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<インタビュー>安田レイ×JQ from Nulbarichが語る、コラボ曲「It's you」の化学反応で生まれたストーリー



インタビュー

 安田レイが最新EP『It's you』を11月3日にリリースする。自身初のコラボレーションEPとなる本作には、JQ(Nulbarich)、TENDRE、tofubeats、H ZETTRIOといったゲスト・アーティスト陣が参加。特設サイトに「これはわたし一人では見えなかった世界です」と本人コメントが掲載されている通り、気鋭の才能たちとの化学反応によって、シンガーとして、アーティストとして、新しい彼女の可能性を開花させた1枚になっている。

 表題曲「It's you」は、安田がかねてよりファンだったというJQがプロデュース。“自己肯定”というテーマを起点に、現在の安田だからこそ書けた人間味のあるリリックが綴られた本作について、そして11月21日に予定されている、JQもゲスト出演が決まったBillboard Live TOKYO公演について、二人に対談形式で話を訊いた。

夢のひとつが叶いました

――安田さんが今回、キャリア初のコラボEPを制作するにあたって、JQさんに声をかけたのはどうしてだったんですか?

安田:私は普段からいろんな音楽を聴いていて、その中には尊敬するアーティストの方々もたくさんいるんですよ。なので、そういった方のお力をお借りすることで、自分にとっての新たな扉を開けることができたらいいなという思いから今回、コラボEPを作ることにしました。そこで真っ先に思い浮かんだのがJQさんだったんですよね。普段からJQさんの音楽をめちゃめちゃ聴いているし、ライブには何度もお邪魔させていただいているくらい大ファンなので(笑)。私がやっているラジオ番組にも何度か来ていただいていて、その度に「楽曲提供してくださいませんか?」とうるさいくらいずっと伝えていたんですけど……覚えてますか?

JQ:覚えてますよ、もちろん(笑)。




安田:それくらい私の中では念願だったので、今回OKをしていただけたことが本当にうれしくて。夢のひとつが叶いました(笑)!

JQ:今回のようにプロデュースで他の方の楽曲に関わることは、自分としてもいつかやろうとは思っていたんですよ。ただ、Nulbarichがある程度の形になるまでは集中しようと思っていたので、これまではそういうお話をいただいても、基本的にはやっていなくて。だから、タイミングが良かったんですよね。一応、Nulbarichとしてさいたまスーパーアリーナまで行けたので、ここからはまた自分のインプットを増やすためにもいろんな人と絡んでいこうかなと思っていた時期だったから。



Nulbarich - It's Who We Are Live ver. @2019.12.01 SAITAMA SUPER ARENA


安田:そうだったんですか! 良かった、タイミングがハマってくれて(笑)。

――JQさんは安田レイさんに対してどんな印象を抱いていましたか?

JQ:歌はもちろん上手だし、楽曲ではわりといろんなことに挑戦しているイメージがあったので、マルチに器用な方だなとずっと思っていました。あとは、もう大御所ですよね。キャリアで言うと、レイちゃんのほうが先輩なので(笑)。

安田:いやいやいや。全然そんなことないので、やめてくださいよ(笑)!

JQ:あと、声に関して言うと、これまでの楽曲ではけっこう高いキーを張って歌っていることが多い印象があったんです。でも、最近の彼女はインスタに“適当ソング”みたいな動画をけっこう上げていて、そこではわりと低めのトーンで、スモーキーな大人の声を聴かせてくれているんですよね。それがすごく良くて。

安田:まさかJQさんが、あの適当すぎる私の歌を聴いてくれていたとは(笑)。

JQ:いや、レイちゃんの更新頻度が高いからさ。気づくといつもトップに上がっていて、つい見ちゃうという(笑)。

安田:あははは。あれは私なりのアピールでもあるんですよ。実はこういう曲も歌ってみたいんだよ、みたいな(笑)。声を張らずに、細かいニュアンスが届くような曲をずっと作りたいと思っていたので。それがJQさんにも届いていたのは本当にうれしいですね。




JQ:だから今回、一緒に曲を作ることが決まった段階で、僕の中では低い声で歌ってもらおうとなんとなく決めていたんですよね。ナチュラルに歌って気持ちいいのがそのトーンなんだろうし、その表情はこれまでの安田レイではあまり見えていなかったものだと思うので、そういう方向がいいんじゃないかと。

安田:うん。そういった私の好きなタイプの曲を作るのがJQさんはお上手だと思っていたので、私としてもそういう方向性で行きたいなと思いました。そのあたりは最初のディスカッションのなかで決めた感じでしたね。で、その後に具体的な制作を進めていって。


いまの自分の人間味

――制作に着手する段階で、曲自体のテーマみたいなものも決めていたんですか?

JQ:テーマは最初に決めたよね。結果的には全然変わったんだけど(笑)。

安田:はい(笑)。その時期、失恋した女の子が「私は自分で自分の心を満たすことができるんだ!」って気持ちを歌っている洋楽の曲をよく聴いていたんですよ。なので、最初は私もそういった自己肯定ソングを作りたいなと思っていたんです。ただ、実際に制作を進めていくなかで、ちょっとずつ自分の中で方向性が変わり始めて。歌詞を書いていても、自分に向けてではなく、自然と外に向けて言葉を綴っていたんですよね。勝手にテーマが変わっていってしまったからかなり焦ったんですけど(笑)、でも、それを話したらスタッフの方々も含め、みなさんがGoを出してくださったので、そのまま進めることにしたんです。




JQ:自己肯定ソングを作りますと言って、最終的にたどり着いたタイトルが「It’s you」ですからね(笑)。

安田:あははは。自分でも「アレ!?」という感じでした。

JQ:思うんですけど、きっといつものように一人で自分自身と向き合って歌詞を書いていたら、そのテーマのまま進んでいたはずなんですよね。でも、今回はスタジオへ一緒に入って、メロディやサウンドに関してもいろいろディスカッションしながら共同作業をしていたので、自然とレイちゃんの中で向き合うベクトルが自分自身ではなく、外に向いていったんじゃないかなと思うんですよ。

安田:そういう感覚はもしかするとあったかもしれない。どこかで「一人じゃない」と思えたというか。自己肯定したいときってある意味、強がっているときでもあると思うんですよ。でも、その強がりのシールドみたいなものをJQさんがバンバンと打ち破ってくれたのかもしれないですね。

JQ:でさ、この曲ってサラッと聴けば、“あなた”への思いを歌ったものに聴こえるかもしれないけど、いま話したように、自己肯定ソングを書こうとした人が“It’s you”と言えるところまで辿り着いた過程を想像しながら聴くと、また深みが増すじゃないですか。安田レイのファンの人はぜひそうやって聴いて欲しいですね(笑)。

安田:そっか。今回の制作を通して、そういったストーリーがあったということなんですね。私も気づいていなかった、そんなストーリーが(笑)。

JQ:レイちゃんはそこを無意識にやっていたからだろうね。でも、本当にそういったストーリーを経てできあがった歌詞だからこそ、人間味がより増したような気がする。「結局、私に必要なのはあなたしかいないんだよね」と気づいたことは、また違った意味での自己肯定にもなっているわけだし。

安田:私は今回この歌詞を書くうえで、過去のいろいろなことを思い出したんですよ。良かったことも悪かったことも様々あるけど、そういう経験があったからこそ一人の人間としてステップ・アップできたなって。そういった意味で、これまで出会ってきた人たちに対しての感謝が歌詞に含まれているような気もしていて。それがもしかすると、28歳になったいまの自分の人間味みたいな部分に繋がっているのかもしれないですね。



安田レイ 『It's you produced by JQ from Nulbarich』Music Video


――サウンドに関してはどんな流れで構築していったんでしょう?

JQ:制作の流れとしては、最初にラフ・トラックを作り、そこにラフ・メロディを乗せて、歌詞を書いてもらったあと、最後にアレンジをした感じです。そもそも自己肯定ソングというテーマのもとに制作がスタートしたので、初めからそこまで明るい曲にするつもりはなかったんですよ。自分に向き合い、内に秘めた思いを感じさせるようなサウンド感にしたかったというか。しかも、メロディは歌詞ができあがる前にレイちゃんがハミングで作ってくれたものをクロップして使っているので、メロディの旋律的にも楽曲のコード感的にも、わりと弱っている自分と向き合うような雰囲気にはなっている気がしますね。




――結果的に歌詞のテーマが変化しても、大元となるサウンド感はそこまで大きく変わらなかったということですか?

JQ:そうですね。ただ、サビに関しては、もとの想定よりは広がりを感じさせるものにはなりました。思いを心の内に秘めたまま終わる曲だったら、ここまで広がりのあるサビにはならなかったと思います。アレンジについても、“It’s you”というタイトルと歌詞に自然と寄り添った雰囲気になっていったところもありましたし。リリック同様、そこにも自己肯定からスタートしたストーリーみたいなものが反映していったのがおもしろかったですけどね。曲頭で<忘れたいや>と言っていることが象徴的ですけど、最初は自己肯定と他人否定の狭間にいる状態から曲が始まって、最終的には“あなた”を受け入れる強さを手に入れていく。その様がサウンドでもガチで生々しく描けたような気がします。


憧れの場所

――メロディメイクには安田さんも参加されたんですね。

安田:最初はやる予定じゃなかったんですよ。JQさんの作ったメロディを歌えるんだと楽しみにしていたんですけど、急にマイクを渡されて「お願いします」みたいな(笑)。何も準備していなかったから、本当に“THE適当ソング”みたいな感じで、その場でいくつかメロディを出したんですよね。で、その中からJQさんが「これいいじゃん」ってピックアップしてくれたという。

JQ:そこはやっぱり、僕が歌うわけじゃないというのが大きいですよね。どの声が一番おいしい部分なのかというのは、やっぱり歌う人じゃないとわからないものだし、その人ならではのメロディのクセは絶対に残すべき。そこに僕の要素が入ることでケミストリーが生まれるわけですから。特に僕の場合、バースで歌詞をしっかり届けなきゃいけないという思いがけっこう強いんですよ。逆にサビはキャッチーであればなんでもいいというか。

安田:へぇ! そうなんですか。

JQ:うん。僕の中でサビはフックって感覚なんですよ。だから、みんなと一緒に歌える、みたいな部分がテーマになってくる。一方のバースは、曲の言いたいことがすべて詰まっているパートという思いが強い。そう考えると、この曲のバース部分には色濃く安田レイが出ていないとダメなわけなので、レイちゃんにしっかりメロディを考えてもらったんですよね。そもそもすごくポップな曲というわけではないので、歌っている人の人間味がバースには出ていないと、曲としての説得力もなくなってしまうはずなので。

安田:「レイちゃんが歌うからレイちゃんのカラーをちゃんと作るべき、そうすれば聴いてる人にもきっと伝わるはずだから」って、JQさんはレコーディングのときにずっとおっしゃっていて。そこにものすごく納得できたからこそ、いつも以上に自分の色を強く意識してメロディと歌詞を作ることができたんだと思いますね。




――歌詞は今回、かなり英語が多く使われていますよね。

安田:そうなんですよ。英語の比率がかなり多いし、しかも日本語とごちゃ混ぜに使っている感じなんです。今までの自分は1行英語で書いたら次の1行は日本語で、みたいな感じでしたけど、今回はJQさんからヒントをもらいながら、ナチュラルにミックスして書いていくことができたんです。サビが全部英語だったりとか、けっこう初挑戦な感じの歌詞になっていると思います。

JQ:(歌詞カードを眺めながら)けっこうヤバイね(笑)。英語ばっか。

安田:ですよね(笑)。最近は英語を増やして作詞することも多くはなっているんですけど、そこにはまだちょっと不安もあったりして。でも、みんなにどう受け取ってもらえるのか、リアクションが楽しみでもあります。

――ボーカルのレコーディングはいかがでしたか?

安田:レコーディングではJQさんに「歌わないで」と言われたのがすごく印象に残っていて。もちろん歌ではあるんですけど(笑)。

JQ:そうそう。歌なんだけど歌わないでって(笑)。

安田:声を張って歌うのではなく、隣にいる人の耳元で囁いていることをイメージしてという意味だったんですけど。そういった引き算とも言える歌い方は今まであまりしてこなかったので、すごく新鮮でしたね。それもJQさんの世界に飛び込んだからこそできた表現だったように思います。いつもはだいたい全身の力を使って、うわーっと歌ってヘトヘトになるんですけど、今回は歌に込めるパワーをセーブすることを意識したので、レコーディングが終わったときにはまた違った疲れに襲われた感じでした(笑)。そんな私とは逆に、JQさんはレコーディングが進むにつれてどんどん元気になっていってましたけど(笑)。

JQ:あはははは。レコーディングはけっこう長丁場だったんだけど、レイちゃんがどんどんいい歌を聴かせてくれるから。みんなと反比例して元気になっていったんだと思いますよ(笑)。言葉の語尾とかニュアンスを喋っているようになぞってもらったことで、歌の上手さとは違った部分での安田レイらしさ、生身の人間っぽさが出たと思う。僕の中には、安田レイがこの曲を歌うことによって自己肯定に繋がって欲しいという裏テーマがあったんだけど、そこは上手くいったんじゃないかな。ありのままの自分でいることを許してくれる曲になったというか。どう?

安田:そうですね。たしかに、この曲を作れたことでのヒーリング・パワーみたいなものは間違いなくあったと思います。JQさんの細かいディレクションを受けて、自分なりに一つひとつの音や言葉とがっつり向き合ったうえで歌うことができたので、それは自分にとっての大きな自信にもなりましたし。JQさんとの作業は本当に勉強になることばかりでしたね。今回の経験はきっと、自分の人生の中における大きなターニング・ポイントになると思います。

JQ:今までの安田レイにはなかった曲になったからね。あとはメーカーの方に頑張っていただいて、これを多くの人に届けてもらえれば、レイちゃんにとってさらなる自信に繋がるんじゃないかな。



安田レイ Making & Interview『It’s you produced by JQ from Nulbarich』


――11月21日にBillboard Live TOKYOで開催される安田さんのワンマン・ライブには、JQさんが出演されることも決まっていますね。ステージ上での共演にも期待が高まります。

安田:そうなんです。うれしい!

JQ:歌が上手い人と同じステージにはあまり立ちたくないんですけどね(笑)。

安田:いやいや(笑)。JQさんとはまだ一緒に並んで歌ったことはないので、本当に楽しみですね。Billboard Live TOKYOでライブをするのは初めてなんですけど、今までいろんなアーティストのライブを観てきた憧れの場所でもあるので、「ついにあそこに立てる日が来たか!」という喜びも強いです。

JQ:実は僕も東京のBillboard Liveは初めてなので、すごく楽しみではありますね。頑張りたいと思います。レイちゃんのファンのみなさんに「誰?」と言われないといいんですけど(笑)。

安田:そんなこと言われるわけないじゃないですか(笑)!

Interview by もりひでゆき
Photo by Yuma Totsuka

安田レイ「It’s you」

It’s you

2021/11/03 RELEASE
SECL-2712 ¥ 2,000(税込)

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