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<インタビュー>安斉かれん「夜は未完成」のボーカルは人間らしいーー7作連続で目指すところ



 安斉かれんが9月から7作連続で新曲をリリース。第1弾「18の東京」に続く第2弾「夜は未完成」(ドラマ「凛子さんはシてみたい」エンディング主題歌)は、ジャズのテイストを取り入れたサウンド、心地よい官能性を感じさせるメロディライン、そして、<すぐに他の人の話はやめて/ふたりの今を抱きしめたい>というフレーズが共鳴する楽曲。生々しい感情を注ぎ込んだボーカルを含め、安斉かれんの新しい表情が感じられる作品に仕上がっている。

東京は“戦いの場所”

――2020年はドラマ(『M 愛すべき人がいて』)の出演もあり、俳優としての活動もありました。今振り返ってみると、2020年はどんな年でした?

安斉かれん(以下:安斉):いろいろと環境が変わった1年でしたね。まずはたくさんの方に自分を知ってもらえたのがいちばんだと思います。SNSなどで声をいただく機会も増えて、それまでにはなかった新しい感じだなって。



――そして今年9月から7作連続の新曲リリースがスタート。第1弾「18の東京」は、前作「キミとボクの歌」から約7ヶ月ぶりの新曲だったわけですが、この期間はどう過ごしていたんですか?

安斉:「キミとボクの歌」をリリースしたときから「今年(2020年)は音楽の1年にしたい」と思っていて。(7か月のインターバルは)そのための準備だったり、模索する期間でした。ただ、7曲すべて出来上がっているわけではなくて。今も制作が続いているので、(連続リリースの)“いい”と思うものを重ねながら作っていけたらいいなと思ってます。

――なるほど。第1弾の楽曲に「18の東京」を選んだのはどうでしてなんですか?

安斉:メロディにすごく疾走感があって、7作連続リリースの走り出しにピッタリだなって。楽曲自体もキャッチ―だったので、1曲目にしました。歌詞はタイトル通り、“東京”がテーマですね。私は神奈川出身なのでそんなに遠いわけではないんですけど、(東京は)よくドラマや映画の舞台にもなっているし、憧れの街というイメージだったんですよね。その印象と、上京した当時の気持ちを重ねてますね、この曲には。

――東京は仕事する場所、夢や目標を叶える場所?

安斉:“戦いの場所”というイメージもありますね。暮らしているうちに、いい意味で染まっていくというか、馴染んでくるところもあるし。「東京の18」は<滲んでくため息>ではじまって、2番では<馴染んでくため息>と歌ってるんですよ。そういう変化も曲のなかで感じてもらえたらなって。



――第1弾から第4弾までのMVは、SNSなどでも人気のイラストレータ、絵師とのコラボレーション。「18の東京」は、YOASOBIの「夜に駆ける」のアートワークでも知られる古塔つみさんとのコラボでした。

安斉:イラストと実写の組み合わせ、新しいですよね。撮影のときはブルーバックだったんですけど、素敵な仕上がりになって。見てくれた方も新鮮だったみたいです。


▲安斉かれん - 18の東京 (Official Video)

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「夜は未完成」のボーカル表現は人間らしい

――そして11/3には、第二弾となる「夜は未完成」がリリースされました。「18の東京」とはまったくテイストが違いますね。

安斉:そうなんですよ。まず、ジャズのテイストが入っているのがうれしくて。中学生のときからアルトサックスをやっていて、もともとジャズも大好きなので、聴いた瞬間に「めっちゃいい!好き!」って思いました(笑)。古いジャズではなくて、今どきのテイストも融合されていて、すごくカッコいい曲だなって。なので、歌詞ではかわいい女の子を描いてバランスを取っています。

――<完璧なシチュエーションでも/あなたと私がいなきゃ/夜は未完成>など、ドキッとするようなフレーズもあって。リスナーの想像力を刺激する歌詞だなと思いました。

安斉:女の子がちょっと背伸びして恋愛している姿を描きたかったんですよね。寂しさ、切なさもありつつ、強がってるところもあって。弱さと強さを両方持っているのが、女性の素敵なところだなと思うので。

――この曲の主人公には、安斉さん自身も重ねているんですか?

安斉:いえ、置き換えてますね。以前は自分が思ったこと、感じたことを歌詞にすることが多かったんですよ。iPhoneにメモしていおいて、歌詞を書くときにそれを引っ張ってきたり。でも、最近は自分の体験だけではなく、主人公を立てたほうが、もっと自由に描けそうだなと思って。「夜は未完成」の歌詞は、“主人公は何歳で、こういうタイプの女の子で”と紙に書いて、そこからストーリーを広げたんです。



――実体験をベースにしているのではなく、創造性や空想を発揮しながら書いた歌詞なんですね。確かにそのほうが広がりそう。

安斉:まだまだ、いろんな方法を探ってるところなんですけどね。以前の曲を聴くと、自分の日記を読んでるみたいな感じがして恥ずかしいこともあるんですけど(笑)、創作で歌詞を書くと、普段は言えないようなセリフも歌詞に入れられて。そこはイイなって思ってます。

――歌詞の書き方が広がれば、ボーカルの表現にも影響がありそうですね。

安斉:そうですね。「夜は未完成」のボーカルは、人間味を出したくて。「18の東京」は真っ直ぐ歌ってるイメージなんですけど、今回はもっと感情的で、人間らしい歌というのかな。息の成分を多めにしたり、ディレクターの方と話しながら歌い方を決めていきました。7作連続リリースで、歌の表現も広げていきたいと思っていて。自分のオリジナル曲には歌い方のお手本がないから、難しいんですよ(笑)。



――「この曲はこういうテイストで歌う」という答えを自分で見つける必要がある、と。よく言われてると思いますが、安斉さんの声はすごく個性的だし、似ている人がいないですよね。

安斉:嬉しいです。小さいころから自分の声がコンプレックスだったんですよ。「どこにいても(声で)わかるよね」と言われるのもイヤだったんですけど、この仕事をするようになって、自分のいいところなのかなと思うようになって。自分の声が好きとはまだ言えないけど(笑)、以前ほど違和感は感じなくなりました。

――「夜は未完成」のMVは、日常と非日常を織り交ぜた作風で知られるイラストレーター森田ぽもさんとのコラボレーション。楽曲の世界を見事に描き出してますね。

安斉:そうなんですよ。当たり前ですけど、前作「18の東京」とは絵のタッチが全然違うし、イラストに動きも付けてもらっていて。また新しい印象を持ってもらえると思います。


▲安斉かれん - 夜は未完成 (Official Video)

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“今”をがんばることで可能性を広げる

――ちなみに安斉さん、「夜は未完成」みたいに、ワインやBGMで気分転換することはありますか?

安斉:めちゃめちゃあります(笑)。家にいるときは、ずっと音楽をかけてるんですよ。その時のテンションによっても違うんですけど、夜は歌がないインストが多いですね。音楽の入り口はロックなんですけど、最近はジャズだったり、ピアノ曲を聴いてることもけっこうあって。レコードも好きなんですよ。



――アナログ派なんですか?

安斉:もちろんネットでも聴くし、すぐにいろんな曲が聴ける手軽さも素敵なんですけど、レコードは簡単に聴けないのがいいんですよね。

――手間がかかりますからね(笑)。

安斉:それがいいんですよね。音の感じも違うし、レコードを聴いてボーッとしてる時間は好きですね。



――7作連続リリースは来年春まで続きます。この先の展開、どうなりそうですか?

安斉:さっきもお話したように、スタッフのみなさんの話を聞いて、知識をもらったり、自分がいいなと思うことを重ねながら作っていきたいですね。作り方自体もいろいろ試してみたいし、どんな曲ができるんだろう?ってワクワクしてます。何て言うか、毎回違った色を感じてほしいし、どんどん更新していきたいんですよね。「安斉かれんは、こういう系の音楽」というイメージはまだ定まってないと思うし、私自身、何が好きで、何が似合うのかもまだわかっていないので、いろいろ挑戦していきたいです。

――アーティストとしての方向性を決め過ぎず、自由に活動していきたい気持ちも?

安斉:そうかもしれないですね。もともと先のことを考えるのが苦手というか(笑)、“今”をがんばりたいという生き方なんです。その方が生きやすいというか……。先の目標を明確に決めてがんばるのも素敵なんですけど、私は一つ決めてしまうと、それ以上視野が広がらないんですよ。それよりも“今”をがんばることで、“こういうこともできそうだな”と繋がる方が好きなんですよね。



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