはファーストアルバム『浮世歌』以来ですが、林哲司さんは初めて?
リト黒:初めてです。実はこの曲は主題歌として書き下ろしていただいたものではなくて、点と点がつながって線になったというストーリーがあるんです。林さんから曲をいただいたのは主題歌が決まる前なんですよ。
――そうだったんですか!
リト黒:わたしはシティポップが大好きなので、林さんの曲もラジオでよくかけていたんです。本も読んだり、サイトをチェックしたり、配信があれば見たり、ライブやトークショーがあれば行ったり。それで、一曲書いていただけたらいいな……と思っておそるおそるお願いしたら、すぐ東京に来てくださって、ミーティングをした次の日にこの曲を送ってくださったんです。詞は自分で書くつもりで、杏里さんの「悲しみがとまらない」みたいな雰囲気がある曲なので、あんな感じで書けたらいいなと思っていたら、主題歌の話をいただきまして。
――『怪盗クイーン』の前にリト黒さんの曲だったわけですね。
リト黒:そうなんです。だから主題歌になったことをお伝えしたら「あ、そうなんだ!」ってビックリされてました(笑)。本間昭光さんにはインディーズ時代のアルバム(『浮世歌』)を総監督していただいて、いつか曲も歌ってみたいと思っていたんですけど、たまたま本間さんが劇伴を務められたアニメを見てたりしたので、お願いすることになりました。レコーディングには本間さんが紹介してくださったメンバーの方が来てくださったんですけど、そこで初めてドラムの山木秀夫さんにお会いしまして。
――山木さん、リト黒さんが2月に開催した【CITY POP NIGHT】でドラムを叩いていらっしゃいましたね。
リト黒:そうなんですよ。たまたまレコーディングの日に【CITY POP NIGHT】の開催が決定したんです。ダメ元で「あの~、決まったんですけど……空いてませんよね? お忙しいですよね?」って聞いてみたら、「次の日から静岡に行っちゃうんだけど、その日はたまたま空いてます」とおっしゃって、出演してくださることになったんです。山木さんとのご縁がつながったきっかけの曲でもあるんですよ。ちなみにこの曲のドラムは一発でした。
――一発ですか!
リト黒:“THE FIRST TAKE”です(笑)。しかも直前まで上の階のスタジオで別のレコーディングをしてらして。レコーディングが始まって、軽く一回サウンドチェックをやって本番をバーッと叩いて、「僕、もういいよ~。次行くね」って涼しげな様子で次の現場に向かわれました。
――さすがですね。
リト黒:めっちゃ職人技でした。衝撃を受けました。
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リリース情報
「逆転のレジーナ」
2022/06/08 RELEASE関連リンク
Interview:高岡洋詞
Photo:池村隆司
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