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<コラム>和田アキ子がTikTokでカムバ!「YONA YONA DANCE」から誕生したバズに迫る



コラム

 『東京卍リベンジャーズ』『鬼滅の刃』『僕のヒーローアカデミア』『ディズニーツイステッドワンダーランド』『小林さんちのメイドラゴンS』『うらみちお兄さん』『ワールドトリガー』『ハイキュー!!』『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』『ONE PIECE』『呪術廻戦』

 大人気のこれらのアニメ・ゲーム作品に意外な1つの共通項がある。

 それは人気キャラクター画を創作したイラスト作品が和田アキ子の「YONA YONA DANCE」のミュージックビデオを真似する形でTikTokに動画が多数投稿されていることだ。

 TikTok上で創作された手書きのイラスト画は『ヒロアカ』のトガヒミコであったり、『鬼滅の刃』の3人だったり、はたまた『ツイステ』の3人だったり。そんな創作された画が踊っているのが、今年9月にリリースされた和田アキ子の久々の新曲「YONA YONA DANCE」だ。ロックバンド、フレデリックがプロデュースし、軽快で踊れる楽曲で中毒性が高いこの楽曲。


▲「YONA YONA DANCE」


 Billboard JAPANが発表する“TikTok HOT SONG Weekly Ranking”では14位(9月6日~9月12日集計週)に初登場後、7位→5位→8位と常にランクイン。読者の中でもTikTokのタイムラインでこの曲を知った人も多いだろう。

 YouTubeの再生回数も800万回を超え、なによりこの楽曲がTikTokで使用された数は27,500を超えている。これは驚異的な数字だ。


▲「YONA YONA DANCE」TikTok内楽曲ページ

 では70歳を超えるレジェンド・アーティストの新曲がなぜTikTokで大化けしたのか。TikTok上でこの楽曲を使った投稿がどう派生していったのか掘り下げてみよう。

 そもそも2020年から多発するようになったTikTokから生み出される音楽ヒット曲には、きっかけとして大きく2つの共通項がある。

①曲や歌詞そのものの魅力で広がっていく→「曲・歌詞が良いから使ってみよう!」
②振り付けを真似したくて広がっていく→「踊ってみたいから使おう!」

 これまでの楽曲を使った多くのTikTokヒットは①と②を最初のトリガーとして、多くのTikTokクリエイターに使われ、そこから「TikTokで話題だから」「オススメで流れてきたから」(=その曲を使う方が自分の投稿がバズるかも?という投稿する側の予想含め)と派生して、料理、ペット、美容、ネタ、映画、本など、様々なユーザーのTikTokの投稿に最終的に使われていき、定番化していくことがほとんどであった。TikTokの音楽ヒットの王道はこのルートだったのだ。

 しかし、この「YONA YONA DANCE」には他にない広がり方の特色があった。それがまさに③の部分。

①曲や歌詞そのものの魅力で広がっていく→「曲・歌詞が良いから使ってみよう!」
②振り付けを真似したくて広がっていく→「踊ってみたいから使おう!」
③MVのイラストを創作して広がっていく→「自分の絵を載せて使ってみよう!」

 この「YONA YONA DANCE」は最初から③を含む3つのトリガーが並行して走り始めたのだ。前述の通り、人気キャラクター画を創作したイラスト作品を書くのが好きなクリエイターや絵師を巻き込んで、枝分かれした①②③の3本柱がそれぞれ別路線でUGCとして広がっていったのが、これまでにない大きな特徴だ。

 さらに、この③の「MVのイラストを創作して広がっていく」には強烈な推進力がある。それは“大喜利的感情”。

 「YONA YONA DANCE」のミュージックビデオは和田アキ子本人が登場するものではなく、全編イラストのアニメーションMVであり、イラストはAdoの「レディメイド」やボカロP・syudouの「爆笑」などを手がけているヤスタツが担当。

 サビの<踊らにゃ損 踊らにゃ損です>の箇所で丸い円の中でキャラクターが手を使ったダンスを踊るイラストが印象的な映像。これをTikTok上のクリエイター陣は見逃さなかった。中央の丸い円の中に「自分が書いているキャラクター」や「自分が好きなキャラクター」を入れ込んで創作したら良いのでは?と各自投稿を開始。このMVにイラストを創作して広がっていく波は日を追うごとに増加していくのだ。




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 そして、TikTokが誇るオススメ表示させるアルゴリズムも相まって、それぞれのアニメ・ゲーム作品の趣味嗜好があうユーザーのタイムラインに現れはじめた数々の投稿を見て「すごい! これなら自分の好きなあのキャラクターでも書いてやってみたい」「自分が書いてるキャラクターでやったらもっと面白そう」と我先に、他の人が投稿する前に!という一心でTikTokの投稿数が増えていった。これぞまさに“大喜利的感情”。現代の日本でUGCが流行を生み出す過程で必ず必要な過程であり、創作意欲に直結する力だ。

 この流れは日本国内にとどまることを知らず、イラストを使った投稿は韓国をはじめとするアジア圏にも多言語化され派生してゆくのである。TikTokからYouTube、ニコニコ動画、Twitterとプラットホームも派生していく。


▲큔도「YONA YONA DANCE」YouTube投稿


▲생물「YONA YONA DANCE」YouTube投稿

 様々なアニメ作品の創作が増え、アルゴリズムで横軸へ広がっていき、カルチャーやコミュニティを飛び越えて、これまで和田アキ子の楽曲を全く聴いたことがないような層まで派生しているのである。

 もちろん、③の「MVのイラストを創作して広がっていく」と平行して、①②も拡散されている。

①「曲や歌詞そのものの魅力で広がっていく」
 プロデュースを担当したフレデリック、そして和田アキ子の公式アカウントからもミュージックビデオをTikTok向けにしたものを投稿。楽曲を使用した投稿が複数回されている。

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②「振り付けを真似したくて広がっていく」
 おおしま兄妹、ゆーひ、登坂淳一など様々なクリエイターが早い段階から踊ってみたを投稿。

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 この3つの流れがやがて1本に絡みつきはじめ、イラストの振り付けを真似したり(三次創作)、イラストのコスプレで振り付けを真似したり、イラストではなく単純に丸い円の中で踊ってみたりなど、様々な形で派生を繰り返し、1日あたりに本楽曲が使われる動画数は1,000個まで成長してゆくのである。

 それぞれ違うカルチャーゾーンやコミュニティで成長したTikTok上のUGC動画が、さらに1つフェーズが上がってブーストされた瞬間がある。それは和田アキ子本人によるTikTok上のエンゲージメントだ。

 和田アキ子の公式アカウントからも、影井ひな、なえなの、DELIVAなど錚々たるTikTokのトップクリエイターと共に一緒に踊ってみた動画を撮る過程を投稿。さらに同クリエイター側やローカルカンピオーネのアカウントでは踊ってみたが投稿され、ミーム化を強めていくのである。

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 さらに和田アキ子の公式TikTokアカウントにて、今度はYouTubeやTikTokでこの楽曲を使ったカバーや歌ってみた動画をマネージャーが和田アキ子本人に見せる様子を撮影したコンテンツをTikTokに投稿。自分が投稿したコンテンツを和田アキ子が見てくれる、話題にしてくれる、そして投稿してくれる、という流れを生み出し、さらなる投稿を生み出してゆくのだ。


 この流れに加えて、先日からTikTok上では「YONA YONA DANCE」専用フィルターが登場。MVに登場する丸い部分が最初から切り取られていて、このフィルターを使えば誰でもMVと同じように撮影できてしまう。つまり後は踊って撮影するのみ。一層TikTokの投稿が増えることが期待される流れだ。


▲「YONA YONA DANCE」エフェクトコード
※TikTokアプリでスキャンしてお楽しみください。

 今回「YONA YONA DANCE」のミュージックビデオを担当したヤスタツがどういった意図であのイラストにしたのかは謎であるが、そこにあった創作性のある種の「隙」をクリエイターが自分達の創作作品と掛け合わせて使い出したものが、たくさんのTikTokユーザーの目に止まり最後はTikTok上で誰でも使えるフィルターまで昇華した。

 決して和田アキ子本人が有名TikTokクリエイターとコラボしたからバズったとかではなく、全国・全世界のTikTokクリエイター達が投稿し続けるための3本柱という強固な下地に対して、ブーストとして本人のクリエイターとのエンゲージメント、見ている人へのエンゲージメントを繰り返したことでこのバスが生み出された。もちろんフレデリックによる楽曲の良さ、和田アキ子の素晴らしい歌声も言わずもがなである。

 8,300件にも及ぶYouTubeのコメント欄を見てもらうとわかるが、新しい層に音楽が届けられている。YouTubeの総再生回数は800万回、チャンネル登録者はリリース前の1,400%増と、芸能生活50年を超えたアーティストが、TikTokからYouTubeへとファン獲得の新しい流れを生み出しているのだ。

 TV露出やメディア主導で音楽ヒット作を作り出すだけではなく、日本全国はおろかアジアまで含めた“純粋な気持ちで創作し、投稿するTikTokクリエイター”を味方にして、タイムラインで聴かない日はない状態を作り上げ、音楽ヒットを作り上げた和田アキ子。今冬にはアルバム・リリースも予定している和田アキ子こそ、今の音楽アーティストの最先端の姿なのではないだろうか。

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