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<インタビュー>Reol 数字に惑わされず、自分にしか作れないものを――最新作『第六感』を語る



Reolインタビュー

 シンガーソングライター/マルチクリエイターのReolが新作となるミニ・アルバム『第六感』をリリースした。「BOAT RACE」のCMソングとして起用された「第六感」や『デジモンアドベンチャー:』のエンディング・テーマ「Q?」など、TVなどのメディアを通して、そして制作されたミュージックビデオを通してすでにリスナーには浸透している曲が中心となった本作。その意味では、フューチャーベースや現在進行系のダンス・ミュージックを基軸にしながら、多くのリスナーに訴求する「ポップ・ミュージック」としての強度をさらに高めている。しかし同時に、そこには入れ替え不可能な、Reolでしか作り得ない「コア」がしっかりとあり、その独自性こそ、世界中からReolの楽曲が求められる理由(YouTubeのコメント欄の多言語ぶりを照覧されたし)であることが感じさせられる。 Reolの「第六感」、つまり「Reolしか感じ得ないオリジナリティ」を信じよう。

――Reolさんは、昨年は生配信ライブ【Reol Japan Tour 2020 ハーメルンの大号令 –接続編–】、そして今年は【Reol Installation Concert 2021 音沙汰】と、コロナ禍において新たな形でライブを展開されました。特に【音沙汰】は、「Installation」と名付けられたように、音楽的なアプローチや映像表現など、新たな、そして総合的な形で表現されたライブになりましたね。

Reol:サウンド的にもカルテットを迎えて8人編成で。それは前々からやってみたかったことだったんですね。でも、どうしても私のライブに求められるのはアッパーな部分が強かったので、そういったアプローチは従来のライブに組み込みにくくて。だけど今の状況ならばそういった「実験」をライブに組み込んで、新しい形で表現ができるなって。

――そういったイメージを実際に形にした感触はいかがでしたか?

Reol:「これからもこういう構成でライブをやって欲しい」という声も多くて、盛り上がるだけじゃなくて、私の歌や歌詞、音楽をじっくり聴きたい人が、想定よりもっと多かったんだなっていうことが分かったのは嬉しかったですね。それに、今まで【音沙汰】のようなチャレンジはしてみたいと思いつつ、例えばピアノ伴奏にボーカルだけで向き合うとしても、以前はそこに自分の歌唱スキルが追いついていなくて、粗が見えちゃうんじゃないかっていう不安があったんです。でも、今はこれまでのキャリアや経験を踏まえて、それができるという自信が生まれたし、それによって自分としても「新しいあり方」を見つけて、お客さんにプレゼンができたのは手応えになりましたね。

――そして前アルバム『金字塔』から今作までの間には、『ヒプノシスマイク』の女性ディビジョン・中王区 言の葉党に「Femme Fatale」を提供されました。

Reol:もともと私の作詞は、初音ミクに歌詞を書いて歌わせるところから始まっているので、その頃のことを思い出す部分もありましたね。楽曲に関しては、3人のキャラクター、3人の声優さんがいるので、各々の声のスイートスポットを考え、女性キャラクターとして初めての楽曲はどういう内容だったらヒプマイの世界が深まるかを考えました。ただ「中王区の楽曲がリリースされる」って発表されたときのSNSの反発はすごかったですね(笑)。

――確かに、ヒプマイ世界においては、中王区はヒール側だし、女性ファンの多いコンテンツでもあるので、余計にそういったバックラッシュが起きそうですね。

Reol:「あんな女たちの曲!」だとか結構すごいことが書かれて(笑)。でも逆にそれが制作に向かうエネルギーにもなりましたね。ヒプマイの男性陣や男性性を否定することなく、それでも女性性や女性の尊厳を肯定する曲を作りたいなって。

――その意味でも、女性としての存在をエンパワーメントするような内容でしたね。一方で、Reolさんの楽曲自体はノンバイナリーというか、そういった「性別」にウェイトを置いた歌詞は殆ど無いですね。

Reol:そうですね。性別だったり、色々とボーダレスにしたいというコンセプトがReolにはあるので。逆にそういった部分にフォーカスした曲は自分のフィールドだったら生まれなかったと思うので、刺激的だったし、やりがいがありましたね。

――そして今回の『第六感』ですが、作品構成としてはMVなどで発表されていた楽曲群が中心になっていますね。

Reol:『文明EP』『金字塔』と前2作がコンセプチュアルな作品になっていたんですが、今回は一曲一曲としてカットされても成立する楽曲で、曲単位でしっかりと届くものがテーマであり、現状のコンセプトになってると思いますね。「アルバム一枚を通して作品」という作り方も好きなんだけど、時代的にはサブスクやYouTubeで単曲を聴くような流れがあるから、そのリスニング状況を想定した時に、「キャッチーでいい曲」って思えるものにしたいっていうのが、コンセプトとしてありました。


――確かに「第六感」の平歌からサビへの接続は、過剰にドラマティックではないスムーズな展開なのに、非常にカタルシスを感じる流れがありますね。それは「メロディとトラックとボーカルの高い強度」がしっかりと融合していることで生まれていると思うし、それは「キャッチーでいい曲」の条件を満たしているんじゃないかなと思います。同時にそれは「第六感」のストリーミング1億回再生超えという数値にも現れているのではないでしょうか?

Reol:「第六感」は多くの人に好きになってもらえるという手応えはあったし、そういう曲をCMのために書き下ろせたというのも自信に繋がりました。だけど、再生数や「インターネットの数字」に関しては、そこまで重きを置いてないんですよね。

――それはなぜ?

Reol:そこだけに惑わされたくないんですよね。ネット上の再生数や数字ってインフレする一方だし、「一番売れてるものが果たして一番素晴らしいものなのか?」っていう疑問と同じように、「ネット上の数字が高いこと=いいこと」なのかなって。もちろん、再生回数が増えるのは嬉しいし、見てくれる人がたくさんいるというのは、当然モチベーションにもなります。だけど、それを理由(や動機づけ)にして自分の表現活動を続けられるかというと、それは分からないし、やりがいは他の部分にあると思うんですよね。それに再生数を狙った曲作りをしたら、バレるだろうし、そう分かりながらは歌えない。私は作ったことのないものを発明したいし、アップデートしていきたいんです。今の自分にしか作れないものを作って、同時に商業的にも成功する曲を作る。それが一番大事だし、目指す部分ですね。

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すごく閉じた世界で生きてた
(今は)ちょっと人とのつながりを考えている

――今回の『第六感』は7曲中4曲がMV制作され、MVが付属したバージョンもリリースされるので、MVにフォーカスしてお話を伺いたいのですが、『金字塔』以降に制作されたMVは、Reolさんのフィジカルな部分が強くなっていると感じました。「ゆーれいずみー」や「HYPER MODE」など、これまではガジェット的な雰囲気だったり、2次元と交差するような表現が印象的でしたが、『第六感』に収録されたMVは、ダンスや表情も含めて、より肉体性や実存性が強くなっていますね。

Reol:素晴らしいと思うもの、可愛いと思うもの、素敵だと思うもの……そういった様々なものが人生経験を経た上で増えていった気がしますね。食わず嫌いだったものがどんどん治った、みたいな(笑)。例えば「Boy」で笑顔を出してるんですが、今までのMVでは全然笑ってなかったし、監督からもそれを求められる部分があって。それで尖ったイメージを持たれたり、ドSだと思われていたり(笑)。でもそういった流れの上で、今回のように「普通の表情」を出すと、それ自体が新しい表現にもなっていると思うし、そう感じてもらえればなって。


――一方、今回収録のMVには、「Reolと関係を構築する他者」は登場しませんね。過去の作品でもそういった表現をされてきましたが、それでも「1LDK」などは明確な他者が存在していた。しかし、今回は「第六感」で東京ゲゲゲイのメンバーが登場しても、関係性としては断絶している。また「白夜」で対峙する白の衣装と黒の衣装の二人は、どちらもReolさんですね。他のMVに関しても他者と対話するようなシークエンスは無いし、登場してもマネキンやダンサーといった、表現上は「モブ」として扱われる存在です。その意味では「大勢の中の孤独」のような部分が、印象的に通底していると感じました。

Reol:確かに「マジョリティとマイノリティ」のような部分が作品の要になっていると思いますね。それを前提にしたというよりは、後から思い返して気づいたことですが。やっぱり私はニコニコ動画っていうカルチャーから登場して、オリジナル楽曲を制作して、メジャー・デビューを果たした……という意味でも、マイノリティ側だと思うんですね。個人的な部分でも、例えば身長が低いとか、少なくとも多数派ではないっていう自覚が強いんです。そういう人間がいかに他者と関係を持ち、この世界に身を置くかってことを、ずっと自分の人生で考えてきたことでもあって。それが今回のMVとか映像作品に反映されたのかもしれないですね。


――ただ、楽曲のテーマとしては孤独を求めるようなものではないのも興味深くて。

Reol:すごく閉じた世界で生きてたんですよね。友達とかもあまり自分から能動的に作らなかったし、話しかけるようなこともなくて。今も昔なじみの人たちとばかり作品作りをしてて、それはすごく楽しいんだけど、ずっとそれを続けるのかなって思ってた時に、【ROCK IN JAPAN】のようなフェスに呼ばれるようになって。そのバックヤードでいろんなアーティストが会話しているのを見て、私もずっとこの(閉じた)感じで行かなくてもいいんじゃないかなって思ったんですよね。私は、ニコニコ動画は塞ぎ込んでる人間がやるものだと思ってたし、実際自分もそういう時期に始めたんです。インターネットを通して、学校の友だちではない、クリエイティブな仲間と出会ったから、その世界がベースにあるんだけど、(今は)もうちょっと人とのつながりを考えている時期かなって感じです。

――歌詞に関してですが、今回はこれまでよりも聴感として気持ちいい言葉遣いにフォーカスされていると感じました。それがフューチャーベースを軸においたサウンドとの親和性が非常に高くて、ダンス・ミュージックとしての強度がすごく高いなと。

Reol:歌詞を一発で聞き取って、共感して欲しいって望んでたとしたら、もっとフォークとかカントリーを選んでたと思うんですね。だけど、私はまず音として聴いて欲しいし、それでいいとも思ってて。ただ、なんとなくずっと聴いていて、ある時にその言葉やメッセージが響いてくれたり、ハッと気づいてくれたら嬉しい。やっぱり聴き心地が良くないと、中身を知りたいとも思ってもらえないと思うし、まずは聴き応えにスポットを当てたいんですよね。

――最後に、これからの動きを教えてください。

Reol:【音沙汰】はガラッと方向性を変えたし、その編成のファンもついてくれたので、すごく良かったと思うんですけど、次はもう少しアッパーな方向にいきたいですね。やっぱり一緒に盛り上がれるようなライブをしたいなって。曲作りに関しては、作り続けています。一つのパッケージができたことで、改めて音楽が作りたいモードになってて。まだ試していないフィールドはたくさんあると思うので、それを形にしていきたいですね。

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