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<特集>ペンタトニックスのスコットが解説 最新クリスマス・アルバム『エヴァーグリーン』



PENTATONIXインタビュー

 ペンタトニックスの冬が今年もやってきた! 2016年に『A Pentatonix Christmas』をリリースして以来、コンスタントにクリスマス・アルバムを発表してきた彼らが、5枚目となる最新クリスマス・アルバム『エヴァーグリーン』を発表した。本作には、誰もが聞いたことのある往年のナンバーから、アレッシア・カーラやヴァイオリニストのリンジー・スターリングをゲストに迎えた伝統的なクリスマスの名曲、そしてオリジナル・ソングなど、唯一無二のアカペラで歌い上げた珠玉のナンバーが勢ぞろい。スコットのインタビューと楽曲解説とともに、オリジナル曲とペンタトニックスver.の魅力をお伝えしよう。

オリジナルとペンタトニックスver.を解説

セリーヌ・ディオン&アンドレア・ボチェッリ「ザ・プレイヤー」

アニメ映画『魔法の剣 キャメロット』(1998)のために、デヴィッド・フォスターとキャロル・ベイヤー・セイガーが書き下ろしたナンバー。【アカデミー賞】【グラミー賞】にノミネートされ、【ゴールデン・グローブ賞】では<主題歌賞>を受賞した。壮大な世界観を世界最高峰シンガー2名が歌い上げる贅沢なこのナンバーは、クリスマスやウェディング・ソングの定番曲だ。

「愛と希望がテーマだから、クリスマスにも相応しいんだよね。それにオーセンティックなスタイルで壮大な曲だから、心を鷲掴みにして、どんどん大きく広がっていく。そんなところも大好きで、クリスマス気分を盛り上げてくれる。僕たちのミュージックビデオも、雪が降り積もる森の中というシチュエーションで、すごくクリスマス・ソングぽい感じ。」(スコット)



スティーヴィー・ワンダー「アイ・ジャスト・コールド・トゥ・セイ・アイ・ラヴ・ユー」

1984年発表のアルバム『ウーマン・イン・レッド』からのNo.1ヒット曲。ジーン・ワイルダー監督の同名映画、日本ではドラマ『君の手がささやいている』(1997~2001)の主題歌として使用され、現在も人気の高いスティーヴィーの代表曲のひとつだ。

「前にTikTokで誰かが歌っている動画を観たとき、『コレだ!』と思って僕がメンバーに提案したんだ。結局そのときはレコーディングせずに、そのままになっていたんだけれど、今回クリスマス用の曲を探していたときに改めて聴いたら、すっごくスウィートで最高じゃないかと思ってね。『愛していると伝えるのに、理由なんていらない』とかってさ、もう最高にスウィート。愛情が溢れていて、すごくセンチメンタル。このアルバムのムードにもピッタリだし、しかも歌詞にもクリスマスって言葉が出てくるんだ。」(スコット)



「フロスティ・ザ・スノーマン」

1950年にジーン・オートリー、ジミー・デュランテ、ナット・キング・コールらが歌い、それぞれ大ヒット。1969年にアメリカで初放送されたアニメのTVクリスマス特番『フロスティ・ザ・スノーマン〜温かい雪だるま』にも用いられ、子どもから大人まで幅広い世代が口ずさめる往年のクリスマス曲だ。リード・ヴォーカルで参加しているのは、「ヒア」や「ステイ」(with ゼッド)などで知られるアレッシア・カーラ。ペンタトニックスは過去に「ステイ」をカバーしたことがある。

「幼い頃からみんなが耳にしてきたお馴染みのクリスマス・ソングだよね。アニメも同様に。すごく楽しいストーリーだし、雪だるまが魔法で命が吹き込まれるとかって、みんなで楽しく歌えるよね。アレッシア・カーラにゲスト参加してもらったのは、僕たちが彼女の大ファンだから。彼女のソウルフルな声のトーンや、彼女が歌うときの声の使い方が大好きなんだ。まったく肩に力を入れずに歌って、クールに聴こえるんだよね。彼女のおかげでこの曲もネクストレベルになったと思うよ。」(スコット)



ザ・ビーチ・ボーイズ「リトル・セイント・ニック」

1964年に発表されたザ・ビーチ・ボーイズのクリスマス・アルバム『The Beach Boys’ Christmas Album』に収録。ブライアン・ウィルソン&マイク・ラヴが書き上げ、ブライアンがプロデュースを手掛けた。ペンタトニックスは彼らの「神のみぞ知る」をクリスマス・ソングとしてカバーしており、本曲からも両グループの相性の良さが感じられる。

「ザ・ビーチ・ボーイズって最も成功したハーモニーを歌うグループじゃないかと思うんだ。僕たちは彼らの歌を聴いて育ったし、彼らの曲ならほとんど全部知っている。だからこの曲は実のところ、このアルバムの中で最もスムーズにレコーディングできた曲だったよ。というのも、彼らがすでに完璧なハーモニーのアレンジを施してくれていて、僕たちのために楽譜を書いてくれていたようなものだから(笑)。」(スコット)



ジョニ・ミッチェル「リヴァー」

1971年に発表された名盤『ブルー』の収録曲で、<長い河さえあれば、滑ってあなたのもとに行けるのに>と、恋人と離れ離れになったシチュエーションを悲しむ失恋ソングはクリスマス・ソングとしても愛されている。過去にリンダ・ロンシュタットやジェイムス・テイラー、サラ・マクラクラン、ドラマ『GLEE』が取り上げており、2019年のエリー・ゴールディングによるヴァージョンは全英1位を記録した。

「すごく美しい曲だし、詩的。ジョニ・ミッチェルって、すごく的確に心情を言葉にできる人、歌える人だと思う。彼女が歌い出した途端に、その世界に引き込まれる。僕たちは今回リスナーの心を打つアルバムを作りたかったし、そういう美しい曲を探していたから、「リヴァー」に関しては、まったく迷うことがなかったよ。オペアーズ(The O’Pears)という3人組の3声ハーモニーの女性グループがいて、彼女たちがこの曲を歌っていたんだ。僕たちはその3声ハーモニーの歌唱法から多大な影響を受けている。もともとインタルード的に挿入する予定だったんだけど、すごく気に入ったから少し長めの2分間ヴァージョンという形に落ち着いた。そこから次の『オーヴァー・ザ・リヴァー feat. リンジー・スターリング』へと続いていく。スタンダード曲を、かなりワイルドにユニークに解釈しているカバーだよ。」(スコット)



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より家族との絆が深まってる
家族と過ごす時間をすごく大切にしているよ

――これまでにクリスマス・アルバムを数枚発表していますし、クリスマスといえばペンタトニックスという印象もあるわけですが、今回のクリスマス・アルバムはこれまでとどう違っていますか?

スコット:このアルバムでは、クリエイティヴ面でいっそう冒険したって感じかな。リスクを承知したうえで。それにペンタトニックスとしてスタートした当時のルーツに舞い戻ったという感じでもあるんだ。1か月間スタジオを借り切って、毎日スタジオに通って、あれこれ言いながら、みんなでいろんな曲を歌ってインプロヴァイズ(即興・アドリブ演奏)していった。スタジオ内のそこらへんにある物を使って音を出したりとか、ビートを作ったり。すごくオーガニックで楽しい、そしてクリエイティヴな作業だったんだ。多くの曲を僕たちが顔を合わせながら一緒に歌ったよ。そう、すごくオーガニックで素晴らしいプロセスだった。

――アルバムのタイトル曲でもある「エヴァーグリーン」は、ペンタトニックスのオリジナル・ナンバーです。どのような背景で生まれた曲ですか?

スコット:この曲は、クリスマスの準備をする母親について歌われているんだ。家族のために料理を作ってテーブルに並べて、全員のプレゼントをきれいに包んでクリスマスツリーの下に用意して……という骨が折れる仕事がいっぱいあるわけで、家族や子どもたちに、完璧で最高の思い出を作ってあげようと、そのためには労を惜しまない。経済的に恵まれていようと、そうでなくても、母親というのは家族にとって最高なクリスマスの思い出となるように、スペシャルな日となるように最善を尽くすんだ。ホントに凄いと思うんだよね。この曲では、そういった母の変わらぬ愛と、それを実感させられるクリスマスについて歌っている。

――あえて“クリスマス”や“ホリデイ”という言葉をタイトルに入れずに、『エヴァーグリーン』としたのは?

スコット:これまではいつも“クリスマス”をタイトルに入れてきたけど、このアルバムではサウンド的にも冒険しているし、変化も必要じゃないかと思って。その変化を示すには、タイトルから変えるのも一案じゃないかと考えたんだ。

――30代に入って、クリスマスの過ごし方はやはり10〜20代の頃とは違っていますか?

スコット:30歳だよ、信じられる(笑)? いやいや、嬉しいんだけどね。でも10年も一緒にグループをやってきたなんて信じられないよ。クリスマスの過ごし方で、10代の頃から変わっていないと思うのが、音楽や食事をみんなで盛大に楽しむってことかな。変わったのは、歳をとるにつれて、より家族との絆が深まってるってこと。家族と過ごす時間をすごく大切にしているよ。両親や姉、それに今では甥や姪も加わって。そういう時間を大切にしたいんだ。だからいまの僕のクリスマスは、仕事をせずに、家族や愛する人たちと過ごすって感じかな。前から同じように考えてはいたつもりだけど、年々そういう気持ちが強くなっているんだ。

――このアルバムからもそんな気持ちが伝わってきます。先ほどルーツに戻ったと話されていましたが、同時に違いや成長も聴こえてきますよね。

スコット:そうだね、すごく違っているよ。愛情や感情がたっぷりいろんな曲に詰まっているんだ。たとえば「イッツ・ビーン・ア・ロング・ロング・タイム」では“早く会いたくてたまらない”って歌っているし、「マイ・ハート・ウィズ・ユー」は、相手の顔を見るまで100年待つとかって話だし、「リヴァー」もそういう曲だよね。ひしひしと心に訴える曲が並んでいる。かと思えば、劇画調で壮大な「三隻の船」では足を踏み鳴らして、ヴァイオリンやチェロを導入した「オーヴァー・ザ・リヴァー feat. リンジー・スターリング」なんて『パイレーツ・オブ・カリビアン』みたいな感じだし(笑)。とてもクリエイティヴなアルバムだよ。誇らしく思っている。


▲「It's Been A Long Long Time」

――このアルバム中でもっとも歌うのが難しかった曲は何ですか?

スコット:う〜ん、そうだな、最も苦労したのは、間違いなく「ザ・プレイヤー」だね。そもそも尺が長いし、伸ばす音が多いから、とっても歌うのが大変なんだ。ミッチやカースティン、僕を含めて全員が大声を張り上げて、ずっと歌い続ける構成だから、一番体力を使って疲れたよ。ただ同時に、最も達成感が得られたのも確かだし、みんなの心に訴えかけて、感動を呼び起こしてくれることを願っているよ。

――となると、まもなくスタートするアメリカでのクリスマス・ツアーも大変そうですね。

スコット:これまで以上に喉に負担の掛かるツアーになりそうだよ(笑)。「ハレルヤ」や「ザ・プレイヤー」、「アメイジング・グレイス」や「リトル・ドラマー・ボーイ」など熱唱系の曲が多いから。でも、とても美しいと思うな。

――来年には、延期になっていた『ラッキー・ワンズ』の北米ツアーも予定されていますが、かなり大仕掛けなものになると前に語っていましたよね。

スコット:パンデミックのおかげで、すっかり延び延びになっているワールド・ツアーだけれど、来年の開催時には、とことん本気で思いっきりやるつもりだよ。みんなが大好きな曲やカバー曲を全て披露するし、みんなにも一緒に歌ってほしいんだ。もちろん『ラッキー・ワンズ』からの新曲も披露する。あとステージに関しては、エレガントで目を引くものにしたいと考えているんだ。しばらく大人しくしていたから、その分思いっきり取り返さなくちゃね。

――来日に関しても、そろそろ考えてくれていたりしますか?

スコット:もちろんだよ。いつも日本のことばかり話している。本来ならオリンピックのときに来日して歌う予定もあったんだよ。元々のオリンピックだから、2020年のほうだね。二転三転したけど、どうにもならなくて、結局コロナのせいで流れてしまったんだ。でも、もしかしたら来年にはツアーで行けるかもって思っているよ。でも、いい加減なことは言えないからね。延期になってるヨーロッパ・ツアーもあるし、アメリカ・ツアーもあるし、まだ約束はできないな。でも、日本には絶対に早く行きたいと思っているよ。ホント僕たちは日本が大好きなんだ。

――それでは最後になりますが、日本のファンにメッセージをいただけますか?

スコット:日本のファンのみなさん、こんにちは。みんなに会えなくて寂しく思っています。しばらく行けてないけど、早く日本に戻りたいと願ってます。また再会できる日が来るのは間違いないので、そのときまでみんなも元気でいてください。健やかに楽しいクリスマスをお迎えください。(日本語で)ミンナ、ダイスキー! ホントに愛してます。

PTXが選曲した
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