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<インタビュー>AK-69 武道館公演は「音楽を使った演説」に――様々な壁を越えてきた彼が唱える反骨精神



AK-69インタビュー

 アスリート/スポーツアパレルとして世界中で展開するパフォーマンス・アスレチック・ブランド「UNDER ARMOUR」。そのオフィシャル・アンバサダーとしてディールを結んだAK-69が、UNDER ARMOURが日本国内で展開する、若者が直面する様々な「スポーツの壁」を取り払うためのブランド・キャンペーンの一貫として制作したテーマ曲「Break through the wall」をリリース。これまでにも様々な壁を打ち破ってきたAK-69らしい、そして多くの人をチアーアップするようなメッセージ性が印象的な一曲だ。

 4月23日にはソロとしては5度目となる武道館公演【START IT AGAIN in BUDOKAN】を仕掛け、その存在感とメッセージを世に問うAK-69に、その展望を伺った。

――今回のシングル「Break through the wall」の着想を教えていただけますか?

AK-69:キッカケはUNDER ARMOURのオフィシャル・アンバサダーに俺が就任して、コラボ・キャンペーンソングを作るという流れからですね。身体的なハンディキャップを抱えてたり、ジェンダーの問題に道を阻まれたり、家庭環境や体格……そういった様々な「壁」があるなかで、その壁に挑んでいるアスリートや人たちの曲を作って欲しいという話から始まりました。


――実際にアスリートの方たちとも対談をされたそうですね。

AK-69:UNDER ARMOURと契約してる選手と対談しました。みんな「マジ」でしたね。ノージョーク。それは簡単な言葉だけど、本当に“マジになる”っていうのは、簡単なことじゃないんですよ。余裕やゆとり、妥協を一切排除して、限界まで自分を追い込むのは、人間なかなか出来ることじゃない。目標に向かうためには、壁を打ち破るためには、「疲れた」とか「怠い」とか言ってられない。ひたすら自分が決めたこと、やるべきことをやる。そして人の数だけある「壁」に挑んでいく。その気持ちは、アスリートもミュージシャンも、誰しも変わらないんだなって。だから対談して「驚き」というよりは、「確かに」と思うことが多かった。俺もずっと壁を打ち破り続けてここまで来ているし、今も壁は立ちはだかっているから。

――それはどんな壁でしょうか?

AK-69:いろんな壁があったし、一言では言い切れないけど、社会的な壁という意味だったら、俺は中卒で、少年院まで入っているから、「いい大学に入って、いい会社に就職するのがいい人生」と学校で教えられるような状況とは真逆の環境にあったし、それが壁になっていた。だけど、そんな社会にゴミ扱いされるような状況で、俺はヒップホップに出会って、武道館に5回もソロで立てるまでになった。その意味では「壁」から逃げるんじゃなくて、ぶつかっていく生き方をしてきたし、壁は自分の努力で壊すことが出来るってことを証明してきたと思うんですよね。この曲の制作は、そういう気持ちはアスリートもハンディを抱えてる人も、社会的に疎外された人も一緒なんだっていうのを再確認する機会になったと思います。だから、ずっと自分が考えてたことと今回のテーマは繋がっていたし、キャンペーンのために頼まれて書いた曲っていう気持ちは全然なくて。むしろ普段、自分が作ってる曲と同じように、本当に自分の中から出てきた内容になりましたね。

――その意味でも、メッセージ的にもこれまでのAK作品と繋がりますね。

AK-69:自分の曲はどの曲もそうだけど、量産できるようなものではないし、自分の心の中から出てくるからこそ、人に届くわけで。今回の曲もそういった意味のある曲になりましたね。

――このコロナ禍は、様々な「壁」が露呈された期間でもあると思います。

AK-69:その通りですね。このコロナ禍によって、エンターテインメント業界だけではなく、日本の社会、構造自体に「壁」を感じることが多々あったし、それが露になったのが、この2年間だったと思う。だから、出すべくして出した、出るべくして出た曲でもあると思います。様々な場面で、揚げ足を取る、出る杭をみんなで叩きまくるっていう国民性を、いろんな場面で見たと思うんですよ。そして、その心性がこの賃金も上がらない、物価も正しくインフレしない「失われた30年」を作りだして、先進国の中で唯一経済成長を止めてる国を作ってる要因でもある。実際、なぜ経済成長が出来ないかを、経済学と社会心理学の視点から研究した結果、それはこの国民性が大きな理由だったってことが、データで裏付けられた論文もあるんですね。だから、本当に馬鹿げた国民性だと思うし、俺は今回の武道館でそういった状況を正すようなメッセージを伝えたいと思ってるんですよ。今回の武道館は本当に「音楽を使った演説」になると思う。

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――お話に出た武道館公演【START IT AGAIN in BUDOKAN】ですが、ソロとしては5回目の武道館公演となります。

AK-69:このコロナでの閉塞感によって、ネガティブな状況に陥ってしまった人が、本当にたくさんいると思うんですよね。俺たちもそういう「壁」に本当に閉ざされた2年間で、その中でも名古屋城での【LIVE:live from Nagoya】や鈴鹿サーキットでの【THE RACE in SUZUKA CIRCUIT】のような配信ライブを、無謀な挑戦と思われようとも、エンターテイナーとしてやり続けた。だけどやっぱり「リアルな形でのライブ」が出来ないことに対するフラストレーションは凄かったし、リアルライブでこんな大きいライブをするのも本当に久しぶりなんで、本当に楽しみにしていますね。

――今回はANARCHY、¥ellow Bucks、SALU、ちゃんみな、RIEHATA、DJ RYOW、そしてスペシャルゲストの登場がアナウンスされています。

AK-69:AK-69 a.k.a. Kalassy Nikoffの「Ding Ding Dong~心の鐘~」で俺の名前が全国区になってから15年ぐらい経つと思うんですが、今も最前線に立てて、同じように今最前線に立ってるアーティストと武道館でライブが出来るのは嬉しいですね。2011年に【THE RED MAGIC RELEASE TOUR FINAL】で初めて(名古屋)日本ガイシホールに立ったときの映像(「THE STORY OF REDSTA -The Red Magic 2011」)を最近、見直してたんですよ。そうしたら、コメントを寄せてくれているファンの中に、まだ中学生の¥ellow Bucksがいたんですよね。その少年が今や名古屋を代表するアーティストになって、俺と一緒に曲を作って、しかも武道館で一緒にライブが出来るなんてエモすぎるでしょ(笑)。ラップシーンの移り変わりの速さからしたら、とっくに俺は過去の人になっていてもおかしくないのに。

――確かに、武道館にソロで5回立つヒップホップ・アーティストは初かもしれないですね。

AK-69:格好いいだけ、流行に乗っただけの曲を作っていたら、とっくにいなくなってると思うんですよね。勿論、単純に聴こえがいい、格好いいことも素晴らしいことではあると思うし、リスナーの音楽の楽しみ方は自由だけれども、やっぱり俺の音楽はそれだけじゃない。そして、それだけじゃない部分が、俺をシーンのトップに君臨させてくれている理由だと思うんですよね。それに「毎日ハッピーで~す」みたいな曲を歌うAKなんて、誰も聴きたくないでしょ(笑)。

――想像がつかないですね(笑)。その意味では、武道館に立つというのはアーティストにとっては一つの「称号」だと思いますが、AKさんにとって武道館はどんな場所になりますか?

AK-69:俺は2014年に武道館【Road to The Independent King ~THE FUTURE~】でライブすることが決まったときに、「ここでキャリアを終えよう」と思ってたんですね。でも実際に立ってみたら「全然大したことねえな、これじゃあ歴史に残んねえな」って思ったんですよ。とてつもなく高い山だと思ってたけど、登ってみたらこんなもんか、って。そこで自分がいかに井の中の蛙だったかに気づいたんですよね。


from 【THE RACE in SUZUKA CIRCUIT】

――キャリアの次のステップに気付かされたというか。

AK-69:そこで勢いに乗ったまま勝ち逃げしないで、キャリアを続けていくことは、その先に起こるいろんなトラブルや懸案を受け止める覚悟が必要だし、実際そうだったんですよね。だから、前線に立ち続ける、武道館に何度も立つっていうのは、至難の業ですよ。それにヒップホップは、常に新しい何かを生み出さないと、このシーンでは生き残っていけない。その意味では、今回の武道館のステージ構成をセンターステージにしているのも新しい提示ですよね。あの広さの会場をセンターステージで見せるのは、やっぱり経験値がないと難しいと思うし、レベルの差を見せることにもなる。だから、自分のライブスキルやキャリアを改めて見せるようなステージに出来ればなって。楽曲的にも、新旧の俺の代表曲をしっかり聞かせるような、本当に「今のベスト」のライブになると思います。昔の曲だって、今歌ったら、その歌詞の意味合いが変わったり、受け取り方も変わったりすると思うので。

――先程「音楽を使った演説」というお話がありましたが、その部分についても教えてください。

AK-69:日本に今伝えたいメッセージ、自分のお客さん達に伝えたい言葉があるんですよね。それは「日本人としてもう一回立ち上がって欲しい」ということ。さっき話したように、この国はこのまま行ったら本当にヤバい状況になると思うし、それが浮き彫りになっている。そして自分がそれに気づいているなら、それは見て見ぬふりは出来ない。もちろん、そんな話を聞きたくないって人もいるだろうし、言ったら叩かれるかもしれない。それに「俺がこの国を変える!」なんて大それたことは出来ないとも思ってる。でも音楽を奏でる者として、その音楽が武道館に集まってくれる少なくない人たちに影響を与えることが出来るならば、そこに「気づきの入り口」ぐらいは作らないといけないと思ってるんですよね。「どうせ選挙なんて行っても変わらない」「政治なんて興味ない」って思ってしまってる、思わされてしまってる人たちを、意識や気づかせるようにするのは、大きな意味を持っているはず。だから、その言葉に制限をかけずに、恐れないでいきたい。

――今のAK-69だからこそ発することが出来るメッセージを表現すると。

AK-69:確かに俺もガキの頃は、突っ張って警察や政治家に対して中指を立てていたけど、それはなんの意味も無かったと思うんですよね。影響力も反響もなかった。でも武道館に5回も立てるまでになったからこそ、今のAK-69だからこそ、ヒップホップやストリート・ミュージックが持つ本当の意味でのレベル(REBEL/反抗)ミュージックを、力を持った人間だからこそ歌える反体制を、説得力と実行力を持って歌うことが必要なんじゃないかなって思いますね。そして俺のライブを見に来た人たちには、本当に聡明で、心が強い日本人の姿を思い出して欲しいっていう気持ちがありますね。

――音楽を楽しんでただ終わりではなく、「その先」を見据えるというか。

AK-69:その意味でも「START IT AGAN」というタイトルが相応しいライブになると思いますね。

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