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<インタビュー>HYがポケモンとタッグ、沖縄から日本全国そしてアジアに元気を届ける「空色」



HYインタビュー

 バンド活動20年の中で、HYは世代を超えたファンとの交流、そして音楽を通して紡いでいく言葉の力を目の当たりにしてきた。言葉が繋ぐ人生のサイクルを表現した最新アルバム『HANAEMI』を引っ提げたツアー【HY HANAEMI TOUR 2022-2023】では、コロナによって長く会えていなかったファンとの再会を心から満喫している。

 そんな彼らが発信する音楽に重なるプロジェクト「そらとぶピカチュウプロジェクト」が沖縄県内で展開中。ゲームやアニメを通して、外に出る楽しさを世界中に届けてきたポケモンが、昨今のコロナ情勢により大きな打撃を受けている航空・観光業界を応援するため、そして、人と人、人と地域をつなぐことで、旅の楽しみを届けるために発足した本プロジェクトのテーマソングとして、HYが書き下ろした「空色」は、“楽しく彩られた、ワクワクするような日々をお届けしたい”というテーマにぴったりの楽曲だ。新曲「空色」を中心に、最近のHYの活動について話を聞いた。

左から:名嘉 俊(Dr)、仲宗根 泉(Key & Vo)、新里英之(Vo & Gt)、許田信介(Ba)

――現在みなさんは【HY HANAEMI TOUR 2022-2023】を開催中です。念願のツアーだと思いますが、ここまで何本かライブを終えていかがですか?

新里英之:コロナで延期になったけど、それでもチケットをずっと持って足を運んでくれるファンの方がいるんですよ。どうしても音は止めたくない、みんなに元気を出してもらいたいと思って、去年はリモートでライブをたくさんやったんです。それでもリモートは何か違うな、距離感が遠いな、みんなの声が聞こえないなって。ライブはいろんな演出が重なって、空気感を作っていくんですけど、終わった後に手拍子が聞こえないこともめっちゃ寂しいなと思ったんですよ。この【HANAEMI TOUR】が始まって、みんなと目を合わせることで、改めて音楽って最高だって、ファンの方々もより大切に僕たちの音楽を聴いてくれている気がしたんです。

――ファンの方々は1年以上ツアーを待っていたわけですからね。

名嘉 俊:ツアーを中止にする選択は全くなかったですね。アルバムのコンセプト「花笑み」には「受け取った人が笑顔になるように」という意味もあって、届けたいという気持ちが強くあったので。エンターテインメントって生きる上での順番で言えば何段か下なんですよね。そんなエンターテインメントを仕事一本でやっている中で、変わるべきものと変わっちゃいけない部分についてはメンバーとスタッフで話し合った数年だったんです。今回の【HANAEMI TOUR】が開催されるにあたって、自分たちHYが変わらずにできることは、両手を広げて笑顔で待っていること。自分たちはスピーカーからでっかい音を鳴らして喜びとか感動の涙を流すことだけじゃなく、大爆笑も起こせるバンドだと思っているので。曲の中でいきなり泉が書いた寸劇が始まったりするんですよ。この2年間で溜めていた部分を大放出しながら、【HANAEMI TOUR】ではファンの方と会える喜びを感じていますね。

仲宗根 泉:ファンのみなさんからは「こんなにおもてなしをしてくれるのはHYだけです」って言ってもらえるんです。私たちがステージを降りるまでは、みなさんへ最高のおもてなしを届けようと考えているし、お客さんも最後の最後まで笑ってくれてる。それが私たちがライブをやった意味だったりするし、「元気だった?」って歌詞を通してファンのみなさんと会話をしているような瞬間がいくつもありますね。

許田信介:まだ声が出せなかったりして寂しい部分もあったりするんですけど、自分たちがたくさんのパワーをもらえているし、改めてライブをずっとやっていきたいなって思いましたね。「いーずーコーナー」っていうのがあるんですけど、アドリブでダジャレを言わないといけないんですよ。それが一番……。

仲宗根:楽しみ?

許田:楽しみではない。

新里:喜び?

許田:&ストレス。

一同:ははは(笑)。

仲宗根:本当は1個だけ言えばいいのに、調子乗って3個ぐらい言うんだもん。だから、すごい楽しんでるんだと思いますね。

――公開されているデジタルパンフレットを見ましたけど、「楽しみ方」として、とにかくいろいろなことをやりたいという思いが溢れていますね。

名嘉:2022年を振り返った時に、「今年はHYのライブに行ってよかったよね」って絶対に言ってほしいので、いずが言ったように最後の最後まで抜かりなく、HYができる寄り添い方をしていますね。

――拍手の代わりに鳴らす「HeartY 手作り楽器」が気になりました。

新里:子供たちと一緒にワークショップをやっているんです。ヤクルトのちっちゃい容器とかペットボトルに、自分のアレンジで可愛いテープを貼ったり、お絵描きをしたりして、世界に一つだけの楽器を作ろうと。楽器には太鼓とマラカスがあって、その場で子供たちと演奏してワイワイしたりするんですけど、それで終わりじゃなくて、もしよかったらお父さん、お母さんとライブに来る時に、またこの楽器を持ってきて一緒に楽しもう、というスタンスで。次に繋げていきたいなという思いがあって、「ぜひ持ってきてね」という感じです。

名嘉:自分たちの世代って、ライブを観に行く機会がなかったんです。だから、きっかけになってほしくて。「HeartY活動」の一環として、どんどん垣根をなくしていって、音楽と触れ合えるように子供たちと近い距離で楽器を作ったりしていますね。子供たちは自由で、いろんな角度から楽器を作っていくのでワークショップは楽しいですよ。

――それでは親子連れでライブに来るお客さんも増えたのではないですか?

名嘉:うん。増えたね。

新里:本当に増えましたし、一緒に成長していますね。バンドを20年やっているとHYのファン同士で結婚して、ベイビーが生まれて、そのベイビーと家族で一緒に来たりっていうストーリーも見てきたわけだし。ファンの幅は広くなっていますね。

仲宗根:親子3代ですよね。私たちと同じ世代で60代くらいのお父さん、お母さんと家族で来る場合もあれば、親が私たちと同じ世代で2、3歳くらいの子供を連れてくる時もあるし、年齢が幅広くなりすぎて。

新里:「こんな素敵なバンドがいるからライブに連れて行きたい」ってお母さんを無理やり連れてきてくれたファンの方の話を聞いたことがあります。「20年やっている中で、音楽に滲み出る人生、厳しいけどつらくて頑張ってきた人柄はライブで観てもらわないと分からない」って。その話を聞いた時は本当に嬉しかったですね。

――リリースから1年以上が経過した『HANAEMI』は、みなさんにとってどのような作品になっていますか?

新里:『HANAEMI』は1曲1曲が人としての“花”の咲かせ方を表しているような気がしています。同じ花でもタイミングによってまだ咲かない花、すぐに咲いた花、遅く咲いた花――育て方もタイミングもいろいろあると思うんだけど、いろんな場面での咲かせ方がそれぞれの曲にあるような感じがして。「あそこの花はすごく綺麗に咲いているね。羨ましい気持ちもあるけど、あなたならではの花の咲かせ方がある。ゆっくりかもしれないけど花は必ず咲くんだよ」って、1曲1曲が言っている感じがします。

仲宗根:作ってから1年も2年も経っているアルバムに、ツアーでどう気持ちを乗せていくのかが苦戦するのかなと思っていたんです。だけど、やってみると意外と曲に引っ張られていくようで、ブランクが感じられなかった。自分たちで作った曲なんですけど、曲に励まされる自分がいたり。「この曲をライブでこうすると、みんなはこんな風に聴いてくれるのか」とか、想像していたものとは違う反応だったりすると、それも嬉しいなと思ったりするし、その曲を知っていたつもりだったけど、実際にライブで歌ってみるとお客さんとの化学反応で、思っていたよりも、もっと大きな歌やメッセージに変わっていったりして。ツアーは来年の1月まで続いていくので、この曲たちがどんな風に変化していくのか、どんな花を咲かせてくれるのか楽しみです。

名嘉:種を植えて、芽が出て、花が咲いて、最後に種を落としてっていうサイクルのように、日頃生きている中で生まれてくる生きがいや素敵な言葉は、誰かに伝わって繋がっていくと思うんですよ。そんなサイクルをみんなでツアー毎に感じていけたらいいなと思っているので、1本1本があっという間なんですよね。最後にファイナルを迎えた時に、どういった種を落とせるのか。次のアルバム、次は25周年という意味でも、この『HANAEMI』のツアーは大事だと思っていますね。

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――HYとしては、今年初の楽曲「空色」がデジタルリリースされています。「そらとぶピカチュウプロジェクト」のテーマソングですが、お話を聞いた時はいかがでしたか?

名嘉:「もし旅をすることに対する制限がなくなったら、ポケモンと楽しく旅ができるようなプロジェクトにします」という話を聞いて、「これはやりましょう」となりました。どんどん自分たちも魅了されていきましたね。めっちゃハマってしまって、大変ですね(笑)。

――ひでさんは、先ほど『ポケモン GO』をプレイしていましたね。

新里:あ、見てました(笑)? 沖縄からアジアに向けて、コロナだけどポケモンの力で元気にさせたいっていう熱い言葉があったので、もしHYでよければという気持ちが強くて。そこからテーマソング作りに入っていったんですけど、みんなそれぞれ3曲ぐらいできました。気合いが入っていたので、その中から1曲を選ぶのは大変だったんですけど、しゅんが一番空を見上げて作った「空色」を作ってきてくれて。ミュージック・ビデオでもピカチュウと一緒にダンスをしていて、いい仕上がりです。

仲宗根:ピカチュウの可愛いイメージがあるから、私たちが歌っても合うのかなという悩みがあったんです。でも、一緒に宮古島で歌わせてもらったりすることで、だんだんと自分たちの自信にもなっていったりして。これからピカチュウと接する機会も増えてくるんですけど、私たちとピカチュウたちの思いをいろんな人たちが聴くことで、小さい子や、お母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんが、HYというバンドを知ってくれたら嬉しいなと思います。


――しゅんさんとしてはどのような楽曲になりましたか?

名嘉:HY史上一番難しくて、これが通った時に「マジか、これをみんなで演奏するのか……」と思いました(笑)。今の若い世代の楽曲を意識して、歌詞も早口に、リズムも16ビートで作ったんですよ。でも、だんだんとバンドとしても形になってくるし、自分たちも22年やってるから、ちゃんと表現力も出てきて。この曲がいつか自分たちをどこか違うところに連れて行ってくれると思うんですよ。そういうことも自分は楽しみにしているし、もう、これより難しいのは作りません。あとはシンプルな8ビート刻みです(笑)。

――ははは(笑)。信介さんは演奏していてどうですか?

許田:演奏していて、ひぃひぃ言ってるので、まだ自分のものにできてるとは言えない……もっと成長していくんだろうなと思う曲ですね。

名嘉:縦のリズムからブレイクとか、いろんなリズムが出てくるんですよ。本当にやりがいのある曲だなと思います。

――先ほどの「若い世代を意識した」というのは?

名嘉:自分の意識的には楽しくしたかったんです。縦ノリでジャンプして、そこにダンスが加わって、お子さんが変なダンスをして家族みんなでゲラゲラ笑ってるような、家族を繋ぐ楽曲にしたいなと思っていました。

――宮古島の海開きで「空色」を披露している動画を観ましたけど、子供たちが楽しそうに踊っていましたね。

新里:踊ってましたね。可愛かった。「そらとぶピカチュウプロジェクト」は家族を繋げるテーマというのもありますし、本当にたくさんの人に楽しんでほしいなと思いますね。沖縄に来たらお土産品とか全部がピカチュウなんですよ。紅いもタルトも、モノレールも、バスも、飛行機も。お子さんが喜ぶ姿が見られると思います。

――ひでさんと泉さんの歌い方もいつもより弾むような感じに聞こえます。

仲宗根:そうですね。ひではもともと明るくて、私は明るく発声するように心がけていますね。普通に歌うと重く、暗くなってしまうんです。歌詞も明るいし、「空色」って言っても“ブルー”な暗い感じになってはダメなので、そこは気をつけながら歌っています。基本的には楽しいですし、リズムもドッドッドッって感じなので、自然と明るくはなりますね。

――子供たちの視点で意識した歌詞はありますか?

名嘉:今の子供たちって、コロナ禍の中で、自分たち以上に思い出作りが難しい年代だと思うんですよ。イベントが中止になったりして、卒業アルバムを開いた時に何が残ってるんだろうって。子供たちって、「テレビで観た美ら海水族館のジンベイザメが見たいな」とか、「ラジオから流れてきたこの曲ってどこで聴けるの?」とか、いろんなところで、いろんなものを見てるから。Dメロはそういったお子さんの目線をイメージしていきましたね。

――しゅんさんが出版した絵本『バードランド』に付属されている「singing singing」も、イントロに子供たちの声が入っていたりして、どこか一貫性を感じました。

名嘉:あれは、いずの娘さんをはじめ、仲間たちが参加してくれて、イメージ以上の作品に仕上がった、自分も気に入っている1曲です。ああいったシャッフル系のリズムって身体が戻ってくるので、「singing singing」もどこかでお届けできたらいいなと思いますね。

新里:個人的な思い入れがあって。ツアーで新潟を訪れたときに、寿司屋さんでしゅんとバッタリ会ったんです。「おお! ここで会うのも縁だな。飲むか。最近、曲作りどうね?」って聞いたら、「いいのできてるよ」って聴かせてくれたのが、この「singing singing」だったんですよ。沖縄で仕事が終わった後に、車の上にカヤックを乗せてしゅんと一緒に釣りをした時の思い出の曲なんです。海から見える島を前に、改めて自分たちはなんていいところに住んでるんだろうと思ったところから始まって、しゅんと2人で行ったあの思い出がこの「singing singing」にはあります。こういうところから歌って生まれるんだなって、そんな楽しい思い出が詰まっています。

仲宗根:初めて聞いた。2人仲いいんだね。

名嘉:いやいやいや(照笑)。バードランドは鳥たちの憧れの島で、人間にとっての“バードランド”はどこなんだろうとか。カヤックで沖に出て、ひでと一緒に見た沖縄の島が思ったより澄んでいたのもあって、そこから生まれた曲ですね。

――ほかにも楽曲作りは進んでいたりするんですか?

名嘉:どうなんですか?

仲宗根:進んでるのもあれば、って感じだね。今から作らなきゃいけないものもあるし。

新里:自分は昔作ってた曲に今の自分を取り入れたいので、歌詞の見直しとか、そんなことをやっていますね。

名嘉:次は15枚目のアルバムになるので、またHYらしい1枚のアルバムができたらいいなと思いますし、それぞれがまた挑戦していくのが楽しみですね。今は2、3曲アッパーな楽曲ができていて、いずのバラード以外はアッパーでいいんじゃないかと思うくらい(笑)。そのほうがツアーもやりやすかったりするし。

仲宗根:お尻叩かれたらみんな書き始めます。「やらなきゃいけないねー」くらいだったら、まだですけど。

一同:ははは(笑)。

許田:僕はその間に筋肉を。この歳になると身体を動かすことが多くて、体調管理はしっかりやらないといけないですね。

名嘉:10歳上くらいのコメントだし(笑)。

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