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<インタビュー>久保あおいが初のEP『お伽話のような奇跡』をリリース 自身初となるインタビューのキーワードは「救い」



久保あおいは16歳のアーティストだ。

2月19日にリリースした「反面教師為貴女覇本日怒上昇中乃巻」は絶対に歌えないと話題になり、また初音ミクによってカバーされた音源映像もYouTubeで公開されるなど、注目の存在となっている久保あおい。そんな中、9月17日に初のEP『お伽話のような奇跡』をリリースした。本EPに収録されている3曲はすべてアニメ『でーじミーツガール』のタイアップとなっており、これを機にさらにその存在を知られることになるだろう。

そんな久保あおいに今回彼女自身初となるインタビューを実施した。注目なのはインタビューの中でたびたび出てくる「救い」という言葉だ。これまでの歩みの中でどのような経験をし、そしてこれからの歩みでどのようなことをしたいかという時に、この「救い」は大きなキーワードになってくるだろう。丁寧に紡ぎだした久保の言葉にぜひ注目してほしい。

歌で人を救えるような歌手になりたいと思った

――小さい頃から音楽が好きでしたか?

久保あおい(以下:久保):そうですね。お母さんが音楽を聴くことも歌を唄うことも好きだったので、私もいつの間にか好きになっていました。

――お母さんはどんな曲を聴いたり、歌ったりしてましたか?

久保:感動系のバラードが多かったです。小さい頃は、浜崎あゆみさんやglobeさんをよく聴いていました。小学生の頃は絢香さんの「三日月」を一緒に歌ったりしていました。


▲絢香「三日月」

――歌手になりたいと思ったきっかけは?

久保:中学生の時に家族関係とか友達関係に悩んでいて。軽いいじめもあって、辛くなっちゃった時期に友達が紹介してくれた曲にすごく共感したのを覚えています。あんまりアーティストさんには詳しくないんですけど。「贖罪」(傘村トータ)や「私の思春期へ」(赤頬思春期)を聴いて、<泣きたいときに我慢したこと>という歌詞とかにすごく共感して。私以外にも、同じような悩みを抱えている人はいっぱいいるんだなと思って、勇気づけられたんです。そこで、音楽にはこんなに影響力があるんだって感じました。また、家族や友達とカラオケに行った時に感動系の曲を唄うんですけど、友達やお母さんが泣いてくれたのがとても嬉しくて。私も歌で人を救えるような歌手になりたいと思ったのがきっかけです。


▲傘村トータ「贖罪」

――歌手を目指してからデビューまでのスパンが短いですよね。

久保:そうですよね。2020年の春に詠人不知(ヨミビトシラズ)さんに出会ってから歌わせていただく機会があって、そこで歌ったら、一緒に楽曲制作を始めようという話になって。同じ年の8月にデビューしました。

――当時15歳ですよね。とんとん拍子じゃないですか。

久保:自分でもびっくりしました。こんなことってあるんだって。でも、それまではあまり何も考えずに歌っていたので、詠人不知さんとオリジナルの曲を作っていくにつれて、どうしたら歌声に感情を込められるのかとか、どんな歌い方をすればより伝わるのかとか、いろいろと考えるようになりました。

――ビジュアルを隠しているのはどうしてですか。

久保:純粋に曲を楽しんでほしいという思いがあって、今は隠してます。

――2020年8月31日にDigital Single「さよならって君は言ったけど」でデビューした時はどんな心境でしたか。

久保:最初は全然実感が湧いていなかったです。嬉しかったけど、これからちゃんとやっていけるのかっていう不安がありました。でもその不安も、周りの方の協力で少しずつ乗り越えられているのかなって思います。


▲久保あおい「さよならって君は言ったけど」(Lyric Video)

――どんなアーティストになりたいって考えてましたか。

久保:その時点では曖昧だったんですけど、今は、私も結構辛いことが多いので、音楽で人を助けたいっていう思いが強くなってきています。落ち込んでる人とか、辛い思いをしている人の心に少しでも響く歌を届けられたらなって。

――あおいさんご自身は落ち込んだり、辛い思いをした時はどうしてますか。

久保:やっぱり音楽に頼ってますね。YouTubeで曲を聴きながら、コメント欄を見て、「あ、同じ人がいるんだ」ってちょっと安心することが多いです。

――その後、2020年11月から2021年3月にかけて2週間に一度のペースで新曲を7曲もリリースしました。

久保:多くの人に1曲でも知ってほしいなという思いで始めました。1曲1曲、詠人不知さんと話し合いながらサビを決めて、Aメロ、Bメロと作っていく感じなんですけど、その時の私の気持ちというものも伝えています。なるべく歌詞に、自分の気持ちを重ねて歌ってます。

――上記期間中にリリースした7枚目のDigital Single「反面教師為貴方覇本日怒上昇中乃巻」のMV再生回数が91万回を突破しました(インタビュー時点)。多くの人に届いたことをどう感じましたか。

久保:最初はそこまで聞いてもらえるとは思っていなかったのでびっくりしました。もともとは「誰もカバーできない、歌えないような曲を作ってみよう」っていうところから作り始めた曲で。歌詞も漢字だけの方が面白いんじゃないかって話し合って出来た曲だったんですけど、過去イチで難しくて大変な曲だったので、頑張った甲斐があったなと思いました。


▲久保あおい「反面教師為貴方覇本日怒上昇中乃巻」(Music Video)

――落ち込んだり、辛い思いをしてる人に寄り添う曲を歌いたいという気持ちとは違うタイプの曲がヒットしたことに戸惑いはなかったですか?

久保:それでも多くの人に聴いてもらえた喜びの方が大きかったです。私自身、こういう曲もやってみたいなと思っていたので。ただ、もうあんなに速いのは作らないかもしれないです。(笑)

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アニメ『でーじミーツガール』のキャラクターとの共通点

――続く、8枚目のデジタルシングル「「またね。」が聞こえた」は、前作とは一転して、プライベートな体験を元にしたバラードとなっていましたね。

久保:本当にあった話ではなくて、あくまでも実話を基にした曲になっています。だから、歌う時に感情移入はしやすかったんですけど、まだ100%自分の感情を入れた曲というのはないんです。自分をさらけ出すのは怖いし、勇気がいることだけど、これからは少しずつやっていきたいなと思っています。


▲久保あおい「「またね。」が聞こえた」(Film Video)

――ご自身の現在の音楽のルーツになっているアーティストはいますか?

久保:この人っていう人はいないんですけど、よく聴くのは、やっぱり感動系というか、共感を呼ぶような歌。誰かひとりのアーティストさんを夢中になって聴くということはなくて、基本的に曲単位で好きになることが多いです。

――音楽制作で大切にしてること、譲れないことは?

久保:久保あおいの歌の癖を作って歌っていきたいです。歌い回しなのか、コブシを使ったりすることなのか。自分の曲はお手本がないので、久保あおいの癖をどんどん作っていきたいなと思います。

――音楽以外で熱中したものは何かありますか。

久保:そんなにないですね。……うーん、なんだろうな。前までは、ぬいぐるみを集めていました。これは初めて言いました(照笑)。スタッフさんにも言ってないです。

――Twitterでは円周率を猛烈に描いてましたよね。

久保:あはははは。あれは、友達と遊んだ時にそういう話が出て。円周率を5万桁書くって宣言してしまったので、書かなきゃって頑張ってました。



――では、日々の生活の中で幸せを感じる瞬間は?

久保:いざ聞かれると難しいですね。考えたことなかったです。なんだろ、寝ることかな(笑)

――矢継ぎ早にすみませんでしたが、少しだけ素のあおいさんが知れたような気がしました。さて、音楽の話に戻りますと、初のEP『お伽話のような奇跡』リリースと、初のアニメタイアップが決まりました。

久保:これも、デビューの時の話と似ちゃうんですけど……嬉しいけど、やっぱり緊張します。アニメの曲を歌うことはいつかやってみたいなと思っていたんですけど、初めてのことなので、すごく緊張しています。

――どんな作品を作りたいと考えてましたか。

久保:アニメ『でーじミーツガール』のメインのキャラクターの方達にちゃんと寄り添った楽曲にして、皆さんに楽しんでいただきたいなと思っていました。メインのキャラクターの方達の心の奥底がどんな感じなのかとか、それぞれはどんな人なのかを考えながら、作っていきました。


▲アニメ『でーじミーツガール』PV第1弾

――アニメの脚本や台本を読んで感じたことは?

久保:私とメインのキャラクターの子達の心の奥底が似てるというか。やっぱり苦しいとか、心が辛くなるところとか、重なる部分があるのかなって思いました。

――メインテーマとなる「お伽話のような奇跡」を受け取ってどう感じましたか。

久保:落ち込んでるからこそ、大丈夫だよっていう、ちょっと応援歌のような前向きな歌詞になっています。私にも当てはまるところが多かったので、自分とも似てるなと思いながら歌っていました。特に重なったのはサビのあたり。<いつの間にか心軽くて不思議ね>っていうところは、「確かに」って思いながら歌ってて。音楽に救われた経験を思い出しながら歌いましたし、新しいチャレンジもできたかなって思います。

――レコーディングにはどんな気持ちで臨むんですか。

久保:どの曲もそうなんですけど、歌詞の意味をちゃんと考えながら、言葉を大事にしながら歌っています。まだ自分らしさとか、自分の歌の特徴はよくわかってはいないんですけど、あんまり張った声は出来ないし、キーンとした高い声も出ないので、自分の声に合った曲を歌っていきたいなと思っています。

――この曲でも、水槽の中で一匹だけで泳いでいる魚に自分の姿を重ねてるように、いちリスナーとしては、歌声から言いようのない“孤独感”を感じるんですよね。でも、同時に爽やかさやピュアネスもあって。

久保:やっぱり私の曲の中には、自分自身の苦しかった過去と似たような歌詞が描かれているので、いつもそこを思い出しながら歌ってます。全体の雰囲気があんまり久保あおいの曲にはなかったというか、新しい感じがしたなと思いました。

――新しさという点で言うと、Aメロのキーはかなり低めで、全体としてはこれまでにないほどポップでキャッチーになってます。

久保:Aメロは暗すぎないように歌うのを心がけながら歌いました。また、アニメの世界に入り込んで作った曲なので、アニメにピッタリと合った曲になったかなって思います。ファンタジーな作品なので、完成したアニメを見るのも楽しみです。

――カップリングに収録されている2曲「誰も知らない心の物語」「少し疲れちゃったな」についても解説をお願いします。

久保:アニメのキャラクターの舞星さんと、すずきいちろうさん、それぞれの心の深いところを、どんな感じなのかを感じ取って作った曲です。「誰も知らない心の物語」は舞星さんの明るさと心の中にある苦しみや悩みを表現していて、「少し疲れちゃったな」はすずきいちろうさんの心に育ってしまった闇を歌ったバラードになっています。タイトル通り、心が少し疲れちゃったなっていう人に対して、「あなたは一人じゃないよ」と伝えるメッセージソングにもなっているし、私はどちらかというと、すずきいちろうさん寄りかなと思います。やっぱり心に傷を負ってるのが似てるなって感じてます。

――リスナーにはどう聴いてほしいですか。

久保:歌詞の意味が独特というか、胸に刺さる歌詞になっていると思うので、声と一緒に歌詞の意味もじっくり考えながら聴いてもらえると嬉しいです。

――最後に、今後の目標を聞かせてください。

久保:ちょっと似ちゃうんですけど、やっぱり私は、自分の音楽や歌で、傷ついた人を救えたらなって思っています。あとは、これまでは1曲ずつにテーマやコンセプトがあって、1曲1曲でひとつの物語を歌ってきたんですけど、いつか数曲を通してひとつのストーリーを描けるような曲たちを歌えたらなと思います。また、他のアーティストさんともコラボしてみたいです。今は具体的な人はいないんですけど、これからいい出会いがあるといいなと思ってます。

――ライブ活動は考えてますか。

久保:できればしてみたいです。まだ無観客のオンラインライブでしか経験したことがないので、いつか有観客でのワンマンライブをやってみたいです。

――大きな夢はありますか。

久保:まだ決まってないです。いつかできたらお話ししますね(笑)。

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