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<インタビュー>シズクノメが“人生をかけた夢”を見つけるまで



シズクノメインタビュー

 結成からわずか1年でYouTubeチャンネル総登録者数が30万人を突破したシズクノメがメジャー・デジタル・シングル「ハイ」をリリースした。SNSやYouTubeといったプラットフォームを屈指し、音楽そして映像の両面で若者から絶大な人気を博す彼らは、8月に1stアルバム『単純的希望』リリース、9月中旬にバンド初の有観客ライブ開催、そして現在初のツアー中と、怒涛の進撃を見せている。紆余曲折を経て、“人生で愛するもの”で夢を掴んだ彼らに、記念すべきメジャー・デビュー曲から、彼らだからこそ伝えられる若者へのメッセージまで、多岐にわたって話を聞いた。

左から:YAH(Ca)、しゅん(Vo.)、宮本テツ(Dr. / Cho)、ミチヒロモトキ(Gt, / Vo.)、ぐれむりん(Key. / Cho)

――「ハイ」は、いつ頃作られた曲なんですか?

ミチヒロモトキ:『単純的希望』のレコーディングが始まる前にはあったっけ?

YAH:いや、なかった気がする。

ミチヒロ:じゃあ、始まって少し経ってからか。「パッと咲いて」の時にはあったような気がするな。

しゅん:デモの段階は思い出せんけど、メジャー・デビューが決まる前にはあったような。

ミチヒロ:この曲をどうして書いたのか、はっきりと覚えていなくて、逆に自分に聞きたいんですよ。パッと浮かんだ言葉からサビを完成させて、それをもとに全体の歌詞を膨らませていったんですけど、「その言葉が浮かんだ理由は何だったんだろう?」って考えながら作ったんです。メンバーとも「この曲いつ出す?」って話はしていて、いつかはリリースするつもりでした。

――しゅんさんは歌ってみてどうですか?

しゅん:『単純的希望』の時はがむしゃらに、自分の持てる力を最大限に出したんですけど、「ハイ」はアレンジ前の歌入れの時から、繊細に歌うことを意識してました。シズクノメって浮き沈みが激しい曲が多いんですけど、「ハイ」を歌ってる時が一番喉の力配分を気にしてます。モトキが作った曲を俺が歌うので、モトキがこの曲で描きたい世界観をリスナーにしっかり伝えられるよう、特に冒頭のアカペラは歌詞を届けることを意識してます。そういう意味で繊細に歌うことを重視していて、他の曲と比べても、この曲を歌うのはかなり難しいですね。

ミチヒロ:しゅんから「『ハイ』はいつ出すの? めっちゃ好きなんだけど」って前々から言われていて。仮歌の段階ですごく良かったのに、本番でもっといいモノが録れたので、ずっと聞いててくれてたのかなって思ったのを覚えてます。

――YAHさんはこの曲を聞いて何を思いましたか?

YAH:インディーズからメジャーに行くタイミングで、シズクノメの幅が広がったなって。シズクノメが今まで歩んできた道のりが上手く表れてると感じました。今回初めてラップに挑戦したこともあって、1stアルバムから一気に印象が変わりました。

――サウンドのレイヤーが豊かで、歌詞に注目すると一人の男性像がリアルに見える一曲ですよね。プレイヤーのテツさん、ぐれむりんさんから、それぞれ注目してほしいパートを教えてください。

テツ:跳ね感を意識して叩いてます。しゅんが言った繊細な部分だったり、アクセントをつけたりした細かい技法を取り入れてるので、そこに注目してくれたら嬉しいですね。

ぐれむりん:あえて注目して欲しいところを言うとすれば、2番のAメロと2サビ終わりの間奏のソロです。ピアノのグルーヴが十分に出ている曲なので、そこに注目していただけたら。

――ミュージックビデオはどのような作品に仕上がっていますか?

YAH:この曲を聞いてまず夜をイメージしたんです。夜プラス少し狂った感じをイメージして、カメラワークも意味のあるブレを入れてます。今まではブレのない映像を意識してましたけど、今回は曲とMVの世界観が合致してると思います。カメラマンも曲を理解してくださっていて、最初から「あ、いい感じ」って。

――ディレクションはYAHさんですか?

YAH:MVの世界観や配分といった細かい指示は基本的に俺が指示させてもらい、監督とすり合わせて撮影しました。

ミチヒロ:今までYAHちゃんは撮影メインだったけど、今回は撮影する人として映っているんです。

YAH:そうなんですよ、俺、映ってるんすよ! カメラマンが映ったMVって他にはないので新鮮だと思います。朝から18時間くらいノンストップで撮りました。


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とにかく行動することが大切
自分は行動して変わった(YAH)

――この曲には<掴んで離さんように><意味はあんの?><みんなそんなもんじゃろうが>といった方言が混じっていますが、これはリズムを優先して取り入れたんでしょうか?

ミチヒロ:俺が岡山出身で、今でも話してて普通に方言が出ちゃんですけど、しゅんは広島出身で、仮歌で歌った時のニュアンスがナチュラルで良かったんです。二人とも普段使う言葉だから直さなかったというか、わざわざ標準語にする必要はないなって思ったんですよ。

――私も地方出身でして、自分の方言に似たイントネーションが聞こえてきて、グッと来ました。ちなみに、他の3名はどちら出身ですか?

YAH:埼玉です。

テツ:神奈川です。

ぐれむりん:僕も神奈川です。

――関東圏では「離さんように」とか「意味はあんの?」って言わないですか?

YAH:言わないですね(笑)。

テツ:離さないように、ですね。

――おお(笑)、方言圏と標準語圏ではこの曲の聞こえ方が変わってきそうですね。あと、ミチヒロさんのラップパートで<歌え踊れの百鬼夜行 鬼を滅ぼせTurn-Zero>とありまして……これはあの人気マンガから来てますか?

ミチヒロ:僕の口からは言えんところです(笑)。

全員:ハハハ(笑)!

ミチヒロ:でも、2サビで<こんなマイターン またやり直しさ>という歌詞があって、そこと繋がっています。

――確かに(笑)。<カフェインぶち込んでこう Gives you wings>も思い当たるモノがあるというか……

ミチヒロ:これはレッドブルです!

全員:ハハハ(笑)!

――ここのラップは全部韻を踏んでて、リズムもいいですよね。バンドの目標である武道館ライブまでの道を着々と進まれているシズクノメには若いファンが多いと思います。受験シーズンが近づいていますし、皆さんに憧れている学生も多いと思うんですけど、皆さんは昔からやりたいことや夢はありましたか?

しゅん:俺は高校が工業系、大学は映像を学ぶところで、音楽は全く考えてなかったです。正直、やりたいことを探すために大学に行ったのに、やりたいことが見つからなくて……「やってて俺が一番楽しいことってなんだろう?」って考えて、歌だって気づいてから、プロを目指しました。その頃はもう20歳を過ぎてましたし、学生の頃は本当にやりたいことがなかったです。

ミチヒロ:俺は音楽をやると決心した決定的な瞬間はなくて。中学生くらいから曲を作ってるんですけど、それがすごく楽しくて、今も続けている感覚です。でも、誰かに聞かせるわけでもなく、自分のために作ったものがだんだんと聞かれ始めて、自分の曲で喜んでくれたり、「この曲に助けられた」ってSNSで知ったりしてからは、好きだから音楽を作っているのは今も変わってないんですけど、周りの人達が受け取ってくれるものがあると、自分の中でも意識が変わりました。

ぐれむりん:僕は姉の影響もあって小学校でたまに合唱曲を演奏することはあったんですけど、その後は部活でずっと音楽から離れていたんです。高校一年生の時に弾き語りをしたくてピアノを始めまして、こうしてキーボーディストとして本格的に音楽活動を始めたのは、シズクノメに入ってからです。

YAH:俺は小学校の頃からマリンバをやっていて、子供の頃からとにかく音楽に携わる仕事がしたいって思ってました。中学生の時にバンドを組んで、高校生の時には「音楽で食っていく!」っていう夢があったんですけど、やっぱり簡単じゃなくて。映画も好きだったので、音楽で生きていけなかった時のための策として映像系の大学に進んで、大学三年まで音楽を頑張ったんですけどダメで、カメラマンに転向しました。やっぱり音楽が人生になくてはならないもので諦めきれず、今もその夢は変わってないですね。

テツ:自分は大学に在学中なんですけど、持っている熱意を発散できないでいる自分がいました。楽器を触り始めたのもつい最近のことですが、その熱意とがっちりはまったというか、びっくりするくらい音楽にのめり込んじゃって。「もっと上手くなるにはどうしたらいいんだろう?」って今でも考えていて、そう思っている自分に素直に従ったらシズクノメに辿り着いたので、これからも自分の気持ちに正直に生きていこうと思ってます。

――やりたいことが見つからない子や、音楽や進みたい道があるけど、なかなか踏み出せずモヤモヤしている方がいたら、どんな言葉をかけますか?

しゅん:正直、諦めも重要かなって。俺は社会人になることを諦めました。

YAH:俺はとにかく行動することが大切だって言いたいです。行動しなくちゃ何も始まらないんで。自分は行動して変わったので、ちょっとでもいいから、自分から動くことを薦めます。

ぐれむりん:僕が音楽をやりたいと思えたのは、周りにいる人達のおかげなので、いろんな人と関わることも大切な気がします。あと、SNSとかトレンドに入ったものを見て、好きだと思ったら、やってみるのはどうでしょう? いろんなものに挑戦してみれば、自分に合うかもわかると思うんです。

テツ:人間やってやれないことはないんだと思ってます。自分がそうだったんで。今は誘惑も多いですし、言い訳しやすい世の中ですけど、言い訳だけはしてほしくないですね。「やってやれないことはないんだ!」っていう精神で、一つのことに向かって諦めずに進んでほしいです。

ミチヒロ:変な言い方かもしれないですけど、自分が好きなものを素直に好きと言える自分を許してあげてほしいですね。心のどこかに本当はやりたいことがあるんじゃないかと思うんです。堂々と好きだと言えない空気とかありますけど、好きなものを好きだと言っても大丈夫だと思ってもらいたいし、そう思ってもらえるような音楽を書きたいです。

――心強い言葉ありがとうございます。12月には1stツアーで名古屋・大阪を回る予定ですが、今の心境はいかがですか?

しゅん:ツアー自体初めてなので、みんなで車に乗って行くワクワクと、東京とは違う音楽の聞かれ方とかもあると思うので、「どんな感じなんだろう?」っていうワクワクがあります。

ミチヒロ:俺も楽しみっていうのがデカいですね。連続公演なので、どう泊まるのかとか、ツアーだけど修学旅行みたいな。

YAH:2日連続でライブするのは初めてなので、これからのスキルアップに繋がるライブになるかなと。カメラマンとして、当日来られなかった方たちのために映像を残して、届けたいです。

ぐれむりん:まだ地方で僕たちの音楽を生で聞かせたことがないので、気合は入ってますし、みんなでライブして楽しもうっていう前向きなツアーになると思うので、楽しみです。

テツ:僕はツアーグッズのデザインを手がけていて、結構前から準備してきました。ずっと温めてきたものがいっぱいあるので、気に入ってもらえたら嬉しいですね。今回のツアーに向けて、自分の持てる時間はすべて費やしたので、場所は違えど、最高の日にしたいと思ってます。


――「ハイ」も演奏する予定ですか?

ミチヒロ:ネタバレになっちゃう(笑)。でも演奏してて楽しいから、やりたいよね。それは来てくれた方だけのお楽しみ、ということで。

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