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<インタビュー>25周年を迎えたアジカン、バンドの成長とともに芽生えた彼らの熱い想いとは



インタビュー

 2021年、1996年の結成から25周年を迎えたASIAN KUNG-FU GENERATION。11月には全国のZeppを巡る25周年記念ツアーが決定し、さらにその直前には[ビルボードライブ東京]での2デイズ(計4ステージ)のライブも発表された。これまでの四半世紀のヒストリーとバンドの現在地、そして“これから”がそのステージに表現され、聴く人にシェアされる、そんな秋がやってきた。コロナ禍で多くのミュージシャンが自分たちの在り方を見つめ直している時代に巡り合わせた25周年。国内、そして海外でのライブが大きく制約されたこの約2年間を過ごしたアジカンは、今、何を思っているのだろう。

グループ結成25周年を迎えた、メンバー其々の想い

――まずは、それぞれ25周年への思い、感慨をお聞かせください。


後藤正文(Vo / Gt):そうですね、あっと言う間でしたね。特に最近、一番思うのは、25年も一緒に音楽を作れる仲間が見つかったということは、大きいことだなと思います。ロックバンドをやりたいって思う頃に、すでに音楽的な勉強をしているとか、バックボーンになる知識や能力があることって稀ですよね。それでも自由に音楽にアクセスできるのがロックバンドのいいところですよね。僕たちも、要するに何もない、無のところからはじめて、こうしてやってこれたということが感慨深いですね。


山田貴洋(Ba):それなりに長い時間を過ごしているはずなんですけど、振り返ってみると特に学生時代のこととか、そんなに前のようにも思えなかったりしていて。逆にここからって時間が早く進んでいくのかなっていう、そんなちょっとした怖さみたいなことは感じたりしますけど。一番は、やっぱりみんなで続けてこれたことかな。同じメンバーで1つのことを続けることって、まあ自分たちはやってはきたけども、なかなかできることじゃないなあっていう風には思っています。それなりの苦労はありますけど(笑)。


喜多建介(Gt / Vo):まあ、いろんな時期がありましたけど、今こうやって4人で集まって、曲作りをしたり、一緒に音が出せたりできることが、前より楽しくなっているというか。歳を重ねたっていうこともあるかもしれないですけど、集まれることの大事さは感じますね。でも、それって余裕とはちょっと違うんですよね、まだまだ勉強をすること多いし。でも、その勉強することも楽しく感じられるようになっていて、若い頃は苦しみに感じていたことも、前向きに捉えられるようになってきたのかなって。


伊地知潔(Drs):僕は数年遅れての途中加入なので最初はちょっとサポート的な気持ちもあったんですが、アルバムの3枚目ぐらいで自分の役割がわかってきたことを思い出しますね。だから凄く長い25年とは感じていなくて、これからまだまだやりたいことがあるっていうことをあらためて思っていますね。


後藤:僕も25周年だからといって過去の事を振り返って、あの時は良かったこの時は良かったみたいな気持ちはあまりなくていいと思ってますね。それよりも、これまでに作ってきた楽曲を、その時々の気持ちで選び直してセットリストを組むことができるという状態にあるのが、すごく幸せなことなんじゃないかと。しかも、こうやって集まって新しい曲のことを考えたりできていること自体が幸せかなって。過去とか未来とかじゃなくて「現在」があるのが、すごい素晴らしいことだなと思う。


ASIAN KUNG-FU GENERATION

――その現在を支えてくれているのが25年分のヒストリーだと思いますが、その時間の中でバンドが達成してきた「強み」はどこだと思いますか。


山田:あらためて感じるのは、やっぱり「曲」だなっていうことですね。メンバーで話していても「やっぱいい曲あるよね」って。まあ、何を持ってして「いい」というのかは、言葉にしづらいんですけど。


喜多:それは「THE FIRST TAKE」で「ソラニン」を演奏したときにも思いましたね。聴いてくれる皆さんは、それぞれの年代で思い入れが違うかもしれないけれど、世代とか時代を超えて届く曲と言うか。それと、この4人っていうシンプルなバンド編成でずっと続けていることが、実はわりと珍しいことにもなっていて、強みかどうかはわかりませんけれど、僕は個性として好きですね。


伊地知:さっき「無からはじめて」っていう話がありましたけれど、誰かのマネじゃないオリジナリティーっていうことを、僕は参加する前からアジカンに感じていたことなんです。その唯一無二の感動っていうのが、きっと強みだと思います。


後藤:でも、最初はちゃんとコピーもしてたんだけどね(笑)。山ちゃんが「曲のよさを言語化するのは難しい」って言ったけど、これは本当に不思議で、「ソラニン」にしても自分たちの楽曲の構造を分析してもよくわからないんですよ。単に「ヒットした/ヒットしなかった」ということでもないし。でも、今でもみんなが好きだって言ってくれるのは本当にありがたいし、きっと何かしらのエネルギーはあるんだろうって。それは楽曲自体が持っている力なのか、僕たちが演奏してきた時間とリスナーが聴いてくれた時間の積み重ねなのか。きっとそのいろんな要素が重なりあっているんじゃないかって思いますが、そうやって曲が蓄積したエネルギーが、僕たちのエネルギーになっているのは間違いないですね。


ASIAN KUNG-FU GENERATION


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    新曲を携え、満を持してビルボード・ライブへ
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新曲を携え、満を持してビルボード・ライブへ

――そうして紡いできた25周年がコロナ禍と重なった。偶然とは言え、思うところはあるのではないでしょうか。


後藤:もちろんそれはありますね。25周年であろうとなかろうと、どんな人たちもそれぞれで思うところがあるはずだし。僕たちにとってのコロナ禍ということで言えば、国内はもちろん、海外でライブができないっていうことは大きかったですね。これまでは海外でツアーができるっていうことが、ひとつのモチベーションでしたから。でも、この状況では大きなリスクについて考えなくてはいけない。ここから先、ミュージシャンっていうのは、この状況とどう折り合って活動して行くのがいいんだろうって考えさせられますし、この先のプランの練り直しっていうのはしなきゃいけないなと思っています。


喜多:さっき後藤が言ったように「今できること」をあらためてちゃんと1個1個やっていかないとなあって感じていますね。そういう時代になっていますよね。


――特に後藤さんは、これまでも社会的な課題にも様々な形でメッセージを発してきていますが、そのスタンスとも関係がありそうですね。


後藤:この間、マッシヴ・アタックが「音楽業界をサステナブルなものにするためには、低炭素で行うライブツアーのやり方を確立すべき」という趣旨の提案をしているという記事を読んだんですけど、電気や資源をたくさん使うコンサート、ライブ、またはプラスティックを使うCDのリリースが環境負荷を招いているとしたら、じゃあ、どうすればいいんだろうということは考えますね。コロナ禍がそういうことも見直すきっかけにはなっていると思います。例えば、今までのように純粋に「楽しい場所」であったコンサートでは終われないとすれば、そういったことを共有する場所としてのコンサートだったり、今までとは意味合いが変わっていくだろうし、変えていかなくてはいけないかもしれないですね。音楽のすごいところは、意見が違う人でも、そのメロディーなりリズムなりに心を寄せることができるじゃないですか。分断されることなく、なにかを分かち合う場としてのコンサートやフェス、そういう意味が生まれてくる気がしています。


――そんな思いは、最新曲「エンパシー」にも反映されているような気がします。


後藤:今の時代、いろんな個性や役割があって、多様性っていうことを言われていますけれど、でも「わかる/わからない」という二元的なベースで考えると、どうしても分断されやすいですよね。だから単にシンパシーを感じる/感じない、というところから踏み込んで、相手のことを考えてみる、想像してみるところに立ってみることで共感を深めていく。それが「エンパシー」っていう言葉の意味なんですが、本当に大事なことだと思ってます。



――今回の「エンパシー」は、映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』の主題歌でもありますが、アニメとのコラボレーションで意識したことはありますか。


後藤:もちろんアニメ作品との整合性は考えましたけれど、それ以上に意識したのは、きっと若い人たちが聴いてくれるんじゃないかっていうことですね。僕たちが若い頃、インディーズ時代に感じていたことでもありますけれど、誰でもないし、誰からも見つけてもらえない、そんな時期を生きているとしても、きっと誰かが待っていてくれる、呼んでくれているはずなんですよ。その呼び声に答えられるように、自分の役割に耳を澄ますことができるかどうか。人の力って、誰かとの関わり合いの中で見つけられるというか、発揮されていくものだと思うんですね。自分だってこのメンバーの中だから見つけられた、発揮できた個性があるはずだし、それが別の場所ではきっと違う形で見つけられるだろうし。そんな思いが入っていますね。「だから絶望しないでね」っていうことかな。ひと言にまとめろって言われたら「大丈夫!」っていうことです(笑)。


――メンバーからもこの「エンパシー」への思いをお願いします。


喜多:サウンド的には「エンパシー」もカップリングの「フラワーズ」も、the chef cooks meのシモリョー(下村亮介)のアレンジが大きかったですね。彼にはもう何年もサポートしてきてもらっていますけれど、今回は僕のギターでもそうですし、これまでのアジカンのよさも活かした上で新しい扉を開けてくれたと思っています。まったく新しいというわけではなくて、自分では開けていなかった扉を開けるために背中を押してくれた、と言うか。後藤が言う「誰かとの関わり合いの中で見つけられる力がある」という意味では、今回のシモリョーのアレンジは、まさにそういう感じですね。


山田:シモリョーのアレンジがあったことで、それまで荒削りだった部分が整ったように感じていますね。新しくアジカンを聴いてくれる人たちがいるとすれば、ここから入ってこれまでのアジカンも聴き比べてもらうのもいいかなって思います。


伊地知:僕のドラムのフレーズ関しても、最近は比較的にシンプルなフレーズが多かったんですけど、今回はけっこう難易度高めのことが多く入っているんですよ。それこそドラムを始めたばかりの若い人がコピーしたくなるような、そんなドラミングになっていると思います。


――そんな新曲も生まれた25周年。いよいよ11月に記念ツアーが始まります。


後藤:Zeppのツアーに関しては、先日みんなで曲を出し合いました。まず半分ぐらいは、メンバーもファンも納得できる、いわゆる「この25年間で外せない曲」を選んだんですが、もう半分は、それぞれの演奏したい曲を出してセレクトしています。そっちにはメンバーにしかわからない25年が反映されているかもしれないですね。とはいえ、長年のファンにも新しいファンにも響くようなセレクトになったと思います。「それってメンバーが演りたいだけじゃん」って言われることもなさそうです(笑)。


ASIAN KUNG-FU GENERATION

――その全国ツアーの直前には六本木の[ビルボードライブ東京]への登場も発表されました。あえてツアーに加えてこのライブを行うことにはどんな思いがありますか。


後藤:このライブももちろん25周年の一環なんですが、さっきも言った「これからのプラン」を思うと、制限のある中で「いかに安全にライブの回数を増やせるか」ということを考えますよね。これからのアジカンにとって、どんなスタイルのライブの可能性があるのか、そのひとつの例として[ビルボードライブ]のようなクラブ・レストランもあっていいだろうと。ライブハウス、ホール、そしてクラブ・レストラン、どこもやりたいですからね。


喜多:最初は[ビルボードライブ]ってアジカンに合うかなっていう気持ちもあったんですが、今はちょっと大人っぽい雰囲気の中に立つことの楽しさを感じていますね。ツアーと同じナンバーもあるだろうし、でも、ここだけで演りたい曲もあるし、そこに向かうプロセスを楽しんでいますね。


山田:今はコロナ禍で以前とはディスタンスが違っていると思いますけれど、やっぱりイメージ的には客席の近さが印象的ですよね。食事をしながら見るという風景の印象もありますし、いつもとは違う緊張感を感じてます。だからこそ、そこでしか出せない空気感を楽しみたいですね。


伊地知:僕もすべてのプレイがタイトに聴こえてしまう、見えてしまうという緊張感はありますね。でも、山ちゃんが言ったように、それも含めて楽しめるようなスキルを持って臨みたいと思います。


後藤:まあ、僕らもいつしか中年なんで(笑)、お客さんの中にも椅子席がいいという方もいるだろうと思うし。もうちょっと踏み込んで言えば、これからの時代に「ただ(会場を)大きくしていく」ことが正解なのかもわからないと思う。音楽の魅力っていうのは、ある時間を一緒に過ごしたということでもあると思うし、だからこそライブはとてもスペシャルだと思うんです。そのためにも、音楽のSDGsじゃないですけれど、適正なキャパシティーで適正に届くライブをすることの必要性を考えますね。配信に関しては、海外のファンに向けたかったこともあって積極的にやってきた自負はありますけれど、これからはリアルなライブの空間のデザインがとても大切だと思う。バンドとスタッフが一丸となって、スペシャルな時間と空間を安全に作れるのかっていうことを、もっと工夫してもいいんだろうなっていう気持ちがあります。自分たちがやりたいことと空間のデザインは絶対につながっているって、デイヴィッド・バーンの『アメリカン・ユートピア』を観たときにも感じたことですね。


――しっかりデザインされているからこそ、『アメリカン・ユートピア』にも溢れていた楽しさもユーモアも、そしてメッセージも届きますね。


後藤:そうですね。だからライブのステージに立ったときは、なるべく朗らかにやりたいです。



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