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<インタビュー>シズクノメ、生々しさと混沌が混ざり合った新曲「そんなんじゃダメだって」を語る



シズクノメ インタビュー

 4月29日に最新ツアー【シズクノメ Live Tour 2022 -Why”you”-】の東京ファイナル公演を控えているシズクノメが新曲「そんなんじゃダメだって」をリリース。別れに向かう過程の一瞬を描いた2月配信の前作「Why"you"」とは打って変わって、今回はダークでハードな荒々しさが前面に出たナンバーだ。“生々しさと混沌”を重点に制作したという最新曲についてメンバー5人に話をきいた。

 今回は、メンバーのYAHが撮影したカットも多数掲載。カメラに向ける表情は、気が置けない仲間だからこそとらえることができたものだ。

左から:ぐれむりん(Key. / Cho)、宮本 テツ(Dr.)、しゅん(Vo.)、ミチヒロモトキ(Gt. / Vo.)、YAH(Ca)

――新曲「そんなんじゃダメだって」の曲の成り立ちを聞かせてください。

ミチヒロモトキ:これは結構前からあった曲で……どれくらいだろう?

しゅん:確か「Never Looking Back」より前な気がする。アニメのコンペ出しのために、いくつか作った曲のうちのひとつだったよ。

ミチヒロ:そうだ。だから、デモからだと1年くらい経つかも。

――その頃から曲の方向性は決まっていたんですか?

ミチヒロ:デモができたときは明確なものはなかったけど、デモ用に適当に歌った仮の歌詞には、“腐ってる”とかちょっと汚い言葉が多かったんです。なので、自分の中でも、なんとなくロックなイメージが強かったんだと思います。

しゅん:歌詞も音も、デモの段階からだいぶ変わって、かなりよくなってます。いろいろ思い出してきたんだけど、確か3分ぴったりで曲が終わるんだよ。レコーディングのとき、「カップラーメン作れる」って会話をした気がする(笑)。

ミチヒロ:そうだね。なのでカップラーメンの曲です(笑)。

――かなりベクトル違う感じがしますよ(笑)。

しゅん:あ! 最初は、AメロとBメロで、オレとモトキの歌う順番が逆だった。オレが仮歌を録るとき、オレがAメロを歌ったんだけど「ちょっと違くない?」って話になって変えた記憶がある。

ミチヒロ:思い出した! それでAメロを歪ませて、オレがガリッって歌って、Bメロでしゅんが低い声を出したら曲に深みが出たんだ。

しゅん:そうそう。そういえばオレ、この曲からレコーディングのマイク変えたんだよ。

ミチヒロ:AKGのC12って伝説の名マイクだね。

しゅん:そう、自分の声に合ったマイクに変わったんです。

YAH:しゅんちゃんがスッゲー覚えてることに感心するわ(笑)。

――(笑)。今回、歌詞もサウンドも荒々しいし、シズクノメの中でもかなりダークサイドの成分が高い曲になってます。まず、曲の冒頭に環境音を入れるアイディアはどこから出たんですか?

ミチヒロ:混沌とした感じを出したかったんです。レコーディングのときに、「試してみようか?」って話が出たんだよね。

ぐれむりん:生感を出したいっていう話をした。最初みんな適当に楽器を弾いてて、そのままライブがスタートする感じを表現しようって。

ミチヒロ:全員でごちゃごちゃ音を録るのは楽しかったなぁ。ギターをアンプに刺すときのブブーってノイズを録るとき、「これ、ほんとに刺したらアンプ壊れちゃうかもしれないですけどいいんですか?」って聞いたら、エンジニアさんが「いいっすよ」って(笑)。それで、アンプのボリュームをマックスにしてすごい爆音でガガガーって音を録りました。「アンプ大丈夫か?」って心配しながら(笑)。

YAH:実はカメラも初めてレコーディングに参加したんです。騒音みたいな中で、シャッター音がカシャカシャって鳴ってるんですよ。それがオレの中で印象に残ってますね。

ミチヒロ:「カメラもっとマイクに近づけて」とか言って録ったね(笑)。

――闇感のある曲調の中で、ピアノの旋律が繊細な響きを出してるのが印象的でした。

ぐれむりん:これまでは「ジューンブライド」とか、きれいな曲やおしゃれなコード進行の曲が多かったんですけど、デモをもらったときに、ちょっとロック感が強いのが来たと思ったんです。ピアノはバッキング系が多かったから、「どんな感じになるんだろう?」とも思いました。そしたら本番のレコーディングのとき、歌メロを邪魔しないピアノのメロディーが入ったアレンジが来たんです。それがすごく難しかったですね。クラシック的な技巧的なピアノで一番苦戦しました。

ミチヒロ:ピアノに関しては、ミックスのときに歌を聴かせつつ、ピアノの美メロのラインがしっかり出るように詰めました。

――生々しい手触りの音の中で、リズムはどんなことを意識しましたか?

宮本 テツ:この曲のドラムの聴きどころは、始めと終わりだと思うんです。最初ドラムから演奏が始まるところのタイム感はすごく意識しました。打ち込みじゃない、生で録るからこそのいいズレが活きたタイム感を出せたと思ってます。

ミチヒロ:イントロのタイム感よかったね。他の曲だったらやらないけど、あえてバチッと合わせないで、ズラすほうがいいだろうってやったんだよね。

宮本:そこからベースが入って、ドラムもサビに向かって加速していくイメージですね。あと、曲の終わりでスティックが落ちる音が入ってるんですけど、あれはほんとに録りが終わったあと、勢いでスティックをガーンって投げた音なんです。レコーディングのときの熱量と臨場感がすごく音源に乗ってますね。

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――ギターもダークな叫び感が感じられますが、こだわったところは?

ミチヒロ:やっぱり荒々しさですね。もともとデモのサビではコードを弾くだけだったんだけどストレートすぎて、混沌とした感じを出すためにグシャッとした感じを出しました。ギターの音色だと、ギターソロが一番混沌とした雰囲気を出せてると思います。ギターソロの音を作るとき、いろんなエフェクターを組み合わせて、いかにきれいじゃない音を作るかを考えて録ったんです。エフェクターをかけまくって、弾いてないときでもずっと轟音が鳴り続けてるくらいノイジーな音を探しました。

――ギターソロは、オルタナティブ・サイケというかジョン・フルシアンテ的な混沌感を感じました。

ミチヒロ:そうですね。ジョンがレッチリに戻ってきたタイミングと合いましたね(笑)。

――そして歌詞は、素直になれない気持ち、社会に迎合できない自分、後悔など、人の持つあらゆるもどかしさやジレンマが詰まってますね。

ミチヒロ:特に自分に何かあったわけじゃないけど、誰しもフラストレーションが溜まって爆発しそうになるときってあるじゃないですか。音からのインスピレーションでそういうテーマがハマったし、特にAメロなんかは強い言葉で攻めようって考えました。もともと「こんなんじゃダメだって」ってタイトルは、デモのときのサビの歌詞だったんです。口から出た適当な言葉で今の歌詞にするときに変えたんですけど、「そんなんじゃダメだって」って音の感じを残したかったから、それをどんな言葉に当てはめるかはすごく苦労しました。

――その歌詞を歌う上で、しゅんさんはどんなことを心掛けたんですか?

しゅん:毎回ですけど、オレは歌を録る前に歌詞を書いたときの心情をモトキに聞いて、それを自分なりに解釈するんです。今回も歌詞の世界に入って、やりきれない思いを歌いました。あと、オレは言葉数が多いほうが表現の幅が広がるんですよ。そういう意味では「Why”you”」よりも表現しやすかったですね。自分の歌の引き出しから、今までで一番アウトプットできた曲かなと思います。さっき話に出たBメロは、シズクノメで歌った曲の中で一番低い声なんです。楽器隊のサウンドと自分の一番低い声が、音の広がり感とすごくマッチしたんですよ。そこは今まで出したことがないところだったので、自然と挑戦になった感じがありますね。

ミチヒロ:Bメロは、しゅんの低く太く出す歌い方がよくて、その声に合わせてオケをあえて籠らせるようにミックスで調整しました。

――なるほど。タイトルの話が出ましたが、「そんなんじゃダメだって」ってワードは耳に残りますね。

しゅん:そうですよね。うちら、ほぼほぼ仮タイトルが採用されるんです。今回もそうだったんですよ。考えても、しっくり来るのがデモのときのワードってことが多いんです。

ミチヒロ:オレはそんなに曲名に関してこだわりが無くて、わかりやすかったらいいかなって思うタイプなんです。でも、仮タイトルから本タイトルを決めるときにメンバーに聞くと、大体元のほうがいいって言われるんです。とは言っても、自分らの中で定着してるだけかと思って、レーベルの人に「『そんなんじゃダメだって』でいいんですかね?」って雑談レベルで聞いてみたら、いかに「そんなんじゃダメだって」ってタイトルがいいかを説明されました(笑)。

しゅん:逆にプレゼンされたっていう(笑)。鈴木雅之さんの「違う、そうじゃない」のタイトルと近いって言われたんだっけ?

ミチヒロ:そう。しかも理論的に語ってくれて、そこまで言ってくれるなら「そんなんじゃダメだって」にしますって(笑)。みんなのいろんな話を聞いて、オレもいいタイトルだなって思うようになりましたね。

――ミュージック・ビデオはどんなイメージで作られたんですか?

YAH:曲自体がシズクノメとして今までに無い雰囲気だったので、これまでのMVの中で一番振り切ってると思います。男女が絡むシーンがあるんですよ。言ったら、今までの映像は正統派で作ってきたんですけど、映像の振り幅も大きくしたいという話から、今回はやっちゃえって感じでした。セクシーさもありつつ、物を壊したりもして、思いっきりやってますね。


――ある意味、映像でも人間臭い部分が表現されてると。

YAH:まさにそうです。いろんな鬱憤が溜まってるご時世を表現しました。MVにもストーリーがあるんですよ。マンションが舞台で、オレらの演奏やほかの騒音に我慢できなくなった子が、最後にフラストレーションが爆発するっていう流れで、現代社会の問題を表現してます。

ミチヒロ:そういえばベースの人いたね。あれは誰(笑)?

YAH:いたねー。ガスマスク被った人がベースを弾いてるんですけど、そこも見どころです(笑)。

――(笑)。「そんなんじゃダメだって」は、人のドロっとした心の底や人間の生々しさが前面に出た作品ってことですね。

しゅん:そうですね。グチャッとしつつ、落ちサビで急にきれいになったりするし。

ぐれむりん:ドロドロがあるから、落ちサビが際立つ感じはありますね。

ミチヒロ:それに、今までになかったことにもいろいろ挑戦しているし、実験的な曲って感覚もあります。

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――では「そんなんじゃダメだって」というタイトルにかけたテーマ質問で、「最近オレはダメだな……」と思った、失敗談的なエピソードを聞かせてください。

ぐれむりん:最近曲を作り始めたんですけど、作ってる途中で、「これはダメだな」って思うことが多くて、無力感を感じることがあるんです。毎回ミッチーの作る曲はいいなって思うんですよ。頭で論理立てて作っちゃう自分がいて、そこが差なのかなと思ったりして。ミッチーが羨ましい。

ミチヒロ:エピソードがわりと重くて驚いたけど(笑)、ありがとう。

YAH:オレは、自分の発言に後悔することが結構あるんです。基本ネガティブ思考なんですよ。何かあるとすぐにダメだなって思っちゃうので、それは前々から直したいなと思ってます。撮影のときはアドレナリンが出てるんで、言いたいこと言っても後悔しないんですよ。カメラ持ってるときは大丈夫なんです(笑)。でも、友達とかにちょっと言いすぎちゃったとき、家に帰って「なんであんなこと言っちゃったんだ……」って後悔しちゃうんです。ずっと頭に残っちゃって、「次は気をつけよう」って反省しますね。

宮本:オレは最近、考え事をする機会が多くて、考えたいからご飯も簡単なもので済ませがちなんです。

――考えるためにご飯を簡単にするって新鮮です(笑)。

宮本:それでこの間、焼きそばのカップ麺を買ったんですよ。作る間もずっとうわの空で、湯切りしてるときに「なんか茶色い水が出るな~」と思ったら、先にソースも入れちゃってたという(笑)。そのとき、頭の中で「そんなんじゃダメだって」のサビが流れました(笑)。

しゅん:テツとよく飲むんですけど、この間、お店に行ったとき、話が弾んでお酒も進んだんです。その日、ハイボールの旨さに気づいて、めちゃめちゃ飲んだんですよ。そしたらお店で2回吐き(笑)、完全に千鳥足になってテツの肩をしっかり借りて帰ったっていう(笑)。

宮本:ほーんと、テンプレみたいな酔っ払いだったんです(笑)。

しゅん:家に着いてテツとサヨナラしたあとも2回吐きました(笑)。絵に描いたような「そんなんじゃダメだって」でしたね(笑)。

ミチヒロ:この間、昼間にしゅんとカラオケに行ったんですよ。しゅんとカラオケ行くときは、Folder5の「Believe」を全力のハイトーンで歌って満足して帰るっていうのがいつも流れなんです。ツアーの前だから喉は大事にしようと思って、2時間くらい歌って、そろそろ帰ろうかってなり、「Believe」を歌うところで、なんか歌い足りないって話になり、30分延長しちゃったんです。

しゅん:そこからは、coldrain、リンキン・パークとか、ラウドロック歌いまくりで(笑)。

ミチヒロ:ブリング・ミー・ザ・ホライズンとかシャウトしまくっちゃって。

しゅん:最終的に「Believe」にたどり着いてシャウトするっていう(笑)。

ミチヒロ:<ビリーヴ・イン・ワーンダーラーーーンド!>って(笑)。しゅんと「喉痛てーな。けど歌った感あるなー」って満足して帰りました(笑)。でもほんと、ツアー前なのに無茶な歌い方して、「そんなんじゃダメだって」って思いましたね(笑)。

――さまざまなエピソードありがとうございました(笑)。さて、シズクノメは春のツアーを経て夏に向かっていくわけですが、この夏の希望・願望を込めて目標を聞かせてください。

ミチヒロ:海でバーベキューしたい。

しゅん:いいね~。上京してから海一回も行ったことないんですよ。

YAH:いきなり遊びの話(笑)?

しゅん:(笑)。夏は、全然決まってるわけじゃないけどライブをガンガンやっていきたいし、願望としてはやっぱフェスに出たいですね。

宮本:夏といえばカッと陽が出る季節だし、今の状況下で少しでも気持ちを明るくするのはやっぱり音楽なので、「それを作っていくのはオレらだ!」っていう気持ちで頑張っていきたいです。

YAH:しゅんちゃんも言ってましたけど、やっぱり夏と言えばフェスですよね。オレら、前々から「フェスに出たい」って話してたんで、今年こそ出たいですね。絶対楽しいじゃないですか。

ぐれむりん:自分もフェス出たいです。武道館を目指すっていう目標は変わってないけど、そのためにもフェスは通る道なので、今年は叶えたいです。

ミチヒロ:フェスのメインステージで、夕陽で空が赤くなってきた頃に「まだ」をやりたいな。

一同:いいね!!

ミチヒロ:まだライブでしか披露してない曲なんですけど、絶対その景色にハマると思う。それで夜になって「パッと咲いて」やりたいね。

しゅん:「まだ終わりじゃねーよ!」って言いたい(笑)。で、最後は花火が上がってほしいな。

――セトリはもうできてると(笑)。

ミチヒロ:勝手にできちゃってますね(笑)。実現するかはわからないですけど、暑い野外でシズクノメのライブをバシッと見せられたらいいなって思います。

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