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NFT時代の新しい音楽表現!? ナイジェリア出身シカゴ発ラッパー、トビ・ルーが提示する進化形アーティスト像<コラム>
「Buff Baby」がバイラルヒット、ティックトッカーを中心に耳目を集める
突然だが、トビ・ルーというラッパーをご存知だろうか? 2018年にリリースした楽曲「Buff Baby」のイントロ部分で多くのユーザーがダンス・チャレンジを行い、TikTok上で披露したことでバイラル・ヒット。それをきっかけとしてティックトッカーを中心に耳目を集めたこともあり、知らぬ間に彼の曲を耳にしているという方もいるかもしれない。
ナイジェリアで生まれ、シカゴで育ったトビ・ルー。学生時代は類稀な運動センスを活かし、スポーツに打ち込んだ。特に野球はセミプロにまで昇り詰めたものの、選手生命を絶たれるような大怪我を負ってしまい、そんなこともあって音楽活動を本格化させたという。
「Buff Baby」のヒット以降も数々のシングルやアルバムをリリースした彼がサバティカル休暇を経て、2022年3月にミックステープ『Non-Perishable』を発表した。
この作品は「Hopeless Romantic」や「Meaningless」をはじめトラップやUKガラージといった軽快なビートにのる中毒性の高いフローを聴くことができ、また、2020年にリリースした曲にT-Painを召喚した「2hrs+」やDurand Jones & The Indicationsによるスウィートソウルな楽曲「Cruisin’ to the Park」をサンプリングした「Babycakes」、CHIKAのヴォーカルをフィーチャリングしたロマンチックな雰囲気の「The Last Dance(feat.CHIKA)」などなど、11曲33分というコンパクトさでありながら実に多彩な曲を楽しむことができる快作に仕上がっている。
@tobilou Hopeless Romantic
? original sound - savin lives everyday
懐かしのスクリーンセイバーを模したネタ的なものから、統一した解像度と世界観で描き出されるアーティスティックなミュージックビデオ、さらにトビ・ルーがキャラ化されたナードなセンスが光るアニメーションまで目眩く映像世界が繰り広げられている。
- 浮かび上がる新しいアーティスト像、NFT市場のアーリーアダプターへ
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リリース情報
アルバム『Non-Perishable』
- 2022/3/11 DIGITAL RELEASE
関連リンク
Text by Tomohiro Kobayashi
浮かび上がる新しいアーティスト像、NFT市場のアーリーアダプターへ
そのようなトビ・ルーの一連の動画を俯瞰しながら浮かび上がるのは、楽曲のプロモーションツールとしての動画コンテンツという既存の手法とは大きく異なり、第一に動画ありきの表現活動とでも言えそうな新しいアーティスト像だ。
それは楽曲単体であればストリーミングサービスで聴き流される時代において、より存在感を強く、受け手に強く承認されるべく導き出された最適解の一つのようにも感じられる。
さらにトビ・ルーから放たれるクリエイティブから垣間見られるのは、昨今注目を集めているNFTアートとの共通点だ。ミュージック・シーンではまだまだ未開の印象もあるNFT市場でアーリーアダプターになるのは彼のようなアーティストではないかと想像に難くはない。
2022年は『Non-Perishable』だけでなく、さらなる音楽作品(おそらくそれに付随する動画コンテンツ)の発表も予定しつつ、それに関連するマーチャンダイズやNFTも展開することを公言しているので、音楽アーティストとしての新未来型を提示してくれることに期待が高まるというものだ。
リリース情報
アルバム『Non-Perishable』
- 2022/3/11 DIGITAL RELEASE
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Text by Tomohiro Kobayashi