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<Billboard JAPAN SDGs プロジェクト第三弾>福原みほ:自分そして身近な人を幸せにしていくことが持続可能な社会の第一歩



Salyuインタビュー

~音楽を通じて持続可能な未来を創る~

 Billboard JAPANは「音楽」と「食」を通じて、社会の諸問題の解決に主体的に関わりながら、人々の暮らしを彩る「夢」と「感動」を未来に繋いでいくSDGsプロジェクトをスタート。アーティストが力を入れている取り組みや思いを不定期で発信していく。第三弾には、パワフルな歌唱力に定評のある福原みほが登場。母親である彼女がリアルな視点で考える持続可能なSDGsについて紐解いてもらった。

――いろいろあるSDGsの項目の中で福原さんが教育を選ばれた理由を教えてください。

福原みほ:興味のあるトピックはいろいろあったんですけど、やっぱりリアリティーを今一番に感じるのが教育かなと。娘が4月から小学生になるので、文部科学省の中身がすごく気になっていて。私は公立で育ったんですけど、20年以上経った今、どう変化してるのかにちょっと興味があります。

――やっぱり母親として、学校のシステムや教育のあり方に関心があるんでしょうか?

福原みほ:そうですね。自分の子どもが行く学校では、どういう教育のプログラムがあるんだろうって。学校って一日の多くを過ごす場所なので、その場所で楽しく学べて、楽しく会話・対話ができる環境であってほしいという願いもあります。

――ここ最近、ジェンダーレスな制服を導入する中学校や高校の取り組みや髪型問題について目にする機会も多くなり、教育界も少しずつ変わっていっているのかなと思いつつ、すぐに変えることも難しいでしょうし、声を上げ続けることが変化につながる重要なステップだと実感します。

福原みほ:例えば制服にしろ、何か一個、その人が持っている個の魅力みたいなものがより尊重し合えるといいですし、それこそSDGsが目指しているものだと思うんです。「ちゃんと受け入れ合う」っていう。私が住んでいる地域では、いまだに男の子の靴は上の段、女の子の靴は下の段っていうのがあるんです。私も含めて、ここは移住者が多くて、「あり得ないよね」って話をするんですけど、まだ男性優位というか……。型にはめやすい社会の構図が保育園のレベルからあることがすごく切ないし、時代遅れを感じているのが正直なところです。いい意味で反発していくこと、自分の個性を出していくこと、そしてそれが「なんでそうなのか」を子どもと親が話しあうことが必要なのかなって思ってます。

――幼少期を札幌で過ごされた福原さんは、ご自身の子ども時代と比べて、今でもご近所家族のつながりはありますか?

福原みほ:ありますね。私が住んでるところは外国の方が多くて、のんびりとした田舎なのにインターナショナルで、みんなずっと英語でしゃべってるし、ちょっと変わった感じなんです。娘も愛犬もよくいなくなるんですけど、「うちでミルク飲んでます」っていうやり取りがあります(笑)。そういうご近所の安心感は結構ありますね。ここでは、小学校に行く前に、お兄ちゃんお姉ちゃんたちの登校班のご家族にお酒一升瓶を持って挨拶しに行かなきゃいけないらしくって(笑)。町内会とか子ども会みたいなものにも入らなきゃいけないんですけど、近所の人たち全員で子どもを見守る風潮があって、とてもいいコミュニティーだと思います。

――国際色豊かなコミュニティーだと、それぞれの国の常識や育ってきたルーツによる違いから学ぶことも多そうですね。

福原みほ:ここにはオーストラリア人、イギリス人、カナダ人といろんな人がいるんですけど、例えば向かいのイギリス人のおじさん家に娘が遊びに行って、娘の礼儀がなってなかったから、「人の家では、こういうふうにするんだよ」ってプリーズの言い方をちゃんと教えてくれたり、私たちが教えていないことをほかの人が教えてくれていたりする機会があって、すごくありがたいと思いますね。私もそうですけど、自分の親や祖父母のほかに、友達のお母さんや先生から学んだことも非常に多いんです。日本の保育園や小学校では箸の持ち方を教えてくれたり、あいさつをちゃんとさせたりするので、それにはすごく感謝ですね。親の言うことは聞かないけど先生の言うことは聞く、みたいなところがありますよね。

――ちなみに福原さんはどんな子どもだったんですか?

福原みほ:私は本当に人の言うことを聞かない子どもでした。今もなんですけど。ロックンロールみたいな感じで、ワーッと。でも幼稚園のときに転園があって、最後の幼稚園では半年ぐらいしかいなかったので友達がいなくて、シャイだったし、いじめられたこともありました。誰のことも聞かず、わが道を行くスタイルでしたが、それを私のパーソナリティだと思って許してくれる・尊重してくれている人たちが周りにいることに感謝してます。

――娘さんはどんなお子さんなんですか?

福原みほ:すごくセンシティブで、私がまったくセンシティブじゃないから「なんでこんなことで泣くの?」みたいなことが多々あります。だからこそ、これから始まる小学校の友達のお家に遊びに行ったときに、お友達のお母さんとかおばあちゃん、おじいちゃんにしごかれていってほしいなと。まだ5歳なんですけど、いろんな人からいいところをどんどん吸収してほしいなと思います。

――学校で学ぶこと以外にも、コミュニティーから学んだことが、その人の人生に影響を与えることもありますよね。

福原みほ:学校はもちろんベーシックなことを教えてくれますけど、やっぱりそこが義務教育のネックだと私は思っていて。みんなを同じにさせる、同じお弁当箱に入れる風潮が大人になっても影響が出ていると、社会に出てから感じたことがあります。例えば、全然系統が違うアーティストなのに同じやり方でプロモーションをするとか。ビジネス的に考えたら、そのやり方でやってきた人達にお仕事を頼むのが楽で簡単なんだろうけど、みんな違う顔で、違うパーソナリティがあるんだから、違う形でやってほしいなって。

――勉強も大事ですけど、人間関係や周りの環境が良くないと、なかなか熱が入らないですよね。

福原みほ:うちのコミュニティーでは「いいよ、今日はうちで預かっておくね」っていうのが結構あるんですよ。そういう頼りあうコミュニティーをママたちもパパたちを巻き込んで作っていっていいと思うんです。「自分ひとりで子育てしなきゃ」より、いろんな人を関わらせることで逆に自分たちが楽になるって、最近、母親としてすごく感じていて。お子さんが生まれたばかりで家を出られないママ友には、「上の子をうちで遊ばせなよ」って言ったりしてます。自分の家では親の言うことを全然聞かない子なのに、私の家に遊びに来ると私の言うことはめちゃ聞くんですよ(笑)。そういう緊張感もある意味、教育かなって。学校だけじゃなくて、町内会とかクラブとか、お母さん同士、子ども同士が交流する場所があるといいのかなと思いますね。

――ママ友とSDGsの話題になることはありますか?

福原みほ:周りに環境問題に取り組んでいる人たちが結構いるんです。田舎に移住すると自然が身近にあるし、サーフィンや畑仕事をやる人も多いので、ごみ問題を間近に見てるからこそ、自然のために何かやりたいって思うんです。環境問題もそうだし、SDGsの考え方やジェンダー、さっき言ったような靴箱や服装の問題も含めて、いろんなことを話す機会は多いですね。

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――今お住まいのところに移住した理由をお聞きしてもいいですか?

福原みほ:(千葉県外房にある)いすみ市には、夏だけこっちに来てたりと、10年ぐらい行ったり来たりしてたんですけど、コロナが始まって娘が学校に行けなくなり、私もライブのお仕事がなくなって、東京も好きだったんですけど、自然のあるところで子育てするのがずっと夢だったので、このタイミングで思い切って移住しました。本当に緑と動物に囲まれた場所で、千葉県にキョンっていう外来シカがいるんですけど、キョンがよくその辺りを歩いていたりするので、バンビの世界みたいな感じです。でも、ちょっと坂を下りると「〇〇だっぺ」って言う方言のおばあちゃんがいっぱいいるので、その温度差が面白いですね。

――福原さんがお子さんに望む社会とはどんなものでしょうか?

福原みほ:発言することを恐れない社会になったらいいなと思います。「言ったらクビになっちゃう」とか、そういうヒリヒリした感じじゃなくて、もっと自分の意見を言える社会であってほしいなって。結局、教育にたどり着いちゃうんですけど、小学校の授業でもっとディベートの時間やプレゼンテーションの授業があったたらいいなと思うんです。そこから対話することが怖くないというか、いろんな人ときちんと話し合える、意見を言い合える社会になっていくと思うんです。

――子どもが自己発信しても大丈夫な社会や環境につながるように、これからの教育に期待したいですね。

福原みほ:そうですね。「それがルールだ」と跳ね返すのではなく、まず話を聞くなど、私たち世代やもっと上の世代がちょっと考え方を変えていけば、さまざまな問題を打破できる人たちが増えていくと思いますね。

――SDGsにはほかにも、貧困や飢餓、保健、ジェンダーに衛生面の改善、不平等をなくすといった項目もあります。ご自身の活動や音楽を通して、ほかのSDGsの項目に取り組めるところはあると思いますか?

福原みほ:いろいろ調べてたんですけど、まず自分ができることは近くにいる人たちを幸せにしていくことだと思うんです。私たち音楽家が集まって何かを変えられる機会があれば、企業の皆さんにお声がけいただきたいですが、まずは隣の人を幸せにしていくことがすごく大事なことだと思います。コミュニティーを発展させ、そういう場が増えれば、次のアクションができるというか。まずは自分を幸せにしていく、自分の家族を考えていく、友達を考えていくところからなのかなと思いますね。

――歌手・福原みほというよりも、母親そして一人の人間として、身近なところから考えていったほうが福原さんも現実味がありますし持続的かもしれないですね。

福原みほ:人の意識を変えていくのって一番難しいことで、結婚してる相手でさえも難しいなと思うので、まず自分が住んでいる場所・家族・コミュニティーが良くなっていくことからやっていかないと、たぶんその先はなかなかできないのかなと思います。持続可能を目指していくのであれば、やっぱり自分自身や自分の家族をケアしていくことが、一人の母親としての最初の一歩だと思いました。一歩ずつですね。

――今の生活ではご自身のことよりも娘さんとご家族を第一優先に考えられていますか?

福原みほ:優先してたんですけど、ちょっとちぐはぐしてきてて。「そういえば音楽やってたな」って、自分を忘れないように、自分のことも優先してやっています。コロナのときは毎日、自分は音楽家なんだと言い聞かせながら取り組んでいましたし、そういう一人の個としての存在をちゃんと受け入れることが大切だと、コロナ期間にすごく学びましたね。

――3月からはじまるツアー【ACOUSTIC SOUL 2022】をアコースティック・スタイルに決めた経緯を教えてください。

福原みほ:コロナ禍にアコースティックで配信ライブをやる機会がものすごく多くて、もともと弾き語りが好きだったし、自分の歌の繊細な部分はアコースティックのほうが伝わるなって、ずっと思っていたんです。バンドだと密になっちゃうので、なかなかバンドでツアーができないのですが、この数年、コロナになってからやってきたことの集大成を改めて皆さんにお見せできたらいいなという気持ちです。

――今回のライブを楽しみにしているファンの方へメッセージと、ライブの見どころをお聞かせください。

福原みほ:昨年末にリリースした「Mother」という新曲を、今回ピアノを弾いてくださる森俊之さんと一緒に作りました。ギターのオオニシユウスケさんも10年以上一緒に演奏してる仲間です。そこに今回、MARUさんと稲泉りんちゃんの女性コーラスが2人入るんですけど、オオニシさんもコーラスができるので、変な話、3人歌えるんですよね(笑)。なので、歌ものをいろいろとやれるかなと思ってますし、MARUさんとりんちゃんは私が大好きなシンガーなので、みんなが敬愛している音楽のメドレーもやれたらいいなと、いろいろ構想を練っています。音数も少ないですし、メンバーのスピリットをすごく繊細に感じられるライブになると思います。

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