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ブライアン・アダムス『SO HAPPY IT HURTS』インタビュー
1984年にリリースされたアルバム『Reckless/レックレス』が全米で500万枚、日本でもミリオン・セールスを獲得するなど大ヒットを記録。その後も全英チャート16週連続首位を獲得しギネスに認定された映画『ロビン・フッド』のテーマ曲「(Everything I Do) I Do It For You / アイ・ドゥ・イット・フォー・ユー」(91年発表)、ロッド・スチュワート、スティングと共演した映画『三銃士』のテーマ曲「All For Love / オール・フォー・ラヴ」(93年)など、多数のヒット曲で知られるブライアン・アダムス。完成したばかりの最新アルバム『SO HAPPY IT HURTS』は、40年以上にわたる音楽キャリアのなかで常に追求し続けているロックンロールへの愛を感じる仕上がりになった。先行きの見えないこの時代の道しるべになるような力強い楽曲の数々。また本人撮影のポートレートも含め、彼の変わらないクールさと、経験を重ねたことによる深い味わいも滲んだ内容だ。
ミュージシャン人生において、これほどまでにクリエイティヴな時間はなかった
━━最新アルバム『SO HAPPY IT HURTS』が完成しました。完成するまで、パンデミックなどさまざまな出来事が起こり、世界の状況が大きく変化しましたが、あなたにとってはどんな時間だったのでしょう?
実はパンデミックが起こった当初、二度と以前のようにライヴ・パフォーマンスができなくなるのではないかと危惧していたんだけど、幸いなことに徐々に元の状態に戻りつつあるね。それに、自分にとってこの時間は充実したものになった。家族と共に過ごす時間が増え、そして曲作りに集中することができたんだ。これまでのミュージシャン人生において、これほどまでにクリエイティヴな時間はなかったほどさ。
━━今回のアルバムでは、どんなことを描こうと思いましたか?これまでの作品との違いはありますか?
私は常々、その時思う最高の音楽をアルバムとして発表したいと思っている。つまりは、私の真実を閉じ込めているんだ。今回のアルバムは奇妙なことに、ツアーを終えた瞬間のような充実感が完成した瞬間に湧きあがってきてね。とても高揚感があるロックな仕上がりになったと思うよ。ただ、今回の作業では時々、批判的な気持ちになったんだ。なかなか求めているようなエキサイティングな音にならなくて…。なので、今回はリズム・セクションに重きを置いて追求したつもりさ。
━━全体的にとてもポジティヴな気持ちになれるアップテンポのナンバーが中心ですね。やはり、この憂鬱な気分にさせる出来事が多い世界を、少しでも明るくさせたいという気持ちが音にも表れているのでしょうか?
正直なところ、パンデミックの影響を音に表現すべきか迷ったんだ。だけど、今回はそれを排除しようと思った。考えてしまうと暗い気持ちに陥りそうだったからね。だから世間の状況から“逆にロックダウン”して、自分に向きあうことにしたよ。
━━今回はシンプルでストレートなロックにこだわっている気がしました。
その通りだね、思わず頭を振りたくなるようなサウンドになった。今回は渡航禁止などもあってバンド・メンバーとのセッションが思い通りにいかなかったから、初めて自分でドラムとか色んな楽器を演奏することになったんだ。
- 今の音楽シーンで一番ストリーミング再生される音楽じゃないかもしれないけど、そんなこと気にしない
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プロフィール
Photo credit:Bryan Adams
ブライアン・アダムス(Bryan Adams)
カナダ生まれ。1980年より活動開始。40年以上にわたる活動の中で作品は、40カ国以上で1位を獲得し、6500万枚を売り上げている。ツアーでは6大陸を周り、グラミー賞、ジュノー賞に輝き、アカデミー賞とゴールデングローブ賞にもノミネートされた。また、カナダ勲章を受け、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム、カナダ・ウォーク・オブ・フェームに名を連ね、ウェンブリーのスクエア・オブ・フェームには手形が刻印されている、世界で最も高い評価を受けているシンガー・ソングライターのひとり。また音楽活動だけでなく、フォトグラファーとしても活動している。
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今の音楽シーンで一番ストリーミング再生される音楽じゃないかもしれないけど、そんなこと気にしない
━━どなたか制作にあたり、プロデューサーなどコラボレーターはいらっしゃいますか?
本物の楽器を駆使してシンプルなロック・アルバムを制作したかったから、今回は自分でプロデュースしているんだ。有能なソングライター達には参加してもらっているけどね。
━━ではバンド・メンバーも参加せずですか?
今回のアルバムではギタリストのキース・スコットが参加しているよ。彼はソロでも作品を発表していて、この世で最高のギタリストだと思う。我々はオンラインを駆使して楽曲を制作した。それと、ドラマーにパット・スチュワートも2曲参加しているんだ。
━━「Kick Ass」では、イギリスを代表するコメディー・グループ「モンティ・パイソン」のメンバーである俳優のジョン・クリーズのナレーションからスタートします。とても感情を昂らせるロックンロール・チューンになっていますね。
この曲では彼の声が素晴らしい効果を生み出したと思っているんだ。当初は別の人のナレーションを考えていたんだけど、ジョンがこの曲のイメージにぴったりフィットすると思った。お互いのことを良く知る仲でもあるしね。
━━他の収録曲も、スピード感のある「I've Been Looking For You」、リズム展開が心地よい「Always Have, Always Will」など、バラエティに富んだ楽曲が揃っています。特に、今回の制作のなかでエキサイティングな出来事を与えてくれた楽曲はありますか?
今回は30曲くらい候補があったんだけど、そのなかから厳選して収録した楽曲は、どれもグルーヴのあるものばかりになった。現在の技術の進化により、興味深いことに楽曲のテンポは自由に調整できても、ピッチを変えることが難しくなった。なので、自分にあうテンポを探す作業は大変だったけど、エキサイティングな経験になったよ。
━━さまざまな楽曲が収録されていますが、どの楽曲も根底にあるのは「ロックンロール」への愛。この作品を制作したことによって、あなたにとって「ロックンロール」とはどんな存在になりましたか?
周りから否定されようが「ロックンロールは死なない!(ロックンロール・イズ・ノット・デッド!)」さ。現在の音楽シーンで最もストリーミング再生されるような音楽ジャンルじゃないかもしれないけど、そんなことなど気にする必要はない。なぜなら、これが私のできることであり、人生だからね。
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ブライアン・アダムス(Bryan Adams)
カナダ生まれ。1980年より活動開始。40年以上にわたる活動の中で作品は、40カ国以上で1位を獲得し、6500万枚を売り上げている。ツアーでは6大陸を周り、グラミー賞、ジュノー賞に輝き、アカデミー賞とゴールデングローブ賞にもノミネートされた。また、カナダ勲章を受け、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム、カナダ・ウォーク・オブ・フェームに名を連ね、ウェンブリーのスクエア・オブ・フェームには手形が刻印されている、世界で最も高い評価を受けているシンガー・ソングライターのひとり。また音楽活動だけでなく、フォトグラファーとしても活動している。
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自分の納得のいくアートを追求したい、それだけなんだ。
━━今回のアルバムのアートワークについて教えてください。クルマの上でギターを高く掲げる姿が印象的ですが、なぜこのヴィジュアルに?
私にとってクルマは自由の象徴なんだけど、そのなかでも古いクルマにはロックダウン中に失ってしまった人々の自発性を体現していると感じたんだ。だからそれを用いた写真にしたいと考えていたんだけど、完成した作品は自分の想像以上の仕上がりになった。今まで自分で撮影したなかでも最高の出来じゃないかと思うくらいだね。それと、このような古いクルマを登場させることが何か特別な気がした。歴史を背負っているようなね。
━━ミュージック・ヴィデオを含め、本作はモノクロで構成されているように思うのですが、そこに理由はあるのでしょうか?
モノクロ写真の方が時代に色褪せないような雰囲気があるから、これまで制作した作品の多くで使っているんだ。もちろん、カラーの方が今の時代に受け入れられることは知っているけど、気にしない。自分の納得のいくアートを追求したい、だたそれだけなんだ。
━━音はもちろん、ヴィジュアルからも、キャリア40年以上でありながらも、変わらないカッコ良さが伝わってきました。それをキープさせている秘訣、原動力は?
音楽への愛を持ち続けているからこそ生みだせるのかもね。2000年に日本武道館でおこなった3人編成でのライヴ(『Live At The Budokan』として映像作品化)は、今までのキャリアのなかで最高と言えるバンド編成でのパフォーマンスだった。特に「I Don't Wanna Live Forever」という曲が気に入っててね、曲のタイトルを含めて私の生き様を体現しているようなパフォーマンスになったんだ。
━━今後のミュージシャンとしての目標を教えてください。
とにかく活動を続けていくのみ。年内にまたアルバムを発表する予定もあるんだ。もちろん、日本にも戻るつもりでいるから楽しみにしていてね。
━━しばらく来日公演がないですから、来日を楽しみにしているファンも多いです。
日本のみんなと再会したい気持ちは私も強いよ。2023年には叶うと良いんだけどね。
━━日本のファンへメッセージをください。
本当にみんなが恋しい。一緒にロックできる日が訪れるまで「マタアトデ!」
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ブライアン・アダムス(Bryan Adams)
カナダ生まれ。1980年より活動開始。40年以上にわたる活動の中で作品は、40カ国以上で1位を獲得し、6500万枚を売り上げている。ツアーでは6大陸を周り、グラミー賞、ジュノー賞に輝き、アカデミー賞とゴールデングローブ賞にもノミネートされた。また、カナダ勲章を受け、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム、カナダ・ウォーク・オブ・フェームに名を連ね、ウェンブリーのスクエア・オブ・フェームには手形が刻印されている、世界で最も高い評価を受けているシンガー・ソングライターのひとり。また音楽活動だけでなく、フォトグラファーとしても活動している。
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