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<コラム>結成10周年を迎えたDa-iCE、「Kartell」の込めたメッセージを紐解く
シーン全体を盛り上げていきたいんだという意思
今年で結成10周年を迎えた5人組ダンス&ボーカルグループ、Da-iCE。現場叩き上げのパフォーマンスを武器としつつ、メンバー自身が楽曲制作に参加するなど、クリエイティブに積極的な一面を持つ彼ら。大野雄大と花村想太のツインボーカルもグループの特色であり、直近では「THE FIRST TAKE」でのパフォーマンス動画が話題に。「THE FIRST TAKE」でピックアップされたバラード「CITRUS」は、ストリーミング総再生回数が1億回を突破したという。
▲Da-iCE (大野雄大・花村想太) - CITRUS / THE FIRST TAKE
そんなDa-iCEが、アニバーサリーの幕開けを告げる新曲「Kartell」をリリース。泥臭さを感じさせるアッパーチューンだが、歌われている言葉がいつになく鋭利だから驚いた。タイトルの「Kartell」(カルテル)とは、同業種内の複数企業が協定を結び、独占的利益を得ることを目的に、商品の価格や生産量などを取り決める行為のこと(市場経済における健全かつ公正な競争状態を妨げる行為であるため、日本では禁止されている)。ハードロック×ファンク的なトラックに乗せて歌われているのは、〈蹴飛ばせ 忖度と不感症〉といった、甘い蜜を吸う人を批判する言葉。また、Bメロのビートはダンスミュージック寄りのアプローチだが、“踊れる”、“盛り上がれる”といった効果よりも、攻撃的な気持ちを掻き立てるための演出という印象を受ける。歌詞を書いたのはリーダーの工藤大輝。工藤はDa-iCEの楽曲のソングライティングを手掛けるだけでなく、Nissyやkolmeなど他アーティストへの楽曲提供も行っている人物ではある。しかし、攻めの姿勢をここまで剥き出しにしているのは、今回が初めてではないだろうか。
▲Da-iCE /「Kartell」
理不尽にNOを突きつける姿勢は、会社などの組織に所属するなかで、何となくモヤッとした経験がある人ならば共感できる部分も多いはず。そういう意味でポップソングとしての普遍性は担保されているが、ここで思い出してほしいのが、「Kartell」がアニバーサリーの号砲にあたる曲だということ。だからこそこの曲は、怒りや不満を吐き出すだけでは終われない。〈くだらない暗黙の了解が/進化を遅らせているのは/明白でしょう〉と現状を憂いつつも、〈敵も味方も巻き込んで〉としている点から読み取れるのは、敵を倒すことが目的ではない、シーン全体を盛り上げていきたいんだという意思。今や後輩に背中を見せる立場にあるからこそ出てきた言葉だろう。さらに〈積み上げてきた全てが希望〉、〈結果で捻じ伏せろ〉といったラインから滲み出ているのはグループの矜持であり、もちろん口だけではない。フレージングを大切にした歌唱法と母音にアクセントを置いてリズムを打ち出す歌唱法を器用に切り替え、かつ感情をしっかり乗せた大野&花村のボーカルは、10年の活動の賜物だ。ダンスパフォーマンスに関しては、YouTubeで公開されているプラクティス動画をチェックしてほしい。
▲Da-iCE /「Kartell」Official Dance Practice
ここまでやってきたという達成感・感慨ではなく、まだまだここからという野心・渇望感とともに走り出したDa-iCEの10周年。次の10年が楽しみだ――と言うのはさすがに気が早いかもしれないが、いずれにせよ、5人の未来が楽しみなことには間違いない。
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