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<コラム>SixTONESの飽くなき音楽探求、6thシングル『共鳴』多彩で挑戦的なカップリング曲にも注目
楽曲クオリティの追求
SixTONESが、3月2日に6枚目のシングル『共鳴』をリリースした。
表題曲は、現在放送中のテレビアニメ『半妖の夜叉姫』弐の章(日本テレビ系)1月クールのオープニング・テーマ。すでに音楽番組でも披露され、YouTubeでもミュージック・ビデオが公開されて多くの人の耳に届いているが、その反響として目に止まるのは音楽性への賞賛。既存のアイドル・ポップスの枠組みに縛られない音楽的なチャレンジが注目を集めるようになっている。
SixTONES - 共鳴 [YouTube ver.]
いまのSixTONES は、ファンによる熱量の高い支持だけでなく、むしろアイドル・グループに興味を持っていなかった層の耳も惹きつけるグループになりつつある。単なる人気やセールスや動員の数字よりも、楽曲のクオリティが注目を集めるようになってきている。
こうした状況が顕在化してきたきっかけのひとつは、昨年8月にリリースされた5枚目のシングル『マスカラ』だろう。表題曲はKing Gnu/millennium paradeの常田大希が楽曲提供。複雑な譜割りとテクニカルなメロディを持ち、かなりの歌唱力を要求されるナンバーだが、SixTONES の6人はそれを難なく歌いこなし、独特の色気を醸し出す歌を形にしていた。昨年末に紅白歌合戦でも披露されたこの曲がグループの新たな代表曲となったことは、ひとつのターニング・ポイントになったはずだ。ボカロP/クリエイターのくじらが作曲を手掛け、アニメーションのミュージック・ビデオが公開されたカップリングの「フィギュア」も大きな話題を呼んだ。今年初頭のYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』への出演も含め、YouTubeを通してジャニーズ事務所所属のグループのファン層以外にも届く“見せ方”や“届け方”が成されているということも大きい。
2022年1月にリリースされた2ndアルバム『CITY』は、Billboard JAPANの総合アルバム・チャート“HOT Albums”で総合首位を獲得し、売上はハーフ・ミリオンを突破。その勢いのままにリリースされるのが、今回のシングル『共鳴』となる。
モータウンからアフロ・ビーツまで
聴きどころ満載のカップリング曲
表題曲を一聴して感じるのは、「マスカラ」や「Rosy」にも通じる技巧的な曲構成。ピッチの高低差が広く、畳み掛けるような展開を持った曲調だ。作詞作曲は、4thシングルの表題曲「僕が僕じゃないみたいだ」も手掛けたSAEKI youthK(佐伯ユウスケ)。プレス・リリースなどには「ロック、ジャズ、ヒップホップを融合した疾走感あふれるサウンド」とあるが、軸となっているのはあくまでロック。うねるベースとパワフルなドラムがアンサンブルを支えるグラマラスなバンド・サウンドが楽曲の骨格になっている。そこにイントロから存在感を主張するピアノのテンション・ノートが絡んだり、Bメロでハーフ・テンポのブレイク・ビーツが挟まったり、多彩なバリエーションを見せるミクスチャー・スタイルの曲調だ。
アニメ主題歌らしく、サビでは覚えやすいキャッチーなメロディが繰り広げられるのも特徴。歌声の表現力の高いジェシー、艶のあるハイトーン・ボイスを持つ京本大我という二人を筆頭に、力強い低音を魅せる松村北斗、ざらついた声質でモダンなフロウのラップ・スキルを持つ田中樹など、6人それぞれの個性を活かした歌割りがなされている。それぞれのヴォーカルが入れ代わり立ち代わり登場する作りになっているからこそ、サビ前の声を重ね合わせる叫びにもパワーが宿る。
カップリングの曲もバラエティ豊かだ。初回盤Aに収録の「Waves Crash」は、「Special Order」や「WHIP THAT」の路線に通じるハードコアなEDM×ヒップホップ・ナンバー。激しいシンセの音色と煽り立てるようなビートを持つ“攻め”の1曲だが、ポイントは2拍3連のフロウを活かした<君を連れて~>から<Animals, Animals>と歌うBメロでビート・スイッチする箇所にある。全編ラップのナンバーだからこそ、一辺倒にならない曲展開が効いている。一方、初回盤B&通常盤収録の「FASHION」は、モータウン・サウンドをベースにしたバブルガム・ポップ。70’sのディスコにも通じるような陽気なギター・カッティングと四つ打ちのビート、明るいメロディと合いの手的なハンド・クラップを持つカラフルな1曲になっている。また、通常盤収録の「Gum Tape」は、アコースティック・ギターのフレーズをループし、隙間を活かしたシンプルなアレンジから徐々に広がっていくポップ・ソング。ラップと歌を行き来するようなヴォーカリゼーションから、中盤はストリングスが加わり、壮大な展開を見せるラブソングだ。
SixTONES - FASHION [YouTube ver.]
そして、とても興味深いのが通常盤収録の「マスカラ -Emotional Afrobeats Remix-」。曲名の通り、アフロ・ビーツの要素を旺盛に取り入れた「マスカラ」のリミックス・ナンバーだ。アフロ・ビーツとは、ウィズキッド(Wizkid)やバーナ・ボーイ(Burna Boy)、J・ハス(J-Hus)ら、ナイジェリアにルーツを持つアーティストたちが推し進め、グローバルなポップ・ミュージック・シーンの新たな潮流として浮上してきたスタイル。西アフリカのダンス・ビートに中南米のテイストが融合した肉感的なテイストを特徴としている。もともと「マスカラ」にもラテンの要素が含まれていたが、そこをさらに拡大するようなリミックスとなっている。
これまで『1ST』と『CITY』という2枚のアルバムでも様々なジャンルに取り組んできたSixTONES 。楽曲主義のアイドル・グループというイメージはかなり浸透してきたと言っていいだろう。「共鳴」は、その先のさらなる可能性を開く1曲。現行のグローバルな音楽シーンのトレンドを見据えつつ、どこにもない新たなJ-POPの様式を打ち立てていくグループになっていくのではないかという期待もある。
SixTONES - 共鳴 nonSTop digeST
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