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<対談インタビュー>SPiCYSOL×Def Tech、共鳴する2組が示す“Positive Mental Attitude“



インタビュー

 SPiCYSOLがメジャー1stアルバム『From the C』をリリースする。ドラマ『主夫メゾン』主題歌の「ONLY ONE」、ドラマ『ひとりで飲めるもん!』主題歌の「So What」、プロサッカー選手の槙野智章と共作した「LIFE feat. 槙野智章」などを収録した本作は、サーフロック、ヒップホップ、R&Bなどを融合させた音楽性、リアルなメッセージを含んだ歌詞など、彼らの音楽的アイデンティがポップに表現された作品となった。

 本作のリリースを記念して、アルバム収録曲「THE SHOW feat. Def Tech」で初のコラボレーションを果たしたDef TechのMicro、ShenとSPiCYSOLのKENNY、AKUNの対談が実現。お互いの音楽性と精神性、この時代に対するスタンスなどについて語り合ってもらった。

ミュージシャンとしての役目

――まずはSPiCYSOLとDef Techのこれまでの交流について教えてもらえますか?

KENNY:初めて挨拶させてもらったのは2年前に宮崎で開催されたサーフィンの世界大会(【2019 ISAワールドサーフィンゲームス】)のときなんですけど、もともと僕らがDef Techのファンだったんですよ。高校2年のときに「My Way」を聴いたのがきっかけでした。

AKUN:僕は高1でした。その頃はちょっと荒れていて、家に自分の居場所がないような気がして家出したんですよ。といっても、兄貴が住んでいた部屋に行っただけなんですけど(笑)、俺が兄貴に「この曲、流行ってるんだよ」と「My Way」を教えたら、次の日、アルバム(『Def Tech』)を買ってきてくれて。それを一晩中聴きながら「俺は何やってるんだろうな」と思ったんですよね。



Def Tech - My Way / THE FIRST TAKE


――素敵なエピソードですね!

Micro:うれしいですね。僕らも以前からSPiCYSOLのことが気になっていて。同じく大好きなグループのBLUE VINTAGEのメンバーからも話は聞いていたし、「いいタイミングで会えるといいな」と思ってたんですよ。さっきKENNYが言った通り、宮崎のイベントで初めて会ったんだけど、その瞬間から「同世代だったらずっとツルんでいただろうな」と思って。一緒に音楽シーンで戦っていける仲間、戦友になるってすぐに感じましたね。

Shen:僕は2019年の自分たちのツアーのときにMicroに紹介してもらったんですけど、SPiCYSOLのメンバーはすごくオープンでフレンドリーで。そのときにKENNYかMicroかが「一緒に曲をやろうよ」と言ったんですけど、すぐに「いいじゃん!」という雰囲気になったんです。とにかくノリがよくて、アーティストとしても波動が合いましたね。

――音楽的な相性もめちゃくちゃいいですよね。SPiCYSOLのお二人も、Def Techからはかなり影響を受けているのでは?

KENNY:もちろん。10代の頃からライブDVDでパフォーマンスを観ていたし、リファレンスしているものが自然や海、サーフィンだったりするのも共通していると思います。それこそAKUNとバンドを結成するときに、「“Def Techがバンドだったらこうなる”というものを形にすれば、自分たちのスタイルになるんじゃない?」という話もしていて。

AKUN:あのときもDef TechのライブDVDを観ていたよね。沖縄のライブを収録した作品で、金子ノブアキさんがドラムを叩いていて。パフォーマンスがすごすぎて、参考にできなかったけど。

KENNY:レベチだね(笑)。




Micro:KENNYとAKUNには、自分たちのDNAが受け継がれているなと思いますね。人間力がすごいし、音楽はもちろんカルチャーや自然も好きで。次の世代は彼らに任せようと思います! Shenはどう? この二人を観ていると、自分たちにカブらない?

Shen:間違いないね。今の時代の音楽は軽いものが多いし、ヴァイブスを感じることが少ないけど、SPiCYSOLにはそれがあって。しかも名前が“辛い太陽”って最高だよね。

KENNY:うれしいです。

AKUN:あざっす(笑)。


自分の意思、自分なりの意図

――では、「THE SHOW feat. Def Tech」について聞かせてください。オーセンティック・レゲエに様々な要素を取り入れたトラック、前向きな意志がみなぎるリリックが印象的な曲ですが、制作はどんな感じで進んだんですか?

KENNY:すごくシンプルに、みんなでスタジオに入って話しながら作ったんですよ。Shenくんは沖縄にいたんだけど、それ以外のメンバーでトラックの骨組みを作るところから始めて。

Micro:その前にお互いが最近聴いている音楽の話もしたよね。そのなかで「世界にはあるけど、日本にはないものって何だろうね」みたいなことも話して。

AKUN:すごくスムーズでした。SUNNY BOYさんにプロデューサーとして入ってもらったんですけど、オケもすぐにできて、その場で仮歌を録って。その日が7月2日で、翌日は自分たちのライブだったんですよ。「前日に制作を入れて大丈夫かな」と思っていたんだけど、いざやってみたらすごくパワーをもらえて。「明日のライブもがんばろう」と思えましたね。



SPiCYSOL - THE SHOW feat. Def Tech [Music Video]


――ポジティブなパワーが渦巻いていたんでしょうね。

Shen:そうだと思います。僕は沖縄でデモを受け取ったんだけど、すぐにいろんなアイデアが浮かんで。いろんなバリエーションでボーカルを録って、それを送ったら、みんながパズルみたいに組み合わせてくれていたんですよ。その後もさらにセッションを重ねたけど、とにかく(制作の)フローがよかったし、天国にいるようなレコーディングでした。

――リリックのテーマに関しては?

KENNY:歌い出しもそうなんですけど、Microくんがテーマを出して、引っ張ってくれたところが大きいですね。気持ちいい夏ソングもいいけど、こんな時代だからこそ作れる曲にしたくて。歴史を振り返ってみると、こういう非常事態のときに名曲が生まれることもあって。コロナ禍は歴史的な出来事だし、Microくんが「今しか生まれない曲にしよう」と言ってくれたことで、レヴェル・ミュージックのような方向になったんです。

Micro:SPiCYSOLとDef Techが絡むなら、ゴレンジャーみたいにしたかったんですよ(笑)。戦隊ヒーローものみたいにそれぞれのキャラが立っていて、強いメッセージがある曲がいいなと。チルポップみたいなメロウな方向もあるんだけど、ここで彼らがそれをやると、老け込んじゃうような気がして。それよりもこの現実を踏まえた歌詞にしたかったんですよね。あとは、アスリートを励ますような曲にしたいという気持ちもありました。制作がオリンピックと重なっていて、開会式の日もみんなでスタジオにいたんですよ。途中で作業を止めて、開会式を観れたのもよかったですね。

Shen:歌詞を読んだ瞬間に、どんなメッセージを大切にしているのかが伝わってきたんですよね。特に<Nothing can stop me, nothing can stop us now>というフレーズは素晴らしいと思った。自分だけじゃなくて、他の人たちのことも大事にするというフィロソフィーが感じられて。インスピレーションは常に他の人や目の前の景色から入ってくるし、このコラボレーションも間違いなく最高のものになるなって。




AKUN:レコーディングも最高でした。サウンド自体はルーツ・レゲエが軸になってるんだけど、いろんなジャンルがミックスされていて、音楽的には遊園地みたいなところがあって。Microくん、Shenくんの歌のバリエーションもすごかったし、まさにゴレンジャーみたいにそれぞれのパートが際立っているんですよね。ぜんぜん飽きがこなくて、聴くたびに発見があるんだけど、ちゃんと統一感もある。カッコいい曲になりました。

Micro:AKUNのギターも最高でした。「え? サンタナって茅ヶ崎に住んでたっけ?」って(笑)。

AKUN:(笑)。ありがとうございます。

Micro:Shenと「国籍がわからない音楽をやりたいね」と話すことがあるんだけど、「THE SHOW」はまさにそういうところまで到達していると思います。歌詞がわからない人が聴いても、自分たちの姿勢や闘志を感じてもらえると思うし、それこそが音楽の凄みだなと。ミュージック・ビデオもすごくよくて、昨日25回も観ちゃいました(笑)。

KENNY&AKUN:嬉しいです(笑)。

――ミュージック・ビデオは、Def TechとSPiCYSOLの「THE SHOW」のパフォーマンスを観た人たちが前向きな気持ちを取り戻すという内容。メッセージ、サウンドを含めて、楽曲の魅力がリアルに伝わってきました。

KENNY:曲の仕上がりにすごく満足していたから、どんなMVにしようか悩んで、Microくんともミーティングしたんです。いろいろ話すなかで出てきたのが、去年のロックダウン中のイタリアの光景だったんですよ。ずっと部屋の中にいる人たちがベランダに出て、歌を歌って、励まし合って。その映像を観たときにすごく感動したし、今回のMVもそういうイメージにしようと。カラフルなマンションの中でいろんな人が生活をしていて、僕らの曲によって前に進む力を得るという。撮影が早朝で大変だったんですけど(笑)、その甲斐がありました。

Micro:雨が降ったのもよかったよね。デッキの床が濡れているのもすごくキレイで。

Shen:そうだね。また楽しい話をしますけど(笑)、プロダクションがすごくしっかりしていて、とてもスムーズで。ハワイの文化では雨は恵みだし、気温もちょうどよかったんですよ。

AKUN:雨の撮影は初めてだったんですけど、どんどんテンションが上がって、動きも大きくなって。バンド・メンバーのパフォーマンスもいつも以上によかったし、狙っても撮れない映像になったと思います。



SPiCYSOL - THE SHOW feat.Def Tech [Behind The Scenes]


自分の意思、自分なりの意図

――前向きな姿勢が共鳴するような現場だったんですね。コロナ禍になって世界中のミュージシャンが大きな打撃を受けましたが、みなさんが前向きな意志を維持できているのはどうしてですか?

Micro:正しい情報と正しくない情報、言えること言えないこと、いろんなことがありますけど、まずは正しく怖がることが大事だと思いますね。COVID-19にはまだわからないことも多いけど、天然痘やペストなど、人間にはウイルスに勝利してきた歴史もあるので。ただ、“いつまでに(状況が良くなる)”という期限がわからないと、どうしても不安になるじゃないですか。期限がはっきりしていればコロナ明けの状況を想像できるけど、今はそうじゃないし、僕の父親みたいにワクチン2回打っても怖くて外出できない人もいて。そういう状況のなかで大切なのは、やっぱりポジティブな姿勢なんですよね。僕はアメリカで学んだ“Positive Mental Attitude”という言葉が好きで。

――前向きな意志を姿勢として示す、という意味ですね。

Micro:「THE SHOW」の歌詞にも出てきますけど、本当は自信なんてないし、不安な日々を送ってるんですよ。でも、「絶対に大丈夫」という態度を示し続けることで、最初は演じていたとしても、真実になっていくと思うし、僕らはそれを音楽に昇華したいんです。

Shen:素晴らしい。正しい情報を頭に入れて、ロジカルに判断すること、直感で動くことの両方を持っていることが大事なのかなと。もちろんMicroが言った通り、Positive Mental Attitudeはすごく重要ですよね。下向きのスパイラルに入るとエンドレスに下がり続けるし、音楽の力によって太陽に向かって上がってほしいので。SPiCYSOL!ですよ(笑)。

KENNY&AKUN:頑張ります(笑)。

――「THE SHOW feat.Def Tech」が収録されたSPiCYSOLのアルバム『From the C』にも、前に進んでいく力がしっかり込められていますね。

KENNY:そのことに関して言えば、Microくんが言った一字一句が僕らの気持ちと一緒ですね。僕らもすごく不安だし、「この先どうしよう」という感じもあるんだけど、音楽でみんなのメンタルを引っ張りたいし、ネガティブな要素は1ミリも要らないので。それがコロナ禍で音楽をやらせてもらっているミュージシャンの使命だと思ってます。

AKUN:コロナ禍で制作したアルバムだし、そういう気持ちはありますね。自分たちのことで言うと、今回のアルバムはメジャー・デビュー1発目なんですよ。これまでとは違う見られ方をするかもしれないし、スタッフから言われることも変わってきて。もちろん「さらに上に行きたい」という気持ちでメジャーを選んだんですけど、バンドとして、アーティストとして迷うこともあるんですよね。セルアウトじゃないけど、そっちに寄せることも必要なのかとか、ルーツを突き詰めたほうがいいのか、とか。そのバランスを取りながらの制作だったし、今の時点でのベスト、すべてを出し切ったアルバムが『From the C』ですね。

――ターニングポイントを迎えているのかも。Def Techは20周年を迎えましたが、求められることとやりたいこと、ミュージシャンとしてのキャリアとプライベートの充実ぶりを含めて、今が一番いい状況なのでは?

Micro:僕もそう思います。コロナを別にすれば、Def Techは今が一番いい時期だと思います。25、6歳でデビューして、20年やってきて、KENNYやAKUNみたいに高校生の頃から聴いてくれていた人たちと同じ土俵で音楽をやって。さっきも言ったけど、同じベクトルを持ったソルジャーだと思っているし、心強いですね。その下の世代にも変態紳士クラブがいたり、ShenがラッパーのOZworldと繋がっていたり、DNAが受け継がれていることを感じる機会も増えてきて。それは僕らにとっても、新しく生まれ変わるチャンスなんですよね。

Shen:若いアーティストの楽曲を聴いて、“メッセージを大事にしないと長続きしない”という考え方が受け継がれているなと感じることもあって。それは俺らがすごいのではなくて、若い世代のアーティストがすごいんですけどね。自分たちは40代になりましたけど、“ミレニアム世代のエルダー(年長者)”だと思っていて。上の世代に対してはデジタルのドアを開けて「こっちだよ」と教えてあげたいし、下の世代にはアナログの大切さだったり、「目の前にいる人が大事だってこと、わかってる?」ということを伝えたいんですよね。




――ケータイやインターネットが普及していない時代を知っている、最後の世代かもしれないですね。

Shen:そうですね。『The Social Dilemma』(邦題『監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影』)の影響もあるけど、アルゴリズムにやられないように意識したり、その一方ではデジタルやソーシャルメディアの大切さもわかっていて。そういう意識のバランスを取ることが自分たちのライフ・スタイルに繋がっていると思います。もう子供とは言えない年齢だけど、「ピーターパンシンドロームを忘れないでいよう」とも話してるんですよ(笑)。大切なのはオーセンティックな自分、本当の自分を呼び起こすこと。ありのままでいないと、コンピューターの脆弱性(プログラムの不具合や設計上ミスによっておこる情報セキュリティの欠陥)みたいに必ずバレますからね。

――“ありのままの自分たちを表現する”というスタンスは、SPiCYSOLにも共通しているのでは?

AKUN:そうですね。僕はまだカッコつけることもあるけど(笑)、音楽はありのままの姿を見せる場所でもあるので。

KENNY:「ありのままでいいんじゃない?」という歌詞を書くことも多いですからね。


楽しむことこそが一番の恩返し

――Def TechとSPiCYSOLはこの秋、ライブも予定されています。まずDef Techは10月23日に横浜、30日に大阪、11月3日に東京のビルボードライブ公演を開催。

Micro:コロナ禍で旅行に行けないので、ハワイの風を運びたいですね。ライブの時間だけは南国を感じてもらえたらなと。

Shen:間違いない。とにかく超、超、超ライブをやりたいんですよ。「やるな」と言われるとやりたくなる、俺らの人間性がバレちゃいますね(笑)。

Micro:2年ライブをやっていないと、Shenも僕も「やりたい!」という気分になっていて。ないものねだりですね(笑)。




――そしてSPiCYSOLは、10月から11月にかけて全国ツアー【From the C】を開催します。

AKUN:“C”には“茅ヶ崎”も含まれているので、茅ヶ崎の風を全国に届けたいです。ちなみに茅ヶ崎とホノルルは姉妹都市なんですよ(笑)。

KENNY:久々のツアーだし、チケットを逃してしまった人のぶんまで最高の“THE SHOW”を見せたいですね。

――SPiCYSOLとDef Techの共演もぜひ観たいです。

AKUN:俺らもめちゃくちゃやりたいです!

Micro:いつでもいいよ。

KENNY:できれば全公演お呼びしたいです(笑)。「THE SHOW」は完成度が高くて、SPiCYSOLだけで演奏する方法が見つかってないんですよ。

Micro:そんなことないよ。SPiCYSOLだけでも絶対カッコよくやれると思う。

――両者の交流、今後も続きそうですね。

AKUN:そうしたいですね。アルバムを作りたいんですよ。もっとメロウな曲もやってほしいし、アッパーな曲もいいなって。いろいろ考えてたら、アルバムを作るしかないなと。

KENNY:そのためには沖縄に行かないと(笑)。

Shen:いいね(笑)。

Micro:1曲目は奇跡、2曲目が話題になって、3曲目で現象になると思っていて。まずは3発くらいいきたいですね。

Interview by 森朋之

SPiCYSOL「From the C」

From the C

2021/10/06 RELEASE
WPZL-31908/9 ¥ 3,850(税込)

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Disc01
  1. 01.So What
  2. 02.かくれんぼ
  3. 03.Cry No More
  4. 04.THE SHOW feat.Def Tech
  5. 05.LIFE feat.槙野智章
  6. 06.NAISYO
  7. 07.あの街まで
  8. 08.From the C
  9. 09.ONLY ONE
  10. 10.かくれんぼ (Stay Home ver.)

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