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<インタビュー>chilldspot、“綺麗にアンバランス”な4人から生まれた1stアルバム『ingredients』



 ロック、ジャズ、ファンク、R&B、ソウル……あらゆるジャンルを呑み込む楽曲の振れ幅と、それを形にしてみせる演奏のセンス。歌詞の描写の鋭さやボーカルの表現力にいたるまで、そのクオリティは破格である。そして、そのクオリティを讃えるのに「若いのに」とか「10代なのに」みたいな枕詞はまったく必要ない。

 2019年12月結成、メンバー全員2002年生まれの4人組、chilldspot(チルズポット)。高校生だった2020年11月にリリースした1st EP『the youth night』から先行配信された楽曲「ネオンを消して」のミュージックビデオが話題を集め、2021年1月にはSpotifyの選出する次世代アーティスト「RADAR:Early Noise 2021」にフックアップされ、7月にはYouTube Musicのアーティスト支援プログラム「Foundry」にも選出される。ますます注目度を高める中、9月15日にリリースされるのが1st Album『ingredients』だ。

 全11曲、「ネオンを消して」や先行して配信されたシングルの「Monster」「Groovynight」をはじめ、多彩なサウンドが詰め込まれたこのアルバムから浮かび上がるchilldspotという類まれなバンドの姿とは。ボーカルの比喩根いわく「綺麗にアンバランス」な4人に語ってもらった。

chilldspot:比喩根 (Vo.) / 玲山 (Gt.) / 小崎 (Ba.) / ジャスティン (Dr.)

4人で最初にアレンジしたときに「いいとこまで行くかもしれない」と感じた

――chilldspotの音楽には、本当にいろいろなエッセンスが入っていますよね。

ジャスティン:聴くジャンルが4人全員バラバラなんです。もちろんかぶっているところもあるんですけど、わりと1人1人やりたい音楽があって、それが入っていると思います。

――それぞれどういう音楽を聴いてきたんですか?

玲山:僕は小さい頃は親の影響でBUMP OF CHICKENとか、あとは友達から勧められたRADWIMPSとかを聴いてましたね。

小崎:僕はジャンルで言えば、結構幅広くて。ロック、ボカロ、EDM、ダブステップ、いろんなジャンルを聴いてきました。

ジャスティン:僕は入りは違うんですけど、今だとR&Bやソウルだったりとか、あとヒップホップもすごいよく聴いていますね。

比喩根:私はもともとアイドルとかボーカロイドを青春時代に通ってきて、高校入ってからブラックミュージック、なかでもソウルとかミニマルファンクとかを聴くようになりました。

――本当に全然違うんですね(笑)。

ジャスティン:本当に違いますね。だから「この曲いいんだよね」っていう話はあんまりしたことがないんです。

比喩根:最近になってし始めたよね。だからバンドを始めてから共通項ができてきたんだと思います。

ジャスティン:僕らもまだお互いの知らないことがたくさんあるんですよ。それこそ「そんな習い事やってたの?」みたいな(笑)。

比喩根:趣味とかも全然違うし、合ってるとこってなんだろうねっていうぐらい、綺麗にアンバランスな感じなので。自分たちでもおもしろいなと思います。


▲ジャスティン(Dr.)

――結成して、オリジナルの曲を生み出していったときにはどんなことを感じましたか? 手応えみたいなものはあった?

比喩根:私はバンドを組む前から1人で曲を作っていたんですけど、そのときは自分の曲に満足できていなくて。だけどこの4人で最初にアレンジしたときに「いいとこまで行くかもしれない」って漠然と感じたんです。これがもっと上手く形になったらすごくいいものができるかもしれないって。それが今こうやっていろんな人に聴いてもらえるようになって、自分の勘は意外と間違っていなかったのかもって。根拠はないんですけどね。

小崎:うん。この4人で曲作るのがすごい楽しいし、4人が納得できる曲が作れてるから、俺も「いけるんじゃないか」っていう気はすごくしてた。

比喩根:そうなんだ。知らなかった!

玲山:僕は最初は大変でした。全然聴いてこなかったジャンルだったりもしたし、曲をもらったときとかは「何だこの曲」みたいな感じだったんです(笑)。そこにギターつけるって、何つけていいのかわからないから、すごく大変な思いをした(笑)。

ジャスティン:ははははは。

比喩根:ごめんね(笑)。


▲比喩根(Vo.)

――比喩根さんはバンドをやる前から曲を書いてはいたんですね。

比喩根:高校1年生の終わりぐらいから、書き始めてはいました。でもなんていうんだろう、できてはいるんだけどできてない感じがすごくて。「これ欲しいんだけどないよな」みたいな。ギターの技術もなければ、DTMとかもできないから。だから満足してなかったですね。

――このバンドを始めて、それが埋まっていった。

比喩根:そうですね。0から1を私が作ったとしたら、このメンバーがその「1」を10にも100にも1000にもしてくれるような感覚がすごくあって。具体的なイメージとかはあまりなかったんですけど、聴いたときに「これだよこれ」な感じがして、バンドサウンドってやっぱりすごいなって思いました。

――まさにこのアルバムを聴くとそういう感じがしますよね。この4人の空気感、それぞれのバックグラウンド、スキル、そういったもので曲ができあがっていく感じがすごくする。

比喩根:様々ですよ、みんな。お世辞とかじゃないよ?

ジャスティン:ははは。

比喩根:みんなのセンスとか今までの練習とか、いろんな引き出しによって、自分の曲がさらに生かされてるなっていうのは常に感じていますね。

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アルバムタイトルに込められた3つの思い

――そのアルバムですが、『ingredients』というタイトル、あまり見ない単語ですよね。

比喩根:曲を全部作り終わってからタイトルを決めることになって。スマートに伝わる、かつおもしろいタイトルは何かっていうことでみんなで案を出していたときに『ingredients』っていう言葉が出てきたんです。「材料」とか「素材」っていう意味なんですけど、大きく分けて3つ、意味を詰め込んでいて。

ジャスティン:プレゼンみたいになった(笑)。

比喩根:1つめが、このメンバー1人ひとりが素材で、それをchilldspotというバンドによって調理をしたらこうなるよっていう意味。2つめは、この曲たち自体が素材で、ここからさらに成長していくよっていう意味。そして3つめが、聴いてくれた人が、このchilldspotの曲っていう素材をどう調理して自分の中に落とし込むかっていう意味。それを全部込めてこのタイトルになりました。


▲小崎(Ba.)

――実際曲を集めて作っていく中で、どういうことを感じながら作っていきましたか?

比喩根:曲ごとにやりたいことをいっぱい詰めていったら、アルバムができる曲数になってた感じだよね。

ジャスティン:前のEP『the youth night』は、夕方5時から朝5時までの時間帯を表現するような作品を作ってみようとコンセプトを持って曲をアレンジしていったんですけど、今回に関しては1曲1曲で考えて、いいものを作って入れてを繰り返していったので。僕の感覚としてはベストアルバムに近いというか。自分たちがいいと思ったものを詰め込みました。

玲山:みんながやりたいことを詰めていって、本当にいろんなジャンルの曲が集まったアルバムになったと思うんで。それぞれの曲がいろんな人に届けばいいなと思います。

――うん、曲のバラエティが本当に幅広くて。これはもう、比喩根さんが原型を作る段階からそうなんですか?

比喩根:私が作る段階では曲の方向性は決まってなくて、私にはないエッセンスをみんなが入れてくれて。特にジャスティンが案を積極的に出してくれるんです。だから「未定」とかも最初はディスコ調になるなんて全く思ってなかったんですよ。普通に弾き語りで作って送ったら、ディスコ調にしたらどうかっていう話が出てきて。やったらすごくはまったし、「Groovynight」のジャズテイストなところも私自身のデモでは入ってなかったけど、みんなジャズやってみたいと話していて入れたらはまった。そんな感じで曲を作っているので、アレンジによっていろんな幅ができてる感じがしますね。

▲「Groovynight」

――それを形にしてレコーディングしていくのって大変じゃなかったですか?

ジャスティン:やっぱり大変でしたね……たとえばジャズだったらジャズのドラムのやり方があったり、ジャズのベースの動き方があったりするし、ディスコだったらディスコっぽいスクエアな感じがあったりとか、変化をつけるジャンルがすごく多くて。アレンジしながらそのジャンルを聴いて勉強しながらっていう感じでした。まだまだ足りないんだなっていうのを痛感しながら作ってました。

小崎:構成とかを考えるのも難しくて。それこそ「Kiss me before I rise」なんて、構成を3個ぐらい作ったんですよ。すごい練り直して作ったりしましたね。

玲山:でもただそれをやるだけだとおもしろみがないんで、そこにさらに自分たちの個性を詰め込んでいきました。それもめちゃくちゃ難しかったですね。

――めちゃくちゃ難易度高いじゃないですか。

ジャスティン:自分で自分の首絞めてるみたいだったよね。

比喩根:私もギターのバッキングのニュアンスも変えないといけないし。chilldspotってボーカルが結構重要な位置を司っていると思っていて、この楽器を目立たせるためにここはこうしようかなとか、その場でちょっと歌詞変えたりとか、結構大変だった記憶がありますね。「Weekender」はわざわざ座って背中を丸めて録ったり、「dinner」は独り言を言いう感じだから、本当にうつむきながら録ったり。いろんな工夫をしました。

――歌詞の内容や歌うテーマは変わってきたと思いますか?

比喩根:根本的なものは変わっていないです。その根本的な伝えたいことに対してのアプローチの引き出しが増えている感覚はあります。chilldspotの名前の由来にもなってるんですけど、その人自身に寄り添いたいっていう気持ちがあるんです。元気にさせる曲もあれば、ぐいっと引っ張り出してくれるような曲もある、けど基本的にそっとその人に寄り添ってあげられるような感じの曲が作りたい。それは変わっていないんですけど、いろんなことを吸収したり、バンドメンバーと出会ったりして、アプローチの仕方がどんどん増えてるなとは自分でも実感しますね。

――でも歌詞を読むと、誰かに寄り添うっていうのはありながらも、自分自身に言ってるんじゃないかなっていう言葉もありますよね。

比喩根:それもすごくありますね。自分が感じてることって他の人も結構感じてると思うときが多くて。だからこそ、自分がかけてほしい言葉を歌詞の中に入れています。自分自身も励ますし、聴いてくれている人も鼓舞してあげられるような感じの歌詞になっています。


▲玲山(Gt.)

――メンバーのみなさんは比喩根さんの書く歌詞をどういうふうに受け止めているんですか?

ジャスティン:比喩根本人が、歌詞の解説を1曲1曲送ってくれたりするんです。だから解釈する上で困ることは意外となくて。共感できることはもちろんありますし。

玲山:僕は「Weekender」の曲の中に出てくる<適当に生きるのも大事かも>っていう歌詞が結構自分にも刺さって。よく聴いてますね。現実逃避に使えるというか。

ジャスティン:彼は真面目なんですよ。

玲山:だから疲れた日とか、課題とかやってる人とか、なんかちょっと休みたいなと思ったら聴いてほしいです。

比喩根:結構玲山と私が頭で考えてパンクする性格なので、刺さりがちなのかも知れないですね。

ジャスティン:え、僕らは適当に生きてるって?

小崎:そんな覚えはなかったけどね(笑)。

chilldspot「ingredients」

ingredients

2021/09/15 RELEASE
REP-57 ¥ 3,080(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Monster
  2. 02.夜の探検
  3. 03.未定
  4. 04.Groovynight
  5. 05.ネオンを消して
  6. 06.interlude
  7. 07.Weekender
  8. 08.Kiss me before I rise
  9. 09.hold me
  10. 10.dinner
  11. 11.私

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