Billboard JAPAN


Special

<CASIO×Billboard Live>jizue 楽器に触れる人が増えている現在、ミュージシャンが見せていくべき今後の姿とは



jizueインタビュー

 「すべての人に音楽を奏でる喜びを」という想いから、新しい生活スタイルに寄り添う電子楽器を展開するCASIOがBillboard Liveとコラボレーション。Billboard Liveの出演者にリレー形式で「音楽の楽しみ方」を語ってもらう。

 2021年にバンド結成15周年をむかえた京都出身のインストゥルメンタル・バンドjizueは、コロナ禍によって思うようにライブ活動ができないなか、自身の楽曲制作により力を入れはじめ、昨年12月にはバラエティ豊かな10曲を収録したアルバム『Garden』をリリース。3月にはワンステージで交互に演奏するスタイルの【BACK TO BACK LIVE】を旧友fox capture planと繰り広げる。3名にこのコロナ禍で欠品が続いているというCASIOの人気製品「Privia PX-S1100」に触れてもらいながら、おうち時間の充実や音楽に触れることの大切さを語ってもらった。

左から:井上典政(Gt)、片木希依(Pf)、山田剛(Ba)

――皆さんはおうち時間をどう過ごしてますか?

井上:去年の10月にスタジオをオープンさせてからは、自宅では制作せず、スタジオで作業することがすごく増えました。一日中過ごすこともたくさんあります。(屋内にこもることは)全然苦ではなくて、性にあってますね。

山田:全然肩こらへんもんね(笑)。僕も家で作業できるように環境を整えましたけど、最小限のものしか置いていないです。スタジオで合わせるよりも、それぞれが家で作りこんだものを完成させることのほうが増えたので、それに必要な機材を取り揃えたって感じです。

井上:ライブの機会が減ったので、外に出ることが少なくなりましたけど、制作の量は増えましたし、ペースもあがりました。

片木:私も家で制作することが増えたので、機材も増えました。ピアノの音色によって作品の雰囲気もがらりと変わるので、このステイホーム期間が始まってからは、音色の違いを研究して制作に生かすことも増えました。

――プライベートのおうち時間を充実するために揃えたものはありますか?

片木:天井のライトと一体型のプロジェクターを買いました! スピーカーも搭載されていて、すごく壁と距離が近くても、大きな映像を投影できるんです。なので、映画やライブ映像も大迫力で観れて良いですよ。自分の部屋に圧迫感があるのが嫌で引っ越したんですけど、新居で家の時間を充実させるために他にもいろいろ買いだしたら、全然家から出たくなくなっちゃいました(笑)。二人は何か買ったの?

井上:何買ったかな?

山田:スタジオというすごくデカいもの買ったな。

井上:それがあったな。機材もいろいろ揃えたから、秘密基地ができたわ。しいて言うなら、コーヒーメーカーとちょっと良い掃除機ぐらいですかね(笑)。

山田:僕はソムリエもやっているんですけど、家で飲むことが増えたので、ワインを揃えてます。一度に5~6本買うこともざらにありますね。

井上:そんなに!?

山田:俺の誕生日に家に来たとき、持ってきたお酒を飲まんと、勝手に俺のワイン開けて全部飲んでったよな。

片木:飲んだわ! ステーキ用のお肉を持って行って、家にあるワイン全部飲んだな。

井上:(山田に)内緒で行ったのに、“今日の主人公”っていうタスキをかけて「どうしたん?」って出てきたんですよ(笑)。

――人のおうち時間も楽しいですけど、最小限で人と交流する時間も大切ですよね。メンタルやモチベーションを保つために始めたことはありますか?

片木:ランニングを始めました。最初は1分走ったら死にそうになるくらい、全然走れなかったんですけど、年始に10キロマラソンに出場して、無事完走しました。瞑想と近い感じで、自分自身と呼吸に意識を向ける時間がとても心地よいです。

山田:僕も家でおいしくお酒を飲むために、走るようになりました。何もせずに家にずっといて夜に飲むよりも、走って、お風呂に入って、さっぱり気持ちよくなった後に飲んだほうが、よりお酒もおいしく感じるというか。

片木:僕も走ってましたけど、寒くなってからは……もう少し暖かくなってから再開したいと思います。

――お話が変わりますが、皆さんが楽器に初めて触れたときはいつでしたか?

井上:父親がアコギをやっていたこともあって、家にたくさんあったんです。昼間から大きな音で弾いて、うるさかったんですよね。でも、小学校高学年のときに、コードで弾き語りしてみたいと思い、そのときに初めて触りました。初めて弾き語りしたのが長渕剛さんの曲でしたね。

山田:僕はGLAYとかLUNA SEA、L'Arc-en-Cielといったビジュアル系が盛り上がってきたときに、友達が楽器をやりだしたので、僕も真似して始めました。その時からベースで、SHAZNAの「Melty Love」が流行っていたときは、ふくらはぎの下くらいで弾いてましたね。ストラップは長ければ長いほどいいっていう時代でした。

井上:懐かしいっ(笑)! 肩にかけるより置いたほうが楽だったやろな。

片木:ハハハ(笑)。私は母が保育士だったこともあって、家にアップライト・ピアノがあって、3歳くらいからピアノ教室に通いはじめました。とても褒め上手な先生ばっかりだったから、練習したら上手くなる→褒められる→調子に乗ってまた練習する、のいいサイクルで楽しかったんですけど、ストイックなクラスに進級してからは練習が嫌になって教室をやめたんです。その後、近所にアレンジャーをしている方がいて、その方のレッスンに通い出してコードやジャンルに縛られない音楽の面白さを教えてもらったことが大きな出会いでしたね。

――フォークソングやビジュアル系バンドなど、ボーカル音楽から楽器を触り始めた井上さんと山田さんにとって、インストバンドとしてキャリアを築くのは思ってもみないことでしたか?

井上:もともとはボーカルもいたんですけど、曲を作るときも演奏から作っていましたし、歌モノには絶対的な力もいるから難しいなって思ったんです。

山田:インストバンドみたいな曲の作り方をしてましたし、インストとしても成立するような曲にボーカルを乗せる感じの楽曲が多かったので、インストバンドに移行するのはとても自然なことでしたね。

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(今の若い子たちの)知識やセンスは昔と比にならないくらい高い
僕らもカッコいい姿を見せ続けていかなきゃ

――コロナ禍でライブの機会が減ったこともあり、音楽の道がより厳しいものになってきたように思いますが、音楽に可能性を見いだせない方々が前向きになれるようなアドバイスがあれば、いただけますか?

井上:レコーディングのエンジニアをしていると、若い子たちと触れる機会がたくさんあるんですけど、昔ほど楽器を自分で弾いて曲を作る子たちがいないなと思うんです。その分、自分で簡単に曲を作れる環境と世に出ている音楽をすぐ聞ける環境が多くあるので、音楽の知識の量やセンスは昔とは比にならないくらい高いですね。楽器を弾く子たちが減っていると思う反面、コロナの影響で、楽器がすごく売れているという声も聞きます。演奏方法を教えてくれる先生となる動画が今ではネットですぐに見つけられるし、家で練習しているけど、集まって合わせる時間やバンドを組むきっかけが今はないだけなのかなと思っていて、あとはそれが結びつくだけの時間の問題かなって。あと、俺らみたいな楽器をフィーチャーしたライブやフェスが復活したときに「カッコいい」って思ってもらえるように、僕らもカッコいい姿を見せ続けていかなきゃって思ってます。とにかく若い子たちには曲は作り続けてほしいですね。そうじゃないと、僕のレコーディング・スタジオも潰れてしまいますし……。

全員:ハハハ(笑)!

井上:実は一般の方にも歌のレコーディングにスタジオを利用してもらうことが多いんです。こういう状況だけど、音楽は衰退しない、逆に盛り上がっていくんだなって思っています。

山田:僕の経験で言うなら、僕がSHAZNAのベースに憧れ真似したくなったように、真似したいと思われるような演奏を僕たちミュージシャンが届けることで底上げに繋がれば嬉しいなと思います。

片木:コロナ禍でピアノの売り上げが好調なことを聞きましたし、プレイヤーの数も増えてきたようなので、ミュージシャンとしては嬉しいなって思います。不要不急という点で、衣食住以外のエンターテインメントが“今すぐ必要ではない”と言われたけど、そこにある喜びや感動は人生において大事な要素でもあるので、上手い・下手にかかわらず、楽器を弾く楽しみや上手になっていくときの達成感を日常のなかで多くの人に経験して欲しいです。そういう中で新しく知ったバンドや音楽をきっかけに、ライブハウスに足を運んでくれたら、すごくいいですね。

――このコロナ禍に、エンタメに救われた人はたくさんいますよね。これまで音楽を通して救われた経験や、ファンの方からそういう声が届いたことはありますか?

井上:結婚式で僕たちの曲を使ったっていうお手紙をちょくちょくいただくことがあって、大事な場面に僕らが関われていることを知ると、「音楽やっててよかったな」ってすごく感じます。

山田:こっちが救われているよな。

片木:医療関係者の方から「お家に帰ってjizueの音楽を聴いて、勇気をもらっています」とか、「いつも癒されています」っていう言葉をお手紙やDMでいただくこともあり、自分たちの手から離れていった音楽が誰かの人生に参加できていることが本当に嬉しいですね。「また新しい音楽を作ろう」って、こっちも頑張れるんです。

――昨年12月にリリースされたアルバム『Garden』のなかの「Sugar」は、まさにアフターコロナの希望を歌われた曲で、歌詞のように一緒に乾杯できる日が早く来たらいいですね。

井上:僕らが毎年お世話になっていたイベントが中止になってしまって、その代わりにリリースしたコンピレーション作品のために書いた曲なので、コロナの影響と希望をもろに歌った曲です。

片木:100種類以上のクラフトビールを飲める長野県のイベントで、音楽とビール愛に溢れたお祭りが3年連続で中止になってしまったんです。お客さんと笑いたいという希望が歌詞に詰まっていて、歌詞まで書くインストバンドは多くないと思うんですけど、気持ちをきちんと伝えたいと思って、みんなで作りました。


――もうすぐ【jizue×fox capture plan「BACK TO BACK LIVE」】の開催が控えていますが、このライブについて詳しく聞かせてもらってもいいですか?

井上:ちょうど昨日、久しぶりにバンド合わせとfox capture planとリハーサルをしたんですけど、今までは月に何本もあったライブが、今は月一本くらいになって、バンドでガッツリ合わせる機会がかなり少なくなったこともあって、すごく楽しかったですね(取材は2月上旬に実施)。

片木:fox capture planは長年交流があるバンドなので仲間という意識が強いです。ライブでは、両バンドともオンステージで、一曲ずつ交代しながら繋ぎも即興で演奏していきます。昨日も「こんな感じで行こう」と繋ぎの部分も決めたんですけど、何が起こるかは当日のお楽しみです。つかっちゃん(fox capture planのドラマーの井上司、jizueのサポートメンバーでもある)は、休みなく、ずっと叩き続けることになると思います(笑)。

――どうなるかは観客も演奏される皆さんも予測不可能ということですね。

井上:そうです。僕らの曲にfox capture planが参加したり、逆に僕らが参加したりするので、メルテンさん(fox capture planの岸本亮)は「間違っても俺らしかわからないから大丈夫だろう」って言ってますね(笑)。ほんまにその場でしかできない演奏になると思うので、僕らも楽しみです。

片木:1stと2ndステージで内容も変えるつもりです。

――Billboard Liveにはたびたびご出演いただいていますが、何か思い入れや思い出はありますか?

片木:数々のスーパースターたちが演奏してきた場所なので、私たちにとっても特別な場所です。お客さんも少しオシャレして来てくれるので、その特別な雰囲気も好きですね。あとはスタッフさんが全員おもてなしのプロだなって。

井上:機材搬出も終えて帰ろうって時に、スタッフの方々全員が作業の手を止めて拍手でお見送りしてくださるんですよ。しかも裏で作業されてるキッチンの方まで。そのホスピタリティにすごく感動したのが心に残ってます。

山田:それで忘れ物なんかして戻ったら、むちゃくちゃ気まずいな(笑)!

井上:音響さんも会場の雰囲気も最高で……なんか、緊張してきたわ(笑)。

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