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<対談インタビュー>泣き虫☔×yama、謎多き2人が共鳴する理由 これまでの共作3曲を振り返る



 TVアニメ『東京リベンジャーズ』のエンディング主題歌「トーキョーワンダー。」が話題のシンガーソングライター・泣き虫が、新世代シンガー・yamaをフィーチャリングアーティストとして迎えた「アブノーマリティー。(feat. yama)」をデジタルリリースする。泣き虫とyamaのタッグは、MAISONdes名義でリリースされた「Hello/Hello feat. yama, 泣き虫」、yama名義でリリースされた「Oz.」に続き3曲目。3度目のタッグにして、初めて両者のツインボーカルが実現した。それを記念し、泣き虫とyamaの対談を敢行。出会いのきっかけや関係性、3曲の制作過程などから、謎めいたふたりが共鳴している理由を探っていった。(INTERVIEW:沖さやこ)

※泣き虫の正式表記は「泣き虫(語尾に雨降り傘マーク)」ですが、本記事では文字化け防止のため「泣き虫」に表記を統一しています。

意気投合のきっかけは好きな食べ物?
初の共作「Hello/Hello feat. yama, 泣き虫」

――泣き虫さんとyamaさんの初タッグはMAISONdesの第1弾楽曲「Hello/Hello feat. yama, 泣き虫」ですが、それまでにおふたりに交流はあったのでしょうか。

泣き虫:ないです、まったく。MAISONdesが初めてです。

yama:MAISONdesの第1弾楽曲として、セブンイレブンのオリジナルアニメ(※『レインボーファインダー~ときめきは、すぐそばに。~』第1話)のテーマソングのボーカルを自分が担当することが決まっていて。その楽曲を泣き虫さんにお願いしたいなと思ったんです。交流はなかったんですけど、もともと「君以外害。」で泣き虫さんのことは知っていて、かっこいい曲を作る人だなと思っていましたね。作る楽曲のレンジが広いなとも思っていました。

泣き虫:僕は常日頃音楽を聴きあさっているので、yamaさんがオリジナル曲を歌う前からYouTube経由でyamaさんのことは知っていて。だから声を掛けてもらって、素直にうれしかったです。

―― 一時期は毎日のようにオンラインゲームをしていたくらい親交が深いとのことですが、意気投合したきっかけはなんだったのでしょう?

泣き虫:最初に会った時かな? 「Hello/Hello」の最終確認のスタジオで初めて会って。空き時間に話している時に、なんとなく“好きな食べ物なんですか?”と訊いたら、たまたまそれが一緒だったっていう。

――ちなみにその食べ物とは?

泣き虫:いくらです(笑)。

yama:話してる時のテンポ感が似ていたり、波長が合う感覚があったので、「いくら」が決め手になって意気投合しました。好きな食べ物でいちばん最初に「いくら」って言う人あんまりいないし。

――持っているムードが似ているおふたりですよね。普段どんな会話をなさっているのでしょう?

yama:他愛のない話以外だと音楽の話ですね。自分は好きな音楽の幅が狭いんですけど、泣き虫さんは幅広いから、雑談しているなかでたまーにおすすめしてくれることがあります。だいたい「これ自分も好きかも」と思うので、そういうものを聴かせてくれているのかなと。

泣き虫:「今聴いてるの何?」ってきっかけから広がる、みたいなのがたまーにあるくらいで、それ以外は全然普通の会話です。なんも面白くないことばっかり(笑)。思い出せないほどどうでもいい話しかしてないかも。

yama:そうですね(笑)。でも話しているなかですごく音楽が好きなことも伝わってくるし、一緒に制作をしているなかでも音楽に対して努力を惜しまない人であることがわかる。それが尊敬できるところです。

泣き虫:僕は感覚的な人間なので、一緒にいて落ち着く人のところには黙ってそのままいるし、そうじゃない人の前からはすぐ消えちゃう。yamaさんはあんまりいないタイプの人でもあるし、言葉では説明できない魅力があるんだと思います。なんかいい、みたいな。

yama:類は友を呼ぶという言葉のとおり、人間性や考え方に自分と似てる部分があるのかなと思ってますね。

――だからこそ、タッグを組んだ楽曲を1年間で3曲もリリースできるのでしょうね。まず初タッグ曲の「Hello/Hello feat. yama, 泣き虫」について伺っていきたいのですが、この曲について泣き虫さんは「送ったデモのなかで最も明るい曲が採用された」とライブのMCで話していました。

泣き虫:もともと「明るくて疾走感のある曲」というイメージをもらっていたので、それに合った曲をとにかくたくさん曲を作っていきました。そこから選んでもらったのが「Hello/Hello」で。

yama:送っていただいた楽曲のなかで、いちばんこの曲が好きだったんです。メロディが印象的でいいなと思いました。泣き虫さんの歌詞は抽象的というか、説明するような書き方ではなく聴き手の解釈に委ねられてると思っているんですけど、自分は「Hello/Hello」に爽やかな疾走感のなかに必死さを感じて。《生きた証明》という歌詞のとおり、頑張って生きている感じが伝わればいいなと思って歌いましたね。

▲MAISONdes「Hello/Hello feat. yama, 泣き虫」

泣き虫:衝動的に作ったからあんまり覚えてないんですけど、なんで《生きた証明》なんて書いたんだろう……(笑)。

yama:(笑)。今パッと思いついたワードがそれなので、自分のなかでの「Hello/Hello」のテーマになっていたんだと思います。

泣き虫:でもアニメの影響もあって、応援ソングっぽいイメージはあるかな。自分が書いた曲をほかの人に歌ってもらうのはほぼ初めてだったんですけど、前々からいいなと思っていた人の声で、自分の作った曲を歌ってもらえることは、シンプルに今でもすごくうれしい。yamaさんのテイクも最高でした。何回も聴いちゃいますね。今でも全然聴きます。

yama:それまで自分が楽曲をお願いしていた人たちは作家さんがほとんどだったので、いわゆるシンガーソングライターさんが書き下ろした楽曲を歌うことには、ちょっとプレッシャーがありました。

――曲をお作りになった人がボーカリストだから、ということでしょうか?

yama:そうです。泣き虫さんは関わりを持つ前から聴いた人に一発で覚えてもらえる、すごく特徴的な声を持っている人だと思っていたし「こんな声が出せたらいいのに」と思っていて。そんな人の楽曲を自分なりの表現を入れて歌うことになるので、大丈夫かな?という気持ちはあったんですけど、初めてお会いした現場で「めちゃくちゃいいですね」と喜んでくださって。出来上がった時もうれしかったことを覚えています。関係性を築くきっかけになって、今も続くいいご縁をつないでくれた、自分にとって大切な曲です。泣き虫さんとの出会いの曲ですね。

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    好きを詰め込んだ「アブノーマリティー。」
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タイアップならではの奇跡が起こった「Oz.」と
好きを詰め込んだ「アブノーマリティー。」

――そこから第2のタッグとなった、泣き虫さん作詞作曲によるyamaさんの楽曲「Oz.」につながっていくわけですね。こちらはTVアニメ『王様ランキング』のエンディングテーマ。メインキャラクターのボッジとカゲの信頼関係を思わせる歌詞も印象深いバラードですが、詞曲ともに泣き虫さんには新鮮なアプローチの楽曲ではないでしょうか。

泣き虫:アニメの告知映像を観た瞬間にイメージが湧いて作った曲です。とりあえずバラードがいいなと思っていたところに、「昔、俺もひとりぼっちだったことがあったな」と思い出して。小っちゃい頃は基本的にひとりでいて、学校もあんまり好きじゃなくて――自分のことを歌詞に書くことはなかったんですけど、「Oz.」は昔の自分の感覚をストレートに書き起こしたんです。そしたら結果的にアニメともハマって。

――『王様ランキング』は予告映像だけでもキャラクターの心情が視聴者側に飛び込んでくるような感覚があって、自然と涙腺が緩んできました。映像が泣き虫さんの感性としっかり共鳴したのかもしれません。

泣き虫:奇跡ですよね。失礼ながら主人公の名前を把握する前に書き始めたのに、歌詞の《ひとりぼっち》と「ボッジ」がリンクしたし、「Oz.」というタイトルも見た目が好きでつけたんですけど、「“王子”に読めますね」や「“O”がボッジ、“z”がカゲに見える」と言っていただいたりして。「Hello/Hello」の時とは違って1曲どばーんと提出してOKをいただいて……めちゃくちゃ奇跡がつながってるなって。個人的なことなんですけど、めちゃくちゃ感動してるんです。

yama:自分はもともと原作を読んでいたので、「Oz.」を聴いてすごく作品の世界観に合うなと思ったんです。泣き虫さんが実体験を書いているのは今知りましたけど、それが結果的に作品にハマった理由なのかも。「Oz.」に書かれている気持ちになった人も多いと思うし、ボッジとカゲに当てはまったのも、誰しもが体験することだからなのかなって。だから自分も、めちゃくちゃ感情移入して歌いました。

▲yama「Oz.」

――yamaさんが公式コメントで「すべてのキャラクターを優しく包み込めるように思いを込めた」と話してらっしゃったのは、今おっしゃったこととつながるかもしれませんね。

yama:最初のうちはボッジとカゲ以外のキャラクターが悪に見えるかもしれないんですけど、自分の信念を持って生きている人たちばっかりなんですよね。キャラクターそれぞれに、それぞれの正義がある。だからすべてのキャラクターを包み込んで歌いたかったんです。

お互いの存在は「常に一緒ではないけど、安心できる仲間」

――そして第3弾のタッグが「アブノーマリティー。(feat.yama)」。泣き虫さんの楽曲に、yamaさんがフィーチャリングアーティストとして参加していて、おふたりで歌うのは今回が初めてです。

泣き虫:トラック自体はだいぶ前からあって、一緒にいた時にたまたまこの曲を流してたんです。そしたらyamaさんが「これいいね。誰の曲?」と言って。前々からなんとなく「一緒に1曲作れたらいいね」とは話していたので、じゃあこの曲でやろうと実際に動き出したんですよね。

yama:リリースされている別のアーティストさんの曲なのかなと思って純粋に「なんてアーティストですか?」と訊いたら、泣き虫さんが歌詞とメロディを入れれば完成するという状態のトラックだったんです。「ならこの方向性で1曲やりませんか?」と話して、とんとんと進んでいきました。ざっくりとこちらからサビの要望を出して、それをよりかっこよくしてもらいました。

泣き虫:僕の方ではyamaさんのイメージから広げて、全体を固めていきました。「Hello/Hello」と「Oz.」ももちろん気に入っているけど、タイアップ曲でもあるし綺麗で爽やかだから、そろそろ自分たちのエゴを詰め込んだ、かっこいい感じの曲を一緒にやりたいなって。

yama:「Hello/Hello」と「Oz.」はテーマがあったうえで書き下ろしをお願いしたものなので、今回は自分たち主導で作っていこうという感じでしたね。

――どんなイメージを共有していたのでしょう?

泣き虫:かっこいいもの。テーマも決めず、好きなものを詰め込んでいったらどうなるんだろう? という好奇心でとりあえずかっこいいものを作っていきました。すんなりできましたね。お互い感覚的で、いいなと思ったら好きになっちゃうタイプだから……言葉にするの超むずいっすね。

――おふたりらしいですね(笑)。そんなお互いのセンスが発揮された曲を、「アブノーマリティー。」と名付けるというスタンスもクールです。

泣き虫:最初は僕が勝手に「アブノーマルーム。」とつけてたんですけど、ちょっとダサいな……という気持ちがどこかにあって。そんな時にyamaさんが「アブノーマリティー。がいいんじゃない?」と言ってくれて、すごくいいなと思って即決でした。

yama:すっごい失礼だけど「アブノーマルーム。」だとちょっと語呂悪いかなと(笑)。

泣き虫:そうっすねえ……(笑)。

yama:(笑)。もっと言いやすいほうがいいんじゃないかなって。

――跳ねたビートとアーバンな雰囲気のトラックに、棘のあるワードが小気味よく響きます。おふたりのユニークなボーカルワークが、泣き虫節をよりエッジーかつキャッチーに彩っているのではないでしょうか?

泣き虫:歌詞、やっちゃってますね。僕がひとまず全部歌って、そこにyamaさんが歌を乗せてくれました。僕的には「ふたりで歌ってるけど、ひとつの新しい声」という感じがして。なんだかんだふたりで歌うのは初めてだったんですけど、すごくいいなと思いましたね。

yama:歌声が馴染みすぎるとどっちが歌っているのか聴き分けるのが難しくなるけど、正反対すぎるとひとつの音楽にならないと思うんです。お互い全然声質は違うんですけど、息の成分が多いところが合ってるのかなって。丁度よくまとまってるなと思います。自分が制作から積極的に関わったうえで一緒に歌うことは初めてで楽しかったし、久し振りにこういう棘のあるような歌詞を歌ったのも楽しかったです。


▲yama

泣き虫:ほんと、yamaさんはどんな歌を歌っても合いますよねえ……。なんでも歌ってくれるし、声はいいし、自分が思っている何倍もいい表現になって返ってくる。僕は基本的に好きに歌ってほしいというスタンスなので、「こういうメロディで歌うんだ」と発見もあるし。本当にすごい。全部含めていいなと思うし、好きだなと思う。すべてにおいてリスペクトです。曲を作る側としても「yamaさんには何作ってもいいな」という気持ちがあります。

yama:恐縮です。「Oz.」とか特にそうですけど、すっごい高低差のある、レンジの広いメロディの曲を提供してくださるので、試されてるなと思ってます(笑)。

泣き虫:そんなつもりはないです(笑)。「Oz.」難しいっすよね。俺歌えないっすもん。自分で歌えないから歌ってもらお~というか、自分の歌えないメロディをほかの人に歌ってもらえるのは僕的にありがたいので。キー下げるといけるものもあるけど、原曲キーでないと出ない表現もあるし。

yama:でも泣き虫さんのセルフカバー聴いてみたいですよ?

――そうですね。過去に「Hello/Hello」もセルフカバーなさっていましたし。

泣き虫:「Hello/Hello」もだいぶ無理しましたよ? 限界でした、ほんとに。本当に難しいんです!

yama:え?「Hello/Hello」のセルフカバー、どこでなさったんですか?

泣き虫:yamaさんが観てないライブですね。恵比寿LIQUIDROOM(※2021年7月開催)で。

yama:泣き虫さんの春のワンマン(※2021年4月、渋谷WWWにて開催)は観に行かせていただいたんですけど、「Hello/Hello」のセルフカバーやってらっしゃらなかったと記憶していますね……。

――というのは、yamaさんも泣き虫さんの歌う「Hello/Hello」を聴いてみたかったということですよね。

yama:自分が観に行ったライブでも「Hello/Hello」のセルフカバー、ワンチャンあるかなと思ってました(笑)。

泣き虫:そうっすね……。「Hello/Hello」リリース後だからワンチャンあったかもしれないっすね……。2曲ともすげえ難しいんですけど……じゃあちょっと頑張ります。

yama:楽しみです。お願いします!

――3曲一緒に制作するなかで、お互いは今どんな存在になっていますか?

yama:ライバルというよりは仲間に近いのかな。歩んでいる道は違うから干渉しないんだけど、車道を挟んで同じ方向を歩いていて、ふと横を見ると遠くで頑張っている姿が見えるというか。「お互い頑張ろうね」と言いながら鼓舞し合える存在、というイメージです。

泣き虫:確かに。ゲームのなかのストーリーの途中で急に現れる強力な助っ人、みたいな。

yama:パーティーは別、みたいな(笑)。

泣き虫:そうそう。急に現れてすっげえ助けてくれて急にどっか行く(笑)。常に一緒にいる仲間じゃないけど、安心できる仲間ですね。絶妙な関係です。


▲泣き虫

――最後にそんな仲間同士で、エールを送りあっていただけますか?

泣き虫:これからも僕はyamaさんに曲を書いていきたいし、すっごい奇跡があるならyamaさんの書いた曲を僕が歌いたい。これからも一緒に制作する気がするし、でもどこか負けないように頑張っていきたいし。いい感じの関係性を続けていきたいですね。

yama:「Hello/Hello」、「Oz.」と書き下ろしていただいて、自分としては泣き虫さんに恩にも近いものがあったんです。だから今回「アブノーマリティー。」で一緒に歌うことができて良かったなと思います。この先も長く音楽人生を歩んでいくなかで、またこういう機会があればいいなと思いますし、それぞれの活動を応援し合いながら、鼓舞し合いながらいられたらと思います。

――いつかおふたりのツーマンライブが観られる日も楽しみにしています。

泣き虫:あははは、そうですねえ……。

yama:機会がありましたらぜひ。

泣き虫:はい、ぜひ。

※今回の対談インタビューの様子は、今後泣き虫公式YouTubeチャンネルにて動画が公開予定となっている。
詳細は後日泣き虫のSNSにて発表されるとのことなのでお楽しみに。

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