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<インタビュー>マカロニえんぴつが仕事として音楽をやれている喜び ――メジャー1stAL『ハッピーエンドへの期待は』リリース



 “全年齢対象ポップスロックバンド”マカロニえんぴつが、メジャー1stアルバム『ハッピーエンドへの期待は』を1月12日にリリースする。


 はっとり(Vo/Gt)を中心に神奈川県で結成、2020年11月にメジャーデビューを果たし、セールス、動員共に大きな飛躍を果たした彼ら。耳に残るキャッチーなメロディと自由度の高いソングライティングを武器に、次なるJ-POPシーンの代表となりつつある。


 CM、アニメ主題歌、番組テーマソングなどこれまで数々のタイアップ曲を手掛けてきたが、なかでも大きな反響を集めているのが2021年11月3日にリリースされた「なんでもないよ、」だ。この曲はノンタイアップながらBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”の12月8日発表で5位、ストリーミングチャートでは1位となり、ロングヒットしている。


 アルバム制作の背景について、大きく変化を迎えたバンドの今について、4人に語ってもらった。

仕事として音楽をやるという意識が高まった

――アルバム、とても素晴らしかったです。完成しての実感はどんな感じでしょうか?

はっとり(Vo & G):マスタリングの時に通して聴いて、実感がわきましたね。苦労して作ってよかったなと思いました。

長谷川大喜(Key):早く聴いてほしいっていう気持ちになりました。

高野賢也(B):今回はタイアップ曲も多くて、目の前のことにすごく集中して作っていったので、通して聴いた時に「この時は大変だったな」とか思い出すシーンが沢山ありました。2021年は怒涛の1年で、大変だったことも楽しかったこともあったので、こみ上げるものがありました。

田辺由明(G):メジャーとしては1stアルバムではあるんですけど、バンドとしては3枚目で。前に出した『CHOSYOKU』と『hope』も、今聴き直しても好きだし、いいアルバムだと思っていて。『hope』の時もやり切ったし、相当面白いアルバムになったので「これ以上のものって出るのか?」って思っていたんですけれど。結果、もっとぶっ飛んでいる一枚が作れた。もう次のフルアルバムが楽しみになっている自分もいますね。

――仰った通り2021年はバンドにとって飛躍の1年になりましたが、はっとりさんは振り返ってどうでしたか?

はっとり:仕事として音楽をやるという意識が高まったのはあるかもしれないですね。いろんな要望があって、その場で自分たちがどう振る舞えばいいのか、世に出た時にどう見られるか、自分たちはどう見せたいか、そういういろんなものが交差する中で曲作りする場面が多かったので。いろんな要素を加味した上で好きなことをやるというのがこんなに難しいことなのかと実感しました。でも、それができた時に、悪い意味の「仕事になっちゃってる」じゃなくて、すごくいい意味で、仕事として音楽をやれている喜びがあった。僕としては音楽をやっていることに対して「遊んでいるだけです」って卑下するよりも「働いています」って言えるほうがかっこいいと思うんです。だから、しんどい場面も多かったし、余計なことを考えなきゃいけない場面も多かったけど、全部がいい思い出になってますね。悩んだからこそ殻を破れたところもあったし、目まぐるしい1年だったけれど、バンドとしてはかなり成長できた。ツアーも2本やってチームも大きくなって、手を貸してくれる人がこんなにいるんだという喜びも感じた。いい1年でした。



――苦労したこと、殻を破ろうと悩んだことというのは、具体的には?

はっとり:最初は「生きるをする」ですね。メジャーに来て最初からこの曲で壁にぶち当たった。大きなタイアップ(テレビ東京系アニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』オープニングテーマ)だからこそプレッシャーもあったし、アニメのオープニングだから地味なこともしたくない。自分たちが最初に提示したものに対しての要望もあって、そこでイントロを変えてみたり、シンセのフレーズを大ちゃん(長谷川)が何パターンか考えてみたり、サウンドメイクを派手にしてみたりして。そこで洗礼を受けたというのはありました。そのときは自分たちがやりたいこととほんのり違うなあという違和感もあったんですけど、今聴くと、この派手さがかっこいいし、あの苦労はあってよかったなと思いますね。


▲マカロニえんぴつ「生きるをする」MV

――高野さん、田辺さん、長谷川さんはどうでしょう? ソングライターとしてのはっとりさんを見て、もしくはバンドとしての歩みの中で、殻を破ったと実感できた曲や出来事はありますか?

長谷川:僕は「裸の旅人」ですね。それまでレコーディングの時にはいつもスタジオではっとりくんが隣にいてイメージを伝えてくれたりすることが多いんですけど、この曲ではその場にいなかったんです。ひとしきりフレーズを考えて進めてからはっとりくんに聴いてもらって「いいじゃん」みたいなことを言ってくれた時に、委ねられたことだったり、自分が考えたフレーズを認めてくれたことだったり、いろんなことがつながって自分の殻が剥けた瞬間になった。自信につながった曲ですね。


▲マカロニえんぴつ「裸の旅人」MV

高野:「メレンゲ」もそうですね。あの曲は、サビで広大なゲレンデをイメージできるような、かつフォーカスが一人称になってスケールがぐっと小さくなって、その後徐々に広がっていく感じにしたいというような要望があったんですよ。それで、1サビの頭でストリングスと歌だけになるのを初めてやってみたりした。そういう要望が沢山あったことによって作れた曲がとても多かった。新しいチャレンジもできて、すごく刺激的でした。


▲マカロニえんぴつ「メレンゲ」MV

田辺:自分としてはライブですね。2020年は『hope』のリリースツアーができなかったんですけど、ツアーができるようになって、久しぶりにお客さんのリアクションを見たら、めちゃくちゃ楽しんでくれてるのが伝わってきた。自分たちがいいものを作って提供している実感があって、それが自信になった気がします。このバンドでギターを弾いていること、マカロニえんぴつの音楽を提供していることに、すごく自信を持てた1年だったと思っています。


▲マカロニえんぴつ "眺めがいいね" MACAROCK TOUR VOL.11 ~ GOING TO SEE YOU NOW ~

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「なんでもないよ、」は“深いところまでいってくれる曲”

――特に「なんでもないよ、」という曲の存在は大きいですよね。これだけタイアップ曲が沢山あるなかでノンタイアップの曲がヒットチャートに上がってきて、バンドの新しい代表曲になっている。いわば理想的な状況だと思っているんですが、この曲はどんなタイミング、どんなモチーフで生まれて、どういう位置付けになっていったんでしょうか?

はっとり:これは本当に突然やってきた曲です。よく言うじゃないですか、降りてきたって。滅多にないけど、そう言うしかない感じでした。だから慌ててギターを手にしてボイスメモに録音したんですね。ワンコーラスできるのに1時間くらいしかかからなかった。それが6月の終わりぐらいでした。で、「これはなんか売れる気がする」って思ったんですよね。メンバーとかマネージャーのリアクションもよかったし、レーベルの担当のスタッフに聴かせたときにも「これはいける」とか「これを待ってた」みたいなことを言われて、それで確信に変わって。アルバムに絶対入れようと盛り上がったし、スタッフの方も、これはノンタイアップでいこうと言ってくれた。そういう流れでしたね。慎重なチームなので、リリースした後に反応が薄かった時のための次の一手とかいろいろ可能性も考えてはいたんです。でも、それまでビルボードチャートのTOP10なんか縁がないと思っていたけど、リリースしてからの1ヶ月ですごいところまで行ってくれた。だから、自分の感覚は間違ってなかったと思います。メンバーの気合いの入れ方もよかったし、これができてよかったなって安堵もありました。


▲マカロニえんぴつ「なんでもないよ、」MV

――話題性や勢いや露出や、いろんな要素がヒットチャートに影響していると思うんですけれど、マカロニえんぴつに関しては一番大きいのが曲の力であるというのが証明されたと思います。

はっとり:そうですね。俺は作った曲、全部いけるって思っているんですけれど、たまに深いところまでいってくれる曲があるんです。冷静さを打ち破ってくれる深さがあって、自分に泣かされそうになる。それが「なんでもないよ、」だったんです。話題性やルックスのようなものでなく、このバンドは、曲の良さでここまでこれている。それは誇りですね。

――そして、「なんでもないよ、」が4番打者だとするならば、アルバムはいろんな曲者のバッターがいるような一枚だと思うんです。曲によって、いろんな変化球の球種がある。その中でも「TONTTU」がいちばんの変化球だと思うんですが。

はっとり:魔球ですね、魔球(笑)。これはどうですか、田辺さん。

田辺:僕とはっとりはもともとハードロックにルーツがあって。しかも、いろんなジャンルがある中でも好きなハードロックがすごく近しいものだったんで、「いつかはそういうコテコテなやつをやりたいね」って話していたんですよ。前にもポップの中にハードロック要素があるのはやったことあったんですけど、今回は逆にハードロックの中にポップ要素を入れたっていう。



はっとり:そうそう、逆にね。ビールでいったら泡7、麦3で大失敗(笑)。

田辺:それをやってみたいっていう話は、ずっとしていたんですけど。ありがたいことにタイアップをいっぱいやらせてもらって、タイアップばっかりだと正直まじめすぎてしまうのが、毎回フルアルバムを作る時にはあって。バランスとして、どこかでチョケているところを見せたいっていうのがあるんです。その役が「TONTTU」だったっていう。

――「トマソン」は高野さんが書いた曲ですが、途中でグッとテンポを落としてレゲエになったり、凝った曲調になっています。これはどう作っていった曲でしょうか。

高野:「トマソン」は、サビから作った曲で。ドラムのパターンが複雑なので、そこにベースをのせて、メロディが出てきた。サビを聴かせたいという曲ですね。デモの段階ではワンコーラス目とツーコーラス目って、そんなに変わっていなかったんですね。で、マカロニえんぴつには2番から変化を付ける曲が多いので、今までやっていないことを考えた結果レゲエになりました。でも、そのままのテンポだとレゲエにするのが合わないので、思い切ってはっとりが歌ったテンポを測って、それをもとにレコーディングして、ああなりました。



――長谷川さんの書いた「ワルツのレター」はどうでしょう?

長谷川:これはコロナで自粛している時期に書いた曲ですね。どんなに曲を書いても、レコーディングできない、ライブでみんなに聴いてもらえないという状況で。明日になっても変わらないなら、明日が嫌だなって思っていた気持ちを曲にしたんです。曲調はわかりやすく明るくすることもできたけど、でも暗くすることで、同じように明日が嫌だと思うような人の気持ちに寄り添う楽曲ができたと思います。わかりやすくがんばろうぜっていうことじゃなくって、マカロニえんぴつなりのがんばろうぜっていう伝え方ができるようにイメージして作った曲です。

はっとり:暗い部分が出すぎると違う伝わり方しちゃう懸念があったので、サビはもうちょっと前向きさを感じさせるようなものにしようと、大ちゃんは苦労して考えていて。大ちゃんが殻を破っていたのはあの時間だったと思う。半べそかいてたもん。

長谷川:そうですね。



はっとり:結構苦戦していましたよ。で、俺は「立ち向かえ」って思った。負けたり逃げたりすると、次に響くと思うから。俺は、同じ思いを何度かしたことが今につながっているんですよ。誰でも作ったものを変えるのは嫌なんだけど、客観性を持った人が言う意見は、自分以外の正解なんですよ。それが自分の主観の正解を破ってくれる。新しい殻が破けたり、新しいものが自分の中に入ってくるチャンスだと思ったら、立ち向かえると思う。大ちゃんに同情もしながら「でも立ち向かえるよ」って思ってました。

長谷川:支えてくれていましたね。

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マカロニえんぴつは“凝り固まってない”バンド

――はっとりさんがもちろん中心ですが、マカロニえんぴつはメンバー全員が曲作りに携わっていますよね。メジャーデビュー以降、バンドの体制や、それぞれの音楽的なクリエイティブが変わってきた感覚はありますか。

はっとり:前までは作り手の癖みたいなものがそれぞれあって、それが一貫していたんですよ。でも、そのパターンが増えていった感じはします。「こんな曲書くんだ」と思うことが増えた。たぶん、俺の知らないところで、メンバーはかなりインプットしているのかなって感じはしました。あまり語らないのでわからないですけど。各々のポップネスのセンスや要素は高まっている気がします。

――マカロニえんぴつは基本的に音楽的なルーツを大事にしているバンドですが、その一方で、新しいインプットも曲に反映されているんじゃないかと思うんですね。それを踏まえて改めて聞きたいんですが、まずはっとりさんは、ここ最近で刺激になった音楽にはどんなものがありますか?

はっとり:やっぱり血肉になっているものは18歳までに出会ったものになっちゃうんですけど、サウンド的な憧れとして、アヴィーチーが携わった曲とか、シーアとか、トーンズ・アンド・アイみたいなエレクトロポップなサウンドへの憧れは日々強まっていますね。あとはクリーン・バンディットとかも好きなんですけど、電子ドラムを取り込んだのは、そういったアーティストの影響かなと。あと、衝撃だったのは、アイ・ドント・ノウ・ハウ・バット・ゼイ・ファウンド・ミー(iDKHOW)ですね。パニック!アット・ザ・ディスコのダロン・ウィークスがやっている二人組で、すごいセンスがあるんですよ。いかついんですけど、ダンサブルだし、最小限の楽器でロックしていて衝撃的でした。


▲I DONT KNOW HOW BUT THEY FOUND ME - Do It All The Time

はっとり:あと、ウィーザーの『オーケー・ヒューマン』はギターを封印してストリングスで作っているアルバムで。自分がちょうど「メレンゲ」を作った後にあれがリリースされたので、リヴァースと同じ感覚なのかなってなんだか嬉しくなりました(笑)。

――田辺さん、長谷川さん、高野さんはどうですか?

田辺:僕は本当にハードロック一筋の人間だったので、自ら掘り下げるようになったのは、このバンドを始めてからですね。ここ最近はサブスクリプションでいろんな音楽を聴いてるんですけれど、ディグり方が下手なのか、あんまり新しくてハッとするものに出会うことがなくて。家にいるときはプレイリストを流していて、正直、誰のなんて曲かも知らないけど「あ、この曲は面白いな」と思ったものを掘り下げていくことをここ数年はしています。

長谷川:僕は大学入る前まではずっとチック・コリア、パット・メセニー、ジャコ・パストリアスあたりのジャズとかファンク、フュージョンとか聴いていたんですけど。最近は洋楽のポップ・ミュージックに目覚めてきた感じは、自分の中でありますね。お洒落なコードを使っていないのにブラックに聴こえる感じは、マルーン5とかアース・ウィンド・アンド・ファイアーとか、そういうのから由来している気がして。あとは、「ワルツのレター」は、エド・シーランやビリー・アイリッシュの、ずっとリフが続く感じの格好よさに憧れているところはありますね。ああいう渋さがかっこいいなと感じるので。


▲Billie Eilish - Lost Cause (Official Music Video)

高野:僕はアニメが好きなんですけれど、アニソンっていうジャンルは僕はないと思っているんですね。本当にいろんなジャンルの曲が流れるんで。“ドラマソング”っていうジャンルがないのと同じで。アニメを観てるとまったく自分の知らないジャンルの音楽を勝手にインプットできるんです。インストもあるし、オペラっぽい、ミュージカルっぽい曲もある。かつ、サビはものすごくキャッチーで引き込まれる。「トマソン」がサビからできたのもその影響かもしれない。いきものがかりの水野良樹さんが書いた曲とか、堀江晶太さんの曲とか、毎回、新しいクールに突入するたびに、刺激になってますね。

――いろんなお話を聞いていて、バンドとしての自由度が高いことがマカロニえんぴつの最大の武器だという感じがしました。もちろん、たとえばユニコーンなどルーツになっているバンドの存在は大きいと思うんですが、自分たちの音楽にエレポップでもハードロックでもブラックミュージックでもアニソンでも、なんでも入れられる器の大きさがある。

はっとり:そうですね。まさにその感覚はあります。凝り固まってないのがいい、という。確固たるバンドカラーみたいなものがないといけないという風潮ってあるじゃないですか。あとは、いろんなジャンルに手を出すと一夜漬け感があって薄っぺらくてダサいみたいに思われるという。そういうのは嫌なんですよ。一夜漬けでもおいしかったらいいと思うし、馴染んでなくてもかっこよく使いこなせていたら、借りてきたものを使ってもいいと思う。そういう僕の価値観が真ん中にあるので、かっこいいかダサいかの判断は自分の中にあったとしても、とりあえず、やりたくないものはないですね。面白そうだったらやってみようっていう感じ。柔軟性が強いのかもしれないです。だから、レコーディングも楽しい。今後も今までやってないことに挑戦していきたいと思います。



マカロニえんぴつ「ハッピーエンドへの期待は」

ハッピーエンドへの期待は

2022/01/12 RELEASE
TFCC-86799 ¥ 3,300(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.ハッピーエンドへの期待は
  2. 02.生きるをする
  3. 03.八月の陽炎
  4. 04.好きだった(はずだった)
  5. 05.メレンゲ
  6. 06.はしりがき
  7. 07.キスをしよう
  8. 08.トマソン
  9. 09.裸の旅人
  10. 10.TONTTU
  11. 11.ワルツのレター
  12. 12.なんでもないよ、
  13. 13.僕らが強く。
  14. 14.mother

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