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<インタビュー>上野大樹、2ndアルバム『帆がた』から感じる土地の記憶とセルフプロデュース



 2020年12月にファーストアルバム『瀬と瀬』でデビューを果たしたシンガーソングライター の上野大樹が、早くもセカンドアルバム『帆がた』をリリースする。繊細だが凛とした強さを感じさせる上野の歌声や、それを包み込むオーガニックなバンドアンサンブルは、これまでの延長線上にあるもの。しかし彼が幼少時代に聴いていた、1990年代のJPOPからインスパイアされたという本作のメロディは、前作以上の強度を持ち聴く者の心を捉えて離さない。目の前にありありと情景が浮かび上がってくるような歌詞世界も健在だ。コロナ禍で、作品をどう届けるかを必死に考えていたという上野。セルフプロデュース力にも長けた彼に、アルバム制作エピソードについてじっくり語ってもらった。

「住んでいた場所とその記憶」の特別さ

――『瀬と瀬』のリリースから1年が経ちます。この間、どのような活動をされてきましたか?

上野大樹(以下:上野):今のレーベルに移籍し『瀬と瀬』をリリースしてからずっとコンスタントに音源リリースをしていました。しかもその時点で「来年12月にはアルバムを出そう」という話をしていたので、常に制作モードでいましたね。コロナ禍で去年はライブが出来なかったのですが、今年に入って少しずつライブも出来るようになって。自分が作った音楽をお客さんの前で演奏することで「完成」するということを再認識しましたし。コロナ禍でのデビューだったからこそ、配信も含めてリアルな僕の「声」を届けに行く1年だったのかなと思います。

――コロナ禍で音楽への向き合い方にも変化はありましたか?

上野:レーベル契約したときはまだコロナ前だったのですが、『瀬と瀬』をリリースする頃にはもうライブもできないような状態になってしまって……。正直、「このままどうなっていくのだろう?」という怖さがありました。



上野:ステイホーム期間を「余暇」と捉えて趣味に高じる人も多かったと思うのですが、僕自身はむしろ「この状況でどうやったら動きを止めることなく、サバイブしていくことが出来るか?」をずっと考えていました。それで思うのは、コロナ禍になっていてもいなくても、変化を受け入れその状況に自分を適応させていくことが大切だということ。そのことに気づくきっかけにもなった2年間だと思っています。制限された状況だったからこそ、見えてきたこと、気づけたことがたくさんありました。

――今作『帆がた』に収録されている楽曲は、どれも詩情があって映像が思い浮かんできますよね。

上野:ありがとうございます。僕は地元が山口県宇部市なのですが、曲を書くときによくその風景を思い浮かべることが多くて。実家のすぐ近くに海があり、後ろを振り返るとすぐ近くに山がそびえているような場所で生まれ育ったんです。山に登ると頂上からは瀬戸内海が一望できて、夜は対岸の街の光がとても綺麗なんですよね。東京にはあまりそういう景色ってないじゃないですか。もちろん、街にはたくさんの情報があって刺激的だし、それに比べると地元には何もないんですけど、だからこそ上京してきてからその景色のことをふと考えて気持ちをリセットさせることもよくあるんです。

――なるほど。上京してきてからこそ、地元がどれだけ特別だったかに気づくことってあるのでしょうね。

上野:しかも、その景色にはたくさんの記憶や思い出が染みついていますからね(笑)。 実は僕、上京してから5回くらい引っ越しているんですけど(笑)、以前住んでいた場所をたまに訪れたりすると、その頃の記憶がありありと蘇ってくるんですよ。それが曲作りのモチーフになることもあるので、「住んでいた場所とその記憶」というのは、自分の中で結構特別なものなのかもしれないです。



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