Billboard JAPAN


Special

清水美依紗『High Five』メジャーデビュー記念インタビュー



清水美依紗『High Five』インタビュー

「世界で活躍する歌手になりたい」

 幼年期からディズニーが大好きで、ディズニーの曲をよく歌っていた女の子がやがてディズニーのグローバルの祭典『アルティメット・プリンセス・セレブレーション』の日本版テーマソングを歌うことに──

 そんなリアル・シンデレラストーリーを歩んできた若き実力派シンガー・清水美依紗(しみずみいしゃ)が満を持してメジャーデビュー。これを記念して実現した今回のインタビューでは、そこに至るまでの彼女の物語と人間性も含めた魅力、そして、自分と悩めるファン&リスナーへ「ありのままの自分を受け止めてほしい」というメッセージを込めた作品『High Five』について語ってもらった。夢を叶える為に近道をせず、いくつものハードルを自分に課して乗り越えてきた清水美依紗の生き様、ぜひご覧頂きたい。

音楽で自分を解放する楽しさを知ってしまって

--幼い頃から音楽や歌うことは好きだったんですか?

清水美依紗:私はピアノやヴァイオリンを習っていて、お母さんがずっと歌を聴かせてくれるような環境で育ったので、私も自然と音楽や歌うことを楽しんでいました。その頃からディズニーの曲を好んで歌っていました。

■清水美依紗 - ディズニープリンセスメドレー Disney Princess Medley

--幼い頃からディズニーソングが好きだった女の子が、やがて ディズニーのテーマソングを歌うアーティストに。めちゃくちゃドラマティックな人生を歩まれていますね。

清水美依紗:私もビックリです。母の家系がすごく音楽が大好きな人だらけで、その影響もあってクラシックやディズニーの曲を聴いて育ったんです。あと、80年代、90年代のアメリカのポップミュージック、マライア・キャリーなどの曲もよく聴いていましたし、アリアナ・グランデのことも自分の人生に大きな影響を与えるレベルで大好きになって。おじいちゃんが好きだったジャズもよく聴いていましたし、本当にいろんな音楽に触れて育ってきました。

--そこからどのような流れで、自らも音楽の世界へ進みたいと思うようになっていくんでしょう?

清水美依紗:中学に入ると部活があるじゃないですか。私はそれまで器械体操をやっていたから「体操部に入りたい」と言ったんですけど、お母さんが「いや、合唱部でしょう」と。それで合唱部でハーモナイズドな歌を舞台で歌うようになって「楽しいな」と感じるようになって。また、お母さんがミュージカルのワークショップも薦めてくれて、それに参加したことがきっかけで「歌手になりたい」と思うようになりました。

--ミュージカルのワークショップでどんな体験をされたんですか?

清水美依紗:ヤングアメリカンズという、世界中でボランティア活動として音楽表現の素晴らしさを教えているワークショップだったんですけど、そこで音楽で自分を解放する楽しさを知ってしまって。当時の私は内気な性格で、決断力もあんまりなくて、自分のクラスの教室に入ろうとするだけでも緊張するような子供だったんですけど、そのワークショップで思いっきり歌ったり踊ったりする機会に恵まれて、さらに「ソロで『レ・ミゼラブル』の「オン・マイ・オウン」を歌ってみないか」と言ってもらって、内気な私が「やりたい!」と思って全身全霊で歌いました。

--それで自己解放することが出来たんですね。

清水美依紗:すごく大きな体験でした。歌っているときが唯一自分らしくいられるというか、自分を繋ぎ止められるツールになっていって。それで歌手になるという夢を追い求めるようになりました。そこから即座に「音楽を学ぼう」と本気で思って音楽科のある高校へ進学して、声楽を専攻して、オペラにおける基礎的な呼吸の使い方などを学んでいきました。

--その高校時代に歌番組へ続々と出演していくことになるんですよね?

清水美依紗:そうなんです。文化祭で歌った姿を後輩が録画してSNSに投稿していて、そしたらその動画がすっごい再生されていたんです。私は「高校生になったら歌番組に出るんだ」という目標を掲げていて、何回もオーディションを受けたりしていたんですけど、出演する機会には恵まれなくって。でも、その動画をきっかけに「出てみませんか?」とお声掛けいただいて、それから『THEカラオケ☆バトル』や『歌唱王~歌唱力日本一決定戦~』『音楽チャンプ』『関ジャニの仕分け∞』などの歌番組に出られるようになっていったんです。

--そして、高校卒業後にニューヨークへ。

清水美依紗:大好きなアリアナ・グランデの影響もあって、自然と「世界で活躍する歌手になりたい」という気持ちになっていって。でも、自分には表現力が足りないと思っていたので、歌も演技もダンスも総合的に学べるジャンルと言えばミュージカルだし、歌手を目指すきっかけになったのもミュージカルの曲でしたし、それでニューヨーク・フィルム・アカデミー・ミュージカル・シアターで勉強することにしたんです。ただ、ミュージカルって演技がベースにあるじゃないですか。でも、私は演技なんてしたことがなかったので、まずセリフをひとつ言うだけでも難しかったですし、それ以前に当時は英語もそんなに喋れなかったので、台本を読むだけでも大変で。

--めちゃくちゃ高いハードルと対峙することになったわけですね。

清水美依紗:そこで歌詞やセリフというものがどれだけ大事なのか痛感しましたし、おかげで表現力はすごくレベルアップしていったなと思うんですけど、その当時はめちゃくちゃしんどかったですね。毎週のように母に電話して「帰りたい」って言ってました(笑)。でも、そのハードルを乗り越えていかないと単位も取れないから頑張るしかなくて。ただ、先生方も同じクラスの子たちも私が話しやすい環境を作ってくれて、私が演技しやすいように、歌いやすいようにしてくれて。その経験は今、日本でこういう仕事をしていく上でも活きていて、みんなで楽しく仕事ができる環境を率先して作ろうと思えるようになっているんです。そういう人間性的な面でも、ニューヨークでの体験は大きな糧になっています。

NEXT PAGE
  1. アリアナ・グランデは私に夢を与えてくれた人
  2. Next >

アリアナ・グランデは私に夢を与えてくれた人

--あらゆる面で成長することができたと。

清水美依紗:ニューヨークへ行く前、高校生のときは「自分がいちばんだ!」と思っていたんですよ。そんな自信過剰な私の鼻がポキッと折られるところからスタートしたので(笑)。それだけ、そこにいるみんなの実力が凄かったんです。演技がすごく上手な子がいたりとか、ダンスがすごく上手な子がいたりとか、歌がズバ抜けて上手い子もいたりして、それでいて協調性もあったりするんです。本気で世界で活動していく覚悟を持った子たちが集まっているので、あらゆる面でプロ意識が高かったんです。なので、技術的なことだけじゃなくて、精神的にも育ててもらえたと思います。

--まるで映画やアニメのような物語ですね。歌番組で優勝したりして「自分がいちばんだ!」と思っていたけれども、次のステージへ行ったらとんでもない実力者たちがたくさん現れて「上には上がいるんだ」と鼻を折られて、それでも「ここで頑張っていくんだ」と高いハードルを乗り越えていかなきゃいかなくて……

清水美依紗:本当に大変でした(笑)。

--ただ、近道をせずに堅実に一歩一歩進んできたからこそ、今の清水美依紗が在るんだなと感じました。

清水美依紗:近道を通るようなことは一回も考えなかったですね。元々自信がない状態から新しい自分を見つけて、そこで自信を持つことが出来ても、もうひとつ上のレベルに行くとまた自信を失って。それでもニューヨークでいろんなことをやりきって日本に帰ってきたら、今度はコロナ禍で世の中が暗い感じなっていて「私、音楽できるのかな?」とまた自信を失くしたりしたけど、SNSで自分の歌を投稿していたら見つけてもらえて、それで大好きなディズニー映画のテーマソングを歌わせてもらえたことが自信になって……なので、本当に落ちたり上がったりの繰り返しだったんですけど、そうやって一歩一歩進んできたから今があるんだろうなって自分でも思います。

--何があろうと諦めなかった。そこに美依紗さんの凄みを感じます。

清水美依紗:選択肢を広げずにある程度狭めていくことが重要だと思っていて、選択肢がありすぎると、私の場合は軸がズレちゃうと思うんです。だから、いつでも目標をひとつしっかり掲げて、その選択の責任を自分で負うしかない状況を作ってきた。そうやって進んできたからこその今なのかなと思いますね。「あのとき、お母さんがこう言ったから」とか「あの人がこう言ったから」みたいな言い訳は絶対にしたくなかったし、だからこそ自分の道は自分で選んできたんです。なので、誰かに「どうすればいいと思う?」と相談されても「逆に自分はどうしたいの?」と言っちゃいます(笑)。自問自答しながら選択して進んでいくことが大事だと思うので。

--誰かのせいにしない為にも、すべて自分で決めた道を歩んできたと。

清水美依紗:すごく信頼している方に言われた言葉が今でも私の指針になっているんですけど、「今起きている良いことも悪いこともすべて自分が作り上げているんだ」と。たとえ自分以外の誰かが悪くても、それも自分が作り上げた環境だと思えたら、自分と戦える。そういう考えを持てるようになったことも大きいと思います。

--あと、ここまで頑張れた要因として「世界で活躍する歌手になりたい」という意思と、そう思えるきっかけを作ってくれたアリアナ・グランデの存在も大きかったんじゃないですか?

清水美依紗:そうですね。アリアナ・グランデは私に夢を与えてくれた人なので、本当に自分の中で大きい存在で。女性としてもすごく尊敬していますし、アーティストとしても……本当に神だと思っています(笑)。

--なんでそこまでアリアナを敬愛するようになったんですかね?

清水美依紗:元々、女優さんじゃないですか。ドラマなどにすごく個性的な役で出ていたりして、そのときは「面白い女優さんがいるな。歌も歌えるんだ」ぐらいの印象だったんですけど、アリアナのデビュー曲を聴いたときに「え、こんな歌い方が出来るの?」と衝撃を受けて。それからSNSなどでアリアナの人柄とか性格も知っていってどんどん惹かれていったんです。ダンスも出来て、ブロードウェイにも立っていて、すごく多彩ですし、自分が夢見ている在り方にアリアナは全部当てはまる感じだったので、今でも私のロールモデル的な存在になっているんです。すごくチャーミングな女の子でもあるし、ずっと憧れです。

--そんなアリアナ同様にディズニーソングが好きだった女の子が、ついにディズニー公式のテーマソングを担当することに。美依紗さんの音楽人生は大きな転機を迎えます。どのような流れがあって『アルティメット・プリンセス・セレブレーション』の日本版テーマソングを歌うことになったんですか?

■清水美依紗 - Starting Now ~新しい私へ (Official Video)
清水美依紗:自分と同じように活動していた子たちがどんどん活躍していく姿を見ていて、アメリカで地道にレッスンを受けながら「自分の夢はいつになったら叶うんだろう?」というもどかしさや焦りも抱えていて。で、やっと日本に帰ってきたときにコロナ禍に見舞われて「どうしたらいいんだろう? もう音楽辞めようかな」とすごく落ち込んでしまったんです。そしたら、お母さんがふと「高校生のときみたいに、SNSに歌を投稿してみたら?」と言ってくれて、それで元々見る専用だったTikTokのアカウントに自分の歌を上げてみたらいろんな人に届いて、ディズニーさんにも届いたんです。

--ディズニーにまで届いたんですね! それを知ったときはどんな気持ちになりました?

清水美依紗:担当の方が私のことを以前から知っていてくれたみたいなんです。高校生のときにアリアナのカバーを歌っていた頃から知ってくれていて、日本に帰ってきてからTikTokにディズニーの歌を投稿していたから、それがおそらく社内で共有されていて、最終的に『アルティメット・プリンセス・セレブレーション』の日本版テーマソング「Starting Now ~新しい私へ」を歌ってほしいと言ってもらえたんですけど、すっごいビックリしました。

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. ありのままの自分を受け止めていく歌を届けたい
  3. Next >

ありのままの自分を受け止めていく歌を届けたい

--ちなみに、どうしてそこまでディズニーが好きになったんでしょう?

清水美依紗:ディズニー映画の中で初めて観た作品が『リトル・マーメイド』だったんですけど、ヒロインのアリエルが大好きになって。そこからいろんなディズニー作品のキャラクターが夢や目標に向かっていくストーリー、特に強い信念を持って生きていくプリンセスたちに子供ながらに憧れるようになって。それと同時にディズニー音楽も自然と好きになっていくんですけど、ディズニー音楽って特別な音楽ジャンルじゃないですか。だからずっと聴いていましたし、ずっと歌っていましたし、お母さんがいつも子守唄として『シンデレラ』の曲を歌ってくれていたんですけど、そんな感じでディズニー音楽は日常の一部になっていて。そんな中でディズニーのプリンセスたちにずっと憧れを持っていたので、『アルティメット・プリンセス・セレブレーション』のテーマソングを私が歌えるなんてこの上なく嬉しいことでしたし、夢をもらっていたディズニーの歌で今度は私が夢を与える側になる……それは本当に不思議な感覚でしたね。

清水美依紗『High Five』メジャーデビュー記念インタビュー

--美依紗さんのこれまでの努力とディズニー愛が結実した物語ですね。

清水美依紗:これは裏話なんですけど、TikTokにディズニーの歌を投稿していた頃、まだ上京していなくて地元の三重県に居たんですね。それでホテルの客室清掃のバイトをしていて、ひたすら90室もある部屋の掃除をしていたんですけど、そこに「『アルティメット・プリンセス・セレブレーション』の日本版テーマソングが決まった」と連絡があって……

--まるで『シンデレラ』じゃないですか(笑)。

清水美依紗:それをいろんな人に言われて、バイト先の人にも「掃除していた子が!」って驚かれました(笑)。

--『リアル・シンデレラ』として映画化してほしいです(笑)。

清水美依紗:ハハハハ!

--そんなシンデレラストーリーもありつつ、満を持してメジャーデビューすることが決定しました。

清水美依紗:4月1日にメジャーデビューの情報解禁をしたんですけど、世の中的にも環境が新しく変わっていく時期に報告したら、たくさんの「おめでとう!」というコメントを頂いて。そんな風に「Starting Now ~新しい私へ」で一歩踏み出した先にメジャーデビューという大きなスタートを迎えられたことは嬉しかったですし、「これからどんな清水美依紗が出来ていくんだろう」というワクワク感と……もちろん不安もあるんですけど、この『High Five』というメジャーデビューデジタルシングルでたくさんの人たちと繋がっていきたいなと思いました。

--『High Five』はどんな作品に仕上がったと感じていますか?

清水美依紗:「ありのままの自分を受け入れる」自己肯定の曲になっているんですけど、私は日頃から「自分に自信がない」というコメントや相談をよく頂くんです。それは「Starting Now ~新しい私へ」が応援ソングというか、背中を押すタイプの曲だったからだと思うんですけど、私もひとりの人間として自信を失くして不安になることはありますし、傷つくこともあるし、弱いところもある。ただ、そういう認めたくない自分を認めたり、自己否定をしないことが大事だと思うし、自信を持つ為の一歩って自分を受け入れることから始まると思っているので、ありのままの自分を優しく受け止めてほしい。そういうメッセージ性を「High Five」には込めているんです。それは皆さんへ届けたいメッセージでもあるんですけど、自分が自分に向けたメッセージでもあるんです。

--なるほど。

清水美依紗:去年は先ほどお話したように急展開があって突っ走っていたし、そのモードは「Starting Now ~新しい私へ」にも反映されていると思うんですけど、今回は魅せようとする自分ではなくて、ありのままの今の自分の姿を見てもらいたいと思って。ナチュラルな自分のまま歌ったほうが今度も私らしく活動しやすいだろうなとも思いましたし、私と同じように自信を持てなくなったり、同じようなことで悩んでいる人がこんなにもたくさんいるんだと知ったからこそ、ありのままの自分を受け止めていく歌を届けたいなと思ったんです。

清水美依紗『High Five』メジャーデビュー記念インタビュー
デジタルシングル『High Five』

--その結果、軽やかな気持ちになれるポジティブなポップミュージックが完成しました。そんな『High Five』でメジャーデビューを飾ったあとの話も伺いたいのですが、どんなヴィジョンや目標に向かって進んでいきたいと思っていますか?

清水美依紗:ニューヨークで山崎育三郎さんと出逢ったご縁で【あいまい劇場 其の壱 あくと】に昨年出演させて頂いたんですけど、そこで改めて「演技をもっとやっていきたいな」と思ったので、ニューヨークで学んだことを活かす為にもミュージカルをやりたいです。歌手としての清水美依紗と、役者としての清水美依紗の両方を表現していきたい。なので、歌手としてどんどんライブもやっていきたいですし、海外でも歌えるようになりたいですし、役者としてはいつかブロードウェイにも立ってみたいですし……あとは、音楽や演技とは全然関係ないんですけど、バンジージャンプとスカイダイビングをやりたいです!

--どうして(笑)?

清水美依紗:ハハハハ! やったことがないからやってみたいんですよ(笑)。

--では、最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

清水美依紗:とにかく歌が大好きで、音楽が大好きで、常に楽しみながら歌っているので、そこも注目してもらいたいですし、本当に食べることが大好きなので……特にとんかつが好きなんですけど、私は三重県出身なので、都内で味噌カツが食べられる店を探しています。

--最後の最後に味噌カツの話(笑)。読者の皆さん、良い店があったら教えてあげてください。

清水美依紗:よろしくお願いします(笑)。

Interviewer:平賀哲雄

清水美依紗 - High Five

関連キーワード

TAG