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<インタビュー>宮下遊、新しい扉を開いた4thアルバム『見つけた扉は』



 2008年にニコニコ動画を中心にボカロ曲を歌ってみたとして投稿する歌い手の活動を開始して以降、歌唱のみならず、作詞、作曲、編曲、イラスト、アニメーションMVまでをマルチに手がけることで、ひときわアーティスティックなセンスを解放してきた宮下遊。

 2019年5月に投稿したボカロP・煮ル果実のオリジナル曲「ヲズワルド」の歌ってみた動画は、当時海外を中心に流行していた音の感覚を味わうASMRを想起させる立体的なボーカルが、ほかにはない感覚的世界を創出し、特に海外からの高い評価を獲得。3月12日現在、3,014万回再生という驚異的な数字を叩き出している。

 2021年には、『DEATH NOTE』、『バクマン。』を生み出した大場つぐみ/小畑 健のタッグが手がけたTVアニメ『プラチナエンド』のEDテーマに大抜擢された宮下遊。起用された「降伏論」は、シングルとして昨年11月にリリースした。そして、今回完成したのが、メジャー4thアルバム『見つけた扉は』。「降伏論」の制作チーム以外の制作陣を一新した本作は、チャレンジングな面もありながら、アルバム全体としては、‟寂しさ”が浮かび上がってくるような落ち着いた面を持つ作品だ。そんな本作について、宮下遊に話を訊いた。

Interview:小町碧音

知らない部屋を開けたら、まだ見たことがない宮下遊がいた

――昨年、TVアニメ『プラチナエンド』のEDテーマに抜擢されたことで、心境の変化はありましたか?

宮下遊:頑張っていこうっていう心境的な変化はあっても、それをきっかけに自分の歌が変わっていったみたいなのは逆になくて。まだ作品には現れてきていないのかもな。とりあえず「降伏論」は、いつも通りの自分を出せば逆にいいものになるかなって思っていました。

――作曲者のTom-H@ckさんには、3rdメジャーアルバム『錆付くまで』でも収録曲「アノニマス・エゴイズム」を書き下ろしてもらっていましたよね。

宮下遊:そうですね。書き下ろしていただいたのは、今回で2回目になります。でも、それより前に『青に歩く』に「VORACITY」(Tom-H@ckを中心としたクリエイターユニット・MYTH & ROIDの楽曲)のカバーを収録させていただいていました。

▲「降伏論」

――メジャー1stシングル「降伏論」のリリースからどのような経緯でアルバム制作が始まったんでしょうか。

宮下遊:シングルを出した後に、6、7曲くらいのちょっとしたミニアルバムを作ろうかっていう話があったんです。それで、いろんな人に作曲をお願いしていくうちに曲数があれよあれよと増えていって、最終的にアルバムになりました。これは明確なビジョンがあって作ったというよりは、ぶっちゃけアルバムになっちゃったみたいなところはあります(笑)。

――なるほど、自然発生的だったんですね(笑)。ここからは、『見つけた扉は』についてのお話を聞かせてください。今回、アルバムを制作していく中で新たな発見はありましたか?

宮下遊:そうですね。「まだ見たことがない宮下遊いたな!」みたいな感じでまた何人か現れてくれたことかな。知らない部屋を開けたら居たんですよ(笑)。

――だから、アルバムタイトルも『見つけた扉は』というタイトルに?

宮下遊:タイトルはわりとそのままの意味で良くて。プラチナエンドをきっかけに1個新しいところを見つけたので、その先を期待するような意味を込めました。

▲『見つけた扉は』全曲クロスフェード

――何人かの宮下遊さんが出てきてくれた曲を、具体的にあげると?

宮下遊:どの曲にもちょくちょく入っているような気はしますけど、強いて言うなら、Somariさんの「再生」と瑛太五月さんの「FREEEZE!!」ですかね。「FREEEZE!!」は、ずっと挑戦はしていたんですけど、だんだん形になっていって、最後の最後にやっと出来上がった曲なんですよ。自分でも意味わからないものができたなって(笑)。

――意味わからないもの(笑)。宮下遊さんにラップのイメージがなかったので、単純に驚きました。

宮下遊:瑛太五月さんが最初に入れてくださった仮歌がすごいかっこよくてそのまま取り入れていったものとかも多いんですけど、やってみたら意外とできたっていう(笑)。うまくできないなーってもう10年ぐらいラップ調の曲を歌うのはストップしていたんです。でも、今やってみたら意外といけるじゃんってなって。

――新しい自分というよりは昔の自分が出てきてくれたんですね。

宮下遊:そうですね。過去から自分が帰ってきたみたいな。「あの頃、喧嘩別れしたけどどう?今から君仲良くやれるんじゃない?」って(笑)。今の自分ならわかるものみたいなのも結構あったり、ああいうアプローチってどうやってたんだろうって思うことを今になって発掘してみたりしましたね。

――例えば、どういったアプローチですか?

宮下遊:ラップ系のアプローチに、ウォ~みたいに、上がったり下がったりするのがあるんですよ。ああいうアプローチはすごい研究し直しました。喉の使い方がすごい違うこともあって、今まで出さなかった低音域の声が、今までで一番出ています(笑)。

――一瞬、別人かと思いました(笑)。

宮下遊:僕も思いました。誰だこれって(笑)。

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宮下遊「見つけた扉は」

見つけた扉は

2022/03/16 RELEASE
PCCA-6119 ¥ 2,750(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.幽火
  2. 02.パラサイトピアノ
  3. 03.降伏論 (Album Ver.)
  4. 04.FREEEZE!!
  5. 05.安寧の宴
  6. 06.迷妄、取るに足らなくて
  7. 07.Ayka
  8. 08.麒麟が死ぬ迄
  9. 09.ラストリヴ
  10. 10.再生

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