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<インタビュー>音楽塾で出会った3ピースバンド“Chilli Beans.”、2nd EP『Daydream』制作に至るまで



 YUI や絢香を輩出したことでも知られる音楽塾ヴォイスで2019年に結成された3ピースバンド“Chilli Beans.”。


 2021年8月に初のDigital EP『d a n c i n g a l o n e』に収録されている「lemonade」はSpotify「バイラルトップ50(日本)」でデイリー1 位、ウィークリー3位を記録。YouTubeで公開されているミュージックビデオは本記事公開時点で160万回再生を突破している。


 そんな今注目のバンドであるChilli Beans.が、3月2日に2nd EP『Daydream』をリリースした。そこで、本インタビューでは、Chilli Beans.の3人が初めて音を合わせたときから、『Daydream』を制作するに至るまで、メンバー同士がその都度何を思っていたのかを振り返っていくことにする。

Moto「2人が『別に絞る必要ないんじゃない?』と言ってくれた」

――みなさんは音楽塾ヴォイスで出会ったんですよね。この3人はどんな3人ですか? まずMotoさんについてはいかがでしょう?



Moto


Maika(Ba/Vo):Motoは喋り方がふわふわしているから「不思議ちゃんだね」と言われることも多いんですけど、実はすごく太い芯を持っている人で。軸がしっかりしているなあと思います。

――では、Lilyさんについてはいかがでしょうか?



Lily


Moto(Vo):Lilyは発想力豊かです。

Maika:楽曲制作でも普段の生活でも、私たちが考えもしないようなことをふと言ってくることがあります。

――なるほど、ではMaikaさんについてはいかがでしょうか?



Maika


Moto:Maikaは包容力があって、人のことをすごく考えているなあと思います。

Lily(Gt/Vo):話がまとまらない時も冷静に見てくれるし、突拍子のないことを言っても一度は聞いてくれるし。

Moto:周りからすると甘えられる人なんじゃない?

Maika:うーん。やんちゃな妹がいるからそうなったのかも。

――Maikaさんは自分が弱っている時、ちゃんと周りの人を頼れていますか?

Moto:ほら、心配されてるよ(笑)。

Maika:(笑)。確かに私は人に頼るのがあまり得意じゃないし、最初の方は「私が頑張らなきゃ!」と思っていたんですけど、2人にはめっちゃ頼ってます。長く一緒にいるにつれて、得意分野は全員違うんだから、得意な人に任せたらいいんだと学んできて。




――いい関係性を築けているんですね。3人で初めて音を合わせた時はどんな感じでしたか?

Lily:まずはカバーからということで、Lenny Kravitzの「Are You Gonna Go My Way」を合わせたんですよ。


▲Lenny Kravitz「Are You Gonna Go My Way」

Maika:その時「楽しい!」と思ったし、Motoに対して「この人カッコいい!」と思って。

Lily:ロック魂があったよね。メタルやパンクが好きということで、最初はシャウトの印象が強かったんですけど、いろいろな声質で歌える人なんだなということが一緒にバンドをやるなかで分かってきて。

Moto:表現の幅が広がったのは、どういう歌い方をしていくべきか迷っていた時に2人が「別に絞る必要ないんじゃない?」と言ってくれたからなんですけどね。

Maika:そこからカバー曲を練習するうちに「あ、私たちにはこういう曲が合うんだ」と気づいたり、それぞれデモ曲を出した時に「あ、他のメンバーはこういう曲を書くんだ」と知っていったりして。




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Maika「一緒に仕事をしていると、本気で向き合って話し合わなきゃいけない」

――そうして少しずつバンドらしくなっていったんですね。そんななか、結成からわずか2年後の2021年8月に発表した「lemonade」という曲が一気に広まっていきました。MVは3ヶ月で100万回再生を突破したそうですね。

Lily:10万回を超えるまでがかなり早かったので驚いていたんですけど、そこから先も「あれ? 50万?」「もう70万?」という感じで。

Moto:まさか100万回を超えるとは思わなかったです。


▲Chilli Beans.「lemonade」

――どうしてあの曲がリスナーに届いたんだと思いますか?

Lily:結成してから初めて作った曲なんですけど、難しいことを考えず、楽しく、純粋に作った曲だからこそみんなに受け入れてもらえたのかなと思いました。

Maika:いい曲を作ろうとすると、「もうちょっとカッコいいことをした方がいいのかな」と考えてしまいがちだし、凝ったことをやりたくなるんですよ。だけど「lemonade」は自然に出てきたがゆえにメロディや進行がシンプルなんです。

――なるほど。結成からの3年間はみなさんにとってどんな時間でしたか?

Maika:間違いなく濃い時間でした。普通の生活で人と真正面からぶつかることってあまりないけど、一緒に仕事をしていると、本気で向き合って話し合わなきゃいけないことももちろんあって。



Maika


Moto:大変なこともあったけど、その分成長できたのかなと思っています。

Lily:他の人の考えに「そうだよね」と思うなど、いろいろな人と一緒に1つのものを作っていくなかで達成感、充実感がありました。そうして作った曲をたくさんの人に聴いてもらえる機会があるのがありがたいし、聴いてくれる人たちがいるから頑張れています。

Maika:楽曲制作も詰められたし、コロナ禍で難しい状況ではあるものの、ライブもたくさんやらせてもらうことができて。以前対バンさせていただいたKlang Rulerや今度自主企画に出てくれるリュックと添い寝ごはんなど、仲良くしてくれる同世代バンドが少しずつ増えてきているのも嬉しいです。

――そしてこのたび2nd EP『Daydream』がリリースされました。アコースティックアレンジの「シェキララ」含め、個性的な4曲が収録されていますね。例えば先駆けて配信リリース済みの「アンドロン」は歌詞に造語がたくさん入っていますが、ユニークな表現をすると普遍性が失われるかもという不安はありませんか?

Moto:どうだろう……。でも、伝わりづらい歌詞のところはメロデイを分かりやすくしたり、バランスをとるようにはしています。


▲Chilli Beans.「アンドロン」

――なるほど。

Moto:「これ伝わらないだろうな」と思うような表現をあえて入れるのがめっちゃ好きなんです。誰も言わない言葉を入れて、前後の繋がりも含めて、それが気持ちよくハマった時に「きた!」って高まるというか。

Maika:分かる。言葉と曲が上手くマッチして自分がノれた時、「気持ちいい!」「こんなポップな感じでこんなにヤバいこと言ってる! 最高!」みたいになるよね(笑)。

Moto:それに、そういう言葉を使うことで「自分と相手にしか分からない、2人だけの世界」を表現している感覚があるというか。例えば、Dメロの「さかな座」「かに座」のところも“絶対に君だよ”とその人にだけ伝えているようなイメージで。



Moto


――ということは、例えば100人のリスナーがいたとして、音楽を届けるうえでは“対100人”というよりも“対1人に届けるのを100回やっている”とイメージしますか?

Moto:確かに。言われてみればそうかもしれないです。

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Lily「The 1975の赤裸々な歌詞に救われてきた」

――「Tremolo」はダンサブルな曲ですね。

Maika:ある日スタジオでVaundyにDTMの使い方を教えてもらっていたんですけど、コードを打ち込んでいたらサビのメロディを思いついたのでその場で乗せたんです。その日はそれで終わったんですが、メロディがずっと頭から離れなかったので、後日AメロやBメロを作って。「え、ラップも入れたら超盛り上がるんじゃない?」って言いながら構成していったよね。

Moto:うんうん。ラップの歌詞はMaikaが書いたんですよ。

Maika:明るいけど、底抜けに明るいわけでもない楽曲にできそうだなと思ったので、過去の自分に贈るような言葉を書いてみようかなと思って。

――過去のMaikaさんはどんな感じでしたか?

Maika:常にネガティブで、何をやっても「自分なんか」みたいな感じでした。でも今思えば、その時の自分もカッコ悪くなんかなくて。ただ一生懸命生きているだけだったんですよね。

――今のお話を踏まえて歌詞を見るとさらにグッときますね。「きっといつか笑いになる/そうこんなFeelingも無駄じゃない」とか。

Maika:今はそう思えるようになったので、苦しかった頃の自分に「大丈夫やで」と言ってあげたかったんです。

――「Vacance」は危うい世界観を描いた曲のように感じました。

Lily:この曲を作った時、私がアイドルにめっちゃハマっていたんですよ。それで思ったのが、アイドルって不思議な存在だなということ。だからこそファンの応援する気持ちが盛り上がりすぎて、少し執着心が芽生えたりする。そういうギリギリの思考回路をかわいい曲の中で歌えば、怖さ倍増!みたいな。そういうことがやりたかったんですよね。

――ということは、Lilyさんの中にもこの曲で歌っている気質が存在している?

Lily:そうですね。私は小っちゃい頃から袋を集めるのが好きだったので、一つのことにこだわるような気質はあると思います。そういう気質を誇張して書いたような感じです。「こういうの、みんなもあるでしょ?」「共感してくれよ!」って。



Lily


――等身大の自分を表現するのではなく、一つの気質に焦点を当て、あえて過剰に描いているのは、「普段は言えないことも音楽では言える」という感覚があるからですか?

Lily:それに近いです。自分の嫌いな部分、深層心理って人に話すことはあまりないじゃないですか。だけど自分は知っているし、常にそれを考えている。「嫌だなあ」と思う感情を受け流せなくて、見逃せなくて、解決したくなっちゃうから、蓋をするように曲を書いている感覚があるんです。「もうこのことは曲にしたから考えるのやーめた!」みたいな。

――そこに対して「共感する」と言われたら?

Lily:嬉しいです。それはつまり、その人もそのことで悩んでいるということだから、会って話してみたいなとも思います。私はThe 1975が好きなんですよ。The 1975の赤裸々な歌詞に救われてきたし、そういう曲を心の支えにしてきたところもあるので、私もそんな歌詞を書きたいという想いがあります。


▲The 1975「Sincerity Is Scary」

――では最後に、これからどのようなバンドになっていきたいですか?

Lily:音楽はもちろんですけど、イラストやアートワーク、洋服なども含めて自分たちが等身大で表現できることをいっぱい吸収して、アーティストとしてカッコいい存在になっていきたいです。誰かに刺さるはずだと願いながら活動しているので、「Chilli Beans.を見ていたらちょっとテンションが上がった」みたいに思ってもらえる存在になれたら嬉しいなと思います。

Moto:「○○でライブをする」みたいな目標があった方がいいのかな?という話になったこともあったんですけど、「いや、そういうことじゃないよね」という結論になって。

Maika:Chilli Beans.らしく、やりたい表現を突き詰めていけたらと思います。




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