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<インタビュー>miwaが語る、見つめ直したライブの大切さ/前向きな“願い”を込めた最新アルバム
シンガー・ソングライターのmiwaが、通算6枚目のオリジナル・アルバム『Sparkle』をリリースする。
前作『SPLASH☆WORLD』以来、ベスト・アルバムを除けば実に5年ぶりとなる本作は、ドラマ『凪のお暇』の主題歌「リブート」から、最新シングルである映画『総理の夫』の主題歌「アイヲトウ」まで、すべてのシングル曲に書き下ろしを加えた意欲作。“自分らしく”をテーマに、コロナ禍で生きるすべての人への前向きなメッセージが詰まっている。19歳でデビューを果たし、常に等身大の歌をうたってきたmiwa。2020年にデビュー10周年を迎え、今年32歳になる彼女の目にはいま、どのような景色が映っているのだろうか。アルバム制作のエピソードはもちろん、コロナ禍で考えていたこと、ライブへの熱い思いなどじっくりと語ってもらった。
「今日こうやってみんなと会えることの奇跡」
――コロナ禍になってからの2年間を、miwaさんはどのように過ごしていましたか?
3月3日は私のデビュー記念日で、2020年はデビュー10周年となるアニバーサリー・イヤーだったのですが、そのタイミングでコロナ禍になってしまって。翌年には【miwa “ballad collection” live 2021~decade~】と題し、10周年への思いを込めて、Zepp Tokyoにて2日間のライブをようやく行うことができたのですが、そのくらい2020年はアニバーサリーを表明することも、それを実感することも難しい1年でした。アルバムもなかなかリリースすることができず、予定していたフェスの出演もなくなってしまったので、その期間は『おうちライブ』と題して弾き語りライブを配信したり、スタジオで無観客の配信ライブを行ったり、音楽の届け方もかなり変化を余儀なくされましたね。
miwa “ballad collection” live 2021~decade~ (for J-LODlive)
――そんななか、miwaさんご自身の心境はどう変化していきましたか?
状況は日々変わっていくので、希望を持って前向きな気持ちでいられるときと、「まだまだ先が見えないな」と思って落ち込んでしまうときと両方ありましたね。コロナ禍になる前は次のライブ開催をお客さんにも約束できたし、「また会おうね!」みたいに言うことができたのですが、もはや次いつ会えるかすら分からないような状況ですから、一つひとつのイベントやライブの有り難さを再認識しました。もちろん、これまでも自分は常にライブを大切にしてきたつもりでしたが、その大切さの意味がコロナ禍で大きく変わったというか、より切実なものになりましたね。「ライブが無事にできて、今日こうやってみんなと会えることの奇跡」というものを噛み締めることの多い日々でした。
――なるほど。
それに、自宅で弾き語りのライブを実際にやってみると、普段のライブではどれほどたくさんのスタッフに助けられているのかも思い知らされました。演出や照明、音響などさまざまな趣向を凝らしながら一つのステージを作り上げていたのだな、って。自宅からの配信だとそういった助けに頼らず、すべて自分で表現しなければならないわけで。改めて「ライブってなんだろう?」と考える機会にもなりましたね。
――そこにあるものや限られた環境の中でどうやりくりすればいいのかは、きっと誰もが考えざるを得なかったことの一つかもしれないですね。
そう思います。理想を追い求めるのも大切ですが、あるものの中でも妥協せずどう最善を作ることができるか、自分のそのときのベストをどうやったら尽くすことができるか、ということにフォーカスする時間だったのかなと。
――2021年になってからは、世の中も少しずつですが動くようになってきて。miwaさんも昨年12月にはBillboard Liveでもライブをされましたよね。
はい。“食事をしながらライブを楽しむ”というスタイルは、私がやってみたいことの一つだったんです。特にBillboard Liveは、観客としてこれまで何度も足を運んでいた憧れの場所であり、そこで自分がライブをやるのは夢でもありました。それがようやく実現して本当に嬉しかったですね。来てくださったお客さんにもすごく好評で。私はデビューしてから10年以上経っているので、その頃はまだ中学生だったファンの方が「いまはこうやってお酒を飲みながら、あの頃聴いていた楽曲たちを聴けるのは本当に感慨深いです」みたいな声もいただいて。自分自身も大人になったことを感じられたし、ファンの方たちも「その曲にどこでどんなふうに出会い、どんなふうに聴いてきて、どれだけ大人になったのか」を実感できるいいライブになったんじゃないかなと思います。
私自身の“生き様”が反映された楽曲
――そのBillboard Liveのステージ上で、今作『Sparkle』のリリース発表をされたんですよね。
そうなんです。サプライズ・ニュースとしてみんながとても喜んでくれているのが、こちらまでダイレクトに伝わってきたのが本当に嬉しかったですね。
――タイトルに込められている思いについてもお聞かせください。
“Sparkle”は輝くという意味であり、本作は“自分らしく輝く”ということをテーマにしました。表題曲を書いたときはコロナ禍の前で、“僕ら”という人称で歌う歌詞も、ライブでお客さんとシンガロングすることをイメージしていました。お互いのことをエンパワメントするような、大きな夢を打ち上げたり、感動を分かち合ったり、みんなで一緒にやっていきたいよね、という“希望”を込めた楽曲だったんですね。でも、コロナ禍になっていま思うのは、「同じ時代を生き抜いているみんなと一緒にこの困難を乗り越え、その先の未来に喜びや幸せがあってほしい」という願いまでもが加わった楽曲になったなということです。
miwa 『Sparkle』 Music Video
――今作は、一貫して“自分らしさ”を大切にしようということをテーマにしていると思いました。
“自分らしさ”を大切にするとか、自分の価値観で生きていくというか、そういうフェーズに入ったのだと思います。自発的にそうしたテーマを取り上げただけでなく、例えばタイアップのオファーでも「自分らしさについて歌ってほしい」「女性の生き方として『自分らしさ』を選択することをテーマにしてほしい」という提案がありました。そういう意味では自分の内側からも、外側からも“自分らしさ”に向き合うタイミングだったのかなと思っています。
――例えば「DAITAN!」では、<女子力はクサリだ オンナらしくねぇ? 御免あそばせです KICK! KICK! KICK!>や、<この際言うけど男子力なんて 言葉はどこにも無いじゃん?>など、“男らしさ”や“女らしさ”といったジェンダー・バイアスに縛られることの不自由さについても歌っていますね。
映画『総理の夫』の主題歌として書き下ろした「アイヲトウ」でも「女性としての生き方、人生の選択について歌ってほしい」というリクエストをいただいたのですが、やはり30代になって歌いたいことも、求められることも変わってきたのだなと思います。これがデビューしたての10代終わり、もしくは20代前半だったらこなかったようなオファーだと思いますし。“女性として”や“男性として”というふうに、ことさら性別で分けることもないのかもしれないけど、それでも私自身が歳を重ねて経験してきたこと、当事者にしか分からないこともあると思うので、そこは表現者として作品にしていけたらいいのかなと思っています。もちろん作品なので、フィクションでもいいと思うし、物語性があっていいと思うんですけど、そこに私自身の“生き様”が反映された楽曲が増えていくのも必然なのかもしれません。
miwa 『DAITAN!』
miwa 『アイヲトウ』Music Video
――以前のインタビューでmiwaさんは、「30代の目線で物事を見ていくことが大事、そうすることで今までとは違った曲が生まれて、表現の幅も広がっていく気がする」とおっしゃっていました。それは今回感じましたか?
そうですね。私の場合はありがたいことに、デビューからツアーのメンバーも同じだったり、スタッフさんもけっこう長い付き合いになってきたりしていて。中にはデビュー前からずっと一緒のメンバーもいるので、そういう意味では同じように歳を重ねてきて、時を刻んできた人たちがそばにいてくれるのもありがたいし、そこに新しいスタッフさんや新しいメンバーが加わっていくことでの変化や進化もあるし、どちらの良さも感じることができているんですよね。変わらないものと変わっていくもの、両方をポジティブに感じられているのはとても恵まれていますし、だからこそ自分は歳を重ねていくことに楽しみを見出すことができているのかもしれないですね。ちょうどいま、今作を引っ提げてのツアー【miwa concert tour 2022 "Sparkle"】に向けてリハーサルをしているのですが、「デビューからお互い知っているのに、この組み合わせでツアーを回るのは初めてだね」みたいな話で盛り上がったんです。長くやっているとこういう面白さもあるんだなあって。なんだか感慨深いものがあります。
――では、そんなツアーに向けての意気込みを最後に聞かせてください。
まだ予断を許さない状況が続いていますし、お客さんにとっては制約の多いなかで見ていただくことになるかと思いますが、皆さんが安心して楽しんでもらえるよう最善を尽くすつもりです。そして来ていただいたからには、みんなが一つになって盛り上がれるような、「ライブに来て良かったな」と思えるような瞬間が少しでも多くあるようなステージにしたい。やっぱり歌の力を一番感じられるのはライブだと思っているんですよね。歌を直接聞くというのは、いまとなっては特別な機会ですし、私も皆さんに直接届けられる場を大事にしようと思っているので、無理のない範囲でぜひ遊びにいらしてください。
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