Billboard JAPAN


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<インタビュー>特別な夏を経たDef Techが語る、進化し続ける音楽への情熱



インタビュー

 2021年8月、東京オリンピック・パラリンピックが開催。これまでもスポーツ、特にサーフ・カルチャーと深いつながりを持ってきたDef Techのふたりにとっても特別な夏が訪れた。2001年に結成され、2005年にアルバム『Def Tech』でデビュー。収録された「MY WAY」が火付け役となって一気にシーンの寵児となってから16年目の夏。秋には有観客での[ビルボードライブ]ツアーを目前に控えた彼らに、コロナ禍を体験したアーティストとしての心境の変化、ライブへの意気込み、そして「これからのDef Tech」を語ってもらった。

「今という瞬間に生まれた音楽」を作る

――2020年はデビュー15周年、そして2021年は結成20周年と、Def Techにとって大切な2年間をコロナ禍で迎えることになりました。おふたりはどんな思いでこの2年を過ごしてきたのでしょう。


Shen:そう、ひと言で言えば、現在を生きることを頑張りました。今までやってきた通りには活動できないし、何かを期待してみても、結局できなくてがっかりするし。でも、その自分が期待することを上手にマネジメントして、今しかできないことをやろうという風に変わりましたね。今を生きる自分のヴァイブスを落とさないで行こうって。

Micro:僕は、最初は単純に怖かったですね。不気味なものとの戦いがはじまってしまって、世の中では情報に振り回されて誰かのせいにするような風潮もあって。1年目は、本当に人間について考えさせられました。しかも、オリンピックが1年延期になりましたよね……。サーフィンがオリンピック競技になったという、大袈裟に言えば100年かけた父と僕の夢の大会でしたから。でも、Shenと同じでそこから切り替えましたね。


――具体的にはどんな切り替えがありましたか。


Micro:ライブができないならば、逆に配信ライブとか動画コンテンツの配信とか、今は会えない人たちにどんどんプレゼンし続けていこうって思いました。何かを生み出す側の人間として、インプットも大事だけど、アウトプットこそが大事ですからね。しかも、僕自身が12月にコロナ陽性になってしまった。もう恐怖心とか言っている場合じゃないなって吹っ切れました。ニュー・ノーマルの中でいかに届け続けるかっていう、僕自身のニュー・ノーマルが生まれましたね。


――それがYouTubeチャンネルの「Def Tech Micro's Lifestyling.」にもつながっていったんですね。


Micro:コロナ禍が僕の「10年後」を連れてきてくれたんですよ。切り替えるために、今を「2030年だと思ってみよう」って。そう想定したらデジタルに対する考えも更新されて、それこそ5Gにも6Gにも向かうような10年前倒しされたようなイメージが湧いてきた。それまでサボっていた……というとちょっとアレですね(笑)、手を出したくても気が回らなかった、手を出せていなかったことをやりたいと思った。それをひとつひとつ実現させていく、そのスピードを速めてくれましたね。


――Shenさんは、コロナ禍での発見はありましたか。


Shen:まさに、今、Microが言った通りですね。すべて「今やらないと」っていうこと。できないことを誰のせいにもできない、自分のせいにしかできない。それは日本語で言う「責任」という重たいことでもなくて、英語で言う「レスポンシビリティー」。できることをやります、ということ。「できるならやりましょうよ」って。それこそ「いつやるの?」「今でしょ!」って(笑)。思いっきりそう思いましたね、Power Nowって。



――その「今でしょ」という感覚が共通していたわけですね。


Shen:しかも、二人ともそのレスポンスが速いんですよ。もう光のスピード。

Micro:例えば、会いたいと思っていた新しいジェネレーションの音楽家たちに会いにいくスピードは上がりましたね。いいなと思ったらすぐネット経由で連絡して、次の瞬間に「好きです」って(笑)。コロナのおかげというのはおかしいかもしれないけど、とにかく「やりたいこと」に近づくスピードはアップしましたね。


――その「やりたいこと」に近づくために、今のDef Techはどんな佇まいでいたいと考えていますか。


Micro:僕らも今やナイスミドルな年齢(笑)にさしかかりましたから、上着は例えばトム・フォードで決めていたとして、でも、下は海ではくようなトランクスをはいている、そんな佇まいですね。スーツも似合うけど、下が海パン(笑)。単にゆるくしたいってことじゃなくて、大人としての立ち振る舞いの中にそれがあるイメージですね。ライフスタイルっていうことで言えば、前にShenが住んでいた渋谷の街に僕が引っ越していて、Shenは沖縄にいる。ちょうど今、都会と南国がフュージョンしていて、シティとビーチを行き来できる、どちらかひとつではないということですね。その行ったり来たりの中で、当たり前だった時間も当たり前じゃないんだということに気づかされたりして。ずっと同じところに居続けるとわからないことがあるなって。それが自然と音楽にも現れると思いますね。

Shen:僕は、沖縄に住むようになって、あらためてよく東京で20年も頑張れたなあって思った。褒めてほしい(笑)。アイランドの生活に戻ってみたら、ハワイで育ってきた自分がまだ残っていて、あ、これが自分にとって普通なんだよねって。でも、戻る場所があるからこそ、東京に来るときには、その時間を今まで以上に大切にする。ハイペースでハイエネルギーな東京に接するスタンスも進化していて、しかも戻る場所がある、そのバランスがいいなって思っていますね。


――帰る場所がありながら「旅をしている」ことが、今のDef Techなんですね。


Shen:さっきMicroが言ったように、僕たちも若くないから(笑)、もう子供じゃないんだぜって言えます。大事なものの価値はわかっていると思う。最初からそうだったけれど、僕たちの音楽に何かのメッセージがないと意味がないと思うし、その絆、英語で言うBondがあって、その上でクラシックスになるような音楽を作りたい。今までもトレンドをあんまりフォローしていないし、これからも「今という瞬間に生まれた音楽」を作れば、きっとタイムレスなものに聴こえると思っていますね。

Deftech

――自分たちの生きている「今」がタイムレスになる。


Shen:そのためには、自分たちのヴァイブスが合わなければ作らない方がいい。ジャスト・グッド・フィーリングなのはもちろんだけど、もしバッド・フィーリングになっていたとしたら、それに負けないように曲を作ろうよって。いろんな気づきがあります。

Micro:そう思うと、若い頃と違って、やっていることのスピードは同じでも、心に流れている時間は余裕があると思いますね。


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    「ビッグ・ウエイヴ」を乗り越え、芽生えた2人の信頼
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「ビッグ・ウエイヴ」を乗り越え、芽生えた2人の信頼

――さっきの大人になったDef Techに通じるところですね。


Micro:若い頃は、とにかく焦ってましたね。何年も待っていられないぞ、もっと早く作らなくちゃ、早く売れなくちゃ……っていう僕の焦りや空回りがShenや周囲のストレスになっていた。「こうでなければ」っていうイメージが強すぎる、いわばオーヴァー・プロデュースですね。その傷はいまでも残っていると思います。まあ、あの頃は経済的なことも含めて、焦らなくちゃならない理由もあったんですけど……焦りは本当に禁物。でも今は、落ち着いてできるから、同じスピードでできることの効率もアップしている。「もっとこうしたい」「もっと違うアイデアはないかな」ということ自体はあの頃と同じでも、信頼しているから、徹夜しないで次の日を待つことができますね。

Shen:でも、そうやってあの頃にMicroに鍛えられて、僕自身はキャパシティーが凄く上がりました。例えば他のコラボレーションに参加して「こうできないかな」っていうことに「はい、わかりました」って楽に対応できる。Microとそれ以上にやっていたから(笑)。だからあの頃の体験、勉強できたことに後悔はなくて、むしろ感謝してます。それを乗り越えてきて、今、原点に戻った気がする。



――ビッグ・ウエイヴをふたりで乗り越えてきたからこその信頼、パートナーシップですね。


Micro:どこかで切り替えられて、戻ったと思いますね。もちろん今でも喧嘩してますけどね(笑)。Shenにあたることもあるし。でもね、今は本当にふたりでいることが一番楽なんですよ。

Shen:この間も言ってたんだよね、お互いにあなたにしか分からないことがあるよねって。

Micro:奥さんにもわからないことがあるって言ってた(笑)。



――ビッグ・ウエイヴと言えば、ついにオリンピックでサーフィン日本代表が素晴らしい成績を残しました。Def Techにとってスポーツ、特にサーフィンは切っても切れない大切なものだと思います。


Micro:今回、自分たちの仲間がオリンピアンになっていくっていう体験は、本当に素晴らしいものがありました。サーフィンだけじゃなくて、野球、サッカー、バスケットボール、BMX、スケートボードなど、もう友だちがいっぱい出てくれている。そうやってリアルに知っている選手たちを応援できるような曲を作りたいっていう気持ちはずっとありました。


――2020年のアルバム『Powers of Ten』に収録の「Like I Do」はハワイのサーフィンの歴史を辿ったドキュメンタリーのテーマソング、「Surf Me To The Ocean」は、日本代表「NAMINORI JAPAN」の公式応援ソングになりました。



▲【NAMINORI JAPAN】公式応援ソング Surf Me To The Ocean / Def Tech

Micro:今回、コロナ禍でありながらも、オリンピックが実現して、そこに音楽でピタッとはまることができた、巡り会うことができたのは本当によかったと思います。

Shen:スポーツはライフスタイルそのものだと思うんですよね。ハワイでは水泳やサーフィン、パドルに長けた人を「ウォーターマン」って呼ぶように、スポーツが生活になっています。今回、サーフィン、スケートボード、BMX、どれも僕たちが育ってきた間、普通にみんながやってきたものですよね。それがメイジャースケールになったことは素直に嬉しい。その上で、何度も言うけど、僕たちはもう若くないから(笑)、そういう新しい世代の人たちに対して動かなくちゃいけないっていう、いい意味でのプレッシャーも感じています。いいメッセージ、いいモチベーションを音楽で伝えられたらいいですね。


――そんな2021年。いよいよ10月から11月にかけて[ビルボードライブ]でのツアーが実現します。


Micro:はい、2020年末の[ビルボードライブ]のステージを(コロナの陽性で)飛ばしてしまっていますし、今回はその分の思いもプラスアルファした素晴らしいライブにしたいと思っています。実は2015年に[ビルボードライブ大阪]に出演しているんですが、その時にゲストとしてきてもらった、僕たちの師匠であるアーニー・クルーズJr.さんとの思い出の場所でもあります。2016年にアーニーさんが亡くなって……今でも泣いちゃいそうになりますけど……でも、アーニーさんがハワイの音楽を世界に広めたことを思って、そのDNAを受け継いでジャワイアン・レゲエを目指した僕たちも、何か世界に発信できればと考えた結果が「THE FIRST TAKE」での「MY WAY」の配信(9月現在、再生数2,480万回以上)にもつながっていったんですね。


▲Def Tech - My Way / THE FIRST TAKE

――Shenさんは[ビルボードライブ]でどんなステージを見せたいですか。


Shen:僕もリベンジの気持ちは同じです。ここ2年間、ちゃんとお客さんの前でライブができていなかったから、こんなに自分がやりたがっている、モチベーションの高いライブはなかったんじゃないかって(笑)。やることが普通になっていたライブが「できない」となったときに、普通じゃないんだって思った。すごく「やりたい!」って思った。そこも新しい自分になりましたね。[ビルボードライブ]は音響の面でも素晴らしいし、客席も近いので、いい意味でお互いに「個人的な体験」ができると思います。客席が近い分、凄くプレッシャーもあるけど(笑)。

Micro:コロナ禍で旅行にも行けない時間が続いていますから、僕たちのステージでマインドトリップしてもらって、少しでもみなさんをハワイに連れて行けたらいいなって思います。


――最後にこうして新たなステージを迎えたDef Techの野望を聞かせてください。


Micro:そうですね、[ビルボードライブ]に出演するからには、ぜひ[Billboard]のチャート1位になるような曲が作りたい。ちょっと大きな話ですけど、それぐらいのつもりで曲を作りたいですね。今、SDGs、地球環境のことも頭から離れないじゃないですか。個人的にも、音楽家としても、じゃあ何をすればいいんだろうって考えています。

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